不幸じゃない。
『と言うことで、やってきました見てきました!!!』
すーぱーでえええすとテンションの高いメルに、
お姉ちゃん恥ずかしいオーラを出す各々で
周りのご近所さんが微笑ましく見てくれた。
ううんいい調子。こういうのって恥ずかしがらずに
いっそのこと人間の心理に付け込んだ方が
滅茶苦茶動きやすいというものだ!!
『さてと、お兄さん方、食べたいものとかあります?』
「とはいっても、我々食材を知らないので。」
嗚呼そうだった、人間二日目の身体にそれは苦痛か。
『じゃあいざゆかん戦場へ!!!』
「あの、メ…っごほん、姉上、ソレは流石にやめて下さい恥ずかしいです。」
『あっすいません。』
じゃっとサラーっと行くメルに、はぁとため息を吐くコルン。
時は少々遡り、数時間前。
『嗚呼そうそう、外では君ら私のことお姉ちゃんって呼んでね。』
「何故ですか!!!!!」
『や〜その年齢だとね、お姉ちゃん呼びが割と多数なんよ。
寧ろ下の名前で都佑って名指しできる?』
「別に大丈夫ですよ?都佑。」
『いや、お前は論外。違うこっちの話。』
そうメルはしゃがんで、コルンやウイスの方を指さした。
まだウイスは恐らくお姉ちゃんがいるからいいが、
問題はそのコルンの礼儀正しさが異常なところだ。
明らか年齢にしては知識が上回り過ぎている。
『本当に頼むからコルン様お願い!!!
下手に喋らないで出来ればもうお口チャックしてて!!!!』
「何故其処迄言うんですか。
下界の人間など気にしなければいいもの。」
『にんげんなめんなよ』
「ひっ」
『特に女は不味い。男は拉致られる可能性から近寄るな。』
「どっちも詰んでいるではありませんか……」
そう遠い目でメルを見るウイスに、そりゃそうだと答える。
『先にお洋服を買い占め、その後スーパーで食材の調達。
最初は御父上に乗せてってもらえるから良いけどね。』
「帰りは道を覚えてもらうためにも、
皆で仲良く荷物持って帰っておいで。」
ということで、現在朝の10時くらい。
少し遠くで買い物をしてから、そのまま途中で
近くのスーパーに下ろしてもらって、
帰るということになった。
その為にも、少々この世界の話でもルールを決めていたのだ。
『百歩譲って姉上はいいけど、
メルなんてカタカナ用語言えば私の事
変な白い目で見られるがオチだからねぇ????』
「っぐ…ぜ、善処します。」
『わかりました』
「っ………わ、わかり、ました。」
『よろしい。幼稚だとは思うかもしれないが、
各々その姿をちゃんと理解して行動しなよ?』
私がそうやって、生き抜いているように。
そう後ろをちらりと見つつも笑みを隠さずに笑う。
その目は、神々を睨んだ殺意を込めたようにも見えて、
本当に末恐ろしいと、改めてコルンは思った。
『ま、化けの皮被る二人が居るから大丈夫だろうが。』
「さらっと貶さないで貰って構いませんかね。」
『はははは!!!じゃ、ぱっぱ〜私の服もかって〜〜??』
「別にいいが、調子に乗るんじゃないぞ?メインは三人なんだからな?」
あいよ。そう笑うメルに、お金はというウイスが大丈夫と答える。
『君らには恩が沢山あるからね?』
「…っ!……成程、それでしたら、お言葉に甘えましょう。」
『そうそう〜!あ、付いた付いた。』
後ろのドアを開け、三人とも元々の服装で出てくる。
ドラゴンボールの話が外でも出てきて、
いいなぁと子供がコルンらを指さして駄々をこねる。
「わ〜てんしだー!」
「っ!!」
『へへ〜いいでしょ!私が作ったんだあ。』
「へ?」
「へ〜お姉ちゃんに着せて貰えてよかったねぇ〜!」
「あ、う、うん…???」
困惑する各々に、メルはペラペラと堂々として喋る。
それに唖然としつつも、彼女の後を追いかけた。
「あの…お、あ、姉上?先程のは一体…」
『…嗚呼、ああいう時は子供がコレ着たいって
駄々こねてたから自分で作ったんだとか
嘘ついたら皆落ち着くから言っただけだよ。』
大丈夫、そんなことしていないの分かってるから。
『一人ならやばいけど、年齢的に三人同じ姿なら
真似っこしてる可愛いくらいで終わるんだよ。』
「まっ、かっ!??!!?」
『それくらい思われるのは我慢しな?』
そんぐらいの恥じらいなど、捨てちまえ。
『さてと、これくらいの男の子なら〜こっちかなぁ。
いや〜〜〜迷いますねぇ〜〜〜。』
「滅茶苦茶楽しそうですね。」
「そりゃあ弟妹欲しがってたからなあ」
「そうなんですか?」
「あ?嗚呼、都佑が君らくらいの姿だった頃は
特に我儘だった時期もあったからな。」
「へぇ!?彼女が!!??」
そんなに驚くことかと思っていたが、
すぐに嗚呼と答える。
「お姉ちゃんお兄ちゃんが欲しいとか言ってたが
流石にソレは無理だから、せめて弟妹って
正直忙しくてそれどころじゃなかったから無理だったが。」
「ではお一人だったのですか?」
「嗚呼、ま、それが可哀想だから犬を飼ったわけだよ。」
『はぁもうむり、考えるだけでにやけが止まらない。』
「あんな感じに馬鹿になるのも、まぁカウンセラーのおかげだけどね。」
カウンセラー?そう言うサワアに、言っていなかったかと答える。
「あの子、一度精神を壊しているんだよ。」
「………………は??????」
「え?いや、でも」
「嗚呼やって笑っているが、それもここ一年二年やっとのこと。」
今まで目に光なんて見えなかった。
何処か遠くを見て、ずっと喋らずに、ただ勉強ばかりしていて、
シュミの一つくらいと思って、PCを買ってやったはいいが、
本に書き記し続ける、それ以外は本当にしなかったらしい。
それは、もう執着を越えた何かに等しいものだ。
「だから、君たちが来てくれて本当に嬉しいんだよ。」
「御父上……」
「あの子があんなにもはしゃぐなんて、6歳からみてないんだから。」
「そんな、前から……」
へらへらして鼻が伸び切っているメルの姿をちらりと見た。
ああやって話したりするのは、前の世界でもしていたのに。
なのに、あの子は、あのお人は、誰もが居ない処でその心を、
「どうか叱らないでやって欲しい。」
「…っ」
「大丈夫だと、もし連れ帰るなら、尚更。」
「…連れ帰るとしても、貴方が
心配にならないようにはしようと思っています。」
「…!…ほんと、君らには勝てないね。」
さ、選んであげようと言う御父上。
どうやらメルのセンスは此処では鈍っているらしい。
幾つか試着し、その服の着心地や、
下着関係はメルを捌けさせた。
流石にメルもお年頃、其処は分かっていて、
言えばすぐに理解して単独行動し始めたのだ。
「ついてやらないのですか?」
「いんや、あの子は外に出て迷子になる子じゃない。」
「え」
「おや?前はそうだったのかい?」
「ええ、歩けばすぐに迷子になるので、
紐を付けようか迷うレベルでして…」
「まあ君らの所は広すぎるからね。」
逆に狭すぎて迷うところがありませんというコルンに
そりゃ失礼と父親は苦笑いして答える。
「此処ではお利口さんだよ?無駄遣いも一切しないどころか
使ってもいいお金すら使っていい?って先に聞いてから使う。
人が作った金なんだから自分より相手の意志を優先すべきだってね。」
「ほぉ、それは良い心がけですね。」
「欲が無い。幼い頃からずっとずっと、何もないと
首を振って寧ろプレゼントに困っているくらいだ。」
「御父上…」
「欲があればまだよかったが…俺が見ていなかった時間も長かった。」
だから、君らを連れて笑っている彼女をみて、夢のようだと彼は言う。
あんなに口を開けて笑うなんて、本当に久しぶりに見て、思わず、
そのまま昨日は泣いて寝てしまったくらいだというのだ。
その欲の無さは、サワアやウイスらも心当たりしかなかった。
メルが言うのは全て小さな願いばかりで、
もう少し強く欲に忠実になってもおかしくなかった。
「…きっと、此処からなんでしょうね。」
「まあ、下手したら昔からでしょう。
拍車をかけたのはここら辺からでしょうが。」
「そうでしたか?」
「割と前はまぁまぁあっても無いに近かったです。
プレゼントをって話の時も、彼女普通に要らない
ってきっぱり断られましたからね。」
「それはそれは……」
「…あの子の本当の願いを、俺は叶えられなかったから。
きっと恨んでいることだろうね。」
「そんなことはないでしょう。」
そう言うのはコルンだった。
「あの方は真っすぐ見てくれる人に忠実に動く者。
例え貴方が過去見ていなかったとしても、今はこうして見られている。
その通りにあの方も動いて恩を与えていると思いますが?」
「…ありがとう、理久。」
「っそ、あ、あのその……うう」
「っくくく、早く慣れてね?」
出来れば慣れる前に帰りたいという理久ならぬコルンに
はははと声を出して笑う。
「まぁまぁ大丈夫だ」
『ねぇねぇお父さんこれくらいかっていい??』
「いいっ……都佑??????」
『えへっ☆』
スイッチはいっちゃったかと呆れる父に、
良いぞと言われてわあいと喜ぶ彼女。
最近服も新調していなかったからと言うが
その服の持ちようが異常である。
『中学の頃の服とかも流石に捨てるべきだしなあって。』
「お前小学生の頃の服とかいい加減に捨てるべきだろ。」
『嗚呼いや、想いであるのでアレは駄目。』
「駄目なんですか……」
『それより皆終わった?』
「後は会計。もってけ。」
『はぁ〜い。私ささっとするから皆連れてって。』
「いやいや、我々もお荷物持ちます。」
「そうです、買って貰えるだけでもありがたいというのに。」
『だそうですが』
仕方がないかと言う父親に、レジまで行く。
容量はスーパーでも同じ様になるだろう。
『まずこのタグってやつを取って此処に押す。』
ピッという音が鳴って、籠に入れ直す。
ソレを繰り返し、持っていた数分を一度入れ
メルはカード?と言うのにそうと言われ、場所を交代する。
ぴぴっと音が鳴り、紙がばらばらと流れてきたのに
アレがレシートとメルが話をする。
『買ったものが記載された用紙とでもとらえたらいい。
…さ、私は買い物するから君ら自分の分いれてきな。』
とはいっても、そうなるわけがない。だろうが。そう言う彼女に、サワアらはなんでと思っていたら。
「あら〜可愛らしいお子さんですね〜!ドラゴンボール好きなんですか?」
『そうなんですよ〜ちょっと一人の為に頑張ったら他の子も駄々こねてですね。』
「な!!」
「似合ってるね〜お姉ちゃんに着せて貰ってよかったね?」
「え、ええ」
ちらりと父親に目配せし、直ぐに移動するように指示をする。
私の洋服は先に会計を済ませてくれるらしい。
店員さんがコルン達が持っていたのをさっと持ち上げて袋に詰めてくれる。
『すいません入れて貰って…』
「いえいえ、お手伝いしようとするだけ滅茶苦茶良い子じゃないですか…!!!」
うちにも同じ年くらいの子がいるんですけど
自分の服なんて買ってきて当然みたいにするんですから。
そう言う彼女にメルは苦笑いだ。
どうやらよくある話らしい。
「これ良かったらどうぞ」
「え、あ、これ…」
『…貰っておきな?』
「っ!…あ、その…ありがとう、ございます。」
「どういたしまして〜〜!!!」
もう此方が癒されましたとほくほくする店員さんに
メルはソレは良かったと答える。
『自慢の弟達なので。』
「…っ!」
『すいません、お手数おかけしました。』
「いえいえ、またきてね〜!」
「ありがとうございました。」
そうぺこりとサワアが頭を下げると、
ニコニコした顔で何人かの店員さんが手を振るので
ふりふりと手を同じ様に振ると、
きゃーと黄色い声が聞こえる。
嗚呼分かる分かるぞ皆の衆。
『滅茶苦茶可愛いよな、分かる滅茶苦茶分かる。
クソ可愛いもん。もうマジでお持ち帰りしたい。
でもいるんだよな。家に。はぁむりしんどい。
いきるのってつらい。天使がいる。もうむり。しぬ。』
「最早発作の勢いですねアレ。」
「無視して構いませんよ。」
でも勝手に死なれては困りますねというサワアにメルがちらりと見る。
「貴方が死んだら、私も死んでしまいたくなりますので。」
『…………』
「あ、あれ?め、メルさん???」
バタンというドアの音に、胸をぎゅっと掴んで救急車が欲しいというのに
はいはいと適当に返しながら父親が逆側から車に乗り込んでドアを閉めた。
「次行く前にご飯食べるところも探しときな。」
『いやその前にハサミ。ちょっと後ろ失礼。』
「うわっ!メル様?!!??!」
『はいサワア私の場所と交代ね。』
「ちょ、外からこういうのは移動しないのですか!?!?」
普通はしないというメルに、馬鹿するわと父親が答える。
妙な情報を入れるなという父親に、メルはけらけらと笑って誤魔化した。
先程買っていた洋服を何着か取り出して、無理矢理コルンの服を掴んだ。
もう嫌な予感がしたが、ぎゃああという後ろからの声を聴いて
サワアは覚悟を決めることにした。
「…楽しそうだね?」
「ええ、とっても。すいません彼女も騒がしくて。」
「いやいや、寧ろごめんね、うちの子が。」
「いやいや、私の言いつけも守ってくれませんし。」
「…そう言えば、向こう側から来ていたって言ったけど、
君は彼女をどこまで知っているんだい?」
「0番目の前、とでも言いましょうか。」
天使のサワアと一緒に遊んでいた話をすると、
嗚呼だからかと父親が笑って言う。
「昔ね、死んでたって言っただろ?」
「え?あ、ああ…はい、ソレが何か?」
「一度だけ目が輝いた時があったんだ。」
君と戦う、その画面の中を見たその瞬間だけ。
「あの子は目を丸めて、何処までも何よりも目が光り輝いた。
…黒目の様に見えたのに、反射していたからかな?
髪色は紺色で、目の色は黄緑色に見えたのは、気のせいか。」
「…っ!?!?!?!」
「っくくく、ま、俺は君を、あの子はクスって天使の子を使って戦っていた。」
「……え」
身に覚えがありそうな顔だねと言う男性に、確かにとサワアは答える。
「前に、ずっと、ずっとずっと、前に戦ったことがあるんです。」
彼女がまだ、華すら咲かせていない、その日に。
「姉上と一緒に戦っているのを、
あの子は目を輝かせて見ていました。
同時に、少し不安そうな顔もしていたんです。」
傷がついた自分の身体に、とてもじゃないが、酷い顔をしていた。
それ以来、クスはメルの前で戦うことをしなくなったのだ。
「…そっか、天使に固執する意味が漸く分かった。」
「え?」
「なんでもない。ほら都佑?その子達を余り
虐めすぎると君帰った時に酷い目に合うぞ?」
『え゛』
「まぁもう遅いですがね……」
『僕帰りたくないよお!!!!!!』
「だまらっしゃい!!帰ったらとことん説教しますからね!!!!」
『びえ!!!!!』
全くもお!貴方という子は、ってこら!何するんですかという彼に
仕方がないとサワアは元の場所に戻ることにした。
「大丈夫、もう、大丈夫だよ、サワア」
「…え?」
「お兄様すいません、此方に来てもらえると助かります。」
「あ、ああすいません。」
お手柔らかにというサワアにはぁいとメルは言う。
ヘロヘロになって既に寝そうな勢いのコルンに、
ごめんねと笑って答える。
もう彼らの服は綺麗にたたまれ、上は茶色のアウタージャケットを被っていた。
中は白いTシャツで、下のズボンは黒いパンツ、靴はジーンズ系のシューズを。
似たような服で、ウイスはワインレッドのアウタージャケット。
サワアは淡い黄色のアウタージャケット。
メルは何時の間に着替えたのか、黄緑色のアウタージャケットを着ていた。
サワアに軽く黄色い帽子をかぶせ、ツバを後ろにして着せる。
メルもまた、紺色の帽子を被ってにっこにこである。
丁度良く、停車し、メニューを見せてみる。
なんでもいいですよと言われてじゃあとメルが
父親にこれとこれとと頼み、それを店員が聞いてメモをする。
暫くして、食べ物が手渡され、コルンもまた足元に置きなと言われても
メルの方に持ってきたので籠の中に一時的に入れることにした。
どちらにせよ、この籠は使い道もないだろうと判断したのだ。
食事は家に帰ってからと言われ、急がなくてもいいからと言った彼に
メルはそれでもと急いで車から出て、彼等を三人出してじゃと声を掛けた
『またあとでね!』
「ああ、気を付けろよ」
『はあい!!』
そうして、最初に戻るということだ。
大型のスーパーで、くぅと言う音が鳴ってぱっとそっぽを向いたコルンに
お腹空いたねぇとメルは笑っていう。
『調子に乗って沢山買い物しちゃおう。』
「食べれるだけ買うのがベストなのでは?」
『君らの食事量がどれ程か分からんからさ。』
此処は野菜、肉、魚と言って彼らに見せる。
文字が分からないのでこれはと指を指すしかできない。
ぱっとみれば、この4人普通の年の離れた兄弟に見える。
それはメルの策略でもあった。
『(こいつら全員分かっているかしらんが、この世界で似たような形の服装は親密な度合いを示すというもの。)』
もう、二度とない時間。何処にも存在しない時間に今生きているのだ。
これくらい、我儘を思ったっていいと思う。もう、もういらないから。
そう言い聞かせる度に、胸が痛くなって堪らない。
きっと次の時間は、酷い結末に向かっていくことだろう。
それなら、もう、いっそのことこの時間を嚙み締め続けたいと思う。
どうか、どうか、許して。お願いだから。どうか。
『(今だけは、兄弟だと思わせて欲しい)』
その手を、取れない様な結末に向かせる私を、どうか、許して。
そう今まで培ってきた笑顔で彼らの心を騙す。
きつい時間があったからこそ、その隙は大きくなる。
騙され続けて、しまえばいい。
それで私は救われるのだから。
メルはそう思いながら、その足を歩く。
前に前に、ゆっくりと。