深く埋めてね
前回のあらすじ
ミーヌの街に行こうとして、川互いにあるニイナ港に行こうと
ミトスの街から歩いて来たら、何故かニイナ港の真逆である
南の港町、ハル港に辿り着いて、ミトスの街まで歩いていた
コルンさんのお仲間さんに出合い頭衝突したのにご馳走振る舞われることになりました。
どうも、皆さん、長ったらしいあらすじを読んでいただきありがとうございます。
メルです。時刻は日本時間で大体夜の18時くらいでしょうか。
現在、滅茶苦茶豪華な食事が円卓に並んでおられるのですが。
私は此処まで豪勢な食べ物を見たことが無いです。
「うわああああおいしそうおおおお」
『えっ…い、いいんですか?』
「ええ」
『でも私らどっちかっていうと払う方では?』
「いえいえ、こちらは見える方に居ましたし、
気付いていなかったのも分かって
反応が遅れたとはいえ、ぶつかってしまいました。」
こちらにも十分非があるのです。
そのお詫びとしてと言って彼は言うのだ。
『いやだとしてもだよ』
「それに、お連れの方は既に美味しそうにされていますし、貴方もどうぞ?」
『え?いやそんな』
ガチャガチャと食べ進めていた二人に、メルはくるりと首を向け、
少しして二人を近くにひっぺ剥がして正座させた。
おいこらまてごらふざけんなごら。
一体どの面してサラッとくっとんじゃ。
ゴゴゴと音を立てるかのようにメルの髪の毛がふわりと下から上がる。
仁王立ちで目をぎらつかせるメルに、びくりと反応した二人である。
さらっと正座するのも、圧が凄すぎて無理もない。
私が全面的に悪いは悪いのだが、ツレが悪いとは言えど
さらっとご馳走に悪気もなく食べるのはまた違うだろう。
せめてマナーを守れマナーを。
そうメルが怒る中、まぁまぁと宥める彼に、ううんとメルは唸る。
「此処はどうか、ね?」
『………すいません。』
粗相を。いえいえ。
彼に導かれ、そっと席を付く。
それに怖そうにもしつつ、二人してそっと座った所で、輪を持った彼が言う。
話しによると、なんなら此処、どうやら隣がホテルらしく、
彼らも泊まることが決まっているらしくて、連れであれば
普通に食事と共に泊まる場所も貰えるらしい。
ん?泊まる?一泊???
「泊まる場所が決まってなければ此処にしたらどうだ?」
『ぶっ』
「だ、大丈夫ですか?」
ごほごほと吹き出し咽るメルに、
橙色の肌の男性が背中をさすってくれる。
いや本当に君たち良い人ですね。
『おっ、ごほっ、ごほっ…お、お言葉はっ、ぐっ
ありが、たいのですが…』
「流石にそこまでさせてもらうのは…と?」
そうだ。しかも見ず知らずのなのに。
いやですねと彼が話を続ける。
「私達はコルンから話を聞いておりまして。」
『コルンさんたちを知ってるんですか!!!』
そう大声を言うもので周りの視線が集中し、
メルはそっと恥ずかしくて座りすみませんとか細い声で話す。
そういえばリサらがなんか言っていた気がするのを
すっかり忘れていて、言ってから思い出した。
それに構いませんよと言って話を進めてくれる彼。
いや本当に天使かお前は。ふざけんなよ本当に。
そう思っていると驚いた顔をして軽くむせたんだが……
あれ?ひょっとして、声、聞こえてる???
そう疑問に思っている間に、彼が声を上げた。
「申し遅れました、私はだっ…こほん。私の名前はコニックと申します。
こちらはチトラ様とクル様です。」
「初めまして」
「よろしくな」
『初めまして、エシュメルと申します。こちらは旅、仲間の…リサと。』
「アルトリアです。彼女がぶつかったというのに、こんな形ですいません。」
あとご飯美味しいです。
それは……その……よ、よかった、ですね?
「いえいえ、此方としても恩返しが出来るもので、嬉しいですし。」
『…?私何かしました???』
「少々ね?命を助けて貰えたとお聞きしておりますよ?
例えば…そう。林檎を食べてくれた、とか。」
「ぶっ!!!!!!!!」
そう今度はアルトリアが食べていた物を吹く。
吹いたところがリサだったからよかったが、
相手に飛んでいたらどうするつもりだったんだろうか。
と、いうか、なんだか、見ていないが、こっちを一切見られていないのに
ちらりとみられて、なんか、遠くの方を見られた。そんな気がした。
それに気付いてか、いえいえとニコリ微笑まれた、その目が、物語っている。
きっと、彼の知る、誰かが、私が救ったのだろう。
でも、そんなこと、あるのだろうか?
と言うか、まてまてまてまて、
『り、りんご?』
「ええ。」
林檎。
えった、あ、あの、リンゴ?
ええ、その林檎ですよ。
そう言う彼に、全く心当たりがない。
所で、コルンさんたちとはどのような?と言ったアルトは沢山食べ物を
詰め込んだ勢いで水を飲み、ほっと一息ついてから話を進める。
隣からすぐにコニックさんが水を出さなければ
今頃どうなってたのかわからない。
「あの、コルンさんの話が出たのですが…」
「ええ、コルンは私の弟でして。」
「そうだったんですか!」
「数日前に弟と道中で会ったのですが、
優しく可愛らしいお嬢さん方の話を耳にしまして。」
『ん?弟?コニックさんってコルン様の弟だったような?』
「っ!?!?!?!?!?」
その言葉に、アレでも違う様なと唸るメルに、ぼそりとぼやく。
「どうして、そうまでして、貴方は我々天使を庇うのですか。」
我々天使は貴方を傷つけることしか、出来ていないというのに。
そう言う彼に、コニックさん?とメルは首を傾げて聞く。
いえ、なんでもありませんとニコリ微笑まれて誤魔化されてしまった。
ううん、気のせいならいいのか?
…もしも、何か、困っていることが、何か、気になることがあれば。
「どうか貴方方を助けてやってほしい。…と、頼まれたものでして。」
「そうなんですか。」
「いや普通に助けられた方だからなぁ、こっちとしては。」
「っくくく、いえいえ。メル様を一度助けるだけでは
恩が返しきれないとも仰っておりましたので。」
『いやいやいやいや』
私そんなことしとらんしとらん。
いえいえ。
「あの方がそう言うんです。正直意外なんですよ?」
「コルンさんが、ですか?」
「ええそうです。貴方方は知らないでしょうが、あの人物凄く頑固でしてね?」
「サラッと悪口言ってない????大丈夫????」
「っくくく、その上人を上から見て物を言ったりするんですよ。
まぁ実際お強いので間違ってはいませんがね。」
でも、そんな方が。プライドを誰よりも強く、誇りを持った方が言うのです。
「彼女には、数えきれないほどの恩を、貰ってしまって、
一人ではどうしようもないのだと……
そんな弱音を吐いたことなど、生きていた中で
一度たりとも聞いたことも見たこともありませんので。」
「…そんなに????」
「ええ、そんなに。ですのでこれしき軽いものです。」
『…そうだったんですか、それはコルンさんに
「今度」、お礼を言わなければいけませんね。』
「っ!!!!……ええ、是非とも「今度」、
お礼を言って貰えれば私も大変嬉しく思います。」
きっと彼のことだから、照れくさくて拒絶されるだろうが
照れ隠しだから。と、優しくフォローを入れてくれる彼に
メルはクスリと笑って見せた。
嗚呼、こんな時間が、続けば、だなんて。思ってはいけない。
それだけは強く、そう、想ったのだ。そう、続くなんて一生かかってもない。
時間は何時だって儚く散って、綺麗になくなってしまうのだから。
縋り付くことしか、選択肢など、ないというのだ。
「……失礼ながら、一つお聞きしても?」
「ええ、何か?」
「皆さんはこちらに、何用で来たのですか?」
「…いや〜〜〜お恥ずかしながらです、ね。」
「っええ?!?!ニイナ港の方に向かっていて
真逆に進みまくって来ただとお!?!?!?」
そうガタリと立ち上がった人に対し、
これチトラ様行儀が悪いですよと、
コニックさんに怒られているのを無視しているのかなんなのか、
ぺちゃりと音を立てて座る者。
いや、よく見たら可愛いね?君。絶対マスコットとか作ったら色々
外から笑われそうな気もするが、なんでだろうか????
「ええ」
「いやいや、ハチャメチャに逆なんだが…
一体どういう経路を考えたらこうなるんで????」
「うう」
『いつもはアルトリアに任せて居ましてですね。』
「途中私も見ていたんだが…勢いが凄すぎて、だな。」
「嗚呼成程、大体わかりました。
……リサ様は余り強く言えずに進まれ、
メル様は彼女らを信用しきって付いて来ただけだと。」
仰る通りです。そうリサとメルが同時にしょげる。
いつの間にかカモメもついて来ていて、しょげてくれる。
いやいや、可愛いかよお前。仲間になってくれるんか????
「それで一泊くらいはして、明日の早朝にでも出ようと思いまして。」
「だとしてもお三方では少々ここら辺を切り抜けるにはきついのでは?」
「というか、行きは一体どうやって切り抜けたんです?」
「ああ、それはだな。」
『はい』
そうメルが手をあげるのでどうぞとコニックが進める。
『私が直感で指差しました。』
「…ニ対一、でしたか。」
「と、いうことだ。」
「いやいや、だとしてもとんでもない幸運でしょうね。」
『え?』
「下手に道を間違えれば崖だったし、
獣しか居ない道を何にもなしに切り抜けたんだろう?」
「え、ええ…こっちの方に行きたいって私が言えば、
メルがじゃあこっちから行った方が良いって。」
「我々でも少々苦労した所ありましたからね。
余程の幸運をお持ちのご様子。」
まるでそう
「誰かに助けられているような、ね?」
『…そういや、こっちって言われてた気がするんです。』
「メル…」
『わからない、分からないんですけど、
違う方を向いたら駄目って言われて。』
黒髪で、黒目で、多くの人が、私の手を引いてくれたんです。
そう言うメルに、アルトリアが目を見開いてメルを見ていた。
『誰かも分からないんです。ほんと、
理解できる話じゃないの分かるんですけど。』
「…いえ、それで?」
『え?』
「それで、どうなったのですか?」
お聞かせ願いたいそういう彼に、えっととメルは続ける。
『黒髪の子達が、こっちに行けば大丈夫って押してくれたんです。』
背中をそっと、手を引いてくれて。
温かくて、本当に、こっちで良いんだって思ったんです。
きっと、守られていたのなら、その子達なのだろう。
お礼を言いたいのに、きっと此処からでは二度とお礼なんて言えない。
だから、心の中で、そっと、ありがとうと言うしかないのだ。
それだけで充分だと、言われているような気さえして、困ったもので。
「…きっと知らない間に助けて差し上げたのでしょうね。」
『そう、なん、です、かね?』
「ええ、きっとそうです。」
『コルン、さんも?』
「ええ。」
きっと。
『…そっか。』
「ええ、そうですよ。」
「……正直探し物はあるんですよ。」
「アルトリア…」
「でも、貴方方に其処迄してもらう訳にも行きませんし、それに。」
『私が私の手で見つけないといけないんです。』
「メル様……」
『あの、そのついでで申し訳ないのですが、皆さんにお聞きしたいことが。』
「ん?」
「なんでしょう?」
そう輪を持たない者達が首を軽く傾げて聞く。
メルは席を立ち、彼等の元に掛けていた鞄を持って指を指した。
『これの名前を、知っていませんか?』
それは、白と黄色の花が咲く、綺麗な華のブローチにも見える。
金色に縁どられたソレは、職人が作ったのだろうか、
まるで、生きている花のようにもみえて。
「…いいえ、しりませんね。」
「嗚呼、俺もだ。」
『コニックさん…』
「……すいません、私も、知らないのです。」
『じゃあ、この華を知っている人は知っていますか?』
「っ!!」
『その人の名前だけでもいいんです!!』
そう掴みかかるメルにリサが止める。
ごめんとそっと手を放す間に、すいませんと答えられる。
「私からは、何も言えないのです。」
『…すいません、困らせてしまいましたね。』
「っ!…いえ、とんでもない。寧ろお役に立てず申し訳ございません。」
『そんな!もう、充分に貰えていますから。』
我儘を言ってしまった。慎まなければいけない。
どうして食い込んで聞いてしまったのか、分からない。
いや分かる分かるけど、分かりたくないのだろう。
ガタガタと音を立てている気がする。
お前は気付いているのに、どうしてそうするのだと喚かれているのを、そっと
「メル?」
片手で耳を塞いで、そっぽを向いた。
左手で、左の耳を塞いで、右下を見て、調理され、残された料理を見て。
ぎゅっと胸が痛んで口が開いたのを閉じないまま。
目線を料理が見えない方に向けた。
まるで、その時間が、全てを知っているかのように見えて。
急に怖くなったのだ。
怖がらずに見つめてしまえば、いいものを。
私は、本当に、弱い子だ。弱すぎて、直ぐに負けてしまう。
強くなんてないのだ、私は私なんて、強く
「お強いですよ、貴方は、誰よりも、何よりも。」
『え?』
「それだけは、お間違えないように。」
そう言うコニックに、うんとしか言えなかった。
うんじゃないのに、うんと、嘘を言うしか、なかったのだ。
それがどこか、胸が痛くなって、仕方がない。
逃げるようにそっと席に戻り、ちょこんと座る。
食べる気も失せているのに、フォークを持ったメルに構いませんよと声を掛けられた。
『え?』
「無理して食べずとも」
ーいいから食べなさい!!!
早くという声に、ヒュッと寒くなる。
胸が急に痛くなるいや違う、怖いのだ。
メル?と席を立ち、大丈夫?とアルトリアが背中をさすってくれる。
さする?さすってほしかった?そう、いや違う、そうだけどちがう。
ドクドクと胸を脈打つ音が怖い、怖い、いやだ、食べたくない。
でも食べないと怒られる、怖い、駄目、食べなきゃ、飲み込まなきゃ。
そうしないと、怒られるから、叩かれるから、叫ばれるから。
要らない子だと、悪い子だと、天から落とされ、翼をもいで、諦めないといけなくて。
もう二度と、会えない、その時間に、額に飾って迄しても、縋る愚かな自分が、嫌にすら、なれない。
胸を掴み、カタカタ震えるメルに、大丈夫とアルトリアが言うも首を横に振る。
ぽたぽたと涙が出てきて、ぎゅっと鞄を抱きしめ首を横にふるうしかできない。
フォークはずっと、右手に持ったまま。
食べなきゃいけない、飲み込まなきゃいけない。
そうしないと、生きていけないから、許されないから。
片方に突き放され、もう片方にすら、飽きられてしまう。
そうしたら、今度こそ、今度こそ私は独りぼっちになってしまうから。
噛めないなら飲み込んでしまえばいい。ちいさくすれば、唾ごと飲み込めば、飲み物と同じだ。
食べれなければ飲めばいいと誰かが言っていた。
そうだ、そうしたら食べられるから、「食事」は出来るのだ。
そう、私の「食事」。飲み込むだけの私が生きる、たった一つだけしか残されていない、選択肢。
「……流石に、看過出来ませんねぇ。」
「コニックさん?」
『(やめて)』
「っ」
大丈夫、大丈夫だよ、食べれるよ?
そう言い聞かせるようにそっとフォークを突き刺し軽く一口かじる。
それに無理しなくてもというアルトリアにメルは首を横にふるう。
どうせあと一口なのだ。
これくらい我慢して食べてしまえばいいもの。
大丈夫、大丈夫。これを食べれれば、きっと、きっと、褒めてくれる。
良い子だね、お利口さんだね、優しくて強くて、自分達の、子供だねと。
笑って優しく、微笑んで、頭を撫でてくれるだろうから。
だからその為にも、私は良い子で在り続けなければいけない。
食べて食べて食べなければいけないのだ。
この一口すら、食べれなければ、たちまち全てがひっくり返る。
悪い子だ、利口ではなかった、酷く弱く、醜い、
自分達の子供ではないと。
そう、言われているから。そうならないように、すべきだ。
今更変わるものではないというのに、無駄なあがきをするもんだ。
涙を流しながら、鼻水をすすりながらも、かじって綺麗に飲み込んでしまう。
嗚呼、ほら、良い子でしょう?大丈夫でしょう?食べれたでしょう?
私は、貴方の子供で、在れるでしょう?
ねえ、マァマ。私の、大好きな、
こうすれば、貴方はきっと、私を見つけて、抱きしめてくれるでしょう?
こっちを向いて、笑って、あの日の様に、涙を流して。
ごめんね、もう、手放さないからねって、そう、そう、そう。
言って、欲しかった。
手放して欲しくなかった。わかりたくない。こんな気持ち、知りたくない。
なのに、嗚呼、気付いてしまったのだ。食事の大事さを。
残してはいけない、それは私にとって、命に代わるものだから。
残したら、置いて行かれる。この心も、身体ごと。
何処までも冷たく、真っ暗闇の中で、そっと、目を閉じ、耳を塞いで、その胸すらも綺麗に終い込んで、深く深く、眠って夢に落ちてしまわなければならないのだから。
そうできれば、どれ程いいだろうか。
きっと、その深い眠りの先には、私が何よりも大事にしていた、夢が場所が存在しているというのだろうに。
『ごちそうさま』
ほぉら、わたしは、いいこで、あなたの、こどもだ。