ひとりふらり





前回のあらすじ

最悪の6魔女、第5のビオランテが登場しました。



メルは引き金を引いてガチャリと音を立て、銃の球を外に出してまた構える。
パンパンと打ち出すその球からは、蔦が生え始めるではないか。

「成程…考えたな」
『近づけないなら近づかない攻撃を当てるのみ!!!』
「っぐ、や、めろ!!!」
『その種、滅茶苦茶痛いでしょ…!!!』

私の、感情折込だからね!!!!

そう言ってメルは更に足や手に撃ち、堕ちた彼女を見て、
指を銃の様に立てた。片方に持っていた銃を捨て、同じ様に指をつくって
右手は右上、左手は左下に合わせ彼女を視界に入れる。


『華の者魔に染まりし、願いを忘れし者よ。
その力、本来のあるべき姿に、戻れ!!!』

カレンデュラと言ったメルは、手を合わせ、
手で拳銃を作って黄緑色の気を撃ち放った。

パンと胸に今度は当たって、彼女の華が変化しだしたではないか。
枯れていた華が、光を灯していく。

「やったか!!」
「…っめ」
「嗚呼、お前も私と同じではないか。」

その言葉に、音に、ピナクルがびくりと固まる。
前に居たフリーザはいつの間にか居なくなっていて。

「っごほ」
「っひ」
「メル、お前はやっぱり此方側の人間
…その恋心を早く手折りたくて、
仕方がなさそうにしているというのに。」

何故気付かない。何故知ろうとしても触れない。

『っ(駄目だ移動していては間に合わないか
と言って彼女に合わせてしまえばピナクルが)』

息が急に引き上がる。
手が震えて、構えてもぶれて吹っ飛ばすがオチだ。

どうする、どうするどうする。
どうしたら出来る。どうしたら死なない。
これはゲームではない、現実なのだ。

多少当たってもゲームならごめぇんで
済むが此処はそうもいかない。

現状魔女を討伐出来るのはメル一択。
華樹の力を引き継ぐメルのみ。

上手く行っていてもすぐに終わる。
何時も同じような展開だ。




そうして諦めるのか?


彼女が魔女になって、私も皆もなくなる?


そうしたら楽になれる?



守れる者は何一つなくて、

あの白い場所に行けるとでも?




本気で、本気で思っているのか。




『違う』
「ん?」
『確かに苦しいよ、愛する者も守りたい星も
忘れたくない願いも想いも
全てひっくるめて抱きかかえて歩くのなんてさ。』
「なら、手放せばいい、なら楽になってしまえばいい」
『そうだね、それもあり』
「っメルお前!!!」
『でも』




私が行きたい場所は其処でもないんだよ。




そうぎろりと睨んだメルの目は、金色に光り輝いていた。



『行く場所を見つけた。帰る場所がある。』




その為なら、私は人は、何処にだって行けるんだよ。



ねぇ、気付いてる?



そう足で降り立った場所が、びしりと音を立てて沈む。
くいっと顔を上げたメルの目は、ただ一人だけを見つめていた。


『君もちらりと見えるんじゃない?私の種を持った君なら。』
「な、にをいっ……っ」
『綺麗でしょう?可愛いでしょう?優しいでしょう?』

その場所がくぶちに、私は行くと、決めたのだから。

メルはそう言って剣を作り、そのまま彼女に詰め寄る。
それに引いた彼女に、追いかけて答える。

「っ在り得ない!!そんな場所に、辿り着けるわけが!!!!」
『いく。私は行くと決めた。』
「っ許されない!!悪魔も魔女も、天使も人も、
ソレを許す人は誰一人としていやしない!!!!!」
『そうだよ?当たり前じゃん!』

そうメルは嬉しそうに笑って距離を取って剣を立てて言う。

だって、

『全ての者が私を否定する其処に行かねば、
私の願いは絶対に叶えられないのだから。』

「〜〜〜〜〜〜っ!!!!!」

やけくそか、土から樹木を生やして攻撃を入れるも、
轟々と光始めた輝きがその力を打ち消しているようにも見える。

『だから私の願いは叶うことを術を知らない。
そうして叶わない間全員ひっくるめて包み込んでしまう。』
「…っそれが、どういう結末になるか、お前分かっていて」
『魔女になんて悪魔になんてなってやるものか。
華神になんて天使になんてなってやるものか!!』

私は人だ。人間だ。

『何時しかの神が落とした人間の一部だ』

戻る場所が、帰る場所が、私は見えた。
そう言ったメルの髪色が白く輝きを放つ。
金色の目が、轟々とキラキラ光り輝くも、

ちらりと見える、黄緑色の目に、魔女は想う。

こんなの、悲しみを越えた何かだ。
受け入れたとでもいうのか、どんな仕打ちを受けても
どんな酷いことを言われても、大丈夫と言って。

許し、その為ならば、その時間が叶わなくても。

それだけのために、手を差し伸べ続けるとでもいうのか。


「…っふふふ、ほんと、あのお方が狙うのも頷ける。」
「っ」
「なら一つ教えてやろう。」
『な、にを』
「君のお話、過去の過去。」

ふわりとつぶやかれた言葉に、メルは身体を止めた。
その隙にと言わんばかりに振り下ろす剣に気付くのが遅すぎた。
間に合わないと思っていたその瞬間だった。

ぐしゃりと嫌な音が音を切った。

「ほお?守るか。それでも。」
「っ」
『〜〜〜〜〜!!!!!!!貴様!!!!!!!!』

抑えろ!波を紡げ、その一瞬一突きだけの為に!!!!

メルは彼女を抱きしめつつ、
槍を作って彼女に投げ飛ばしながら地面に身を落とす。


『っ…ピナ!!!ク、ル……』

横に倒れていた彼女は、華は輝いていた。
嗚呼駄目だ、そんな願いなんて
叶わせないと動こうとしても動けない。
足が身体が痛いというのもあるが、

『え、なにこれ、蔦?』
「ね、華よ神よ、願いを継げよ。
代償与えて、お願い聞いて。」
『っ!!!ピナクル!!!駄目!!!!!』
「”どうか、大事な人達の目守もるめになれますように”」

華が綺麗に光を解き放つ。
願いが叶う証拠だ。駄目だと言っても、身体が重い。

ぶわりと広がった華が、酷く胸を痛ませる。

大丈夫と、子供が女性に変化し、
メルの身体をそっと包み上げるように抱きしめる。

「私は何度だって、貴方を見守り、貴方の力を救い上げるのだから。」
『っぴ、っな、こっ』
「主を処罰するならば、その道を外れるならば、
…私は、いえ、私達は容赦をしない。」

そう言った彼女の言葉と同時に、
魔女の周りにかつての廻廊達が現れたではないか。
それと同時に、後ろから声がかかる。

それに振り返ったピナクルがお願いしますと渡す。

『さ、わ……?』
「…ほんと、毎度貴方は無茶ばかりをする。」
『っだ、め、ぴ、なが』

頂点しか見ない、その感情。
彼女の力は、非常に強く、力のある者。

「…は、廻廊に紛れても、無駄というものか。」

両手を上げたビオランテに、その後は適切な処置が施されることになった。



メルは身体をぐったりとさせ、サワアの腕の中で大人しくしていた。
その間、ピナクルが彼女ビオランテを封印したのだ。


「華樹の記憶、廻廊に基づいて。
第10章、頂点しか見ない目守の華神、ピナクル。」


見守る、それは目を放さず見守る。
変化が起きた時、直ぐに対処できるように。
目だけではなく、身体を使って守ることへと変化し
それは警戒するまでの範囲まで広がったもの。

けっして、じっと見つめる意味ではないのだ。



メルは彼女の言葉を聞いて、手を取り握手をする。
キンと音が鳴るのを聞いてから、サワアが動く。
ぽちゃんと先程聞こえた音が久しぶりに感じる。

「っ!!!戻って来た!!!」
「メル!!!」
「此処が、廻廊…」
「ってお前は!!!!」
「安心しろ、そいつが封じて今は眠っている。」

灰色に変わっていた彼女に、
何人かが驚くも、その廻廊の下にある場所に
檻を作って入れて保管することに話が進み、
本格的に廻廊のみにしか
移動できなくなってしまったことに、メルは謝る。

大丈夫と言ったのはミラだった。

「君が思えば何時だって何人かは外に出られるし、
魔女一人取れただけでも大収穫ってもんでしょ。」
『いやまあ、そう、だけど。』

それは、とんでもない願い事だと思う。
目を閉じて、開いた場所は、サワアの腕の中ではない。

『…やっぱり。』

かさりと紙を取って、その場所にはめてみる。


『…どうかお願い』

私は、何かをこの場所に願った。
祈って、それが叶うにしろ叶わないにしろ、
この場所に戻る様に私は仕組んだのだろう。

もう少しで、終わる。

半分が過ぎ去った。

もう、6つもあるその力に、この先を見たくないと思ってしまう。
大事にしている、だからこそ、こう強く胸が痛くなるのだろう。
ぼたぼたと涙が白い場所に落ちていく。

嗚呼叶わない、二度と、この願いは叶わないのだ。

それに気付いて、向こうの場所に戻る前に、沢山泣いた。

帰りたくなんてない、戻りたくなんてない。
あの場所に居続けたいのに、そうしたくない自分もいて。

出会いがあれば、何時かは、戻る。

帰る場所が、あるのだ。

私はその場所が、違うだけであって。
嗚呼だから、綺麗なのか。
花冠が見えて、声に出して笑いながら泣いてしまう。

もう答えなんて見えていて、胸が苦しくてたまらない。
もうちょっとだけ、そう、そうだ。

もう少し、もう少しだけ、楽しんで笑っていればいい。
忘れたまま、なにも、知らないまま。
そうして、何時か思い出した時、沢山惜しまれるように。

あの場所で、かけ走り続ければいいだけだ。

『…っぐ…、だ、いじょう、ぶ。』

そう、大丈夫。大丈夫だ、この記憶だけが、私の大事な形になる。
天使だって永久的な命を持っているのだから、似たような形になるというもの。

ずっとずっと、願っていた場所に、辿り着けるのだから。
願ったりかなったりではないのかと、悪魔の様なささやきが聞こえてくる。

そう、夢の中なら、空想の中なら、皆に幾らでも会えるというものだ。
頭の中でだけなら、そう、それだけでも、良いのだと。

その想いだけで、私は、生きると決めたのだ。

あの魔女の前で、声をはっきり出して言いきった。

『大丈夫』

今度はしっかりと言える。

そう、ほんの先が、遠い未来が、見えただけだ。
そうなるかどうかも、わからない。私が皆が変える可能性だってあり得るのだ。

いつか、そう、また、いつか。

『いってきます』

そう言ってメルはまた、目を閉じたのだった。

在りし日のことを、想い出す様に。


++++++++++


それから更に一か月が過ぎ去ろうとしていた時。
漸くメルの家が簡易ではあるものの、完成した。

半分に来たというのもあり、
此処からは慎重に事を進めた方が
いいと言ったのはメル自身だった。

今までは其処迄考えていなかったが、
現状悪魔も腹に抱えているみたいなもので、
下手にボロボロで毎回戻っていたら
最後大変なラストを飾りかねないのが見えたのだ。

まぁ、あれだ。

このゲーム楽勝じゃんと思って
適当にストーリーだけ進めて

レベル上げをすっぽかしていた
中ボスで詰む子供みたいなことはしたくない訳だ。

というか現状殆どそれになっている。

その為、メルは最低限でも、
天使二人と渡り歩けるくらいの
力をつけることを目標にしたのだ。
まぁその意気込みくらいに上げないと、
正直かなりキツイのは、魔女と戦って分かった。

あれは願いを叶えられる者達が居て、なるものであり、
その願いをもかき消す程の力を持った者に、
果たして今打ち勝てるかと言えば答えはノーであるのだ。

「立ちなさい。貴方がそれ程の技量だとは思えません。」
『っぐ』
「もう少し力を抜いて、速度を落とさない。」

現在、家は放置して、コルンに指導を貰っていたメル。
厳しくいきますというのもあり、本当にマジで厳しい。
鬼教官向いてるよ。前世多分鬼教官だったのではなかろうか。

「っ」
『んぐっ!!!』
「隙を出さない。集中なさい。」

あいと頭を叩かれて倒れるメルに、はぁとため息を落とされる。

「全く、他の者達が言うような力等、何処にも見えないのですがねぇ?」
『ったた、ありゃ中々出せないって。』
「それを出してこその力、戦闘力というもの。」

貴方、まだ隠してどうするつもりです。
そう言うコルンに隠してないよおと大の字になって寝るメルに
はしたないですよと怒られるが、別にいいと思い出してきた。

身なりを整えなくていい、その人は此処に居ない。

「…なら、同じことを繰り返せば、貴方は本気になるので?」
『え?こ、るん…様?』
「………ま、出来るわけがないですかね。」

あ?

「あのお方のお子とは言えど、たかが知れている。
魂が元に戻ったとしても、技術も体力も元が元。
今までのことを考えても、どうせ」
『どうせ?』
「っ!!!」
『どうせ助けてと手を伸ばして助けられるがオチとでもいうの?』

そんなの、絶対にさせない。

そう言いたそうにメルは空に浮遊し、コルンの目上に来て話す。
ぎろりと睨むソレは、敵と判断した冷たい目と同じであって、
ゾクリとした背筋を知らないと決めつけたコルンは
顎を引いてええそうですよと答えた。

「願いを叶えなければ守れない貴方の力など、恐怖にすら値しない。」
『っ』
「ほら、私が少々手加減してソレでしょう?
我々の摸が来たらどうするつもりですか。」

ま、似たようなことをしていたようですが。
そう言ったのは、ラムーシの件だろう。
確かにあれは参った。攻撃しろと言っても本人に当てれる訳もない。

いやまて、まてよ?

『ねぇ、コルン様』
「なんです?」
『貴方達天使って、時を戻すことは?』
「…時戻しの話ですか?一応できますが。」
『それってどれくらい?』
「三分程です。お父様程になれば
もっと戻せるでしょうが…それがどうしました?」
『ね、それって一人ずつが三分とか戻すとかできる?』
「…不可能に近いですね。第一時戻しは文字通り時自体を戻すもの。」

事情を知らず、どんどん時を戻すなんて
そんなこと出来るわけがないでしょう。

そう言ったコルンに、
じゃあ駄目かとメルはぼやいて否定する。

『いや違うするんだ。しようとしないなら、
やる前から諦めたら、終わりって言ってたもんな。』
「…メル様?」
『そんなことするから、あの子は私に命を灯した。
私は何が出来た?何をしてやれている?』

守られ続けて、笑って本当に良いと思っているのか?
そう言う彼女の身体は、起こされ、胸に手を当てて言っているが
その気は徐々にゆっくりとでも、膨れ上がっていくではないか。

『何も出来ていない。
たかが天使一人ごときに加減されて叩かれ泣きすらもせず、
さも当然のようにセーブするように「作って逃げた」
愚かな愚弄者が出来ているなんてよく言い切れるな。』
「なにを」
『要らないな、この感情。』

そう言ったメルが、直ぐに刃を作って自身に胸を刺したではないか。
その動きに、思わずコルンも驚きメルの手を止めようとするも

「っ!!(蔦!?いつの間に)」

立っていた場所にツタが生え、身動きが取れずに足を取られる。
ぼたぼたと血の匂いがする間も、メルは痛いだろうに続けて言う。

『い、たい、いたい、いたいなあ。
それは肉体か、はたまた精神か、
要らぬ物は先に処分し、崇高な形に変えるのみ。』
「っなにを!!!」
『魔女に等なってやるものか。
神様に等なってやるものか。』

これは私の身体私の力私の感情だ。

染め上げるのは、己の感情ソレ一つだけでいい。

『っぐ!!』
「っおやめなさい!!!何をしているのですか!!!!」
『っは…だ、いじょ、うぶ』

大丈夫、そうだ、痛みなんてない。
ああでも、とふわり起こる感情に刃が綺麗に溶けてなくなる。

加えて

「……あ、なた、なにを」
『…あ〜あ、殺せなくなっちゃったなぁ』

どうしよ。

そうまた寝転がったメルに、その身体は綺麗になったというか、
まるで切っていたあの時間が幻かの様にメルはその場に寝転がっていたのだ。

『殺してもスパンが凄い短い。記憶を飛ばさずに、
且つ怒りを保ちつつ知りつつ己の核を知りながらも
立ち向かうその維持が難しいったらありゃしないが。』

ま、し続けていたら慣れるもんか。

そう言って首に手を当てたメルに、腕が伸びる。

「やめなさい」
『どうして?強くなれるのに?』
「それは強さとは違います。」
『力は全てでは?』
「無理矢理振るう強さは力ではない。破滅というのです。」
『似たような意味が、私なのに?』
「っ!!!それは……」

破滅、破壊、それは私が授かった名前。
メルその意味は、自分が一番理解していると思っている。

『私はあの場所に行くと決めた。それを貴方が邪魔をするというならば。』

敵とみなすもの。

そう言ったメルはコルンの首をそっと撫でる。
後ろから、くるりとそのまま真正面で飛び上がり、
反転、いやバク宙している間に触れているのだ。

何時から?その一瞬なんて、感じ取ることは何もなかった。
先程の感覚といい、彼女は、

「あ、貴方…一体、何者だというのですか。」

天使の危機を、危機察知能力を、すり抜けてきたというのだ。

振り返るコルンに、降り立ったメルは違う場所を見ていた。
その場所は、小さな黄色い花が咲き誇っていた。

『メルだよ』

ただそう言ってメルはその華を、足で潰した。
目を細めて、その華だけを睨んでいた。
まるで、憎むように見つめるその目が、赤く光るようにも見えて。

「メル様、今日は此処までにしましょう。」
『なんで?やっと高ぶって来たって言うのに。』

試させてよそう言った彼女の速さが、先程とは別人で。

「っ!!!(察知するのが遅れた?そんなはずは)」
『ーーーー』
「(速いどころじゃない、重みも増えた)」

威嚇や恨みなどの殺意のある悪意すら感じない。
ただぎょろりと見つめる目が、悪寒を伝ってくる。

こいつは目覚めさせてはいけない者だと、警告している。

足で蹴って来たのを手で止め、続けて攻撃するのを何とかかわすのがやっとになる。
その目は、此方だけを見ているのではないと知るのは、直ぐのことで。

『ーーー』
「楽しそうなことしていますね、是非混ぜて貰っても?」
「っ!!ウイス、お兄様貴方達何故!!!」
「っと、割と加減しなくて良さそうな感じで!!」

パッと消えるわけでもない、ただ速さが格段に上がっている。
髪の毛が邪魔なのか、距離を取ったメルがちらりと髪の毛を見る。
それにん?と見ていたウイスやコルン、サワアが見ていたが。


「〜〜〜!!!???!?」
「おやおや、本気で、ということでしょうか。」

長くなっていた髪の毛をバッサリと手で切ったのだ。
わさわさとして、軽く髪の毛を引き千切ったのか、少し匂いが伝わる。

『殺すな、活かせ』
「っ!!!」

ダンと音もせずにサワアに手で上から力を押し込む。
それに横からウイスが入るも足を使って風を作り距離を取る。

『変えろ、抉るな』

誰に言っているのか、己かと気付いた時は
メルがコルンの背中に入り攻撃を入れた時だった。

流石に早過ぎてか、それともメルの動きに
意外性しか見えず周りが見えなくなりつつある彼等の方か。


「っお兄様!!!」
『縋るな、抱えろ』
「っ!(桁違いに、お強くなられて…!!!)」
「ウイス!!!!」

メルの背後から攻撃を入れるサワアに、メルが気付いていない訳がない。
ぱんと音を立ててツタが攻撃を交わしてくれたのだ。

『戻るな、此処だ』

此処に、生きている。

言い聞かせているのか、違う、想ったことを言っているだけだ。

『守りたいのだろう?愛おしいと想うのだろう?』
「める、様…?」
『縋らずにはいられないのか?此処にないと、そうやって、諦めて!!!!』

同じことの繰り返しを、よくもまぁ飽きずにやるもんだ!!!!!!!

その大声に、三人ともぴたりと止まる。

『だからお前は誰も彼もに護られる。』

嗚呼憐れだ。

『こんなにも遅い奴らの相手を何故相手にできてなかった。』
「っが!!!」
『愚かだなあ』
「っ!!!」

ウイスを蹴り飛ばしたあと、メルはサワアの方に攻撃を入れて笑う。
ちゃんと、此方を見ているのだ。見ていて、遠くなど見ていない。
だからこそ、彼女が本気で相手をしていることに焦りが出てくる。

何もきっかけなんて、作っていなかったはず、で。

「貴方は、何処に戻るつもりなんですか?」
「お兄様……」
「此処に帰って来るという意味だけなんて、在り得ないと。」
『ーーーー』
「…なら此方も手加減無用ということですね。」

指を鳴らしたサワアに、ばっと天使らが現れる。
マルカリータやモヒイト、各天使がメルに向かって攻撃を仕掛けにいったのだ。

飛ぶ彼女達に、メルもタッタと軽快に走る様に飛んで飛んで飛びまくる。
一度もかすりすらしない、その動きとその目つき。

まるで

「っ、一瞬だと、言うのですか。」

貴方は、その場所に、身を置いたとでも、言うのですか。

『そうだね、ちょっと試してる。』
「っ!!!」
『良いね、これ。癖になりそうだ。』
「っ戻ってきてください!!!」

振り下ろした手刀をぱっと消えて掠る。
背後にいることに気付いた者達が更に攻撃を仕掛けるも、
メルは一瞬で綺麗に避けて交わし、他の天使に当てれるように誘導した。

「っぐ」
『そうだよ、0と1に置いたんだから、間を理解してやればいい話。』

縋るな、感じて、その願いを、引きちぎって手に籠め続ければいいだけのこと。
ニヤリと笑う、彼女の笑みは、怖さを物語っている。

「はやい、はやすぎる…!!」
「身勝手の極意を使った天使ですら、苦戦とかありですますの!?」
『永久って長いんだよねえ』
「っ!!!!」
『その逆は短過ぎるんだよ。』
「訳の分からないことを言う暇があるならば!!!」

ドンと力を入れて下したコルンに、メルは空を飛びその目を見た。

「…我々を殺せるくらいの力を振り下ろせばいいでしょうに。」
『…ま、試させろといっただろうに。』

でもまあ

『待って天使ここ何人いるの』
「全員いますよ」
『へーなら12対1かぁ…ん?12対1?12対1!??!?!?!』
「隙あり」
『へぐっ』

コンと杖で叩いたサワアに、変な音が出て地面に落ちたメル。
ううという彼女の声は先程の冷たい音を感じさせなくなったことで、
各々がため息を吐いてへたりと崩れ落ちることで、その試合は幕を閉じたのだった。