星の数を数えながら






















ううんと背伸びをして横になる。
うーしやるかぁと声が上がった。




此処はとある星のとある場所。



空は夜空が広がり、地面は草原が広がっている。


時が止まって、全てが繋がっている場所。



其処にメルは生きて居た。


そう、その身体に、魂が二ついや、身体も二つ。

「はぁ〜お前本当に大丈夫なのか?」
『リサ!!!』

綺麗な白い時間を灯したあと、メルは目覚めた。
身体は肌色で、人間の姿。
金色の髪色に、目は緑色の姿をした、その存在に。

暫くしてから、リサと呼ばれた者が力をつけ、メルを魂ごと放したのだ。
肉体は借りだが、我ながらよくやったと自慢げにしている。

メルの姿は驚くほどに、前の状態を維持していた。
紺色の髪色に、黄緑色の目を灯して。

ただ、

『そう?でも私、別に大丈夫だよ!!』
「…はぁ、記憶が飛んでいてもか?」

うぐっと言ってバケツを落とし、
いだいと飛び跳ねるメルを見てため息を吐くリサ。
近くに咲いていたヨモギを千切って
彼女の痛みを他の薬草と練って足に巻く。

ありがとうと笑う彼女に、
どういたしましてと答えるしかない。

突如として自分の体の中に生まれた魂。
その子は全く自分のことが分からないという。
身体を使って動いたりもしなくもなかったが、
流石に長い間それをされると困るというもの。

リサは代々依り代を作るのが得意な家系の者で、
人型を一から作るのもまた、出来る者であった。

メルの想像通りにしたら、こんな形だというも、
へぇふぅんしか言わない。
確かに存在しているようにもみえなくもないが、
今は時ではない、とも見えるその形。

まぁいいと思い、片足で跳ぶ彼女を横目に先を歩く。

此処は惑星ハイマット

熱帯雨林のようで、滅茶苦茶、気候は日本である。
神話に在りそうな見たことあるようでないような、地形と植物がある。
海は全体の6割で、兎に角地球に近く、地球よりも1.5倍程の大きさ。
言語違い、月や時間の流れも同じなのは、言うまでもないのだが。

それはあくまでも、メルが元の知恵をふり絞れば出る情報。
リサもメルも、その地球やら日本やら、
ましてや華樹の記憶等知る由もなかったのだ。

ま、もっとも、メルに至っては
願いが原因で忘れて居るだけではあるのだが。

「ほら、其処に座ってなさい。」
『はぁ〜〜〜い』
「まったくも〜近々うちの友人も来てくれるっていうのに。」
『友人?リサ友人なんていだ』
「エシュメル??????」
『ははっはは』

エシュメル。略してメル。それが私の名前。
リサ曰く、古代の言語と今の言語をごちゃませにしたんだとか。

エンドロールという言葉と、
アプシュパルという言葉を足して割ったものらしい。
何方も同じ意味で、物語が終わった後に書かれるというのだが…
何故両方にしてやったのかは、私も分からない。

「全くもう…」
『へへへ』

此処は小屋みたいな場所。

外は綺麗な緑が生い茂っている中に、
小さな山小屋みたいな家がある。
此処で私は彼女と二人で息をしている。

『でも下に人っていなかったんじゃ』
「嗚呼、旅から帰って来て暫くしてまた出るとかで帰って来るのよ。」
『へ〜〜〜!!!』
「手紙を出していて、帰ってちょっとしたら来ていいよって来たんでね。」

何時ぐらいに帰って来るのと聞くメルに対し、
リサはえーっとと手紙の内容を読む。
どうやら出した月日から逆算しても、
明日か明後日程にはもう到着するだろうとのこと。

『たのしみだなあ〜〜〜〜ねぇ、その人ってどんな人!?!?』
「え?ええ〜〜〜どうっていわれてもなぁ。
迷子になりつつ帰って来るから、なんとも。」
『え゛大丈夫なのその子。』
「旅は好きらしいんだけど、
迷子なのわかってるのか分かっていないのか。
かなりの時間を逆算して帰って来るんだからねぇ……」

そもそも一度旅に出ると割と数年単位で帰って来ない人らしい。
此処の人達の寿命とはいったい……

「まぁ名前はまぁあれだあれ」
『…まさか忘れたとか』

ないないと笑う彼女だが、その話の流れだと、恐らく忘れたのであろう。
人のこと言えないじゃないというメルの後に、チンと音が鳴る。
どうやら痛みは退いたらしい。

この子の力なのかなんなのか、
此処では薬草をある程度取って混ぜて
痛みや身体の不調が無くなればチンと音がなるのだ。

え?電子レンジじゃないんだからって?なんだそれは。

「ま、エシュメルもきっとあの子とは仲良くなれる気がするわ。」

なんなら長い付き合いになりそうな予感がするんだが
気のせいだろうかと悪寒を感じる彼女にケラケラと笑うメル。

ないないそんなの在り得ない!
世界がひっくり返っても宇宙が創られたって。

そうフラグをどんどん立てている彼女の予感は、
確実に的中することを、この時のメルは知らない。

なんならそれは彼女の友人ではなく、
リサ本人も長いその時間に巻き込まれようとは、
この時本人すらも知らない話だったのだった。

++++++++++


里というか、村と自分達の中腹に位置する彼女の家。
其処に今日はお邪魔することになっていた。

リサは金色の髪を軽く一つに束ねた後、
白いブラウスに袖を通し、金のボタンを付けてから
深い緑のディアンドルに身体を通す。

ディアンドルとは、主に前開きで襟ぐりの深く短い
袖なしの胴衣衣装だ。襟を深くきったようなブラウスから
踝までを覆うスカート、エプロンが伝統的ではあるが、
この地域では少し伝統的なディアンドルとは少々違う。

何方かと言えばエプロンドレスと
ディアンドルを足して割ったみたいなものだと
思えばいいだろうか。

袖は二の腕半分上くらいで締められており、
其処にも胸の前にある金色のボタンが一つ付けれていた。

淡い黄緑色のエプロンを軽く腰元で回し、
後ろで紐が垂れない様にしてからよしと声を掛けた。


「じゃあメルって…着れてる?それ」
『ふぇええ』

もたもたとするメルに、仕方がないと
リサはため息交じりに彼女に服を着せる。
左右の袖にあるボタンを外してから袖を通させる。

「ほら可愛い!」
『わ〜〜〜!!!!ありがとうリサ〜〜!!!』

メルは紺色の髪の毛に合わせ、白いブラウスに、
淡い紺色のエプロンを深い紺色のディアンドルと
ブラウスを巻き込むように後ろで括り付けてもらい
そのままリサにリボンを作って貰っていたのだ。

ブラウス自体はリサと同じく、
白いブラウスの胸元には左右に襟が少し広く伸ばされ、
その中央下に続いて、金色のボタンが二つ、三つ。

袖はベル状に広がりつつも、二の腕辺りできゅっと
金のボタンで軽く締め上げられていた。

膝下、弁慶の泣き所近くまである
そのふわりとしたドレスの裾部分は
レースなどはなくも、二つ金色の線が横に引かれている。

リボンの先も、心なしか線が引かれていたのをみた。

くるくる回れば空気が中に入ってふんわりと広がるのが
気に入ったのかメルがわぁわぁ嬉しそうにくるくる回る。

「気に入ってもらえてよかったよかった。
流石に裸で外に出すわけにはいかないからね!」
『リサ割とビビってたよね私がどんどん外で裸で歩いてるの。』

そりゃあアレみたら襲ってと言わんばかりと言うか逆に困惑するわよ。
そういうリサは、メルが服を着ずに何処かれ何かれ歩くのを見かね、
コンコンと肌着の説明をし、メルの好きな材質に合わせて
一着外用の着物を見繕ってあげたのだ。

腰元の上には、同じ様に金色のボタンが2つほど左右にくっついているが
これはあくまでも飾りであり、ディアンドルにくっつけているだけのもの。

ぴろぴろと言いながら触るメルにやめなさいと手を取られ、ぶーたれられる。

「ほら、鞄をちゃんと持つ。」
『これは?』
「一応簡易だけど道先で使えそうな鞄。」

貴方が一応持っててと言われて、
メルは肩掛けの茶色い鞄を肩にかけられてから走り出す。
リサが歩いて行った、その後を。

ずっとずっと、追いかけるのだった。





暫くして、大体20分程だろうか、見えたという声にメルも身体を横に出した。
誰かの顔が見えて、おーいという声にメルは首を傾げつつも彼女の後を追いかけた。


「久しぶりじゃないって、あら?その子は?」
「紹介する。エシュメルだ。」
『え、えしゅ、めるえう』
「っくくく、見ての通り迷い子で保護をしているんだ。記憶はない。」
「そう…私の名前はアルトリア!」
『ある、とり、あ?』
「ええ」

ジジと、黒髪の女性が野原の上でクスリと笑っているのが見えた。

『野原の、うえ?』
「あ?」
「……!!!!…きっと誰かの見間違えね。」
『え?』
「気にしないで。それよりも中に入って頂戴!」

可愛い衣装〜〜〜と笑ってきゃっきゃとする彼女がメルの周りをくるくる回る廻る。
目が回りだしたメルに、其処までにしてやれとリサが言う。

「え〜こんな可愛い子を手紙にすら書かないだなんて〜〜〜悪い子ね〜〜〜????」
『あうあうあうあうあ〜〜〜〜〜』
「明らか困るだろうからってもう困っているだろうから言わずもがなか。」

リサは部屋に入り、椅子に跨ってメルの姿を見るアルトリアの姿を見ていた。
数日前に帰って来ていたのだろう。
着ていた服は旅に出る前に見ていた物よりも新調されていたのだ。

メルらと同じような衣装ではあるが、下にズボンを履いている
彼女はもう旅に行く気満々だろう。

「まったく、出てすぐにまた行くのか?」
「ええ、少々ね?なが〜〜〜い、旅をしようと思っていて。
そうだ、リサどうせなら一緒について行かない?!」
「嗚呼そうするつもりだ」
「ああそうよねいくわけ…ん!?!?!?」
「エシュメルの件もある。何処で迷子になったのかも、調べたいからな。」

そう椅子から離れた彼女に、似たような鞄はあるかと言われて
アレを出すときねとアルトリアは思いついたものを
探しに待っていてと言って部屋の奥にと消えていった。

「あいつはこの世界どこかしこも旅をしているが、
その地名やら場所は一切知らない。」
『それ旅になっているんだろうか』
「っはははは!!!そうだな!!!」
「ううううよいしょおおお」
『うえ!?!?!?』

そう言いながら机に置いたのは幾つかの物が入った箱。
直径50pほどのそこそこ大きい箱を持ってきたのに、
軽いから大丈夫と言って笑う彼女が、皿を浮遊させて移動させつつ
中に入っている者達をどんどんと出していく。

「えっと〜これかな?」

取り出したのは、リサが持っていた鞄とほぼ瓜二つの肩掛け茶色鞄。
お古というか、一緒に作っていて今回の旅に持っていかなかったのだとか。
自分の鞄はあるからと言って、どうせならと花のパッチを鞄の前側に刺してもらえた。

その綺麗な白と黄色のお花に綺麗と言うメルにクツクツと笑う。

「これのお花名前知っている?」
『ううん』
「…そう。」

それでいいと頭を撫でるアルトリアに、メルは首を傾げた。

「この名前を知っている人に、何時か出会えるといいわね。」
『この、お花の?』
「うん。」
「…お前何か知っているのか?」
「いいや、何となく。」

でも、確実に。そう言ってオレンジ色の目が細まる彼女に、
リサは少し考えた後まあいいかと答えた。

「どうせなら今から行こうと思っていたんだが、どうだ?」
「いいわね、丁度出来ればそうしたかったところなの。」
『いやでも此処留守になるんじゃ』
「嗚呼大丈夫。」

外に出て指を鳴らすアルトリア。
ブンと半円が出てきてその場は綺麗に何もないように包み込んで消えた。
それどころか、樹木が生い茂り、道に変わってしまったではないか。

『ひええええええええええええ』
「こうやって場所を隠して保管することが出来るの。リサもしてきたんじゃないの?」
「いいや。アレはあのままがいいからな。」
「…そう。なら先を急ぎましょう。」

そう言って彼女らが歩き出すのに、メルも足を歩こうとした時だった。
ふと気になって後ろを振り返った。

『だれ?』
「……おや、流石に気付かれてしまいましたか。」

そう言って木々から出てきたのは。

「っ!!!!」
『わあ!!白い子!こんにちわ!!!』
「ふふ、こんにちわ。皆さん此方の方で暮らしている方で合っていますか?」
「…ええ、あっています。」
『ん?どうしたの?リサあ』

下がれと言わんばかりに、リサがメルの前に出て腕でメルが前に行かない様にとめた。


「おやおや、警戒されてしまいましたか。」
「此処は変な奴が出ると私達何方かに音が鳴る様に指示をしている。」
「…なのにソレをかいくぐって来たということは、貴方、ただ者じゃないわね?」
「……」
『じゃあくせもの?』
「「だあああああっ!!!!!」」

そう素っ頓狂な声で言い出したメルに、
緊張していた糸をぶった切られたかのように
二人そろって左右に手を前に出して倒れた。

「ちょっとエシュメル?!!?変なことを言わないでよ!!!!」
「折角相手が何か言い出しそうになってたっていうのに!!!!」
『あえ?????』
「…成程、そういうことでしたか。」

これは少々先を急ぎ過ぎましたねと言う彼に、メルはねぇと声を掛けた。

『私、何処かで、貴方に会ったことある?』
「…!さ、どうでしょうか?」
『じゃあ、私にお願い事が、あるとか?』
「……っ、なぜ、そうお思いになったか、お聞かせ願っても?」

少し驚いていた彼が、メルの言った次の返しで目を見開いて驚いたのだ。
色々訳アリだと思ったリサが、緊張を少し解く。

『リサ達のこともし知ってるならリサ達に何か言うだろうし…
でも知らないからと言って、言いたいことがあったけど
リサ達に気付かれたくないしって迷ってたのかなって。』
「まよ…っくくくくっはははは」
「…なんか凄い人を笑わせてる気がするんだけど、ねぇ気のせい?」
「ううん多分その勘ってあってると思う。」

ねぇアレ誰?いやわかんない。誰だろ。
そう言う彼女に、おや?と彼が言う。

「貴方、私の事を知らないのですか?」
「へ????あ、ああ、はい。いや本当にどなたでしょう???」
「…左様ですか。なら貴方方三人にお願いが。」

後ろに手を持っていった彼がニコリと微笑みながら紫色の目で見つめる。

「私の息子たちが貴方の元に来ると思いますが、
どうか会っても攻撃をしてあげないで頂けると助かります。」
「そ、それだけ?」

ええ、それだけです。

「あわよくば、その旅にご同行願うことを、
どうか許してあげてください。」
「…別に、その時々で変わるから良いけど。」
「ありがとうございます。それでは」
『あの!!!』
「なにか?」

そうリサの住む方に踵を返そうとした彼に指を二つ立てた。

『ふたつ、きいても?』
「…いいでしょう。なんですか?」
『貴方のお名前、聞いてなくて、その。』
「…!……スピス」
『すぴす?』
「ええ、貴方なら、その言葉を。」

お二人には大神官とでもお伝えしておきましょう。
それだけで彼等はきっと分かるはずですという彼に
分かりましたとリサは答えた。

きっとメルだけ、その名前を呼ぶ権利がある者なのだろうと
リサはすぐに悟ったのだ。その想いを知り、お願いしますと
軽く大神官はお辞儀をした。

「ではもう一つ」
『…この、おはなしってる?』
「あっこらメル!!」
「……それは」

敵かも分からないのに、誰かも知らないのに。
名前を言っただけでも、何にも知らずにトテトテと音を立てて
大神官スピスの前にしゃがみ鞄についていた花を見せた。

『リサがね?あれアルトリアかなあ、どっちかがね
このお花を知っている人を探してごらんって。』

何時か会えるからって言ってくれてという彼女の言葉に
ぱっと大神官が彼女らの方を向いた。

それに、リサは首を振るも、アルトリアが親指と中指を
くっつけるくらいにまで近づけて止めたあと、
そっと人差し指を立ててウインクをしたのだ。

それに気付いた大神官は、いいえとメルに言う。

「私はその華の名を、知りません。」
『…そっ、か』
「でも」
『ん?』
「私の子供達ならば、一人、知っている人がいま」
『ほんと?!?!!?』

ねぇだれと掴みかかったメルに、
大神官は少しどころか驚いたが、
直ぐにその体制を整え直す。

「私からは言えません。」
『ええ〜〜〜〜お名前知っていたら、
その人って分かればよかったのに。』
「…きっと、分かりますよ。」

貴方なら。貴方という、その心をお持ちならば。
そういう彼に、メルはこてんと首を倒した。

「くすっ、では、また、いつか。」

そう言って彼は綺麗に緑の中に消えていったのだった。


まるで、最初からそこに居なかったかのように。