君は息を引き取った
「一体どういうことですか…」
「そのままの意味ですよ。」
メルさんは暫くの間、様子見することに決めました。
そういったのは、急に集められた大神官の居る場所。
そこは、メルがすやりと眠っている、華樹のある中央だった。
下をみれば、すやすやと未だ呼吸をしながら
寝ている彼女の姿を少しだけ見る。
「現在メルさんは第12宇宙にある
惑星ハイマットにて12番目の廻廊を回し始めました。」
「っなんと!!!!!」
「…すいません、気付かずに。」
そう頭を下げる第12宇宙の面々に無理もないと言ったのは
大神官の後ろから出てきた者。
「シアージュ様…!!」
「華樹のそれもかなりの力を凝縮した者だ。
綺麗に仕舞い込めるあいつの力なんぞ、
損じゃそこらの下界の人間は愚か、
神々ですら察知するのは至難の業であろうからな。」
「お目覚めでしたか。」
「すいません、会議中に無礼をお許しください。」
ぺこりと頭を下げて入ってきたのは、天使であったフィズだ。
「もう完全体に近い状態な上に肉体もこの世界にある。
離れれば離れた分は中身が見えやすいだろうが、
此処まで近いともう見つけた方が奇跡なレベルだ。」
「そんな…」
「大神官様ならすぐに見つけると思いましたが…」
「いえいえ、私ですら苦労しましたからねえ」
そりゃ無理な話である。
大神官曰く、本当にたまったま偶然ルトラールと話をしていた間に
向こう側の神々と会話をし、一つの魂が肉体がそちらに戻ったとの
連絡を受けてのことで、気を探していた時に見つけたというものだ。
「メルさんだけならまだしも、彼女も居るとなればついでなのでね。」
「その、彼女とやらは一体どのような方で…」
「サワアさんやクスさんは知っていますよね?」
【原初の華神】
その言葉に二人の身体がゾクリと反応して軽く震えたのに、破壊神らが少し首を傾げた。
「そのうちの一人であり、最初に作られた、いえ選ばれたとでも言いましょうか?」
あの中で唯一「不完全」と呼ばれた者。
「アルトリアさんが、メルさんの傍にいるのですから。」
そう大神官の頭の上に、彼らが見えるようにその姿を映し出す。
何を話しているかは皆無ではあるも、
皆が目を丸めて唖然と口を開けてとまる。
オレンジ色の髪色を一つに纏めた女性が
オレンジ色の髪色を左右に纏め、黒いリボンを付けた処から
一周するかのように、三つ編みのリングを左右に揺らせて歩く女性。
そしてその間に、
「っ、め、る…?」
紺色の髪色をした、黄緑色の目を灯した女性が、
あわあわと困惑したままその二人の間の
気持ち後ろから歩いていたのが見えたのだ。
「まぁ、そのアルトリアさんも少々記憶が欠落されているご様子。
幾つかは覚えていそうですが、私の名前すら思い出せていなかったのでね。」
「では…彼女らをどうするおつもりで。」
「貴方方も会いたいでしょうし、是非とも会って来てもらえれば。」
いい!?!?!
なんなら、その旅にご同行願いたい。
そういう彼に、各々は頭を下げてははっと声を出した。
「一応三人には私の子供達が会いに行くとお伝えしています。
あと、一つ、少々お願いが。」
「お願い?」
「どうやらアルトリアさんがメルさんに
ヒントを差し出してしまわれたようでしてね。」
そう言う彼の先には、メルがちらちらと
鞄についている花に触れて笑う姿が見えた。
「あの花を教えるのは、一人だけで、とお伝えしています。」
頼みますよ、という大神官の目線の先に、一人の天使が移る。
「サワアさん」
「…分かりました。」
「ですが一斉に行けば彼女達も戸惑うのでは?」
「三人も、特に二人現地民がいれば、
目的地なんてすぐに辿り着くでしょう?」
「あっいやそれは…」
「嗚呼、それには問題ありません。」
クスが言おうとしてすぐに止めて
首を横にふるったのを見て、クスリと大神官は微笑んだ。
「アルトリアさんは天使において可愛らしいお人でしたので。」
「は、はあ……」
「では、皆さん頼みましたよ?」
くれぐれも、彼女の邪魔を、しないように。
そう言う彼は、全王宮の方へと戻っていったのをみてから、
そっと神々が身体を起こし上げる。
「いやにしても、驚くほどに形保っていますよね、これ」
「恐らくハイマットの原住民特有の力でしょうね。」
そう言ったのはクスの言葉。確かあの人達も使えたというのだ。
「魂が知るその最初の形を保ち、
肉体を綺麗に移し替える
依り代を作る者達がいたと聞いた覚えがあります。」
「…そんな、ですがこの星は何処にも」
「マティーヌさんが知らなくても当然のこと。
貴方はその当時生きていませんでしたし。」
なんなら、この星々、メルが歩いている全ての星々は
「我々が司る全ての宇宙に、本来存在しえない星々なのですから。」
「そ、そんな、ではなぜ」
「それを話し出すと少々長くなりますので、ねえ?」
「ええ、色々ありましてその惑星に出たのでしょうというか」
そうするしか、場所が無かったというもので。
「…本当に、会いに、行っても、いいんでしょうか」
「…大神官様のご命令とあらば、行かねばなりません。」
誰かの言葉に、サワアは答えてその目に姿を映す。
「あの子もきっと、我々に会いたがっていることでしょうし。」
「…絶対逆だと思いますがねぇ〜〜〜」
「おや、なら試してみます?」
「ん?何がです。」
「コルンさん、貴方が一番最初に。」
そう言ったサワアに、少々時間を空けて
正気で????と眉間にしわを寄せて兄上に対して言う。
「ええ!」
「ええじゃないですが!!!!
それこそあな、たが……いや、
貴方は寧ろ最後がお似合いかと。」
「ん?」
「そうですね、それなら我々も楽出来るという者ですし。」
「墓穴を掘ったというべきか、美味しい所を貰えたというべきか。」
そう後ろでヘレスが頭を軽く押さえてやれやれと首を横に振っている。
「本当ならば我々も最初は行きたくないのですが……」
仕方がありませんねえと言ったコルンがリキールらを呼びつける。
「では我々はこれにて。」
そう言って綺麗に消えた彼等に、ちらりと上に見えた光を見て言う。
「…いってらっしゃい」
そして、おかえりなさいと、言える日が。もうすぐ、くるのだろう。
そう、瞬きの間に。
++++++++++
そう、一方その映像を見せられているとは
思わなかった者達はというとだな。
「ここが私達の居る場所ね?」
この世界の、この星の地図をリサが見せてくれていたのだ。
へぇーと言いながらメルはしゃがんで大きな地図を見て驚く。
『へぇ〜〜〜これが…』
「ここが私達の今住んでいる場所。こっちが里のアンペル。」
『こっちは?』
地図では正面から見て、現在の位置は意外と東側に位置していることが判明した。
地球の地図とそう変わらない場所に、意外だなと思った。
ん?
『あれ?』
「どうした?」
『いや、なんで地球ってサラッと変な単語が…』
「…こっちは北ね、ラヴィーネっていうの。南はカリエンテ。東はアトラス。」
『西は?』
「…危険区域。アレアアイテル。」
此処はかなりの魔物が巣を作っているわと答える。
地図にも危険という赤い字で書かれていそうなのが見えるところ、どうやら本当なのだろう。
こくりと頷き、近寄らないようにすることを誓う。
「アトラスは比較的安全よ。カリエンテも。」
『北は?』
「あまり正気とは思えないわ…ラヴィーネのほうには。」
『どういうこと?まさか戦争とかそんな感じ?』
「ま、近いわね。あまり里に出た時、そうおいそれと話をしないほうがいいよ。」
そういって地図にペンを置いて話は此処までと言わんばかりに止める。
「おっと、そろそろね」
音に気付いたアルトリアが走って行った。
そこは、一時的に休憩を取って、食事をとろうとしていた時だ。
どうやら食事が出来そうな感じで、
いい匂いと言っているのが見えたのを、地図に向けた。
『…(ラヴィーネ、か)』
恐らく次の道としては北に向かったほうがいいだろう。
あの感じからして、元々私が出たところも北側に位置していた。
マギーネというのも、神様だというのも、
ひょっとしたらひょっとするかもしれない。
まぁ秘宝とか金銀財宝とか眠っているかもしれないが、
『生きている神様が、眠る場所』
なぁんて、そんなおとぎ話が存在してたまるかってもんだ。
『…そんなこと、あるわけないか。』
それなら先程神様を名乗ってそうな神聖そうな人が
話しに来ていたのもなんか、納得いく気がする。
ご飯よと言われて、リサと共に彼女の元に駆け寄った。
「へ〜じゃあエシュメルは今までの記憶ないんだ。」
『うん、正直自分の名前が本当にそれなのかもわからない。』
かちゃりとスープを飲んでいたスプーンを下す。
ごうごうと焚火が音を立てる音が続く。
「…そっか、ごめん。あまり聞かれるもんじゃないよね。」
『いや、いいよ。アルトもなんか、ごめん。』
「いいよ、そっかなるほど…だからか。わかった。」
そういって席を外す彼女に座っててと言われたので
座って待っていた時だった。
「怖いか?」
『え?』
「ぽつんと一つになるそれは、怖いって言うんだよ。」
『リサ?』
「んー?」
『リサも怖い?』
「え?」
『だって、何もない。』
何にもないのは、怖いんじゃないの?
そう黄緑色の目が、炎に染まるのを見て、いいやと答える。
「大丈夫、君が、此処に居るから。」
『…ん。』
「はいはい、のろけはあっちでやったやった」
「お前なぁ……」
『あう????』
「はぁ〜〜可愛い可愛いエシュメルがこんな野蛮な奴に取られるとは」
「いや、お前も似たような髪色してるの分かってるのか…???」
意外も意外、メルは旅に出る前、姉妹かと聞いていたが、お二人とも全く違う処かららしい。
目の色も近いので、と思っていたが、本当に違うと言われてそうと答えた後だった。
「だってアルトって呼んでくれる可愛い子よ〜〜〜???
私が思ったお願いちゃんと聞いてくれる健気な子の後ろなんて
連れて行かせる訳がないじゃないの〜〜〜〜。」
「ぬぬぬぬぬ」
『あの、アルト?リサ凄く怒ってる気がするんだけど…』
「あれは怒ってないっていうのよ♡」
「煩い!間違えた感情を教えるんじゃない!!!」
教育に悪いだろうがそういうリサにいいじゃないのと喧嘩する二人。
それに、少し、怖くなったメルがばっと逃げ出した。
あちょっとと二人が手を伸ばすも、彼女は予想以上に早い。
「待って待って待って待って」
「なんだ」
「むこう崖なの!!!」
「っなに!?!?!メル駄目だ!!!!そっちは」
そう言うのも、遅いのか、ばっと振りかえった時は、
身体がふわりと下に下がる感覚がメルに伝わる。
「っメル!!!!」
「駄目!貴方も巻き添えになるわ!!」
「っだが!!!!」
似たような髪色に、手を伸ばす。それが、似たような黒髪にも見えて。
嗚呼、その手が姿が伸ばせればよかったのに。
「そうやって、その願いすらも伸ばさずに落とすつもりですか?」
『え?』
「全く、貴方というお方は……」
そうメルの腕を掴んだあと、すっと抱きかかえたまま空を飛ぶ彼に、
『てん、し、さん?』
「…っ!!!」
『えと』
ふわりとリサらの前におりると、メルという声に飛びかかる二人。
ごめん、ごめんよという二人に、先程の感覚がジワリと胸に広がり
目からポロポロと涙を零しだした。
「落ち着きましたか?」
『ぐずっ』
「そうですか。」
「すいません、本当に。」
食事中というのもあって、
リサらはメルの救世主である彼等に
ご馳走とまではいかずともお礼として料理を振る舞っていた。
メルは怖い感情に染まって身体が上手く動かせずに縮こまってしまい、
そのまま助けた彼の身体にしがみついていたのだ。
「いえいえ、これしき構いませんよ。」
「それにしても我々も食事を共にしてよかったのでしょうか?」
「別に構わんだろ。あいつが助けたんだし。」
「…これ!!!余り彼女らの食事を奪わないで頂けますか!!」
「そのまえに、その声何とかした方が良いんじゃないか?」
「は?」
下を向くと、驚いたメルがぼろっと涙を流しだしたではないか。
それにはコルンも顔を青ざめた。
「あ、ちょっ、ち、違いますよ!?!?!
あ、ああ、あなたにいったのでは!!!!」
「っくくくく」
「…ひょっとして、大神官様って人の、息子さん?」
そう言ったのは、アルトリアだ。
それにいかにもとコルンは答えた。
メルはそっと身体を下したそうにしたので下に降ろしつつ答える。
「私はコルンと申します。あちらはリキール様、そしてあちらの方はイル様。」
「よろしくな」
「よろしくお願いします。」
「リサだ。こっちは幼馴染のアルトリア。」
「よろしくお願いいたします。」
「んで、此処で半泣きになっているのが迷子のエシュメル。」
「エシュメル?」
そう言ったのはリキールだ。
お前って言った次の言葉を出さない様に
コルンはぱっと彼の元に飛び口を塞いだ。
「アタシ達はこいつの事をメルって呼んでいる。」
『その、こ、るん、さんっていうんでしたっけ?』
「ええ、私がコルンですが、何か?」
『たすけてくれて、ありがとうございました』
ぺこりとお辞儀をするメルに、いえいえとコルンは答える。
「あまり前を見ずに逃げ出さないようにするんですよ?」
『はい!』
「へ〜〜〜〜あのコルンがねぇ〜〜〜〜????」
「……なんです???」
「いや?やけに優しいなっだ」
「余計なことは慎んで頂くようにお願いします。」
『あ!あの、その助けて貰えて嬉しいんですがその』
そう言ってメルはガサガサと自分の持っていた鞄を持ってきてコルンに見せつける。
『こ、これの、おはな、なまえしりませんか…?』
「!!!………いえ、私は知りません。」
「お前達もか?」
「嗚呼、しらない。」
「見たことありませんねぇ」
そう言う彼らにそうかとリサは何かを察して言う。
「残念だったな。」
『…うん。』
「…ま、何時か見つかるよ。ねぇコルンさん」
「なんです?」
「貴方ご兄弟って何人いるんですか?あの感じからして、軽く3、4人って思っていたのですが。」
「…これは言っていいんでしょうか?」
「いいんじゃないか?」
コルンは少し顎に手を付けて考え、リキールの方を向いて聞く。
それに大丈夫だろうとうんうん縦に頷いたのを見て、コルンは答えた。
「私を含めて12人います」
「「『じゅっ、じゅうにぃ!?!??!!』」」
「ええ、ちなみに私は次男です。」
「更に上が、ひえぇ」
「あの、一番年齢的に年上の人は男ですか女ですか」
「…女性と言っておきましょう。」
「もっといたりして…」
『いやでも流石に二人だけでしょ。』
「え?」
え?とメルは続けて言う。
『だって長女と長男だけでしょ?上』
「……!!!!!」
『え?あ、あれ?違いました?ん?と言うか私なんで……』
「っくくく」
急に笑い出したコルンに、メルはびくりと反応した。
「いえ、す、すいません。」
「…本当に何か変なのくったんじぐう」
「ええ、合っていますよ。
それ以上は私から差し控えせて頂きたいですが。」
「…成程、こりゃ壮大な旅になりそうだ。」
「あと11人に会えってことかな?」
「それにしても、お三方は一体何方に向かわれていたんですか?」
嗚呼と言ったのはアルトリアだ。
「ラヴィーネっていう場所の道中にある街「ミトス」ってところに。」
「わかりました、一緒にご同行しても?」
「勿論構わない。寧ろそれでいいのかってくらいでな。」
「いえいえ」
「お嬢さん方三人なんて歩いてたらひとたまりもないだろうて。」
「私は大丈夫だがねぇ?」
『???』
こてんとメルはしゃがみこんで首を傾げてリサを見上げる。
指を指してこいつが狼に喰われたらたまったもんじゃねぇというのだ。
『狼さん?私食べても美味しくないのに?』
「確かにこれは駄目だな」
「ええ駄目ですね」
『え?え?え?え?え?』
「お二人とも…怒られても知りませんよ?」
「ほ〜〜〜????」
『ねぇねぇ皆して何話してるの?!!?!?』
立ち上がってぴょんぴょん飛ぶメルにいやぁ?とリサが明後日の方向を向く。
いやにしてもとちらりと見た。
「お前ら二人姉妹か何かか?」
++++++++++
何でぶたれたんだなんで。
そうリキールは思いつつもごめんごめんと謝るのは
アルトリアでリサは不貞腐れているまま、先を歩いていた。
『…?』
「ん?メルどうかしたの?」
『…いや、なんか、その。』
振り返っても誰も居ない。
なのに、こうして歩いているのはとても、いや、おかしいのだ。
「誰かいた?」
『…ううん、きっと、いないよ。』
「…エシュメル」
『先に行こう?』
呼ばれてもいない、誰もいやしない。
なのに、何故かその胸が痛みを知り始める。
彼の、輪を見れば背中を見れば、
尚更痛むから、前を歩いていたのに、
危ないから後ろへと言われて見つめる。
似たような姿を見た。似たような人を知っている。
なのに想い出せない。この感情を知っているのに。
気付きたくないの、知りたくないの?
『(違う、これは、痛いとかじゃない)』
空いた穴を、知ってしまった、罪悪感だ。
『(あと、11人に会ったら、私は彼らの事を想い出すのだろうか?)』
そうしたら、彼等は笑ってくれるのだろうか。
肌に身体に触れていた時、似たような感情を覚えている。
なのに、知っている会っているハズなのに、分からない。
まだ駄目、そう言われている気がする。
ー甘いカクテルに、酔いしれて
『え?』
「今度は何です?」
『ええ、ああ、いや?ううん?』
声は聞こえたんだけどという、
メルに、コルンが足を止め、なんとと聞く。
『へ?』
「何と聞こえたんですか?」
『ええと……甘いカクテルに、酔いしれてって』
「…」
『コルン、さん?』
「いえ、先を行きましょう。此方で在っているんですよね?」
「一応は」
「いっいちおうって貴方ねぇ!!」
「あのー」
今度は何だというリキールに、イルがひぃっと声を上げる。
「此処の夜って何か出たりしますか?その魔物とか」
「え?あ、あ〜〜〜〜〜」
「出ますね。滅茶苦茶出ますね。」
「それって、夕方とかからも?」
「ええ、銀色の狼みたいな奴ですが、
お花とか匂いにつられてきたりしますよ?」
「あの、それって、アレみたいな感じです?」
あれ?とコルンの前を向いた各々に、ぎょっとする。
『あにゃ〜〜〜〜〜〜』
「っメル様?!!??!!?!?」
「ばっあいつさっき後ろに!!!」
「さらっと取られたのみえはしたんですが、すいません。」
こういう大事なことはと言ってリキールが飛び出す。
『わわ!!』
「った!!!嗚呼、あいつを盾にしてくるなぁ!!!」
『…狼さん、このお花は駄目だよ。』
「っメル」
『私の大事な人のお花なの!!!』
奪うなら、取ってしまうなら、そう言うメルの目に身体に力が宿り始める。
『おすわりして!!!!』
そう叫んだメルの言葉に、地面からツタが生えて
狼がズンと伏せの形に座らされたではないか。
『……はっ!!!!』
嗚呼ごめん狼さん痛かったでしょおおおおお
そう喰われかけていたというのに、
ボロボロ泣きながら鼻元に駆け寄って行ったメル。
「っな、あ、あれは」
「…全く、無意識下で使うとは、本当に目が放せない人ですね。」
「絶対見ておけって言う処だろうな。」
そんな狼に喰われかけたのもつかの間。
メル達は無事に
「辿り着かなくてすいまぜんでしたあああああ!!!!!!」
「いえいえ、そんな頭を下げずとも……」
「確かに、大体距離にして13qですか。」
「ふぐっ!!!!!!」
寄り道もかなりしましたし、仕方がないでしょうと、いいますか……
「メル様!!!その子をいい加減元の所において差し上げなさい!!!」
『ええ〜〜〜だってえ、狼さん良い子なったし…』
「よくありません!!!」
「ううううう」
『よーしよしよし、大丈夫だよーぱぴー』
「っ、ま、ってください、なんでその名前を」
え?というメルがだってと言う。
『お耳がピンとしていて、白黒茶色のわんちゃんみたいだから!』
「いや白じゃなくて銀だし、犬ではないだろ。」
「……それでも、貴方は其処を、知って」
「コルン様?」
「いえ、なんでもありません。」
パピというその言葉は、かつて彼女が飼っていた
犬の名前であり、その意味も、しっかり持っていて。
コルンは胸が痛くなり、そこを掴みそうになった手を止めた。
『大丈夫、大丈夫』
「っ!!!」
『いたくないよ?』
メルはその手を取って、頬に当てて摺り寄せていう。
それは、その姿は、確かに在ったというもので。
「…これはいけませんね、本当に。」
『ん?』
「…ありがとうございます、楽になりました。」
『そう?』
「ええ、お詫びに」
そう言ったコルンがそっとメルの背中をトンと叩く
その場所はメルが狼に引き千切られていた衣服が、元に戻って行ったのだ。
「その衣装を少し直させてもらいましょう。」
『〜〜〜!!!すごい!!!コルンさんって神様みたい!!!』
「っか!!!!…ほんと、貴方という人は。」
『ん?』
「何処まで狡い言葉を言うんでしょうね?」
手をまた取って言うメルに、コルンはその手をぱっと引いて距離を取らない。
好きにさせるのも、それは、彼女に多くの恩があるからで。
返し切れない程の愛を、貰っているというのに。
何も出来ない、この時間が、一瞬なんて感じれなかった。
永遠にも感じられるその時間が、
どうか、一瞬に、変わらないで欲しいと。
コルンは人間じみたことを考えていた。
「だとしてもその子は置いて行くべきでしょう」
『えーーー』
「帰るところもありましょうし。」
『え?』
後ろを向いたメルの先には、
小さな狼が母親と共に駆け寄ってきたではないか。
どうやら家族が近くに居て、それを守っていたらしい。
「流石に引き裂くわけにもいかないでしょうから。」
『…おおかみさん』
またねそう言ってメルは別れを惜しむ。
それに、狼もまた、メルの身体に少し頭を押し付けた。
気付いたメルは嬉しくなって笑っていたのに、
『あ』
そっと離れ、彼等は姿を消した
『……』
「出会いもあれば別れもあります。」
『ん』
「流石にこれ以上動くのも得策ではないでしょうし。」
まぁ動くつもりなさそうなのが何とも言えませんが。
そうコルンはメルの背中をそっと押そうとしたまま後ろを振り返った。
いつの間にか黄色いテントを張っているリサやアルトリアに
もう野宿する気満々である。
貴方達ねぇというコルンが先にテントを張っていた彼女らに話しかけていた時。
ちょんちょんと背中をつつかれくすぐったくなっていた
「調達するには難しいし、どうしようかと」
「それなら俺らが調達してこようか」
「…いえ、それには及ばない様ですよ?」
「あ?っああ?!?!?!?」
狼が戻ってきて、そこら辺の食べれそうな獣らを獲って来てくれたのだ。
尻尾を振る狼に、メルはありがとうと
頭を撫でたりかゆいところない?
と言って彼に褒美をどんどんと上げている。
「呆れますよねぇ、私も呆れて最近感覚鈍ってきていますので。」
口を大きく開けた破壊神と界王神を無視し、
コルンは振り返る様に身体を曲げてメルを見て言う。
これだけあればというリサに、ねぇとメルが言う。
『狼さんと今日一日だけでもその』
「…だ、そうですけど?」
「はぁ……旅の主は貴方方ですし、お任せします。」
「だって、リサ!」
「……分かった。ただし朝は別れるからな!」
『〜〜〜〜!!!!やったねぱぴー!!』
尻尾を振る犬の様な狼に、メルははしゃいでいる。
全くと息を吐きながら腰に手を置いたリサが頭を掻きむしった後、紐を外す。
「お前ら、ここら辺に泉があるのは分かるか?
良ければ後で連れてって欲しいんだが。」
分かったかのように頷く狼らに、ありがとうとリサはお辞儀する。
「その代わり、調理は任せろ。お前達も食べたいだろうし。アルト!!!」
「はぁいよ!!!」
その背後でアルトリアが飛び上がり、その手に力を込めて、気をぶっ放す。
当たった獣たちが浮遊し、アルトリアは久しぶりねえと笑って言う。
「こんなの斬れるの?」
「はぁ?アタシが出来ないわけ、ないだろ!!!」
アルトリアからナイフを貰って飛び上がって軽く皮を剥ぎ、肉を細かく切る。
メルと声を上げたリサが手に力を籠めろという。
『え?え?え?』
「…手伝いましょう。そこにある炎をイメージしなさい。」
『コルンさん?』
「いいから」
『えっと…』
目を閉じて、その手に小さな炎を灯す。
それはマッチの様に小さいものが、魂の様に、縦に上がる。
当てればどうなるかもイメージするのです
という上からの音に、身体の力を抜いた。
「そのまま上に」
『〜〜〜!!ふぁいあーーーー!!!』
手を上に上げて飛ばした炎に、その肉たちがボっと燃えた。
下に葉を出したイルの上に、ぽとぽとと
こんがり焼き上がった肉が落ちてきたではないか。
『ど、どうぞ……』
そう前に出したメルに、クンクンと匂った狼が一口食べる。
すると嬉しそうにがっつきだしたのを見て、子狼らもまた食べ始めた。
「私らも食うぞ。」
『え?あ、う、うん!』
「うっま!!!!!」
「まぁ、初めてにしては上出来でしょう。」
肉を手に取り食べるリキールに続き、メルらもそっと手に取る。
皿と箸をぱっと出したコルンだが、使えるかどうかをすっかり忘れていて焦ったが
「…どうやら杞憂だったようですね。」
『ん???おひふうい』
「そうですか」
「…ふふっ」
「ん?どうしたんだ?」
「いや〜〜?可愛いなぁって。」
兄弟みたいで。そうアルトリアの目に映る二人に、リサはそうと答える。
「ほんとはあの子、殺すつもりだったんでしょ。」
「ぶっ」
「あらきたない」
お前がという声を出す前にため息を吐いた。
「…気付いていたのか」
「そりゃあんな暗号みたらねぇ。」
”星華に選ばれし者来たりし日”
「私だって急いで来たわよ」
「ありがとな」
「いえいえ、嗚呼そうそう、皆これも食べてね。」
『これは?』
「白菜とトリューニヒトのシチュー。貴方の鞄の中にも入れてた材料で作っておいたの。」
「いつのまに…」
「と言ってもこの人数じゃ絶対に足りなかったから。」
わんちゃんにもと言ってメルは立ち上がりよそって持っていくのを見る。
自分の分がなくなるというのに、そんなの構いやしないのだ。
「不思議だよな、ほんと。あいつってやつは。」
「ほんと、何処までも欲の無い子よねぇ」
「…お嬢さんたち、あの子をどうするつもりで?」
殺さないならそういうリキールに、二人は彼を見つめる。
その目は、一瞬殺意を持っていて、メルや狼以外がその目に気付いて警戒をした。
「…エシュメル」
「あ?」
「エンドロールの意味を持った者の名だ。…私はエンドロールの先を見てみたいんだ。」
きっと、あの子は其処に行くだろうから。
そう笑うリサに、私もとアルトリアは続ける。
「エンドロールの向こう側に。私も行きたいので。」
「…成程、それなら君らに任せるとしよう。」
「ありがとうございます。」
「いやいや、寧ろあの子を、いやあの方を頼んだ。」
「リキール……」
「あの方は俺の恩人でもあるんだ。」
「ソレを言うなら私もですよ、リキール様」
お前もかというリキールにええと答える。
「あの子に返しきれない恩を貰ってしまいましたので。」
「…成程、だからあんなに優しくするのか。」
「壊したら今度こそ消滅しそうですからねぇ?」
クツクツと笑う二人に、ねぇとメルが間に入る。
湖いくってというメルに、お前ちゃんと食べたのかと言われてぎくりと固まるメル。
母親なのか、そっとメルの食べ物をと置いたのに、手を伸ばした。
「っ」
『ん?どうしたの?アルト』
「…ごめんね、それは食べさせちゃ駄目なの」
『え?でも赤くてきれいな』
「だめよ」
ー駄目よ、それは貴方にとって、毒でしかないのに
「食べちゃ駄目なの」
『…あると、りあ』
ーおねがい、ねぇ、どうか、おねがいだから
『…うん、わかった。』
ー忘れて
『忘れてるよ?大丈夫大丈夫。』
「…メル?何を」
『何でもないよ。』
なんでもない。