こたえてくれない
『さて、次は10か。』
「そうだな。っていくのか?本気で?」
『んん、ちゃっちゃといかないと、
いずれにせよ酷い結末なのはどこも同じでしょう?』
「いやまぁそりゃそうだろうけども…」
「メル?お前先程やられていたこと忘れたわけでもないだろう?」
「フォルスさん?」
『覚えてるよ、大丈夫。でも、だからこそ、
忘れないうちにちゃっちゃとやりゃいい話だ。』
まぁ、10よりも私は早く
『フェルに会いに行ってやらねばならないのだから。』
「…フェル?」
「誰だそれは」
『え?誰って、緑髪の可愛い、おん、なのこだ、けど』
あれ、確かになんで?そう頭を抱えるメルに、
今日はこれでお開きにしましょうと
声を上げたのはメルトリアだ。
「いずれにせよ連続はよろしくありません。
ルトラールの仰る通り、週に一度くらいの
ペースでも構わないと思います。」
『うう』
「無理は禁物、ですよ。魂が回復しても、
入って壊れたら元も子もありませんからね。」
おっしゃる通りである。
此処は言う通りにしておこう。
メルは分かったと一言伝え、
そのまま食事にしてしまうことにした。
「じゃ、我々は帰る。フィズ、ミラ帰るぞ!!」
「え〜まぁ仕方がないかぁ。」
「おや、あの場所に帰るのか?」
「一応あの場所が落ち着くのと、全員が外に居るのも怖いからってことで
極力全員が外に居る時間は短くしていこうと決めたんですよ。ついさっき。」
『いやついさっきの話かい。』
全く話題にすら出ていなかったが。
恐らく私が風呂から出てきた処で終わったんだろうなあ。
「あれ、第2は帰らないの?」
「まぁ、なぁ?」
「…なんです?こちらを見て。」
「別に?メルが寝るまでは一緒に居てやろうと思ってな。」
「まぁお優しいことで?」
「なんじゃやるのか?」
「ええ、別に構いませんよ?」
最近修行もしていませんし。
手合わせするか?そう言う二人にならと声を掛けたのはメルだった。
『それこそちょっと二人で華樹の所辺りで組手してきてくれない?』
「え?いや、別に構いませんが」
「いいのか?あそこを借りて。」
『かかさま曰く私の管轄で好きにしろって言ってたし…まぁ私が良いならいいのかなって。』
「それは…まぁ」
『キッチンの創造も綺麗に出来ていないからねえ
何だかんだ言ってお客様なんだし。』
幼馴染を身内と言えばそうだが、正直枠的には違うだろう。
「じゃあ私達はメルのお手伝い〜と」
『ミシュメールはサワア達の方に行ってていいよ。』
「え」
『メルトリアと話があるっていうのもあるけどね。』
君の知識、妙に私と被ってて面白いんだよ。
そうにやりと笑うメルが続けて言う。
『いやぁ、日本人の知識が此処で会話出来るかと思えば興味深くてさぁ。
君フライパンとかアレしってる?IH系?それともガスコンロ?』
「あ、…ああ、一応両方。待ってメル何処出身なのよ。」
『私高知メルトリアは?』
「私岐阜の方だよ。」
へぇそこ知ってる。あれでしょ京都の近くでしょ。
それ大阪とかも含んでぼやけてそうで嫌だなぁ。
そう言いながら席を立つメルが笑みを浮かべる。
心なしか嬉しそうなのを見て、サワアは安心し、
ヘレスらを連れて外に出ることにした。
メルはメルトリアと共に隣の部屋の、更に隣の方に向かう。
真っすぐ進んでドアを開ければ、そこは食事スペース、兼キッチンだ。
「うわ、すご」
『そう?』
「うん、すごい」
天井からは木枠の下から照明が吊り下げられており、
その下には白い台の下、食事スペース側に木枠が幾つかあり
物が仕舞えるように枠組みがしかれている。
キッチンというか、食事スペースどころか普通に
暮らしていくとしても充分過ぎる広さだった。
全体的に壁は白で統一されており、ドアは暗い茶色のガラス窓で
黒いドアノブを下に押して前に押しつつ開けるタイプ。
左側にそのまま半円の中をくぐればキッチンに入ってくる。
裏側は薄い灰色のタイルが敷き詰められており、正面を向き直せば
左側壁沿いに上は棚が、下も台が北欧らしさが出ているのか知らないが、
暗めの棚が少し薄く暗めの紺色に打ち付けられて小物が置かれている。
下はキッチン棚と言うべきか、長めの両開きドアや、小物入れがある。
右側に目を向ければ、食事スペースとは隔てられていはするも、
水回り、下処理スペースは完璧に。スペースの上には段差になっており、
茶色い温かみのある木枠がはめられていた。
『冷蔵庫とか電子レンジ系がイマイチ不良でね。
一応入れて形は見せているだけって感じ。
最早物置に近いから、近いうちに此処電気も通したくてさ、
勉強したいんだけど何処まで入れるか
悩んでるっていうのもあってさぁ。』
「…いやすんご、よく知識朧気で此処まで仕上げたね。
北欧系のめちゃおしゃれって感じがえぐい。」
『あはは、ありがと。』
キッチン奥も同じ様に半円が待ち受けており、更に向こうは廊下になっている。
左は突き当りで、花瓶や額縁が飾られて絵を飾れるようにしており、
右を向けば左側にトイレがあった。普通に此処で用を足せるようにしているのか。
それは腹が痛くなる前提か?いや考えない方が良いか。
そのまま右を向けば、もう先程ちらりと見えた食卓スペース。
4人ほどしか座れない机と椅子は、
少し暗めのダークオークの色合いを持っている。
茶色い戸棚がちらりと食卓側からも見える。
上に4つ、右側にL字を横にして反転したみたいな形で支えになっている枠に、
ガラスで蓋を。L字の空白スペースに物が置けるようにもしているらしい。
勿論下は食器スペースやらの収納スペースだ。
いやこの部屋が理想過ぎて強い。もう語彙力を失うレベルの完成度で。マテ。
「これ、どれくらい」
『ん〜電気から何から何までいれるなら、10のうちまだ4かな。』
「よ…どれだけ技術詰め込むつもりなの貴女と言うお人は。」
『にゃははは、ま、お客様ちょくちょく来るだろうしと思ってね。』
この部屋に入った処から右側にもスペースを少し開けているが、
それ以上いけば廊下にぶち当たるのは分かっていたので、
広げるなら逆側ではあるが…いやこれ以上は良いと思う。
客室なら外に幾らでも作れるというか、あるだろうし。
自室でこれは充分過ぎるものだ。
「や、これ私が指摘するものなんら一つないよ。」
『じゃあ料理する?多分サワアとヘレス二人は食べていくとして、貴方達廻廊組は?』
「ん〜あの子がお腹を空かせれば食べるだろうけど、私は遠慮するかな。」
『あら、そういえばお腹空かないようにしてたんだっけ。』
「そうだね、食べても無意味だったから。」
強めにね。ふぅん。
「いずれにせよある程度準備出来たら
軽く味見して撤収するつもりだったけど。」
『いいじゃん椅子なんて腐る程作れるし。』
「ま、そう言うと思って私は最後まで居るつもり。
それで?貴方何作るつもりなの。」
『いや〜ブルマさんに幾つか食材貰っていてね。』
そう言って棚から取ったカプセルを持ちカチッと押してそこら辺に投げる。
するとその投げた場所に野菜やら果物が出てきたではないか。
「うわ、なにこれ魔法?」
『それが科学の力らしいんだな〜これが。』
「え、すっご。科学の力すっご。」
『ぷっ、はははは、私もそう思った!
それで、お姉さん何食べて生きてたの。』
「えそれいう?私ご飯にケチャップと
マヨネーズかけて食べたりしてた人間なんだけど。」
『あ〜オーロラソースしてたの!?凄いね。』
「夜明け空の色をしていることからの例のあの二種混合ソースでしょ?
にしても本当に記憶戻ったみたいに話すね。誰の影響?」
いやどう考えてもお前だろ。と指を指すメルに、
だよねぇとメルトリアはカラカラと笑った。
「あ、キノコかぁ、ねぇメルってスパゲティいける?」
『ああ〜キノコのスパゲティ?ケチャップ入れる?』
「いや別に入れてもいれなくてもいいけど、
炊飯器あるなら炊き込みご飯作らない?と思って。」
『いいねそれ。ヘレス達にはスパゲティだして、
その間余裕あるなら猶更炊いてみるのもありあり。』
電気溜めて使う系も勿論持っています。
念には念を入れてと貰ってきたものだ。
『じゃあメルトリアご飯よろしく。』
「いいよ、メルスパゲティの方よろしく。しめじとかいれる?」
『あ〜いれないけど、それならチーズとキノコの炒め物しない?』
「うわうまそう…ねぇスパゲティ肉いれていい?」
『良い。軽くひき肉と、ぶなしめじに、マッシュルームはいれとこ。』
「あ、ぶなしめじとタケノコ貰っていい?」
なんでこんな材料あるんだと思うくらいには綺麗にある。
いやほんと種欲しいなこれ。頑張ったら作れるのでは。
確か気を与え続ければ成長するのだから、
吸い上げたりなんなり時間戻したりと研究すりゃいけるだろ。
あ、というかだ。
『ねぇ、メルトリア』
「ん〜?」
『君確か種か何か作ってなかったっけ?』
「あ〜アレ駄目だよ、一応ルトの影響でそこら辺記憶なくてね。」
『ああそうだった。』
少々期待したが、駄目だったか。
「ああでも変な噂は聞いたことある。」
『変な噂?』
「うん、ルメリア様が唯一作った星があって、
その星に全ての種が保管されてるって話。」
『なにそのノアの箱舟ならぬノアの惑星は。』
「割と合ってて、別名ノアの惑星。
正式名称は春の星アストランティアだって。」
其処は春の陽気、5月くらいの陽気がずっと続く世界だって。
そう言う彼女に、割と行って見たい気が強まる。
「でも、それは私の時ですら幻だって言ってたし、
合った所は他の惑星があったりと、話によれば
あの天使ら達すらも見れない力で隠されているとかなんとか。」
『もうそれ幻の秘宝みたいなノリじゃん。』
「其処には自分の知る知識全ての種が保管されていて、
食べ物のレシピとかも保管されてるとかなんとか。」
『う〜〜〜わ、次の遊び場所其処にしよ。』
「本当に何処にあるか分からないんだよ?
それにルメリア様がいるとはいえど、
行けても華樹神の力って感じしない?」
嗚呼ま、たしかに?
そんな星あれば私も遊びに行ったことだろうが、
何にも記憶がない以上
サワアやクス辺りに聞くしか方法はないだろうな。
調理を開始したメルは、あ〜と声を上げる。
『カツオのカルパッチョ食べたあい』
「作ればいいじゃん。」
『いやカツオさばけん。』
「ああそういう…?」
つか本体丸々貰ってるの?
うん。お土産に地球の食材元から欲しい
って言ったら育ちざかりだろうしって色々…
わあ、そりゃ凄いね。
「それこそ外に居るサワア様とかにお願いしたら?」
『いや、内容しらんでしょう。』
「記憶共有すりゃお手のものでしょ。ほら共同作業。」
『う゛……ちょ、ちょっと、また今度で。』
「…ふぅーん?」
『な、なに…?』
そうたじろぐメルに、なんでも?とメルトリアは答える。
「スープとかどうする?」
『あ〜普通にレタスとゴマのスープにしようかと。』
「うわあっさりきたこれ。」
『でしょ〜?私スープつーくろ。』
「え〜じゃあって私作るの少なくない!?」
『じゃあ一緒につくろ?』
それならいいけど。そう言って笑うメルトリアに、メルも笑う。
「ねぇねぇゴマ焼く?それとも無視?」
『あ〜どうしようねえ』
「あ、メル達こんなところいた!」
『おお、お三方まだまだ出来てないけど、いいのもう。』
「お二人に作らせるのも悪いと思いまして、手伝いに来ました。」
そうキッチンに入る三人に、これは?とサワアが聞く。
『今日の献立。キノコとひき肉のボロネーゼに、
レタスとゴマのスープ、キノコとチーズの炒め物。』
「カツオのカルパッチョしないの?」
『ええ〜〜〜?するのぉ〜〜〜?あれだって捌くってか
そもそもはいらんてここ、おけねぇ。』
「そっちですりゃいい話じゃん。」
『だとしても冷蔵庫に入りきらん。出来れば使い切りたいしねぇ。』
カルパッチョだと少量でいいのだ。特にこの面子なら事足りる。
サイヤ人と暮らすわけでもないので、貰っている量からして使いきれない。
一応保管的には大丈夫だろうが、気持ちの問題というものがある。
「でしたら持ち帰っても構いませんか?」
『いやそれだと本当に大助かりするっていうか寧ろ良いの?』
「いえ、それは此方のセリフですよ。ヘレス様も気になるでしょうし。」
新しいレシピが増えるのはありがたいですからね。
そう言うサワアに、じゃあとメルはお願いしようかと笑ってぺこりとお辞儀をする。
それにはサワアも調理に立つということでだ。
「わらわは何をすればいい」
『ヘレスは食器とか好きなの出してて』
「む、使わせる予定はないと。」
『そもそもキッチンが狭いっていうのと、内容が内容なの。
メルトリアごめんぶなしめじこれ全部使っていい?』
「いいけど飯予備は?」
『ありよりのあり。一応ある。あれ一パックもいらんでしょ。』
「はぁい」
「…成程、情報量過多じゃな。」
でしょ。
「ねぇヘレス」
「なんじゃ?」
「それなら待っている間ヘレスがいる星のこと教えて貰ってもいい?」
「よいぞ〜?何から話してやろう。」
そうミシュメールが連れて行ったことに、少し安堵する。
手を洗ったサワアが何をすればと聞いて来た。
『んーカルパッチョは仕上げでいいからな。ひき肉炒めてくれると助かる。』
「わかりました。」
「メル〜スープの素溶け切った。」
『あじゃっす。あ〜これさ、味のアレに近い?』
「ん〜近いんちゃう?あ、うめぇけどうすい」
『どっちだよ。味見味見私も』
いいけどあついよ?大丈夫と言って軽くすすると
あちっとメルが身体をぴょんと飛び跳ねる。
「ほらいわんこっちゃない、舌ぺっぺして。ぺっぺ。」
『う〜〜〜ぺぇするぺっ!!!』
「あ〜ちょっと赤いけど、なんとかなるなる。ほら氷どこ。」
『え〜いいよそんなの、軽く放置すりゃなおるでしょこんなの。』
「駄目ですよ?メル、貴方そう言って前も酷い目あってるんですから。」
『え、過去から変わらないのか私と言う奴は。』
全く。まじかよ。
「それよりひき肉炒めましたが、次なにを?」
『キノコ入れて、もうパスタ沸騰しているから
それザルに入れて、湯を切ってから
キノコ入れた後にぶち込んでもろて。』
「わかりました。」
「ほらメルあーん」
『あーひっひぅぁい』
つめたいねーそうだねーという
メルトリアは引き続き自分の作業に集中する。
軽くスープは出来たので、上に放置する。
「ん?それは入れないんですか?」
「え?あ、げ」
『あ〜いいよ。』
「ですが、いれそうな感じではなかったので?」
「あ〜うーん。」
『メルトリア、こういうことだぞ。バレるって。』
「ん????」
首を傾げるサワアに、メルは仕方がなく事情を説明すると
嗚呼成程と納得がいくように首を縦に頷いた。
「そんなことを策立ててたのですね。」
『策って…まぁね?ならついでにおにぎりにしてお土産作ろうか?』
「っ!いや流石にそこまでは」
「メルの炊き込みご飯絶対美味いよ手造り。」
『ちょ、私初に近いんだから上げないの。美味しかったらでいいからね。』
「わらわも食べてみたいのぉ〜?メルの手作り。」
そう言うヘレスに、少し考えた後、サワアが分かりましたと飲み込むように言い、
メルの方をちらりと見て困ったように答える。
「すいませんが、二人分お作りして頂いても構いませんか?」
『…!はぁ〜い!』
「ふふ、あ、それもう出来上がったの?」
『嗚呼そうそう、そっちで入れるなら持ってっていいよ。』
熱いから気を付けてねと言うメルは、先に調理していたもの達を仕舞うために洗いものに走る。
その手際の良さに、サワアも少し目を丸めてみていた。
サワアは破壊神の身の回りの世話をしているため、そもそも調理どころか一通りは出来るが、
メルの生き方的に、とてもじゃないがその動きは…
「メル様、自炊されていたのですか?」
『ん〜?多分ねぇ〜。メルトリアが来てから色々情報量が多くてね。
多分もっと前もやってたんじゃないかなぁってふんでるけど。』
「1ってこと?」
『ま、そこもだけど…0も在り得そうで、ね。』
少し考えていた。
あの額縁に入った数は恐らく全部で12。
なのに、0の時間は何処にもない。
それは、0の時間そのものが絵画なのか、
それともまた別の何かがあるのか、分からないが。
まぁ、考える必要性は今ないというもの。
『あ、メルトリアごめん指示していい。』
「いいよ、手あいてる。」
『ケチャップサワアの作ってるところにぶち込んで。』
「おけ、何週?」
『ええ〜〜?待って何人前入れたっけ』
「確か5か6人前。」
『…サワア様????』
「ん?なんです?」
『お兄さん力ありますね????』
普通に2人前ですら片手がきつくて両手使ったりもするというのに。
それにクスリと笑ってそりゃそうですよと答える。
「貴方と違いますからねぇ?」
「めるーごめんもう4周する」
『待って待って待って普通に一回かき混ぜさせなさいよ!!!』
そういうのはいれて、こう?そうそうと指示をしつつも手は動く。
一通り綺麗にした後、そろそろと食器を取り出す。白い食器を並べ、
赤いテーブルクロスを敷かせにメルはミシュメールらに指示を入れる。
ちらちらと目を身体を動かしながらも移動するメル。
その機敏な動きに、元気そうでサワアの気分は少し上がる。
それを遠くから見るように、ヘレスはクスリと二人の姿を見て笑った。
++++++++++
『できちゃ〜〜〜!!!』
「カルパッチョまでまさか綺麗にいくとはね。」
「このカツオとやら、かなり身のある食べ物ですね。」
『刺身のやり方とか後で教えようか。』
「是非とも。」
じゃ、それでは
『「「「「いただきまぁ〜/す!」」」」』
んまい!というヘレスにそりゃ良かったと
メルは一言答えて一口二口とボロネーゼを食べる食べる。
久しぶりにご飯皆に振る舞ったな〜いや〜家族で食べるのも好きだから
作って食べてたけど、帰って来る時も少なくて、食べる人は、声しか聞こえ、なくて。
「メル?」
『あ、いや、なんでも…』
そういや、なんでボロネーゼがすぐに出たんだろう。
好きだったのは分かる。でも、誰が?あの子が好きだった。
いやでもあの子は食べれなくて、いや違う、あの子じゃない。
『私食べれないのに、なんで作って……』
「…メル」
『ん?』
「いまは、ね?」
そう微笑むサワアに、メルはそうだねと笑って口にまた一口詰め込む。
無理矢理押し込んで食べていた時間なんて、昔になってしまっていて。
それがとても辛くて寂しくて、でも何処か嬉しいと思ってしまった。
「にしてもどれもこれも美味いのぉ」
「ええ、お上手に作られて、かなり練習したのでは?」
「いや私一発」
『同じく』
「え」
「でも自炊は私もしてたからなあ。
メルもあの感じしてたでしょ。」
『ま、お互いしてただろうしねぇ。
三回も似たような場所で
自炊しとりゃあそりゃなれるでしょ。』
「三回?」
「ヘレス様」
『でもカツオのカルパッチョは
マジで嬉しいマジでありがとう
本当に好きもう大好き愛してる
ああもうは〜〜〜無理つんよ結婚しよ。』
「はいはい、冗談でも嬉しいですよ〜」
軽く息を吸う様に言うメルが
「あ、やっぱりばれた?」と言うので
まぁそりゃあねぇと言う。
「それにしても本当に美味しいですよ。腕上げたんですねぇ。」
「え?前もメル此処で料理してたの?」
「場所は同じでもこんな空間ではありませんがね、
アルメリア様やルトラール様に食べさせるって聞かなくて
何度か燃やしたりしてましたが、ちゃんと仕上げて出してましたし。」
『へーそこは一度やるんだな。』
「三度もやっておるのかお主は…」
メルはカルパッチョに手を付けた後、
さらりとスパゲティの中の具をつついて食べる。
隣に座っていたメルトリアにそういやと声を掛けた。
『例のスイッチいれた?』
「え?何の話?」
『え!?げ、押してないのかちょっと待って押してくる。』
「ああこら、口に物を入れて走らない!」
ふぁっふぇおいひいもおお、
と口に入れて喋りながら走って行ったメルに
全くと呆れてため息を吐いたサワア。
ピッピッと何かを操作する音がする。
『ねぇ超旨でいいよね?正直文字わからんが。』
「え〜?げ、仮名とラテンと漢字のごっちゃとか
でも漢字と仮名でいけるでしょ。これちゃう?」
『説明書も頭おかしいからなこれ。普通真ん中だよねスイッチ。』
「全く、何をしているんです?」
食事の手を止め、サワアがキッチンの方に戻りメルの隣で機械を見つめる。
メルトリアは食卓側の方から覗き込んで手を真っすぐ伸ばし指を指して話していたのを止める。
「それご飯って食べ物を炊いて食べる、
まぁ最後の仕上げってところなんだけど
その機械によってスイッチ変わるからねえ」
「説明書は?」
「これ」
「…ふむ。」
『え、なにサワア分かるの文字』
「当たり前でしょう。」
『第7宇宙の端っこに位置する4032の緑の877惑星の文字を????』
「我々天使を何と勘違いしておいでで?」
これでも貴方が居ない間に結構勉強しているんですよ。
そういう彼にひぁ〜と呑気な高い声が通る。
『天使だ天使』
「はいはい、これでしょうがスイッチ押します?」
『ああ押していいよ。』
「わかりました。それでは戻りましょう」
「どれくらいで出来るか分かる?」
『大体一時間くらいでしょ』
「あれには40分程で出来ると書かれていましたよ?」
『20分くらい話してりゃ大差ない。』
貴方ねぇと目を細めるサワアに、
クスクスとヘレスは座って笑っていた。
食べ物は半分程食べてしまっているらしいが、
私より食べるペースが遅いなぁとちらり自分の食べ物を見る。
もうスパゲティは殆ど食べきっており、
スープとカルパッチョがちょっと残っているくらいだ。
「ってげ、メル早いね食べるの。」
『まぁ食べないと怒られたり叩かれたり怒鳴られたりしてたし。
早く口の中に詰め込んで押し込むだけのものが食事でしょ?』
「メル?お前本気で言っておるのか?」
「…本気で仰っています?」
『ん???なんらおかしいこと言ってないよ????』
メルはスープに手を付け、飲み切り話す。
『腹が満たされれば何も考えることはない。
胃に適量のものを詰め込む人間の作業でもあるもの。
動く為、考える為には必要不可欠な切っても離れないもの。
目の前の物を飲み込んで綺麗にしないと時間は限りあるんだからねぇ。』
その目は、キラキラと輝くものではない。
虚ろとも違う、ただ、遠くを見ているわけでもない。
その場のその物を見て、ふっと嘲笑って言うのだ。
さも、当たり前かのように。息を吸う様に。
『それに、早く食べないと量は食べれない。
噛まなくたってお腹が痛くなれば時期に収まるものだし。』
「いや、噛んで下さいよ…」
『時には噛まずに飲み込むしかないこともあるんだよ。
それが偶々、食べ物で、食事だっただけ。』
そう、それだけなのだ。
だからこれは、私の知る食事ではない。
ウイス達と最初に食べていたあの頃を思い出す。
あれが、私の知っている「食事」であるのだから。
「…成程、そうやってお主はずっと守っておったということか。」
『んん???』
「サワア」
「ええ、分かっていますよ。ですがこの子
昔から一度決めたら梃子でも動かぬ者ですよ?」
「じゃからお主の出番というのもあろう?」
「はぁ…全く、後で一応相談してはみますが、期待しないで下さいね?」
「嗚呼、別に構わん。折角面白くなってきよったんじゃ。」
これからもっと、楽しい時間を共に過ごそうな?
と笑うヘレスにううんとメルは反対方向に首を傾げた。