かみさまなんていないのよ
『は〜〜〜にしてもどえらい夢を見たな。』
大きな大木の木の下で昼寝をしていたのか
頭に手を置いてゆったりとしていた半裸の人。
色は紫色で、耳が縦に大きくて人ではないのは分かった。
だから目と目が合った時、コレは夢だと思った。
普通の生活をしていて肌が紫色の人なんてコスプレか
何かだと思うしかないからだ。
最近は夢を見ることが少なかった。
それは仕事をしていて、
疲れていたからだと思っていたのだが…
『前は綺麗な草原で、空が桃色だったし…
その前は空が青くて、大木の下、で…あれ』
余り良く想い出せない。
まぁ夢だから良いのだろうけども。
良い筈なのだ、誰しも夢は忘れるもので、
あやふやであいまいになるものだ。
だから前の前なんて想い出せるわけがないもので。
でも、どうしてなのだろうか。
こんなにも、胸が締め付けられる程、痛くなるのは。
ーまた、あえるよ。
『……まぁ、良いか。』
今日も雑務をこなすまでだ。
仕事に行くために支度をし、部屋を出る前に声を掛けた。
『いってきます』
誰もいない部屋で。
誰かの声を脳内に響かせる。
いってらっしゃい、気を付けてね。
名前も顔も全て分からないのに
何処か声だけは、はっきりと再生できた。
その度に安堵し、今日を始められるのだ。
『にしても次はもっと良い夢をみたいものだなあ』
まぁ、夢なのだから操作なんて
幾らでも出来るものだろうが。
++++++++++++
一方その頃、
「……はぁ。人間が?この地に?」
「お前も気付いただろう!?さっき!
僕が!!気持ち良く昼寝をしていた時に!!!」
「ビルス様、悟空さんやベジータさんと
お間違いになられたのではないでしょうか…」
そうジト目で睨む者に断固として譲らない
紫色の猫、もといビルスが駄々をこねる。
「い〜〜や!絶対!!別の!人間だ!!!
僕はこの目で見たんだ。」
「ですがビルス様、幾ら何でも気の察知出来ない人間が、
こんな辺鄙な場所にですよ?
瞬間移動を使ってでも、やってくるなんて在り得ませんよ。」
「ウイス!お前も気配に気づいただろう!?」
「申し訳ございません。私は一切気付いていません。」
そもそもそんな気配があればすぐに対応していますので。
そうきっぱりと明後日の方向をむいて言い切った
ウイスと呼ばれた青年がむきになったように言う。
ましてや地球人以外の人間で肌褐色系の生物が、
それもこんな他の惑星からはるか遠く離れた場所に
急にわいて消えるなんて在り得ない話なのだ。
呆れてため息を吐く。
「うたたねをなされて寝ぼけて
いらっしゃるだけではありませんか?」
「い〜〜〜〜〜や!!絶対!!
此処に!!き!た!ん!だっ!!!!」
大木の下で昼寝をしていたビルスが
ウイスに文句を言いつけていた。
瞬間移動を使うことのできる
種族は限られており、
ヤードラット星人とその能力を習得した
サイヤ人の悟空と呼ばれる者しかいない。
だが、ビルスの証言が正しければ
割とただ事には済まされないことになる。
「でーしたんだ?ビルス様」
「何か問題でもあったんですか」
「いえ、先程から
おかしなことを言われて居ましてねぇ〜
も〜困りましたねぇ〜〜」
「僕は何にもおかしなことを言っていない!!
ただ此処に、僕の前に瞬間移動してきて
そのまま消えたって言っているんだ!!」
「…それは」
「何?ベジータまさか君まで
僕が寝ぼけていると思っているの?」
「いいいいいいいいえいえいえいえ
まっまままさかそのようなことは!!!」
流石に変なことを言ったら
本当に消し去れかねない。
そんな本能を察知した脳が
全力で相手の言ったことを
本当だと言い聞かせ否定を述べまいと、
事実だろうことを遮った。
「でもよ〜ビルス様。そりゃ〜ねぇ〜ぞ?」
「…あ?」
「きっ、貴様何を言っているんだ!!」
「ビルス様その人間と知り合いか?」
「…いや、一瞬だったが、
初めて会った奴だったと思う。」
「だってよ、瞬間移動出来るっつーことは、
気のコントロールが出来る筈だろ?
気を持たねぇ人間が、来たことも無ぇ、
なんなら会ったこともねぇ奴が
こんな星まで瞬間移動できっこねぇぞ。」
悟空の言っていることは確かに正しく正論である。
瞬間移動の大前提として、
肉体を移動させたい場所に移動させる技。
頭の中で集中してその場所を思い浮かばせ、
身体を移動させないと上手くいかなければ
身体がばらばらになり、死んでしまう
とんでもない技なのだ。
あり得るとすればビルスに会ったことがある。
もしくは悟空、ベジータ、ウイスの誰かになるが
仮にビルス以外だとして気配は察知できる上に
本人の目の前に現れる筈だ。
なのでビルスの前に現れたということは
ビルス本人が知っているもしくは
その現れた人物がビルスを知っているということになる。
まぁ、気を知っていることなれば可能性はあるが、
ビルスがそもそもその人間を知らないとなれば、話は別だ。
こんな様々な星から遠い破壊神の住む星に瞬間移動等、
ビルスの気を知っている者くらいしか移動は不可能。
もしくは…
「この土地に暫く住んでいらした
破壊神や神々の者…だと言いたいのですか?」
「そだそだ!」
「ふ〜む、私の知る限りでは、この土地に来られた方の中で
気を全く遣わずに瞬間移動して来られる方は存じ上げませんねぇ…。」
「そんなぁ…」
「悟空さんの言う通りです、ビルス様。
転寝をしていて寝ぼけていらっしゃるだけなのでは…」
「ん〜〜〜〜〜〜そんなことは…
まぁ埒が明かないし、いいかぁ。
ウイス飯だ飯!!」
「かしこまりました。」
そう言ってウイスはビルスにお辞儀をし、
食事を出すまでの間、
悟空とベジータの特訓に付き合ってやると
言ってはしゃぎだしたのを感じ取りつつ、台所に向かう。
「もしも。神々でも無く
ましてや感じ取れない者の
瞬間移動が本当だとするならば…」
それはとんでもない、悪魔のような
恐ろしい者が誕生しているのでは。
そう思ったが、そんなことは在り得ない。
在り得てはいけない。
ビルス様が嗚呼言うのは今に始まったことではない。
サイヤ人ゴッドの件もまた然り。だが、
「嫌な予感がします。…仕方がありませんねぇ、
少々調査をしなければなりませんね。」
そうウイスはため息を吐きつつ
足を進めるのであった。
++++++++++++
この世界に神様なんていやしない。
『うう、何でこうも上手くいかないのかなあ。』
そう思ったのは一体幾つだったか。
もう忘れてしまった。
黒く染めている髪の毛を触りつつ
夜になってしまっている帰り道を歩く。
私はとある製品会社に勤めているしがない会社員だ。
親会社がカプセルコーポレーション
というとんでもない会社だ。
色々訳あってモノづくりをしている時の方が
何も考えなくてすむと分かった途端行動は早かった。
面接したら一発OK、今まで事務しかしていなかったのが
まるで嘘のようにするすると成長もスピードも速く
現在勤めて一年経つ程だが…。
『たかが一年されど一年、
後輩の方がべらぼうに作るのも説明も
上手いんだよなぁ。』
教えるまでもない程の強さに圧倒するしかない。
自分は何をしても遅いと痛感される。
動きが皆早いのだ。
どうしてそう動けるのか私には理解が到底追い付かない。
まぁだからこそ、叱られるのだろうが。
『此処も向いていなければ…
もういっそのこと人から離れる
という手も考えた方がいいのかなぁ。』
事務もダメ、製造関係もダメなら
一体雇ってくれる場所は何処にあるというのか。
何ならやらかす加減は
全て人に関与されるものばかりである。
人付き合いというものが点で駄目な自分が情けない。
かと言って自分で会社を立ち上げる力はない。
自信が無いのだ。
きっと、全ては自信が無いから?
いいや、それは言い訳に過ぎない。
目の前から背けてしまえば力にならない。
『とりあえず夢でも見てしまおう。』
この世界には神様なんていやしない。
だって上手くいかないのだもの。
神様がいたら、上手くいくのだろうか?
この夢の先を見てしまえば、分かることなのだろうか?
それが、とても怖いと思うのは、知る恐怖か。
それとも
『(私は何かを忘れているのか)』
それをこじ開けるのが、恐ろしいのかもしれない。
++++++++++
ふわりと落ちる場所に、目を開けた。
やっときたと、ふわり笑う彼女に、メリアは呼ぶ。
『メル』
「お話を纏めて居た処なんだよ。」
私の知ってる範囲が全くないにせよ、ね。と空を見上げる。
其処には10個もの色が浮遊していたのだ。
その色はメリアの方に向かって飛んできて
驚き逃げようと思ったが、身体が動かず周りを囲まれてしまう。
「大丈夫。何も悪さはしない。」
『っでも…って、これまさか』
「そう、多分ね、私の知ってる記憶達なの。」
全くわからなくて、色しか照らせてないんだ。
そう色と言ってもいいのか分からない淡い色を放つ形を覗き見る。
「これが全部分かったら、貴方みたいに
肉体を持って会話できるかもしれない。」
『私みたいに?』
「そう。とりあえず一つは思い出したいけど…うーん。」
『…ふと思ったんだけどさ、』
「うん?」
『昨日夢で紫色の猫みたいなやつに出会ったんだよ。
ひょっとして、貴方の知り合いじゃないの?』
「…私じゃなくても、この子達の誰かだったら、話は別かもしれない。」
そう周りを見るメルに、ならばとメリアが続けて言う。
『私が貴方の知っていそうな人達に出会えばいい。』
「いや、それはいいけど…死にそうになったりとかしない?」
『あら、貴方はそんな危険な人?』
「そうじゃないとも言い切れないでしょう?」
『少なくとも、私が見てきた中では断トツで良い子だよ。』
「ちょ、なんでダントツになるかなぁ?!?!?!」
私そんないい子じゃないよ?!!?!?
そう焦るメルに、いやいやとメリアは笑っていう。
選んだのならば、私の精神を殺して乗っ取ればいい話であるのに。
貴方と言う人は、私の所に来て、お願いをしにきてくれた。
しかも、これが初めてだと言う始末で。
『大丈夫。とりあえず、昼間とかって会話出来ない?』
「出来なくはないとは思うけど…メリア覚えてるの?」
『頑張って今日は覚えていようと思うの。』
そうやって少しずつ、貴方と会話出来たらいい。
そうしたら、昼間貴方も私を扱えるでしょ?
そういう彼女に、でもとメルは渋る。
ああもうじれったいと言ったメリアに、メルがびくりと反応する。
物凄く臆病なのだろう。身体の反応がキュウリをみた猫である。
『私が良いって言うんだから良いの!貴方選んだ身でしょう!?!?』
「ふぇ、そ、そうだけどもお」
『なら良いの!明日丁度休日だし、友人の所にこの話しても?』
「いいよいいよ。でも私いいのかな。」
『…本当は逆なんだろうけどなぁ〜〜〜〜〜っ。』
私の方がメルの事を渋って、メルは私にいいよ言っちゃってと言うべきだろう。
なのに、臆病なのか、引っ込み思案なのか知らないが、引くに引いてくる。
イライラ等はしないのだが、割とどうしていいか困るんだよ。
『…メル』
「うん?」
『いや、いいや。また昼間ね。』
「えっ!!!!今すぐ!??!?!?」
当たり前でしょ。そういってふわりと身体が浮かぶ感覚が続く。
嗚呼、これは意識が戻る感覚なのだと、理解したのは早かった。
『じゃあまた!!!』
そういって、メリアは消えて居なくなった。