覚えておけよ






「…成程、そう言う事が在ったんですね。」

現在、メルを寝かしつけている部屋に誰も居ないというのも悪いため、
第12宇宙であるジーンが番をしている中。

ヘレスはリサとアルトリアを連れ、サワア、コルン、リキールと
共に円卓に座って夜のお茶会を開催していたのだった。

「すまんが、少々手伝ってやって欲しい。」
「別に構いません。それなら尚の事
夜は一人にさせたほうがいいですね。」
「すいません。」
「いえいえ、此方としてもあの子がずっと
私達の知らない処で泣いているのを
無視するのも気が引けますから。」
「気付いていたんですか…」
「なんなら怖くて逃げだしたりしたのは
きっとそういうトラウマみたいなものが
発動したからでしょうし。」

私達二人とも特に私は記憶がないものでして。
そういうアルトリアに、ご存知でとサワアが聞く。

「ええ、貴方の事もどこかでお会いしたことは
わかりますがその…少々私も記憶を置いて
来てしまっていまして。」

元々居た方と居れば恐らく思い出すとは思うんですが。
いえ、無理に思い出されなくても構いませんとサワアは手を横に振る。

「なら尚の事信用などしない方がいいのでは?」
「コルン…」
「だってそうでしょう?恩が在るとはいえど、
我々の知り合いでの頼みでって話が良すぎませんか?」
「まぁそれもあってですねえ。こ〜んなものが」

私使えちゃえるんですよねぇ

そう言って彼等の背後からばっと出てきたものは

「…っこ、れは」
「一応全部知らないって訳じゃあないんですねぇ?」
「……っ」
「そんな怖い顔しないで下さいよ〜ねぇ?…サワア?」
「っやはり覚えていましたか…アルトリア様」

へらへらと笑っていた顔がぱっと真顔に変わる。
その目は姿は、彼女のことは、サワアは知ってのことだった。

「原初の華神、称号「不完全」切望の華神、アルトリア様。」
「わあ〜〜〜覚えてくれていて助かるねぇ〜?
…泣き虫小僧のサワア君?」
「〜〜〜っ!!!貴方絶対全部覚えてるでしょ!!!!」

ダンと机をたたいて言う彼に、
怒らないとへらへら笑って手を振るアルトリア。
もう何が何だかと困惑するリサに、アルトリアが事情を説明した。

「マジか」
「いや〜まじまんじ?」
「これ…って待って下さい貴方」
「髪色変えたらわかる?」

そうぱちんと指を鳴らして黒髪にした彼女が、
さらりと巻いていた髪の毛まで落とす。
その姿にサワアとコルンがぎょっとする。

「っあっばっ貴方!!!!!!!!」
「上野、で〜〜〜〜〜す!!!!!」
「…やはり、チェコの意味は原初というものでしたか。」
「流石にあの子から色紙の意味言ってればバレちゃったかあ。」

最初だなんて、凄く良い所突いたと思わない?ええとコルンは言う。

「それにしても何故貴方があちらの場所に?」
「あれ?君ら知らないの?
華樹神又は華樹神官が降り立つ世界と、
華神らの降り立つ世界が違うの。」
「いや、聞いたことがあるようなないような…」
「華樹神又は華樹神官は私やメルが居る様なあの世界だからね。」
「…待って下さい、それって必然的に貴方が華樹神官になるって話では???」
「まぁ見習いだから色々飛ばされているんだろうけどね。」

何となく察してはいたが、メルの事を知り、
なんならコルンらの姿をみて察したらしい。
成程、察する能力に関しては欠けていないと。

なら何処をどうみて、彼女が「不完全」と言われるのか、嗚呼まさか。

「…天使の業務に支障がきたされるから不完全とかいうんじゃ」
「まぁそうだろうねぇ〜〜〜〜加護天使らも怒ってたし。」
「……とにかく、話を纏めるに、
夜の間はお前達に開けていたらいいんだな?」
「すいません出来ればお願いします。」
「分かった。」
「え、マジでいいの?リサ。」
「お前が嘘を付く奴じゃないというか、
嘘を付いたら明後日の方向を向くから
分かりやすいんだよ本当に。」
「え〜〜〜???そんなことないよ?????」

ほらそうするというリサに周りもアルトリアを見て苦笑いである。

「じゃあその手筈で行きましょうか。
って言っても色々寄るところがあるから、
適当に出てきてて欲しいわ。」
「色々寄るところ?なんだ一体」
「あ〜〜〜……リサはそっ、か。旅にでないもんね。」

旅人、放浪者はね、余所者ってよく言われてるんだけど
そういうアルトリアが一つの地名を出す。

「ラヴィーネの最奥にあるその場所こそ、誰もが恐れているその居場所。」
「…どんなところなんだ?」
「其処はとても静か。その人が映して欲しい場所が
姿が映像が、その通りに映し出され、それはまるで」

夢の様な、時間だというのだ。

「…猶更行く場所ではないではないですか。」
「そうなのか?」
「ま、現状ちょ〜〜〜っと不味いわね。
割とそのまま行けば魔女にとかなるんじゃなあい?」

もう、核は出来上がってしまっていることだろうし。
そう睨んだアルトリアに、そんなはずはないというのがリキールだ。

「彼女の種は彼女の母君であるアルメリア様が
外したとも聞いているし、ちゃんとこの目でも見ているんだ。」
「あ〜〜んねぇ?お狐さんやぁ〜。
そ〜んな簡単に取れちゃったら
今頃魔女なんて存在しない訳ですよ〜。」
「おっ」
「記憶を忘れる代わりに、いや、
元々記憶があるからこそ、
魔女の核なんてみえないもの。」

誰しもが悪くなり、誰しもが良くもなるのだ。
その悪に染まるというのは、周りがない証拠。

逆に言えば、記憶を増やせば問題はないということだ。

「まてまてまて、それならアレは????」
「恐らく、変にメルが考えこんじゃっただけでしょうね。」
「それは充分在り得るでしょう。」
「まるで、元々独りだったかのように、全てを殺せるんだったら、意識が在っても満たされていても、何をしたって、すぐに魔女にだってなる。」

そう

「【こんなふうに】」
「っ!!!!!!!!」

そこには、真っ黒な髪色で、赤い目をした彼女が存在した。
ぐにゅりと角が生えて、ブンと山羊の様な目を角を出した者に
リサを軽く引っ張りリキールが後ろに下げ、ヘレスらも距離を取った。

「【もしもこれからあの子が絶望をして、お前らがあの子を蔑ろに少しでもすることがあれば】」
「っ」
「【ソノミニ アマルホドノ アクムヲアタエテ ヤロウ】」
「っ……」
「構いませんよ」

そう言ったのは、未だ動いていないサワア一人だった。
かちゃりと紅茶を飲んですっとティーカップを置いて言う。

「もう私はあの子の居ない世界なんて、ただの悪夢なだけですから。」
「サワア……」
「その通りに手を前に伸ばして、触れてさえくれれば、
不束者ながら、ささやかな情を、与えて差し上げるというのに。」

あの子はそれすらも、拒んで泣いて、笑ってその手を振り下ろして言うのですから。

「いっそのこと、消滅した方がずっとマシなくらいです。」
「……なら、いいわ。」

ぶわりと解いたアルトリアに、周りがふうと息を吐く。
その間、見知った仲と言うべきか、サワアは微動だにしていない。
強いていうなら机を最初叩いたくらいだ。

「それに、記憶さえ増やせば、貴方の様に上手く操れるようになるのでは?」
「成程、だからこの旅ですか。よく考えましたねぇ?」
「ま、半分行き当たりばったりだけどね。
それで?貴方達には逐一場所を報告していたほうがいいかしら?」
「いいえ、此方は貴方方の気を察知して出れますので。」
「…流石に目の前は勘弁なんだけど。」
「するわけないでしょうが。」

我々をなんだと思っているんです。
軽い不審者
うぐっ……いやそれを言われると何とも言えなくなるんですが。

「まぁいずれにせよ?遠回りは絶対になるから、頑張ってついてくるんだな?」
「リサ…貴方ねぇ」
「どう考えてもお前の方向音痴がいけないんだからな?」
「いやまぁそうだけど、それを言ったら貴方が先にいけばいいじゃない。」
「ああ?いやだよなんでいくんだアタシが。」

だって最後は常に光り輝いている者だろう?

「エンドロールのその先を、こいつらだけでなく
このアタシも見てみたいと思っているのだから。」

その為ならば、私だってあの子の力になってやろうと。
リサは胸に手を当てて笑っていったのだ。

++++++++++

と、いうわけで。

「うわあああああああきれい!!!!!」
『ねぇねぇリサさんや』
「………なんだ?」

うわ凄い明後日の方向みるなおい…それ首大丈夫???

『いや、私達さ、北〜むかっ、て、たん、だよ、ね???』
「ああそうだな」
「ねぇねぇカモメカメメ!カモヒモメ!!!!」
「いやうるせぇなおい!!!ばっちいからあっち持ってきなさい!!!」

そう叫ぶリサに、カモメとアルトリアがガーンと言いたそうに口をパっかり下に落とす。
しくしくと泣きながらカモメと仲良くなる、オレンジ髪の三角ううん……シュールすぎる。

『あの〜〜〜私達』


大海原見える港に来てません????

「一応ミーヌの方も水は見えるはずなんだがなぁ…」
「単純に広いとかって話じゃないの?」
「ああ?お前さんら、ミーヌの方に行きたかったんか?」
『ああはいそうです。』

そう近くの男性に言われてこくりと頷くメル。
心なしかリサの背後に入ろうとするのは、素だろうか?それとも

「……」
「何処から来たか聞いても?」
「え?ああ、ミトス、から、ですけ、ど」
「………誰が案内をしているかしらんが、思いっきり斜め下の方にきよったなあ」

此処を真っすぐいけばミーヌの街に辿り着くじゃろうが…

「普通に徒歩でいけば三月はかかるじゃろうて。」
『みつき?さつき?』
「みつき。三か月ってことだ。」
『……????』
「アタシとお前が会った月日くらいな?」

それにびくりとしたメルに、理解したことを知る。

「でっでででででも!ほら、ね!?此処ってニイナ港じゃ」
「いや、嬢ちゃん、其処に居る子達に悪いから正直言うが…此処はハル港。」

そっちのお嬢ちゃんの言う通り、真逆の港だぞ。
そう通りすがりの人に言われ、しばし固まったアルト。



「春の季節が、永遠を続かせる、奇跡の港じゃ。」


++++++++++

「ああああああすみませんすみません
すみませんすみませんすみません
すみませんすみません!!!!!!!!」
『あ〜〜…仕方がないって、ほら、さ?』

ご迷惑をお掛けしまして本当に!!!!!

そう死ぬ気で謝罪をする彼女に、場所を選ぼうと言って
メルはリサと共に彼女を連れて走り去った処、路地裏で謝られ倒されていた。

『嫌にしてもどうしよう。ニイナ港の先にそのミーヌの街ってあるんだっけ?』
「嗚呼、変な話渡った先だからな。直通の港として手前にニイナ港行きの港街があるんだ。」

本当はそっちの方に行こうと地図を指さす。
どうやら本当に真逆の方向に突き進んでいたらしい。
メルが地図を開いたのに対し、リサが指を指して現状何処に進んでいたのかを知り、
地図を軽く下に降ろしたところで、目の前のアルトリアがカモメと一緒に
地面に正座してちょこんとしょげているのが見えた。

いや、カモメと仲良くなりすぎでは……?????

心なしかカモメも涙ほろりと出しているようにも見えるし。

「ま、こうなったからには仕方がない。とにかくここでも同じ様に動くとしようか。」
『へ?あ、ああうん。でも最初は一緒、だよね?』
「え?あ、ああ、まぁそれでもいいが…どうした?」
『え?』
「いや、メルの事だし好きに周りを見たいだろうからって別行動を提案したが…」
『嗚呼いや、それでいいよ!』

別に、そう言うメルは地図をまた開いて、綺麗に折りたたみ鞄の中に地図を仕舞う。

このハル港。港なのに、桜の街道がそこら中にあることもあってか、
港にみえず、公園に見える此処は、とてもじゃないが港に見えない。
いや本当にただの公園並木道にしか見えない道の途中から崖に階段が敷かれ
降りていく所々から道が続いていき、下に徐々に下れる街。

一応強いていうなら、南国の建築に、
潮に強そうな感じの木材が使われてなくもないってところとか、
後は高床式住居ってところが港の先に見えるくらいで、
手前は至って普通の家々が立ち並んでいたりする。

そんな光景からか、人々はこの港を
「“人の知らない時間の止まった港”」と呼んでいる。

時間の、止まった…か。
そういえば確かに誰かが止めていた気がする。

一体誰だったか、どんな人だったか、わすれたが。


『(そういえば、今日は何処か穏やかだな)』

なんなら数日前からずっと。
最初の頃は酷く泣いて、毎日の様に辛かったのに。
朝になったら全てが痛くて、理解しろと後ろ指を指されていて。
目を閉じて寝てしまいたくなるくらいにはつらかったというのに。

なんなら、ずっとずっと、眠って居られたら、
どれ程良いのかとさえ思ったというのに。



『…忘れた、気がするのに。』



頭に何かがこびりついていて、離れない。
それが何かが、分からないから困っているのだが。
そう考え込んでいると、アルトから声がかかった。



綺麗な音を鳴らす彼女に、なあにと答える。
嗚呼、昔も確か、こうやって話をしていた気がする。
一体何処で話をしていたのかは、分からないが。

確か、その時、赤い赤い樹の実を食べていた気がした。

白い髪の女性が、白い髪の子供が、謝っていたのに、笑っていた気がして。

一体なんで泣いていて、なんで笑っていたのかは、分からない。

でも、酷く、酷く心が穏やかになってしまったのだ。


なんでかは、分からないのだけれども。

「…えっと、非常に非常に言いにくいんですが。」
「何だ今更喋れ」
『いやその言い方よ…』
「今日の宿なんですが…」


金額が少々高くて、宿に入れません。

そう半泣きになる彼女にえっと二人して驚く。


「ああ……そういや、此処の方って割と豪勢なことが多いし、
安い宿が割と少なかったりするんだよな?」
『そうなの!?!?!?まって今から別の街にとかは?』
「それこそ止めた方がいい。ここ等一体は昼間に切り抜けないと手こずる魔獣だらけだ。」

春のその桜は、魔獣らを寄せ付けない為のものらしく、
リサが住んでいたところも、気付いていないかもしれないが
点々と桜の木々が育っていたりしていたのだ。

「いやでもなんでこんなに金使い果たしたんだ?」
『…普通に食べ物では』

彼女からそこそこの金額を見ていて、割といいと思っていたのだが
どうやら前の街で奮発しすぎてしまっていたらしい。

いや私もなんだかんだ言って一冊本を買っていたし、
これまでも彼女から貰ってばかりだったしと、メルはふと思い、良しと答える。


良い機会だ。


『ねぇ、リサ、アルト』
「なんでしょう?」
「なんだ?」
『仕事しましょう』
「「……は????」」

こうなれば何かを取れば話が変わる。
お金がないなら働いて稼げば良い話だ。

その話に、うううエシュメルさぁんと半泣きの声が聞こえる。

どうかその鼻水をこちらに持ってこないで
ほしいとは思ったが、まぁ、もう
気にしないほうがいいのかもしれない。

「と、言ってもこの街でどうやって稼ぐおつもりで?」
『ん〜港だから手っ取り早いのが海に行って
魚を取りまくるのが通常なんだけど〜〜』
「ちなみに、エシュメルさん??お姉さん魔力は?」
『あるらしいけど、使い方あんまわからない。』
「だよなあ〜〜〜」
「空の飛び方すらろくに使えないし。」

むうと思ったが、確かにソレは正しい。
なんならコルンさんに助けて貰った時、
リキールさんやイルさんらも私が浮遊するお手伝いをしてくれたりした。
両手を取って、身体を猫の様に伸びてしまった時は皆して笑ってしまったが。

その時も同じ様に空を飛ぶ練習をしていた気がして。

…きっと、気のせいだろう。

ー放さないでよ!?!?ねぇ?!?!?!

…きっと、ね。

そう、話は戻るが、その浮遊は無事に成功などするわけもなく。
ただコルンさん曰く「コツさえ覚えればわかるだろう」とのこと。
それか、単純に「飛びたくないのではないか」という意見も出た。

正直言うと、そっちの方がしっくり来てしまうのだ。
私はずっと前から地面に足を付いて空を見続けていた気がする。
まるでその高い所から、落ちてきたように。

ずっとずっと、高い空の上を、ずっとずっと前から、見ていた気がするのだ。
ひょっとしたら、人が綺麗に空を飛べないのは、空から落ちてしまったからなのかもしれない。
そうしたら空の太陽すらも、手を伸ばそうとする手の理由も、分かるというのに。

「まぁいつかきっと、出来るだろう。そんなことより、魚っつても、割とでかいのが多い。
竿で釣れなくもないが、日当で出せる金額と宿代は天と地の差があり過ぎるくらいに差があるからな。」
「ましてや普通の討伐依頼ですら我々で必死こいて何とかなるくらいです。ここはいっそのこと腹をくくって近くの外で野宿をするしかないかもですねぇ。」
『地道に皿洗いとかでも私大丈夫ですよ。私地道な作業好きなんで』
「いや流石に貴方にそんなことさせるわけには…」
『そうです?別にいいと思うんですよ、前は細かい作業を、して…ま、した、し?』
「メル?どうかしたのか?」
『え?いや、あの…細かいこと好きなのはわかるんだけど』

あれ、そうだっただろうか?そうふと頭を抱えて考える。
遠くの方で私の名前を呼んでいる気がするが、気のせいだろう。
そんなことより、何故細かいことが好きなのかが分かってしまったのかだ。

花を編んだりして、褒められていた記憶がふわりと浮かぶ。
まるで花が咲くように、ふわりと広がるその記憶が、余りにも酷く鮮明で。

ー上手に出来て偉いわね、エフェメラル。

前って一体、何時の事だ?そしてその名前は、一体誰の名前だ?
私の名前なのか?だとしたら、その意味はあるのだろうか?
エンドロールの向こう側に、私は一体その名前で笑っていられるの?

「うわっ何々桜?!?!」


目の前が桜の葉と花びらで前が一瞬見えなくなった。
綺麗に消えたと思えば、その場所は皆となんかじゃなくて。
目の前はまっしろな世界で、ふわりと笑う、者達が言うのだ。

ー大丈夫、きっと君なら、手を取れる。

ゆっくりと、桜の散る中、見えたその手を、メルは取ろうと前に出した。

『っわ』
「おっと、失礼」

お怪我は?そういって横からぶつかった方に手を差し伸べられる。
すみませんと言って前を向いたのに、あっと後ろから声が聞こえる。

「ごめんなさい、連れの者です。」
「嗚呼いえいえ、お嬢さんお怪我は?」
『ああいや、ない、です、けど。』
「なにか?」
『…いえ、なんでも。』

それよりすいません、前見てなくてとメルは言う。
ちゃんと、前を向いてしまわないといけないのに。

そう、前に使った黄緑色の炎を想い出して、胸をぎゅっと掴んだ。
その手をそっと取って首を横に振ってくれた。
まるで、そんなことの為に力を使うんじゃないと、言ってくれるように。

あの者達に、私は、出会えるのだろうか?

色とりどりの花々を咲かせた、多くの者達に。

「では私達はこれで、っと」
「メル?」
『…あっ!!!ああすいません!!!!』

その服を肌を髪色を目の色を、その、
輪を、見て、手が勝手に取ってしまった。
いや本当に勘違いしてしまったのだ。マジで申し訳ない。
本当に気にしないで下さいとペコペコ謝るメルに、
いえと手を前に出してくれる男性。

いやイケメンほんとイケメン。
許してくれるとか絶対イケメンだろこれ
もうどう考えてもそう。

そう思っていると滅茶苦茶クスクスと腹から
頑張って抑えて笑うのが見える。
ううん???私なんか変なこと言ったかなぁ?

「すいませんつい…失礼。」
「ってまさか、あんた、コルンってやつのことを知ってるやつか?」
「おや?コルンさんをご存じとは…
ひょっとして貴方方が例の方達でしょうか?」

そうメルに向き合っていた身体を彼がリサらに向ける。
嗚呼と色々世話になってなと言う彼女に、そうですかと答えた彼。

身長が高くて、頭を身体を少し上に背伸びをしていると、
此方を向いて身体を少しだけ曲げてくれたので、
そっと伸ばしていた身体を下した。

まるでそんな頑張らなくてもいいよと、
言ってくれているみたいに感じてしまって。
少し、嬉しかった。

嗚呼、今日はとっても、良い時間ばかりだ。

あの白い場所で、皆が待ってくれていると、
私は理解出来る日なのだから。
だから早く、行ってあげないといけない。
そうしないと、行く道すら分からなくなってしまうから。

「……っ、無理して行かなくても、いいんですよ。」
『え?』
「…なんでもありません。ま、此処で会ったのも何かの縁ですし、」
『…?』
「お嬢さん方がよろしければ、
ご一緒にお食事でもよろしいですか?」