さめたよ
前回のあらすじ
ゴワス様とシン様二人から教わって
樹を一から育て上げることに成功しました。
まぁ、その後綺麗に吸い取られた話を聞いてため息を吐いた。
こういうのは一人で行うのが良いという訳でだ。
『やってきました見てきました。』
ただいまメルはメルトリアが生きていた場所に来ていた。
軽く手に力を入れて創造すると
樹がみるみるうちに育つではないか。
やはりこうするしかないかとメルは念力で根から取り出し、
葉を枝を切り取って丸太をつくり、加工し始める。
多分材料的には200本くらい使い果たすことだろう。
大量の種を貰ってきて正解だった。
しかも、その種がまさかの日本では
高級なチーク材だったということに
気付くのは建築し始めてからである。
いや、こっちでは普通になっているのかもしれない。
まぁ創造の時点で凄い力ではあるのだが。
時間の概念吹っ飛ばしているみたいなものだからなこれ。
ま、気絶して一日も経っていなかったのが幸い。
ゴワス達は先に帰ってくれていて、食事を済ませた後である。
強いてやるなら風呂入って寝るくらいなので。
今日は10本を目途にと成長させることにしていた。
一日数十本作って、元の場所に持っていく。
勿論加工して、塗装も完璧にだ。
一通りのメニューが完成して、あと残る5日くらいやれば
普通に四分の一は終わらせることも出来るだろう。
一気にやってバレるのは嫌だからな。
まぁゴワス様にはバレたが、恐らく言わないでくれるだろう。
『にしても、後なにしようか。』
メルトリアの世界に飛べるとしても、
人は人っ子ひとりっこ見当たらない。
ということはあくまでもあの場所は
あの世界の場所のみを映し出した状態であるということ。
所謂練習場みたいに考えて申し分ないだろう。
食べ物は少なくなればいつでも連絡してきて。
とブルマさんに言われているから、
食べ物は気にしないで良い。今は。
下手に種を持ちかえればウイスにバレるのは目に見えていた。
そうなれば恐らくルトラールらも動き出すだろう。
その目を盗んでの悪いたくらみである。
まぁこの家みたいな部屋を誰かに明け渡すのは惜しいが。
別に向こうの家一軒と庭から何から貰えるならいいわ。
休憩は嫌でも入るので、メルは作り置きしていたおかずをだして手を付ける。
『風呂は今から入って寝るくらいにするか。』
というか、此処の一日が時計でしか知れないのは少々まずい。
外の場所が暗くなれればと思っていると
何処か薄暗く感じて気になり外に出てみると。
『えっうっっっわああくっっっっら!!!!!!』
もう辺り一面真っ暗になっていた。
時刻をと光を出してみてみれば、夜の9時頃だ。
うわ待ってと思ってすぐにご飯を食べて歯を磨いて
寝室用の部屋着を取り出して風呂場に入る。
待ってあの外にまた出るのは怖すぎる。
いやでもどうして昼間みたいな空間が急に暗くなったんだ。
急いで身体を髪を洗って部屋のドア前に立つ。
『…そっと』
タオルで軽くふき取り、
その髪も割と雑ではあるものの、乾かした。
タオルはそのまま寝室の方に持っていくために肩にかけた。
その暗さは、もう一寸先も闇に包まれていた。
いや照明絶対上に必要だな。
今度間隔開けて設置しなければ。
というか創造とか、また見に行くか。
今度はホームセンター巡りだな。
服の新調もしたいので、布とかも欲しい処ではある。
素材から凝りだすのは元からなのか?
そこら辺は今度サワアに直接聞いてみるべきか否かだ。
彼も彼とてきついものだろう。
何度も何度も帰って来るというのに、
その姿は本当の会いたい人ではないというのだから。
幼馴染とはいえど、とても大事にされていたのは痛い程胸に伝わってくる。
だからこそ、私は前を向いて歩かなければいけないと思うのだ。
一人で走れなくなれば、隣で歩いてくれるだけでも良い。
そう思いはしても、一瞬だけの時間だけが、救いになる。
私はずっとなんて考えていないのだ。
そう、一瞬、瞬き一つさえあれば、無限に息が出来るというもので。
『…とりあえず寝るか。』
此処まで真っ暗なら、怖さなんて感じなくていい。
誰も居ないこの世界でこの部屋で、何に怯えるというのだろうか。
『あいたいなあ』
貴方に、早く、出会って、そうして、抱きしめてやりたい。
その為にも。私は10をクリアしに行く。
そう、そうしなければいけないのだ。
++++++++++
そうして、まさかの二週間が経ちました。
いやまさか一週間秒過ぎてだな、途中で連絡入れられたわ。
無断であんなことなっていかないて。私とてさ。
『んでだ、本当についてくるの?』
「そりゃああなればそうなるでしょうに。」
文句あるんです?そういうサワアにメルはいいえと答える。
『皆壊れないでよ?』
「それこそ此方のセリフですよ、メル様。」
『んぁ〜〜少々10は怖いからと思ってはいないんだわ。』
で、
「なんでこんな大勢で?流石に端折りましょうよ。」
そう言ったのはフィズだ。
メルの隣にサワアが居るのは
まぁあの状況下なら分かるという。
「でも第7や第10までこずとも良いでしょうが。」
「前にメルさんが妙な話をしておられましたので。
あと単純に嫌な予感が妙にありましてですね。」
『妙?まぁ嫌な予感がするのは私も同感。』
「なら余計に人をですね……」
「そういや君付き人とかいないの?」
「ルトラール様のような状態ならば、
ルメリア様が華樹神官に選ばれる感じはしますが…」
『や、いないというか、選ばれていないというか、
存在していないというか、
していたが隠されているというべきかなんというかだな。』
「妙な言い方をするね……」
コツコツと破壊神と天使がメルの後をついていく中、
フォルスたちはその後をついていた。
「アタシ達が外では見張る。なんならサワアと言った天使は誰だ。」
「私ですが、何か?」
「お前こっち側にいとけ。」
「本気で?」
そう立ち止まったサワアに当たり前だとフォルスが言う。
「お前はメルの唯一無二の鍵になりかねん者だからな。
なんなら他の馴染みのある者は?」
「私ですが」
「お前も居た方が良い。関係ない奴らっぽいのを
生贄に飛ばした方がいいだろしな。」
「そんな今から行くところがとんでもないような言い方を。」
『ま、なくはないなぁ?』
メルは先に行ってた足を立ちとめて笑った。
腰に手をかけて、片足で軽く重心をとりつつその目線が上に向く。
『燕か…確か燕は渡り鳥で、島国である場所でも
遠くに迷わずに飛べる生物だったよ、なぁ?メルトリア!』
「え!?あ、ああ、うんそうだけど。」
『どうして迷わずに飛んでいけるかしってる?』
「…太陽の位置を目印にして方角を把握しているというで?』
そう目を細めたフィズに、嗚呼とメルは答える。
その絵画には、草木やらの額縁もあったが、
此処に初めて動物が見えたのだ。
燕が空を飛ぶ綺麗な姿が、
どうにもヒントを与えているとしか思えない。
『太陽がなくなった時、ツバメは空を飛んで
帰る場所を見つけることが出来るんだろうかね。』
「メル…」
『ま、渡る系の力か、その話が出てきても
おかしくないと捉えておいて損はないだろうて。
でも入るって言っても最初は私一人でいきたいんだけども。』
「というかその手筈だからな。」
「ん?どういうことです?」
「そもそも最初はメル一人しか入れんのだ。」
私達全員試したんだけどねというミラが続けて言う。
「メルが入った後、暫くしないと景色が見えないんだよ。」
「ほぉ、それまた面白いことですね。」
「恐らく、彼女の記憶が此方側と共鳴し、
一致した時に開かれるというものだろう。」
『いずれにせよ前みたいなのは避ける為に、割と特訓したからね!』
「嗚呼あの守りみたいなものですよね。」
そう、ミシュメールの時に出た、
ウイスやビルスの守るドーム状の形をメルも習得してきたのだ。
ミシュメールとウイス、ビルスに頼んで
実戦してもらい、何とか会得した。
「攻撃系一切点で駄目だからねぇ、君。」
『うぐ』
「そういうのもあって付いていくなんて、
ほんと君達愛してるねぇ?」
「まぁ目が放せないのは間違いないですからね。
これ以上他の者達に迷惑をかけるのもどうかと思いまして。」
『サワアさんサワアさんそっちのほうが私きっつい。』
「おや、でしたらもっと言いましょうか?」
『鬼か貴様は。』
「天使です。」
いやそうだがな、そうなんだがな????
「メル様此方を」
『ああありがとう。』
壊れた通信機器を耳元にかける様に変更したのを貰う。
所謂スカウターというものにしたのだ。
最初にとメルは指を鳴らし、自身の衣服を変化させる。
「ほぉ、其処迄覚えられたのですね。」
『まぁこんな形で行けば逃げるに越したことはない。』
「もう逃げる前提なんじゃなお主という奴は……」
『にゃはは!流石に相手を傷つけるなんてしたくないからね!』
まぁ?
『私の大事な者達を傷つけるなら…今度こそ容赦などしないが。』
「おお怖い怖い。」
金色の目だけが彼等神々を睨み付ける。
「さ、話は其処までにしよう。メル、分かっているな?」
『はぁい。とにかく人に会えば隠れて極力一人で行動。』
「中の子に目途は?」
『分からん。でも変な感じはしているから、んん正直来るとしたらビルス様と、えと』
「ラムーシだ。」
『すいません…ラムーシ様お二人は入ってきて欲しいです。合図を出します。』
「分かった。」
『そいじゃ、フィズ、フォルスよろしく。』
「では、解放します。」
杖を出したフィズがトントンと二回地面に叩きつけると
その額縁が色を放ち始める。まるで此方側が日向だというようなもの。
『あ、そうそうウイスさん』
「なんです?」
『きっとその勘、合ってるから。』
そいじゃいってきまああああと言ってメルは走ってぴょんと足を上げて、脇を広げその中に飛び込んだ。
ぽちゃんという音と同時に、光が変わり、その額縁が絵画が徐々に染まっていく。
「これは…」
「メルが入った後必ず入る状態なのがこれで分かった。フォルスの時もそうだったから。」
「綺麗になれば入れるとでも?」
「まぁ恐らくは。」
さ、メル。
次はどんな世界に行くのだろうね?
++++++++++
えー此方メルです。はい。メルです。
ガガと通信がフィズの杖に入る。
『現在わからんところいる。』
「わからんて、似たような入りを聞いたな…」
『いや本当に推測がつかない。
木々は樹木と化してはいるが、気温は通常、15から20の平均。
密集しているわけでもなく、空も見える。超絶緑緑しているが。』
いや空緑て、何処の世界やねん。
普通空は青空でしょうがというメルのぼやきを半分無視する。
「メルほかに何が見える?人は?」
『あ〜〜〜〜〜、人らしき者はいない。
あんだ此処、白樺みたいな白い樹が生えているが
大体白樺とかだと冷たい所に
生えてたりしなくもないもんなんだが、
気候が昼夜で激しい可能性も考慮すれば、
とりあえず雨風しのげる処を見つけてから移動がベストだな。』
土は良好。湿度もある。水を見つけつつ、
木々へのパッチテストを自身の肌に行いつつ先を進む。
『岩石も割と脆くなく、そこそこの強度。
地質さえ切り取ればこの場所の生息も
何となく掴めるというものだが。』
「本当にメルさんです???」
『おおその声はウイスさんです?
ども〜メルですよ。
でも大体こんな感じですよ?』
人が居なければ猶更。
その身体一つで周囲を察知し、
感知し、動きその相手との距離を
正確に事細かく調べてあげて距離を取る。
『絶対に死なないという点で言えば得意分野です。
まぁ情報量を全て貴方方に流すという現時点において
其処迄考えなくてもいいと思われるかもしれませんが。』
そう、私の頭の中がもう丸見えというか
筒抜け状態なのだ今回は特にである。
それならもう口に出せるもの全部出してしまえという気持ちなのだ。
いやだって黙ってなくても聞こえるかもしれんが、
ある程度言ってあげた方が楽だろうて。
だって私の頭の中とんでもないことになってるもの。
『有象無象にしても無意味というもの。
でもその無意味から意味を見出す。』
要は片っ端から全部やりゃあ、
必ず目的の者は見つかるというものだ。
いやぁメルちゃんったら天才ね!
こういうのを馬鹿っていうんですよ?皆さん。え?知ってるって?
いやぁ〜そんな照れるなぁ。
「本当にどうでも良いことまで筒抜けなんだなこれ…」
大体華神なら種見つけりゃいい話だけどもだな。
フォルスの様に、広範囲で検知しても、
此処の感じからしてやらない方が無難。
あの場所はあくまでも地面に足を付いた状態で、
その地面全てに付いた足を根を種を見つけていく方法。
範囲が広すぎる上に、コスパが異常に悪すぎるのだ。
見つけたとしても、自分と相手の距離が離れて居れば、
近くに行っても逆方向で逃げれば同じというもの。
加えてこの力、割と周りに影響を及ぼすとみた。
4章の方でも割とキツイシーン
何度かあったというか普通にきつかったからな。
その範囲も一点に集中すればいいが、そんなことをしてみろ。
絶対めんどくさいやつが目の前に登場するが
オチだこういうのって言うのはだな。
まぁ片っ端からぶち殺していけばそりゃ見つかるもんだが、
その時身体がどうなっているか想像したくねぇ。
赤から紫から緑から相手の血に
染まりたくはないんですよ僕って子はですね。
え?皆も同じだって?
そりゃそうだよねぇ〜〜〜
やだよね〜〜〜〜!!!!!
『っと』
軽く茂みに身体を隠す。
どうやら相手が見つかったようだ。
出来たあという呑気な声が聞こえる。
何をしているのか見たいが、
動くのはやめておくことにする。
「綺麗なお花、お魚も釣れて、今日はいい日だ!!!」
早く父様の所に帰ろ〜という
彼女の気が無くなってすぐに身体を起こした。
ピッピッとセンサーを切り替え、彼女の方向を見つめる。
向こう側に安易に行くのは止した方が良い。
此処は迂回した方が無難だろう。
樹を伝ってメルは移動を試みることにした。
どうせ後でばれるだろうが。
幸いなことに、此処の樹木は上がかなりふわりと綿菓子の様に広がった形をしている。
その為此方側に気付くことはほぼほぼないというもの。
ガサガサと音が立つと、チチチと鳥の鳴きまねをする。
いや本当に私凄い声の音出すなおい。私もびっくりだわ。
「なんだあとりさんか」
そしてお前は騙されるんか!!!!おい!!!!危機感どこ行った!!!!!!
あ、そりゃ私も言えることか。普通に置いて来たから無理なんだわこれ。
え?身に着けろって?あ〜まぁやらんくはないよ。うんうん。いつかやるやる。
「かかさま!ととさま!きょうはおさか、なも」
そういった声が止まる。嫌な予感が胸を過る。
ドンという音に、少々身体を動かそうとしたのを止めた。
「ほぉ、モメントの生き残りがまだいたとは。」
「ひ」
『(どうする?出て助けるか?いやまだ様子を見るしかない。耐えろ私。)』
だが、彼女の感じからして、明らかに華の者にしかみえない。
ワンピース姿の子だが、膝の方に華がちらりと見え隠れするのだ。
あれは明らかに10の位置、膝に咲く華神の場所で、即ち此処は…
「まさかヴェリタスに入れたから魔法みたいな力の
一つや二つと漁ったら、こんな可愛い子ちゃんを
身籠っているとは、隅に置けない奴らだなぁ?」
「っととさま!?かかさま!!!」
「く、るな…ぴ、なくる、」
「おおっと、お嬢ちゃん、君はこっち。」
はなして!そういう彼女の声がする。
まて、落ち着けとメルは胸にちらついた感情を抑えた。
ぶわりと広がった力を瞬で抑える。
まるでそれは、最初から無かったかのように。
息をするな、殺せ、奴らがどうなるか、彼女がどうなるか。
分かっていてそのまま放置するつもりか?馬鹿はお前だろう。
彼女ら全員が綺麗に笑える世界に
居れなかったのは、一体誰のせいだというのだ。
身体の芯が冷える様な感情を持つ。
嗚呼私この感情を知っている。
「それにしても、可愛らしい子だねぇ?金色の目か…高値で売れそうだ。」
「ひ…や、やだ、こ、こわい」
「っくくく、大丈夫、大事に、してあげる」
『そう、ならそのきったない手を今すぐ離せよ。』
「なっ誰たおっぐあ」
「っわ」
『女の子が嫌だ止めろって心の底から言ったのが
貴様ら分からねぇのか。ざけんな屑。
能無しにされてぇのかああ?』
「っ貴様なにをっ」
『大丈夫だよ?もう、お迎えに来たからね。』
そう女の子をそっと抱きしめてひょいっと抱き上げて言うメルに、
泣いていた子が目をぱちくりとしていた。
其処に敵らしき奴が攻撃を入れるも、
ぴょんぴょんとメルは攻撃を避ける避ける。
『あんなクソ野郎みたいな不審者の為に、
そんな綺麗な涙を流さないで?』
「ふえ?」
『あ〜〜〜〜可愛い〜〜〜〜お持ち帰りしたい〜〜〜〜』
「お前の方が不審者だろうが!!!!!」
『ああ?なんでだよ。ざけんな。
このぴゅあっぴゅあな顔してどういうの?』
そうキュルンと目をぱちくりさせてみると、敵がぞっとした。
うわあ〜〜〜た〜〜〜のし〜〜〜〜!!!!!!
「あ、あにき、こ、こいつやべぇですぜ」
「ああ?何が」
「せ、戦闘力が、み、未知数だ」
『えぇ私無いはずなんだがなぁ。』
0なんて、桁を間違えた数字なのかもしれない。
相手のスカウターが壊れる音がしたが、気にしないでおこう。
「あ、まってお姉ちゃん!」
『ん〜どうしたんだいお嬢ちゃん。』
「あそこ、もどって!!」
『…そうだよね、お父さんとお母さんになるべく居たいよね。』
分かるよ、私もそうだったもの。
父様と母様が痛めつけられているのを見ているだけなんて苦しい。
そうして一人だけ落とされて、その余りの辛さに、勢いで
帰れる翼を引き千切ってまでして逃げた愚かな私は、
帰れる術どころか、権利すら取れないというのだから。
地に足を付いたメルに、あまぁと声がかかって殴ってくるのを避ける。
足で充分だと思って足蹴りをして軽く吹っ飛ばし、彼女を解放する。
部屋の中なら大丈夫だと思う。見た処範囲は二人以外見当たらない。
『あ〜〜〜そうか、分かった!!!肩慣らししよ!!!!』
「あ?」
『ねぇねぇ!君達戦わない?君らって大事じゃないもんね!!!』
にっこりと笑うメルに、焦る敵。一体何を言っているんだという顔だ。
懲らしめたいならと殴りかかってきた敵を避けては足で倒す。
『あっれれぇ???君ら綺麗に鍛えてないのかなあ????
このくそあまに、足ですら勝てないんだあ!!!』
「っくそが!!!」
『お前ら命を粗末にし、あまつさえ
その子供を捕らえ己の欲望の為に
金に換えて楽しようなんぞ、
くそを煮詰めたみたいな考えしてるから
罰当たりに合うんだこのばーか。』
「っらああ!!!」
『私なんぞに勝てないなんぞ……っは!!
飛ばしてやるだけありがたいと思うことだな。』
メルはそう言って軽く手に力を込めて
同時に二人を吹っ飛ばし意識すらも
飛ばしたことに気付いて息を少し吐いた。
気を緩めるのはまだ早いのだ。
『おじょう、ちゃ、ん、ぶじ、で』
そう部屋の中に入ると、まぁ悲惨も悲惨。
部屋中赤い血だらけで、子供はしゃがんで母親の手を取って身体に押し付けていた。
魚と花は、もう血と泥に染まって使い物にもならなそうで。
「ひっ、く、か、かか、さまあ」
『…っ』
「ね、おね、ちゃ、かみさま、なんでしょ?」
『っ!!そ、れは』
「ねぇ、ならピナコルの力もあげるから、
かかさまと、ととさまを助けてよ!!!」
ねぇ何がいい!?あ、前に貰った宝石でもいい?あとお金と、それと
そう言って彼女が手あたり次第に記憶から漁って大事そうにしていた物を出してくる。
ばらばらと落されたその黄金に、彼女の痛々しい目が見えて、胸が苦しくなった。
「これもあれもだめなの?」
『…』
「なら、なら…この、感情を。」
『っ駄目!!!!』
それだけは、それだけはいけない。
首に手をつけようとした子供の手を乱雑にも取って止める。
放してという彼女に私は放さないと強く言い放った。
『両親が君の命が消えて笑えると
本気で思って感情を捨てるならば、
私はこの状況を綺麗に記憶ごとお前を消し去る。』
「…っ!!!!」
『それは君が大事に大事に育てた、
君だけの感情で、命に代えがたいモノだよ?
それを、逃げてと、彼は言っていたじゃないか。
…どうか、君が笑って生きれるように。と、
守った彼等の意思をも、君は踏みにじるというの?』
「…っふ、で、でもお」
『君も優しい子だねぇ。
感情等捧げなくても、魂はいずれ地に戻る。』
「え?」
『君が生きているか、それとも覚え続けていれさえすれば。
必ず君はこの二人に出会えるというものなんだよ?』
だから、怖いなら、辛いなら、尚更その身に刻み付ければいい。
そうして何時か、本当に楽になって笑える日が来るから。
どうかその日まで、その時間だけでも、切り取ってしまえばいい。
そう、ソレだけの話だ。
嗚呼それが、それこそが、華神の本来あるべき、「真実」なのだろうが。
「…っ」
『どう?落ち着いた?』
ひとしきり泣かせてみた。
隣でただ何も言わずに池のほとりで泣かせていただけだ。
こういうのは傍にいるだけで充分良いというもの。
似たようなことをしてほしくて、された気がするのだ。
一体何時の、時間だったかは、分からないのだが。
「うん、大丈夫。ありがとう、天使のお姉ちゃん。」
『いやいや、私天使じゃないて。』
「でもピナコルが良い子で居たから、
神様のお使いである天使のお姉ちゃんが、
かかさまやととさまを虐めた
あいつらを倒してくれたんでしょ?」
まぁそのお二人は蔦でぐるぐる巻きにして
現在樹の下に張り付けの刑に処しているんだがな。
本当に容赦がない時は容赦がないのだ。
何時もこれくらいやって欲しいですと
なんだか何処かの誰かさんに
言われそうな気がするのを抑えた。
『…ほんと、可愛らしいね。メル』
「え?」
『私の名前は、メルだ。よろしくね?ピナコル。』
「〜〜〜〜!!!うん!!!!」
『さ、荷物をしてきな。此処は立ち去ろう。』
「え、どうして…」
『先程の奴らの仲間が来る可能性が高い。
北の方に移動しようと思っているからね。』
分かったという彼女にさてとメルが振り返る。
『お前ら誰の差し金だ?妙な変な華の匂いがプンプンするんだが……』
まさか魔女に魅入られたなんて言うんじゃないだろうな?
そう立ったままぎろりと目だけ動かし睨んだメルに、
ひぃっとちびりそうな顔を声が出る二人。
「いいいいやそそおそそそそそそんななすぁああああけ」
「あんたとあいつは終わりだ」
『ん?』
「あのお方に見つかれば、その身体はもう終わる。」
『…操り、ねぇ?』
一人、覚えがある。
メルトリアの時間に見つけたあの女性が脳裏にちらついたのだ。
まぁ生きてない保証なんて何処にも存在しないのだ。
破壊が出来ないのかどうかは定かではないが。
いずれにせよ危険極まりないのは確かだ。
にしてもおかしいな。
『奴は第5の時間に位置するはずだ。10に移動できるものか?』
「あ?あんた、何いって」
『…ま、それはいい。お前ら逃げてもいいが、あの子と私に近づくなよ。』
「…敵に情けをかけるのかお前は」
『私は味方に傷をつける者達全員屑野郎って判定するからな。』
「くっ、ま、まぁいい、おい逃げるぞ!!!」
「あ、ああ……おい、お前」
ちらりと振り向いたメルに、敵が言う。
「…”厄災は必ず”」
『…肝に銘じておこう。』
そう言って今度こそ消えた奴らと同時に、ピナクルが帰って来た。
お帰りというメルに、お待たせとぜぇぜぇ声を出しながら来たのだ。
とりあえず北の方に一応方向は向かう。
『ねぇ一応街に入っておこうか。』
「え?別にいいけど…」
『君王族なの?』
「いいや、寧ろその…」
目の前に出てきた街に入るとまったと声がかかる。
「お嬢さん悪いことは言わない。その子を置いてから中に入れ。」
『…迫害、か。』
ちらりとピナクルをみると、びくりと身体を反応させて、後ろに下がる。
嗚呼、何処に行っても、何をしていても、彼女らは受け入れてもらえない。
それは何時しかの私みたいにみえるから、同情で買っているのだろうか。
「お嬢ちゃん駄目だよ、そいつは、そいつは悪魔の子なんだ!」
『悪魔、ねぇ…?』
「…っや、やっぱり、わ、わたし」
「こっちへくんな!その人に触れるんじゃねぇ!!」
そう言う酷い声が徐々に広がっていく。まるでドライアイスのように。
何かがブクブクと反応してモヤが広がるように、彼等の不満も広がっていく。
その核になる部分の子が、いなくなるまでは、ずっとだろう。
そう言う彼女らに、メルはスタスタと逃げたピナクルに近づき
身体を抱き上げ先程の様にして見せる。
「っひ!!!」
『ほら、怖いなら触ってみなよ。』
「っななななにを!!!」
『君らの顔、誰かに唆されたみたいな目をしている。
この子は君らに一体何をした?何をしていた?』
「そ、それは……」
『人は確かに弱い。独りなんて以ての外。だからと言って痛めつけて良い訳ではない。』
あいつら屑野郎でも、割と感情は持っているのだ。
だから私は情けをかけれるなら出来るだけかけてやりたいとも思う。
『何もしていない子が罪だというならば、その罪をどういう意味になるのか、君らはこの子にこんこんと言い聞かせて納得させなければならない。』
そのような覚悟もなしに、ペラペラペラペラと誰かのことでびくついて言うならば。
『どうかその罪にお前らも染まってしまえばいいよ。』
「っひ、こ、この、あくまめ!!!」
『嗚呼別にどうぞ?ご自由に。』
「っな」
『私は悪い子悪魔の子だよ。』
天使の羽根なんて、とうの昔に己で捥いで無くなってしまった。
逃げた私は罪深き者で、願いが叶うなんてそんなの私が一番許さない。
『この子は私に唆された。分かったらこの子に謝まれ。』
「っだれが」
『きこえなかったか、もういちどいおうか?』
そうゆっくり、ていねいに言うメルが首を傾げる。
その目は、黄緑色の目をしているというのに、
何処か金色にも見え兼ねなくて。
「…す、すまん」
「っ長老!!」
「彼女の言う通りじゃ。我々はその子を生贄に捧げれば平和になると思っておった。」
こんなに人がいるのじゃから、闘えばなんとかなるというのに。
「お詫びにもうすぐで日も暮れる。今夜は泊まって行って欲しい。」
『…ま、と言っても宿には止まりませんが。』
「え?」
『北に用事があるので、これにて失礼。』
そうスタスタと歩くメルに、いや、という声を無視して走って行く。