君は僕に充分な幸せを運んだ。






そう、出会いは突然必然に。

メルは家に帰り、楽器を下した。
部屋に入ってパソコンを立ち上げ、
自分の小説をネットの隔離された場所に打ち込んでいたのだ。
間違った文章があると困るというのもある。
現に小さい頃からの文字なので、滅茶苦茶な文章だったりもあるのだ。

ソレを改めて、修正訂正をしていた。

『いや〜とりあえず、鏡の中から天使が小さいままご〜ろごろ出てきたらいいのにな〜〜』

そう言いながら思うと、赤い本がブンと音を立てて光った気がした。

『ん?』
「ああああああああああああああああああ」

そう遠くから聞こえてくる声になんだと思って振り返ったら。
ゴロゴロごろと小さな天使が一人二人三人と飛ばされてベットの下で困っているではないか。

「ったたたた、こ、ここは?」
『あああああなんか変なのきちゃああああああ?!??!?!?!』
「っ!な、この姿はどうして!!!」

すいません間違いなく調子に乗った僕のせいです!!!!
そう土下座する彼女に、色々事情をと聞いた彼等

++++++++++

「はぁ!?!?!?1の世界に閉じ込められたあ?!?!?」
「しっ煩いですよ!コルン!!」
「ですが、この姿は、その本の影響だと?」
『いや〜〜〜お恥ずかしい限りで、
肉体は無いんですが、エフェメラルです。』

どうも皆さんお久しぶりでという彼女に、いやとコルンが言う。

「まだ魔女達と戦っていた時だったので、
正直貴方が消えてものの20分程度しか経っていませんよ。」
『え゛』
「貴方一体何時から此処に?」
『え゛っど〜〜〜〜????』
「何処からです?その感じ、
かなりなが〜〜〜〜く居座っていそうですが????」

ひぃ!!小さくても可愛いが目が考えが全く可愛くない!!!!!
メルはコルンの目付きをぐっと見ない様に目を閉じて明後日の方向を見た。

「ですが、貴方くらいの力ならばお兄様や我々のことを想い出せば普通に戻れるのでは…」
『いや、それがですね…額縁のガラス、壊れちゃったまま、入ってしまって』
「………」
「お兄様!!!」
「お、おわった」
『すいません、私の不手際です。』
「いえ、あの時確かに貴方も居ましたが、聞く姿勢でもない状態での話。
注意したくても難しいでしょうし…しかし困りましたねえ。」
『え?』
「あれから廻廊の子達に一度も会っていないのですよ。」

今どのようになっているのかと考えるウイスにばっとメルは机に置いていた本をめくり続ける。
何処ださいごに描いていた場所に、と探してもそっちの話を書いていないことを知る。
だってこれは自分の知っている生きた物語の話。

自分が居なくなった後は、書けるわけがない、だってそこには、いないのだから。

『…だ』
「え?」
『わ、私の、私が、早く帰らないから……』
「メル様…」
『たしかこうやって』

あれ?というメルに、ウイス達も少し異変を感じる。

『あれ?なっ、なんで?気が』
「メル」
『嗚呼ごめん、サワア待って。コルン様ちょっと待って下さい、今』
「おやめなさい」

いいんですというコルンに、メルはぱたりと腕を地面に降ろし、
そのままへなへなと崩れ落ちる。
腰が抜けたのか、足を曲げ、左右の足が外に向く様に座っていた。

「我々も正直に言うと、気を扱えることが不可能なのです。」
『え』
「貴方がどう書いたかはわかりませんが、
その本に余り触れない方が得策でしょう。」
『ご、ごめ』
「だから良いと言っているでしょう!」

とにかくこれからのことを考えるべきですと言うコルンに
いやその前にとメルは考えた。彼らの輪が無い。顔色が悪いと見えても、何故か肌色に近く見え始めている。

『お三方…その、力って、天使の?』
「え?ええ…っ貴方達その姿は!!」
「え?っ!!!」

この世界、気すら消してしまうのか。
いよいよ、本格的にまずくなってきた。
どうやって私はこの世界から出ていたのか、ソレがないのだ。

まるで、この世界の仕組みに落とされたかのような感じ。

なんだ、もし、もしも私なら次どうやって作る。

『ごめん、下手したらそれ私以外も見えるだろうから。』

お父さんには伝えないとと言うメルに、仕方がないでしょうとコルンは答える。



『と、いう訳で、この本読んで。』
「え、やその子達は」
「すいませんが読んでいただけると助かります。」
「え…あ、ああ」

そう言われ、ペラペラと赤い本を読んだ男性、否父親である者が声を上げる。

「其処に書かれていることは現実で、彼女の名前は千代木都佑ではなく」
『エフェメラル。華樹神見習いに選ばれた者で、今はメルと呼ばれています。』
「…っ」
『すいません、本当は離婚したあの日に、貴方にお伝えしたかったのですが。』

メルに、いやいいと頭を抱えた後、暫くしてそのと声を上げた。

「君、ウイスさん、だ、よね?」
「ええ、メル様、いえ、都佑様のお父様とお呼びすればよろしいでしょうか?」
「あ、ああ」
「貴方の仰る通り、顔色と輪は在りませんが、ウイスで間違いありませんよ。」
「え、じゃ、じゃあご、ごご悟空、とかって」
「ええ、悟空さんは私が弟子として面倒を見ています。」

マジかよと言う父に、メルはええと答える。

「待って待って待って待って、何処の世界軸待って何処まで知ってるか教えて貰っていいですか。」
「そうですねぇ〜〜〜、敵の名前を言えば分かりますか?」
「ええ!!それで充分です。」
「現在彼女に会う前でしたら、ザマスさん、力の大会、身勝手の極意が完成された、といえば?」
「嗚呼もう充分です。そうか、そこの人達か…」
『この世界ではウイスさん、サワアお二人には言いましたが
ドラゴンボールと呼ばれる貴方達が登場人物として出る物語の人達として語り継がれているのです。』
「っ!??!?!?」
「本当ですか…!??!?」

ええと男性は正気を取り戻したのか、ウイス達を椅子に座らせ、ちゃんと真正面で話をする。
二人しかいないのに椅子は四つあるのは、気持ちの問題である。
ちなみにメルの膝の上にはサワアがちょこんと座っていはする。

「そうか…たまに変なこと言っていたが、本当だったんだな。」
『ちょっとその話は流して貰っていいですかね御父上様よ。視線が幾つか痛いので。』

コルンやサワアに睨まれるメルに、手を前に出す。

「嗚呼すまない、で?」
『この子達が戦っている間に、この世界に飛ばされたんです。
申し訳ないですが、ちょっとの間生活してもいいですか?』
「嗚呼んなのいいよ好きにして。」
『ああですよん…んんん??????』
「い、いいんですか?我々が偽装しているとか、思わないので?」
「君らが都佑のことをどれ程知っているかは知らない。
でも、この子がこうやって背筋を伸ばして真面目に面と向かって嘘なんてつくもんじゃない。」

加えて小さい頃からこの本は描いていたものだと言う父がメルの方を向く。

「確かに在った時間を、忘れない為に
書き続けていたのなら、納得いくというもの。」
『お、お父さん……!!!!』
「ま、勉強も頑張っていることだし、子供が3人増えたくらいでは大丈夫だ。」

メルもメルとて、頑張ってバイトしている身。
吹奏楽として部活も勉強もしている上に、こっそりとお金を貰ってるのだ。
学校には相談していないが、その金額は普通のバイト並み。

申請をしなければいけないのだが、流れに流れて今に至る。

「周りの人達にはうちの娘みたいに離婚して困った子供を一時的に預かってるとでも言えばいい。」
「…すいません、お世話になります。」
「その代わり、うちの子として接してもらうなら。君ら日本語は?」

首を横に振る彼らに、父親はにやりと笑った。

「都佑、お前この子達に何を教えている?」
『へ!?!?あ、ああ〜日本語とかの常識的なことも殆ど言ってないけど…』
「じゃあまずは其処からだな。どっちにせよお前次のテスト余裕だろ。」
『げっば、ばれてたか…』

次の科目は正直華神になるには必須項目ばかり。
植物やら、宇宙、そして日本語も割と覚えていた処で
数学やらのコツも分かる上に、強いて言うなら英語がまずいだけで。

殆どの点数はクリアし続けるメルに、当たり前だと答える。

「部活も3年生で、もう半分卒業したもんだろ?」
『まぁ〜〜コンクール手前ではあるから忙しいに越したことはないけど…』
「だとしても何時帰るかどうかも分からないこの子達を放置なんて出来ない。」
『うぐっ』
「…と、いうことで。都佑としてでもメルとしてでもどっちでも良いが。」

名前、付けてあげなさい。


『と!!!いう訳で!!!なぜか始まりました!!前回のあらすじ!!!!
サワアとウイスとコルンが家に人間の形で小っちゃくなってきちゃった
どうしよそして名付けさせられとるんじゃ!!!!!!』
「煩いので落ち着いて下さい。」
『嗚呼はいすいません。』

そうメルはしゅんと正座したまま、リビングで辞書やらを出してきてしょげる。

『いや〜でもティーナ達の名前みたいに作るのはいいけど、
え〜〜〜???ええ〜〜〜????』
「そんな小難しく考えずとも、適当でいいんじゃないんです?」
『んなこと言うと私太郎次郎三郎って呼ぶぞ』
「…すいません」
『ならよろしい。いやでも、どうしよう。』

とりあえずコルンは百歩譲っていいわ。

『ウイス、サワア。お前達髪の毛戻せ。』
「え?で、ですが」
『この世界での髪型は基本的に上げないんですよ。』

という訳でとメルはウイスの前を掴み、後ろに倒して櫛で整える。
サワアはサワアで前髪を出させたが……

『……』
「め、める?ど、どうし」
『お前もうずっと前髪無くていいよ。』
「!?!!??」
『もう無理辛い、救急車欲しい。』
「きゅ??」
「嗚呼ごめんこの子時々頭おかしいこというから」
「嗚呼大丈夫ですいつも言っていますので」
『ああんもうひどいなぁ!??!?!?』

両手で顔を抑えていたメルが、恥じらいを軽く捨てつつ手を腿に押し付けて叫ぶ。

『全く、子供の名前でこの時代でってキラキラネームでも許されていいかもしれないが、私が許せんからなぁ。』
「…ま、その間俺はご飯でも作ってるとするか。」
「お手伝いします。」
「あ〜〜なら、一人手伝って貰ってもいいかい?」

他は後で説明するというのは、この家のルールだろう。
一人ずつではなく一度に言えばいいのにと思っていたコルンだが、
メルの事を見た父親をみて何となく察した。

「はぁ…貴方という人は、何処に行っても誰かに助けられる存在なのですね。」
『え?なんかいった?』
「いえ、では私でも構いませんか?ウイス、サワアお兄様はこちらで。」
「わかりました。」

大体彼等の年齢的には2歳前後に感じ取れるかもしれないが、
此方側からすると、6歳から8歳程度の子供になってみえる。
なんなら口のソレは元々の形を保っているからなんともギャップがだな。

『んん〜〜〜〜あわねぇ、滅茶苦茶あわねぇ。』

赤ちゃん辞典とか何故あるのかと言われてみれば、答えてあげるが世の情け。
普通にティーナ達の名づけをするために買い込んだ私なんです。犯人此処です。

「名前に意味等付けているのですか?」
『嗚呼そう、漢字っていうのは昔の人が意味を持って作った文字らしいんだよ。』
「ほぉ?我々が居た処も似たような者でしょうか?」
『恐らくはね。』
「都佑と呼ばれる漢字はあるのですか?」
『嗚呼これは当て字。』
「あて?」
『字をその通りに読まずに、あてはめた字で読むことだよ。名前に対して当て字ってよく言われるかなあ。』

他のことはしらないが。

「では元々どう読むのですか?」
『みやこゆう、って読むかなあ。みやこはトとも読むから、とゆうでもあり。』
「ほー。その最初の字をとって、みゆ、と読むのですね?」
『そうそう。その容量でウイスやサワアと思ったけど…』

流石に当て字で漢字三文字は痛すぎる。
まぁ両親が文字嫌過ぎて子供捨てたとかそう言う話なら納得いかなくもないが。
そうだとしても、親族権限とか色々言い出すこの世の中。
下手に動くと痛い目を会い、最悪三人と今後会えなくなる可能性だって無きにしも非ずだ。

此処だと警察という公共の上が強いからなあ。
彼等には逆らってはいけないのだ。

『…有為。』
「え?」
『ゆうい、ってどう?一応思い出せる程度に納めたくて。』

うい、とも呼べるそれは、能力があること。役に立つことの意味を持つものだ。

『ゆうい君、うん、可愛い。駄目だ。心臓が持たないかもしれない。』
「め、メル様……」
「ゆうい、ですか…別に構いませんよ?」
『え』
「ソレは貴方の為に、有るとも言うのでしょう?」

それなら、と軽くお辞儀をするウイスに、メルはいやいやと答える。

『ゆ、ゆうちゃんって呼んでも、いいの?』
「…っ!……ええ、勿論。」
『〜〜〜〜!!!サワアはさっちゃんがいい!!!』
「まぁそうなると思っていました。」
『さっちゃんはね〜さっちこってゆ〜んだ、ほ〜んとはね〜〜』
「絶対その名前だけはやめて下さいよ????」

何か悪寒がするので。そう言うサワアにええと声を上げる。

『咲久』
「…っ」
『さくあ、って呼んでもいいけど、サクって。』
「さしか合っていませんが…ま、貴方の言う通り
にした方が良さそうですし、良いでしょう。咲久ですね。」
『〜〜〜〜!!!!さくちゃんああむりかわいい。』
「壊れましたかね」
「通常でしょう」
『コルンがつりゃあい。』
「普通にリクとかどうなんだ?」

そう言ったのは料理が出来上がった父上である。
地べたでの方が良いと思って、
リビングのテレビ前の方に物を置きに来たのだ。
メルはばっとノートらを片付けながらああ〜と言う。

『いつきとかも割とありかと思ったけど、
普通に賢いの意味で使う理久とかありかな。』
「メル様の様なその当て字、とやらはいいんですか?」
「あ〜文字浮くからねぇ〜。」
『普通にめちゃ視線貰うから、もし万が一小学校行くならと思うとね。』

流石に可哀想な目には合わせたくないものだ。
メルの感覚的にはこれくらいがいいと思った。

「苗字はどうする」
「みょうじ?」
『千代木都佑という様に、
その手前に来る千代木の方を苗字と言うの。
主に他人がその人の名前を呼ぶときに言う感じ。』
「都佑さんとは呼ばないのですか?」
『嗚呼それは子供同士ならいいけど、
基本的に大人になれば恋人近い感じとか、
友達でもかなり親密にならないと呼ばないよ。』
「あとはおちゃらけて言ったりだな。」

それこそとサワアが言う

「千代木を使うのはダメなんですか?」
「それは…」
『君らの設定をどうするかに寄りけりで大きく変わる。』
「と、いうと?」
『君らを親戚扱いするか、他人から請け負うかによって苗字も変わる。
ま、偶に家系絡みで苗字が二つあったりとかはあるが。』

母方の方を扱えないのは痛い話だ。
何を言えば周りも納得してくれるものか。

正直に話せば、ウイスらのことが世にバレるのは避けたい。
ソレを言えば、今度こそメルが帰る世界は無くなるに等しいことになるだろう。

本当に、頭の中にしか存在しなくなる。

そんなのは、今ではない。この世界で死ぬなんて嫌なものだ。

『大丈夫、絶対に私は貴方達三人を元の世界に戻すと約束する。』
「メル様…」
『例え私の形が変わろうとも。』
「…それは嫌ですね。」
「え?」
「私達は貴方を、連れに来た、と言う意味でも捕らえられるのですよ?」

そう言ったコルンに、ええとウイスは言う。

「メルさんが居ない世界なんて、正直もう考えたくありませんから。」
『コルン様…ウイスさん…!!』
「それに、もうお兄様が寂しがる様な所もみたくないですし。」
「全くです。弟妹達に示しがつかないったらありゃしませんので。」
「二人とも…」
『…ん、頑張るね。』
「ま、そのまえに、ご飯、だな?」

頂きますと手を合わせ嬉しそうに言うメルに、ンまいと声が上がる。

『んん〜〜〜〜〜!!!!』
「喋らなくなっただけ、成長したと言えばいいです???」
『んんんんん!!!!』
「言いたいことは何となく伝わりますが
…我々力を失った為貴方の思考回路は読めないんです。」

そう言いつつも、その口に食べ物を入れて目を丸くする。

「…っ!」
「美味しいか?」
「…っ、ええ!どんな物を入れているのですか?」
「後でコルン様にでも聞いてみればいいですよ。」
「…、お言葉ですが、都佑様の御父上。我々は貴方の元で暮らす身。
その様に無理して上から言わずとも構いません。」
「っ!…はは、そりゃ失礼。じゃあコルンって呼んでも?」
「勿論です。」

これから世話になりますので。
いえいえ、という二人に少し微笑みメルは止めていた手を進めた。
いつの間にか食事が出来るようになったのも、精神的に回復したからだ。

『んぐ…っ、大丈夫だよ、お父さん。』
「ん?」
『私は此処にずっといる。彼らの元にも行くけどね。』

この願いは、この力は、この子は、少し借りるかもしれない。
でも、何時だって何処に行っても、此処を思い出す。

『この子はとても優しい、貴方の願った様な子になる。
何処か遠くに貴方を置いて捨てていくなんて、私しないから。』
「…っ!!!……嗚呼、でもそうしてもらってもいいんだからな?」
『いやいや、恩返しはきっちりしたい派なので。』

そう微笑むメルの姿をみて、ウイスとサワアは互いにメルの間から顔を出してクスリと笑ってみせた。