ちょっと手を伸ばすだけなのにね、それができないんだ
ほんと、憐れだと思います。
そう言ってメルは用紙を手に取る。
『私は貴方で、貴方は私と、私は言い聞かせるしかなかった。』
術を知らない、知りたくない。
紙をそのまま、額縁に飾ると、もう殆ど完成されたようなもので。
『綺麗ね、私。』
「そうだね、私。」
そんな幻聴すら聞こえるもんだから、うん?
幻聴????
『っ!!!!』
「あ、どもども」
『どもどもじゃないが!?!?!?!?』
シリアスぶち壊すな!!!
え?牛乳無くても美味しいよねアレ
それはシリアル!!!
え?白くて食べ物じゃない最初触るのは気持ちいいヤツ?
それはシリコン!!!
じゃあ乾燥剤!!!
それはシリカゲルじゃ!!!!!
そう漫才のように突っ込むメルに対し、
黒髪の女性がいや〜それ程でもと照れ始める。
全く持って上手いことを言っていない褒めてもないと叫んだ。
ぜぇぜぇと息を荒くするメルに、ケタケタと嬉しそうだ。
「あ、もう完成してるに近いじゃん」
『あっちょ』
そう裏側をみる彼女が、メルを突き放す。
何をというメルに、見ないでと答えた。
「貴方は未だ、私にすら会えていないのだから。」
『…っそういえば、どうしてこの場所に?』
「さあ?貴方は私に会って初めてソレを理解する。」
そうして、その最期に、完成するというもの。
「大丈夫、此処まで来たらもう突っ走ろう。」
『…?何を言って』
「私が、皆が、手を引っ張って君を連れてって上げる。」
『あっちょ!!こら何処に!!??』
「君が望んで止まない、その場所に。」
ふわりと笑うその姿に、目を丸くした
『君は…』
「二人は一つ、一つは二つ。」
『え?』
「おまじない。」
指を鳴らした瞬間、元の場所に戻る。
周りを見渡しても、彼女は存在しない。
ただ、その絵画は見覚えがあって。
「どうしました?メルさん」
「…お疲れのようですね。今日はゆっくりおやすみなさい。」
また連れてきますそう言う大神官に、メリアもそっと彼の後ろにつく。
メルはそっと、胸をきゅっと掴んで、そのまま暫く立ち尽くすしかなかった。
++++++++++
風呂に入り、食事を食べる。
それはいつも通りに、規則正しいものだった。
そう、乾麺オンリー以外は。
そう、何もいれないもの以外は、普通だった。
『ごちそうさま』
「それ程で栄養が事足りるとは思えませんが」
『…』
「もう私のことをお忘れで?」
サワアという声に、サワアがクスリと笑って彼女の、メルの傍に寄る。
「声を掛けても聞こえてらしてなさそうでしたので、此処まで入ってきてしまいました。」
『あ、ご、ごめん』
「いえいえ、大丈夫そうなら良いのです。」
『そ、そう……』
「…元気がなさそうですね。」
『そんなこと』
「もう忘れてまた置いて行ってしまうから?」
きゅっと胸が痛くなった言葉に、すいませんとサワアが困ったように笑う。
困らせてしまいましたと言って立っているサワアに対し、メルも立つ。
それはお椀を洗いにという意味だったが、
サワアがそっとそのお椀を取りキッチンへと歩いたので
そのままサワアを見るしか出来ないまま、立ち尽くす。
「別に今に始まったことではありませんから、
お好きになさればいいでしょう。」
『…っ!!!……ん。』
「…ほんと、口数が貴方は本当に少ないんですから。」
あんなに喋ったりはしゃいだりと、まるで同じ様にする。
「それも0と1に置いてきたのでしょう?
その誰よりも大事にしてくれた、
貴方の感情を持った、人間の代わりにと。」
『っ!!!!』
「気付かない程馬鹿ではありませんよ。
貴方なら、ついでと言わんばかりに
その身を投げ捨てる子でしょうから。」
もっとも、そんな癖が付いてしまった原因も
其処にあるのだろうがというサワアに対し、
水が流れる音が出る。
『私は、あの子みたいになれない。』
それは私だから。あの子は私ではない。
でも、違う、そうではないのだ。
『それでも、私はあの子で、あの子は私なの。』
理解してやりたい。分かってやりたい。
そうしてあの子が嬉しそうに笑ってくれるならば。
私は何よりも嬉しいと思うし、それ以外要らないと思うから。
もう、大丈夫。
言い聞かせるのではない、本当に、大丈夫なのだ。
何度だって、その場所に戻って来れる。
私はツバメの様に、太陽を見れるようになった。
『お迎えしにいかないとね。』
「きっと待ちくたびれていますよ。」
『貴方も?』
「ええ。なので、早く帰って来て下さい。」
『戻らないって知っているのに?』
狡いよねと笑うメルに、ええ全くですと答える。
「忘れようとしても、貴方は忘れようとした時に限って姿を現すのですから。」
『サワア……』
「…ほんと、狡過ぎて悪魔みたいなお人ですよ。」
『でもさあ、私凄い言葉知ってるんだ。』
「おや、なんです?」
『へへ、言わない。』
「そんなことをいっ、て…よ、め」
読めないと思ったサワアがバッと前を向いても、メルはその場所に居ない。
背後かと思って後ろを振り返って、その背中が見えた。
『天使も悪魔だったら、恐れるものなんて何一つないんだよ。』
「え、ふぇ、めらる?」
『ん。久しぶりに呼んでくれたね?……さっちゃん。』
「〜〜〜っ!!!」
洗い物が終わって濡れた手のまま彼女を抱きしめる。
その言葉は、その言い方は、彼女その者だ。
名前を呼ぶのが余りにも照れくさくて、
言える様になってからも、それでもそうやって言う。
『ごめんね、また、行ってくる。』
「…っ、ええ、お身体を大事になさって下さい。」
『ん、善処します。』
「お願いしますよ?貴方とんでもない人を巻き込んでいるんですからね?」
『あはは、私もびびったよ。まさか此処までとはね。』
下界の、人間達に触れてりゃすぐでしょと思っていたが、
まさかその人間達が
『破壊神らに変わっているとは、思ってもいなかったのだから。』
「…っ」
『例外はいるも、殆どの破壊神は彼女らが救ったに等しいものだ。』
本当に、おかしな運命だよね。
『人間で居たいなんて、そんなの叶わないのに。』
貴方が居ないなんて、そんな世界、生きていて意味がないというのに。
手の中に、ふわりと白と黒の光が零れてくる。
大事そうに、胸で抱えて首を傾けて言うのだ。
『私は何処までも、貴方を演じて、
貴方を忘れない様に生きるしかないのだから。』
「エフェメラル様……」
『さ、11を迎えにいかなければいかない。』
「その食事で、本当にいいんですね。」
『うん、私の、とっておきなの。』
レシピなんて要らない。必要ないもの。
『何も入っていない、具なしのスパゲティ』
それこそが、この子が、私が、一番大事にしていた、食べ物なのだから。
++++++++++
其処から、サワアは席を抜け、メルは一人になる。
大神官には連絡を入れ、またひと月空けたいと言い出したのだ。
その間に、だ。
「あら、今度はホームセンターにって聞いてみれば…」
『ぴゃあああああああああああああ』
広い!でかい!うううん!!!!
『えっぐ!!!やっば!!!つっんよ!!!!!』
「全く変わっていないんだけど…」
「…すいません、少々昂ると嗚呼なる様になっている様でして。」
そう説明したのは、第2宇宙であるサワアだった。
現在メルは第7宇宙のブルマが管轄している処を貸し切りにしてもらっていた。
付き添いが一人もいないのは悪いというので、選ばれたのはサワアだった。
まぁ他の者達も全員一致で、本人もサラッとならいいかとした顔つきだったので
サワア自身は正直嬉しいようなサラッとしすぎて怖い様な困惑を抱いていたのだが。
「いやいや、アレくらいが丁度良いんじゃないかしら。」
『日曜大工に園芸、組み立て家具用の小物から何から何まである〜〜〜!!!!』
ぴゃ〜〜〜〜!!!!これ見たことある!!!あっこれも!!!!
そう目を輝かせてパッパッと奥に行っていたメルだったが、
『ねぇねぇ!サワア凄いよ凄いよ凄いよ此処!!!
あのね、メルね!!!全部知ってる知ってる!!!!』
「…っ!……はいはい、分かりました、
分かりましたので、余りはしゃがないで下さい。」
『ほらほら!これブスって地面にぶっ刺して光るライト!!!』
「見れば分かるでしょうが、というか貴方程なら力で何とかなるでしょう?」
『自分の力ではない力を置くのが楽過ぎてだな…!!!!』
そうしゃがむメルに対して、サワアもゆっくりとだが同じ様にしゃがんで聞く。
疲れた様にしているも、その姿勢は彼女に合わせてであって。
ウイスがクスクスと笑うのに、ブルマがなに?と聞いた。
「いえ、メルさんに合わせるお兄様が可愛らしくて。」
「…ウイスさん?」
「すいません、出過ぎた真似をしました。ですが、お兄様よろしいので?」
「何がです?」
「そのメルさん、もういませんが」
「っ!?!?メル様!?!?!?!?」
何処に居るんですという声にはぁいと遠くで声がする。
全くと歩き出したサワアの姿を、ウイスは終始ニコニコだ。
ビルスはというと、現在ベジータらと共にブルマの家で食事をし、
その後人間の観光という形になっている。
破壊しないで下さいねというウイスに分かっているとビルスは言うも
もしイライラして破壊したら私が君を破壊しに行くからという
メルの圧に、ビビったビルスは軽くしょげて了承をした後の、ホームセンター。
メルは怒らせたら怖いと前にサワアがぼそりと言っていたが、
どうやら本気で怒ればこの地球処か宇宙自体軽く吹っ飛ばしそうな者に
ブルマは絶対に怒らせないようにしようと心に誓ったのだった。
『わあ〜〜〜きれい〜〜〜!!!』
「おや、こんなものも作れるんですね。」
『電灯は絶対これ買うとして、芝生も一つでいいでしょ〜?』
あとあと、とカートを押していくメルがつぶやく。
こういう時は前を向いてと言っても言う事を聞かないので
軽く何度か言ってすぐにサワアは考えるのを止めて、
メルの後ろをついていっていた。
「いや、滅茶苦茶買うじゃない…」
『ふっふっふ、ドライバーは絶対要るから、自動と電動。』
「というかなにこれまるで家作るみたいな」
びくりと反応したメルに、ウイスとサワアが見ていた。
「メルさん?何を隠してらっしゃるんです?」
「メル?怒らないので言って下さい。」
『嫌だが!?!?!僕の記憶漁ったら怒るよ?!?!』
「漁らないので聞いてるんでしょうが。」
そう詰め寄る二人に、
メルがドライバーを両腕で掴んで
彼等から離す様にしがみ付いて
首を全力で横に振って下がる。
じりじりと詰め寄るその背中を見て、
ブルマはふと自分の息子が
他の野良猫を連れてきたときのことを思いだした。
ご飯を身体に付けて、
何もしてないと嘘でも言う子供と同じだと。
「はぁ、確かに何もしない時間が妙に長いとは思っていましたが。」
「隠れてコソコソよくやる気になりましたねぇ?」
『むう、見た?見たの??』
「誰が見ますか。大体の推察で充分です。」
『やっ!!!』
「った、これ!人を叩かない!!」
ケッと怒るメルに、もうとサワアが声を上げた。
「まぁまぁ、メルちゃんも楽しそうだし、いいじゃない?」
「躾がなっていない証拠です!全く、何処で覚えてきたんだか。」
『ん。』
「…!さ?どうでしょうね?」
「…ブルマさん?」
「じゃあこれでおしまいでいいのね?メルちゃん。」
『すいませんいつもいつもありがとうございます。』
「いやいや、いいのいいの。貴方に護られて地球も安泰よ!!」
嗚呼確かに、メルの力であれば、
地球の一つや二つくらいは造作もないだろう。
メルはお金の代わりにビルスが
破壊しないようにという目を付けたのだ。
ま、そんなことしなくても、メルは守るのだろうが。
それを知らないブルマだとは、ウイスも思っていなかった。
ある意味、それは有り金叩きで、意味の無い、無償に近い。
「よかったですね?メルさん。沢山物が作れる範囲が広がって。」
『はい!!あ、そうだブルマさん』
「ん?どうしたの?」
『あっあ、いや、えっ、あっどうしよ…』
「気になるところとかあった?」
いやそうじゃなくてと悩みだすメルが
嫌どうしようかとブツブツ呟きだす。
『此処のシステムと自分の知ってるシステムが
一致しているか分からんのにいざあんな
クソ天才科学者の子供に聞いていいんか?
というか此処の知識をまず自分が噛み砕いてから聞かないと
知ったとしても鵜呑みにして爆発やらなにやら
身体吹っ飛ばす方が痛いというかそもそも
軽いそんな爆発で私の身体も魂も吹っ飛ぶようだったら
あの廻廊意味ないというか
魔女と戦った時の時点で死んでいるのでは。』
「あ、あの、め、メルちゃん???」
「…エフェメラル」
『はっ!!!!なんです!?!??!』
「困らせてますよ。」
『ああごめんなさい!!!えっと、えっと、えっと。』
はぁというサワアに、メルが焦る。
「いいのよ、ホント小さなお願いでも、
私が出来る限りなら話してあげるわ。」
『…なら、その…で、』
「で?」
『電気の仕組みとかその他諸々をですね…?』
パソコンとか電気送るの、Wi-Fiとか、
アレ知ってるのって名前だけでして。
ある程度の仕組みくらいは分かるんですが…
そう手をもじもじと合わせたり組んだりと
目をきょろきょろして言うメルに、
それくらいとブルマは笑って答える。
「アタシじゃなくてもウイスさん達に聞いたっていいのに!」
『うぐ』
「…メルさんはブルマさんじゃないといけない、と思ったようですから。」
『ウイスさん…!』
「人間に、教わりたいのでしょう?」
天使ではなく、その、貴方が触れ続けた、人間に。
そう言ったウイスに、メルはブルマを見た後、
うんとウイスに頷いて笑って答える。
「それくらい、お茶の子さいさいよ!!」
「では私も、貴方のお話を彼女と共に
お聞かせ願えればと思うのですが。」
「構わないわ!なら私の部屋に来る?」
といっても、客室で申し訳ないけどそう笑うブルマに勿論とサワアは答える。
++++++++++
そう、そして処変わってブルマの家、客室にて。
円卓に座ったメルが足を組んで、手も組み、悩み唸る。
「で、此処がこうなってるの。」
『ん〜〜〜〜あ〜〜〜〜半導体製造装置〜〜〜〜〜』
「意味わからないこと言い出さないで集中なさい。」
『うぇい。』
もうこれ、普通の授業じゃないのか。
そうメルは思いつつも目の前にある材料を見て言う。
『んむ、というか普通にこっちの漢字使えばいいのになぁ〜〜』
「…!め、メルちゃん、これって…なんて読むの?」
『だああああああああああっ!!!!!!!』
メルがずっこけたのに、ウイスやサワアも下を見ていたが、
飛び跳ねつつも起き上がったメルを追いかける様に上を見た。
『漢字だよ漢字!!か・ん・じ!!!普通に使ってるでしょ!?!?』
「いや、それは分かるんだけど、妙に続いているっていうか、これは?」
『え〜〜??ラテン文字使わなくてもこれでいいじゃんか〜〜〜。』
そう嫌そうに言うメルに、ブルマが唖然とする。
メルがスラスラと書いていた文字に、ねぇと言う。
「これ、あんたたちの文字なの?」
「…いえ、この文字は知りません。」
『ふっふっふ、日本人日本産まれ日本育ちの私が
日本語を完璧に扱えるわけがねぇだろうが!!!』
嗚呼!!!お願い先生助けてちょんまげ!!!!
そういうメルに、言葉なんて意味をなさない。
適当に言ってるのでそりゃそうなのだ。
「使えない文字を使わなくてもいいじゃないのよ!!」
『いや〜どうしても日本語変換しないと脳が理解しなくてですな。』
「それにしても前々から思っていましたが、
その二ホンとやらは貴方が住んでいた場所の地名ですか?」
『いいえ、国名ですね。惑星の名は「地球」。』
「っ!!!!」
『私の生きていた、別世界の、地球と呼ばれる星の、国名ですよ。』