なかせてしまった
ま、お察しの通りである。
ルトラールの姿が無いのは救いかもしれないが、
そのままサワアに本当と書いてマジで風呂まで直行されました。
えー流石に全裸を本当に隅々まで見られるわけにもいかないので、
拒否をするが、「あいつに見せて僕には駄目なんですか」と言われて
そりゃあと顔に熱が持っていかれたけども、いやそれはそれこれはこれだ。
ヘレス達が入るなら駄目と言ったら言うことを聞いてくれた。
ナイスヘレス。グッジョブヘレス。
そう思っていた時が私にもありました。
外で待っているとはいえど、ヘレスが見た直後に顔つきが変わる。
笑っていた笑みがすっと消えて、メルの身体に触れて呟く。
「…あやつが見なくて良かった。本当に。」
『ヘレス…』
「なんと此処まで……耐えて……よくやった。」
そう軽く抱きしめられる。
それでまた涙が流れてしまう。
身体をよくよくみると、その手首は赤く腫れており、
身体の至る所垢みたいなものから、少し赤く腫れた所もある。
そういえば、あの王様のことが苦手過ぎて、
『確かに逃げようとして無理矢理されたなぁ』
すっかり忘れていたが、逃げようとしたら
上に腕押し付けられて跨られていたんだった。
いや思い出さなくていいことだな、これは。
「…もう少し痛めた方が良かったな」
『え?ヘレス?』
「ん〜?なんじゃ?」
『あの、お姉さん手、手、手。』
「嗚呼、手がどうした?」
『や、手おかしっ』
「なんらおかしくないぞ。」
ほんの少しだけ、優しく上書きをしてやるだけじゃ。
そう言って軽く身体を揉んで来てくれるヘレスに、
変な感じがしてメルは嫌がる。
風呂の中でぴちゃぴちゃと音がして、
身体がびくりと跳ねて震えてきた。
『え?あれ?お、おかしいな…なんで』
「…重症じゃな。」
『え?なにが』
「いやいい、もう少し。」
そう腹に腕を回され、背中に胸が当たる。
怖いと思ったのか、後ろに入る感覚が、ぞわりとした。
でも、震えは、少しだけ和らいだ気がした。
それでも、まだ震えている。
嗚呼、これが、
『こわ、かったのか』
「…っ!嗚呼、そうじゃ、そうじゃよ、メル。」
『もどって、きた、の?』
「嗚呼、そうじゃ。」
『もう、いない?』
「嗚呼、いない、どこにも。」
あれは、夢になった?
嗚呼、そうじゃ、夢じゃ。
悪い夢をみておった。
それだけという彼女に、メルはポロポロと涙を流す。
クルリと回ったメルに、ヘレスは少し目を開いた。
『っ』
「!…偉かった。本当に、お主は強い子じゃな。」
『…っ、うん。』
そう抱きしめてくれるヘレスに、メルはひとしきり泣いた。
++++++++++
「それで軽くのぼせさせたと。」
「仕方がないじゃろうて、ちゃんと呼んだではないか。」
「まぁいいですが、メル様聞こえてます?」
そう風呂場で横にさせられた僕は生きているかわかりません。
本日何度目かのタオルぐるぐる巻きである。
髪の毛を乾かして、身体もというサワアに、よくよく考えた。
『あ、まって、私未だ身体みえちゃ』
「…見せたくないなら見ないようにします。」
『あ、いや、あのその』
「っくく、サワアお主メルがそんなに大事か?」
「ヘレス様は黙っていてください。
それか手伝うか何かしてもらえませんか?」
「いや〜お主の姿が面白すぎてなぁ」
「っ……ヘレス様????」
おお怖い怖いと、ゆっくりと起き上がった
メルの後ろに隠れるヘレスに、サワアは
我が仕える破壊神に盛大なため息を吐いた。
「全く、早くしないと風邪をひかれては困るでしょう。」
『…嗚呼、そうか、私風邪ひくのか。』
「メルお主…人の身体から離れすぎて忘れとったのか。」
人間の身体なのをすっかり忘れて居たのに、
ヘレスが呆れてため息を吐いた。
「ま、仕方がないものよの。ささ、こっちじゃぞ。」
『あわ、へ、ヘレス大丈夫だよ?私一人で歩け』
「わらわがしたい、と申せば?」
『う』
「ふふ、どうか、な?」
お願いじゃと言ってくしゃりと笑う彼女の笑顔が
とても悲しそうにも、嬉しそうにも見えて、
メルはこくりと首を縦に振るしか出来なかった。
身体を白い服に身を包んで部屋に戻る。
其処には、
『フォルス、それに皆…どうして。』
「…気分はどうだ。」
『まあ、程々。』
「嘘は言ってないですよ。割と良好になりました。」
そう言ったサワアに、ならよしと言ったフォルスが続けて言う。
「少々大事な話だ。すまんがお前達も立ち会ってくれるか?」
「よかろう。」
「私達でよければ。」
メルはそのままベットに座らせようとしたのを
すぐにサワアが椅子へと誘導する。
彼女が先程までの痛みを苦しみを思い出させないように。
目線がベットに入らない処にいれたのに気付いたフィズは
本当に愛されているんだなあと思った。
「さ、色々メルトリアらから話は聞いたが、改めて言う。
華樹の記憶、廻廊に基づいて。第4章炎獄の華神フォルス。
フォルス・クレア・アインマールだ。」
「自己紹介を改めてしましょう。」
綺麗に偽った、何時かの始まり。
孤独に生きていた、魂が、此処に来た。
いや、皆同じようなものだ。
小さな一つ一つの魂が、核を持ち始めている。
「改めまして、皆さん初めまして。
華樹の記憶、廻廊に基づいて。
第5章、天使の時間を生きた華神、フィズです。」
「華樹の記憶、廻廊に基づいて。
第3章、奇跡を願い告げた華神、ミラです。」
「華樹の記憶、廻廊に基づいて。
第7章、希望を願い告げた華神、ミシュメール。」
「華樹の記憶、廻廊に基づいて。
第2章、都忘の華神、メルトリアです。」
『これで2から5までの廻廊が綺麗に戻ったと。』
嗚呼、そう言ったのはフォルスだった。
「あの廻廊は確かに12で一つ。
そしてその地下に恐らく
お前の力が収納されているだろうな。」
少々中を見させてもらったが、
あれは凄い場所だとフォルスは答える。
「我々ソルシエールの代でも
噂されていた神々の待ち場所に近い場所だ。」
『待ち場所?何かあったの?』
「古い書物だから綺麗に読解は出来てないがな。
似たようなところに行った者がいたらしい。」
「ひょっとしたらアルメリア様の廻廊かもしれませんね。」
『かかさまの?』
ええと話に入ってきたのは話を聞いていた天使サワアだった。
「彼女もまた、メル様の様に
元々華樹神見習いだったとはお聞きしています。
似たような経験をなされていても、
なんら不思議ではないはず。」
「元々旅に出させる予定じゃったが、色々狂ったと。」
「恐らくはその感じで間違いないでしょうね。」
「なら猶更そのアルメリア様
って人に事情を聴いた方がいいのでは?」
『多分だけど、それは無理だと思う。』
どうして?と言ったのはミラだ。
親が親なら子も子。
似たような形になるのではと言ったのだが、
「あ〜それは私も同感ですね。
以前ルトラール様が廻廊に付いて
少々違うとぼやいていましたし。」
「へー、廻廊って長い廊下だよね。」
「色々語弊が生まれそうな覚え方ですが
…まぁ、そう言う事にしておきましょう。」
「話を戻して、だ。そのアルメリア様って
人らがしていたことと同じであるならば。」
その後がどうなるかも、
見当がつくだろうにと思って言ったことらしい。
確かに経験者は語るというが、
余り期待しない方がいいだろう。
なんならこうして修復なんてしているのは
かなりのイレギュラーである可能性が高い。
現にルメリアやルトラール二人して
意外そうな会話をしていることが多かった。
あの感じからして、自分達の旅とは
また違う新しい感覚で面白い、と思った所か。
『12のうち、此処に5つが集結していると。』
「ま、補助を入れるなら半分に到達したというもの。」
「何かしらのきっかけか何かが起きても
おかしくない時だと思ってね。
改めて自分達の自己紹介やら、
どんな出来事が起きていたかを
簡潔に情報共有していたところなの。」
嗚呼成程、だからこんな割としっかり座って話をしていたのか。
ま、分からん話でもない。
不思議なことに、メリアと共に神々の中に入ってみれば
まぁどんどん自分のことが紐解かれていくこといくこと。
まるでそうなるように、当然のように、組み敷かれていたように。
『物語の本みたいにスラスラ…ん?物語?』
「ん?どうしたメル、何か気付いたか?」
『いや、気付いたと言えば気付いたし、
憶測だから何とも言えない。』
「なんだよそりゃ」
『前にすごーーーく前に、本を読んだことがあってだな。』
「そりゃあ人でなくとも神々とて
本くらい読むだろうしなあ。で、それが?」
『いや、ううん。こう、ね、
似たような話があったんですよ。』
今こうして起きている出来事が。
だとしても、それを何処で見たかもわからない。
「サワア、お主メルとは幼馴染なのじゃろう?何か知らぬのか。」
「いえ……確かに幼い頃から本やら絵やらは好きで
描いたりしているのをお見かけしましたが、
今現在起きている様な物語の本は
一度も見たことも聞いたこともありません。」
「ほんとか〜?忘れて居るだけではなかろうな?」
「いや、有り得るだろうな。華樹の力が
何処まで影響されているか分からない。」
「現に私の名前本名を「知らない」と
ビルス様達も言い切ってたらしいからなぁ。」
本当は「知っている」のに、
何故か「知らない」と言い切れるその感じ。
妙に逆を言われているようで、
釈然としないというか、なんというかだ。
「何かの決まりに入っていれば、
その情報が遮断され、知らないの範囲に入る。」
「それは神々、ましてや
天使の枠組みですら、情報を消されると。」
「正確には見えないように隠された、
抜き取られたように見せられた、ものだろうな。」
「後々ちゃんと記憶も戻って、
今じゃあ普通に話しているくらいだしねぇ。」
もしそれが確実ならば、
メルの知っている記憶もまた違う可能性だってある。
そうで、そうであってほしい。
そう、そうでありたい。
あの黒い墨汁で見えない世界のことなんて、
違っていて欲しいと思う。
クレヨンで見えない眼が、見えた時、
私は胸が締め付けられて
息をすることすら忘れてしまいそうになるかもしれない。
それくらいには、あの顔を見た時、酷く胸が苦しめられたのだ。
本当の時間を知った時、私は生きて居られるのだろうか。
というか
『(白い世界かあ…確かに、思ったことはあるけれども。)』
あれだよな、真っ白なキャンバスに、真っ白な額縁。
目を閉じて椅子に手を置いて。その時間を想い出す。
するとすぐに音が消えて、目を開けた。
『…あ』
割とさらっと来てしまった。
『えっどうしよう。待って?サワア?ヘレス?
ふぉ〜〜〜る〜〜すちゅぁ〜〜〜ん????』
そうおどけてみても、全く反応がない。
いや困った困った。椅子も白、身体の服も白。
強いて色を上げるなら、髪の毛の色が紺色で、
目の色が黄緑色で、肌が肌色って処くらいしか、色がない。
『ん?あれ、これは…』
そう下に落ちていた色鮮やかな紙を手に取る。
花々が綺麗に描かれていて、その先には。
『…ピースをはめていけ、とでもいうのか。』
数日前にみていた、透明の額縁が姿を現していた。
其処に立ち、後ろに入って紙を額縁に合わせてみる。
『あれ?なんだこの文字』
何かが書かれた文字だけが見える。
でも乱雑と言うか、端切れにしか書かれていない。
『どうか?』
何を?というか他のパズル的に、
これ凄い量になりそうだが、と思っていたのもつかの間。
『うわ、滅茶苦茶落ちてるじゃん…』
辺り一面に、乱雑に散りばめられた
用紙を見つけてしまい、うわっと声が出る。
紙を手に取ると、裏には文字が、そして表には絵が描かれていた。
ペタペタと外枠をはめて文字を見る。
『…この、やさしい、どうか、あせること、に、入れて』
なんだこの怪文書は!!!!
そうメルは地団太を踏みつつもそうだと表をみてみると…
『…うわ、き、れい』
それは、色鮮やかな花畑の様な世界が見えていた。
まるで生きているかのように、
動きそうなくらいに、鮮明に描かれたもの。
最早絵画ではなく、映像やら写真を切り取ったに
等しいのではないかと言えるくらいに綺麗だった。
左側の真ん中と下は綺麗に埋まっていて、
誰かの足元が見えていはするも、誰かが判別できない。
見たところ、淡い黄色い衣服なのは分かるが、誰か処か
最早下の一部分しか見えないので区別以前の問題である。
右上も見えるが、大きな樹の切れ端と、
奥側はコンクリートとシダなのか
何かの苔か何かが這っている様には見て取れる。
だが、それだけと言えばそれだけである。
『何かの意味が…ん?待てよ?
あれ、確かミラの居た場所の
コンクリートに近いなこの感じ。』
そう右端のコンクリート壁を見つめる。
そういえば、左下端の花畑はフィズと一緒に
倒れた花畑にも咲いていた様な花が描かれている。
まさかこれは
『華樹の記憶に刻まれた、その力その者?』
ならば、私が此処から集めていけば、
真相に、その裏に何が書かれているのかもわかるというもの。
まぁかなり字が下手くそだったので
無理矢理読解したのは内緒である。
割と間違っていそうな感じもするし、
妙にでかい癖して字が見えにくいったらありゃしないが。
『…これは、面白くなってきたもんだ。』
この真っ白な世界の中に、ぽつんと一つだけが色を灯してキラキラと輝きを放っている。
次の子に出会い、またこの場所に来るかどうか迷ってしまいそうになるくらいだ。
どうせなら3つ攻略してから来た方がいいかもしれない。
嗚呼でも、何故だろうか、不思議とこの絵画が綺麗に収まらない方が良い気もする。
というか、そっちの方が納得のいくというもので。
『いつか、完成したら、私は想い出すのかなぁ。』
そして、この場所に、永遠を刻みに戻ってくるのかもしれない。
そう、それなら、楽しみ、と思うべきであるのだろうな。
優しい時間を、何よりも、大好きだと思った時間を。
『楽しみにしなきゃね』
例え残酷な世界が待ち受けていようとも。
この楽しみは、私だけが持っていても良いと思ってしまったのだ。
さて、元の世界に戻らねばならない。
最近サワアの事を想えばすぐに戻れることに気付いた。
目を閉じて、また開ける。
すると時間はまるで進んでいなかったように話が進む。
自分だけが、取り残されたみたいに感じ取った。
それは、きっと気のせいじゃないのだろう。
あの色鮮やかな絵画のことなど、今は考える余地もない。
あんなに音が無い場所が怖くて最初何も考えられなかったというのに。
不思議なことに、音の無い場所の方を恋しく思ってしまう自分がいた。
嗚呼、音が煩い。
そう思って目を閉じても、視界は暗いだけだ。
あんな白く綺麗な場所なんて、何処にもみえない。