随分頭が弱くなったね




そんなこんなでサワアらとも別れたご一考は。

「あったか?」
『いいえ』
「手分けして探しましょうか。」

そういうモヒイトに、それがいいかもなというロウが指を鳴らした。

『これは?』
「通信機だ。付けとけ。」
『声聞こえる?』
「聞こえないはずはないが。」

ああ聞こえたというメルに、これで大丈夫だろうという。

「本当に大丈夫なんですか?彼女にもしものことがあれば殺されるの我々ですよ?」
「大丈夫大丈夫。記憶も戻ってたら気の扱い方も分かってるだろ。」
『まぁある程度は。』
「猶更この広い街を数日しかない時間で一人探せは酷だろうよ。」
「ま、それもそうですね。」
「そんなことせずとも、お前が探せばいい話じゃないのか?」
『そりゃしない方が良い。』

なんでというシドラに、メルは続ける。

『その鍛冶職人、多分物凄く頑固な感じする。
その手のタイプはこっちが楽して来たら
手を抜くか取り扱わないがオチだと思うからね。
あと単純にモヒイト様の手を私が煩わせたくない。』
「メル様の仰る通りです。あとメル様、
お手を煩わせるなどとそんなご謙遜を。」

これしきどうってことない範囲ですよ?
ええ?でも

『力を多少なりとも使うんでしょう?
それは私らの為に使うって、
どうってことある範囲だと思うんですが。』
「……お兄様も大変ですね。」
『え?なんで此処でサワアが出てくるんだ???』
「なんでもありません」
『それこそなんでもあるよね??
ねぇこっちをみていって?ねえ?』

明後日の方を向くモヒイトにメルがねぇねぇと聞く。

「ま、とりあえず手分けすぞ。何かあれば
此処に帰って来るか連絡。時間は太陽が上に上るまでだ。」

はあいと声をあげてメルは一人で動き出す。
その背中をちらりとモヒイトは見つめ、すっと動いた。

『いや〜にしてもロウ様らがこんな機械よく覚えてるよな。』

向こうにあったっけ?そんなあったかなあ?

『にしても髪型すら分からない奴のことなんぞ覚えてるのかなあ。』
「メル様」
『にょわっ!!!』

嗚呼ごめんどうしたのモヒイト様と振り返ったメルが止まる。
いえと笑って話す

「流石にお兄様のこともありますし、二人で動いた方がいいかと。」
『…別にいいけど。』
「では」
『(気のせい?いや、もうすこし)』

メルは先に行き周りを見て軽く走る。それに後を付ける彼。
普通に歩くところ全く動きは同じ。違和感が拭えないのが怖い。
サワアらを呼ぶか?いやそれ程ではないと思う。

そう言えば、人攫いが居たとか何とかいっていたな。
特に昼間に、待て、いやこれ逆か?通信機に手を触れようとした時。

『いっ!!』
「いけませんねえ?そんなことをしては。」
『っあ!!』
「流石にばれてしまいましたか。」

不味いと思って多分天使じゃなければ絶対痛いと股にそって
上に足を上げる前に、首元がひんやりとした感覚に、
身体の力が一気に抜ける感じがする。

上に腕を掴まれていたのに、ぶらりと身体が伸びていくのを
一度腰に手を当てた後、背中と膝裏に移動させ、ゆっくりと
身体を抱き上げたモヒイトに、メルは首をこてんと傾げる。

あれ?いま、なにが、おきてるの?

『あれ?』
「流石にあれ程の力を入れられると此方も難しいのでね。」
『も、ひい、と…?』
「ええ。モヒイトで合っていますよ?エフェメラル様?」
『あれ、でも、ちがう、んじゃ』

まずい、金の首輪の存在をすっかり忘れて居た。
力がだらんと抜け落ちて、眠たいこの思考回路に、
たたき起こそうとしても難しい。

嗚呼これ敵に出来たら
クソ楽なのに出来ないのが腹立たしい。

『っん、や、だ、めっ』
「そうですか?何処か調子がわるいのですかね?」

身体の力が入っていないご様子。
それはお前が付けたコレのせいだわコレの。

「大丈夫、在るべきお方の元にお連れするだけです。」
『…っや』
「なんにも、考えなくていいんですよ?」
『な、んにも?』
「ええ、そう、なんにも。」

コツコツと足音が規則正しく鳴り響く。
温かい温度に、うつらうつらとし、
そのまますっと目を閉じるメルに、ニコリと微笑んだ瞬間だった。

「その方を放してもらえましょうかねえ?」

模倣よ。そういった本人が杖でばっと自分らしき者に攻撃をする。

「おやおや、私の偽装とは、随分と手の込んだことを。」
「それはこっちのセリフです。まぁもっとも?本物がどちらかなど」

すぐにわかるというもの

ばっとメルに傷付かない様に近づき取ろうとすればすぐに距離を取る。

「っと、この子がどうなっても?」
「っぐ」

くたりと腕の中で寝るメルに、
針を刺そうとする彼に、流石のモヒイトも動きが止まる。

メル様と呼んでも幾らメルでも目の前に
自分の瓜二つがいるとは、何なら模倣と分かって
やすやすと付いていく彼女でもないと、
ちらり違和感を感じ察する。


「…貴方ソレを何処で手に入れたのです。」
「さあ?」

ニヤリと自分の顔で笑わないで欲しい。
物凄く腹立たしい。

メルは未だに、その彼の中で息を吸うのもやっとにみえる。
その子はお前みたいな下界の者が触れて良い者じゃない。

ずっとずっと、待ち続けた者が、漸く触れて、
前を歩こうとしているのだ。

こんなところで、彼女を連れ去られてたまるものか。


「その行為…神への冒涜とみなしますが。」
「この子は元ある場所にお連れする身。」
「ほお?それはさぞかしいいところなんだろうなあ?」
「っ待ってました!!」

ロウ様!!!

上から聞こえたロウの声に後ろを振り返る隙が生まれる。
その隙にモヒイトが彼の腹を蹴り、模倣が解かれ姿が現れる。
メルはその間にキャッチし、メルを取り戻した。

「メル様、メル様起きて下さい!!」
『ん…んん、あ、れ?も、ひい、と、さま?』
「〜〜〜っ、嗚呼、よかった。
これ以外何もされていませんよね?」
『んん、たぶん、そう?』

今はずし、あれ?外れません???

「無駄だそれは外れないっぐ」
「外し方を教えんかったら破壊し殺すぞ」
「ロウ様…破壊神のお言葉ですそれ。」

そう脅すロウに、モヒイトが半笑いである。

「っぐ、しらん、だが、言っていたのだ。」
「ああ?」
「完璧なる元の金の首輪だとな。」
「完璧?不完全があるのですか。」

ぐああという声に、聞かせないよう
メルを連れてモヒイトは距離を取った。

『ごめ、なさ、わたし』
「いえ、まだ記憶を取り戻した時に
貴方が入れ替わる瞬間を見なかった
私らの落ち度です。」

寧ろご無礼をすいません。
いいえ、そんなことない。

『だって、ちゃんと、つれてきてくれたでしょ?
うれしかったから!』
「ーーーっ、ほんと、お優しいですね。」
『へへ、あっ、さわあ』
「…すいません」
「いえ。」
「一応死なない程度に吐かせるつもりですが、
完璧なる金の首輪といっていました。」
「っ…それが本当なら少々まずいですね。」

なんなのこれとメルが触ろうとすると、
そっとモヒイトが手を戻す。

「この首輪は華神らの力が余りにも
強いため封じる為のものでした。
まぁ正確には華樹神の力です。
完全なのは華樹神の力そのものを封じるに等しい物。
一度付ければ外すのは困難な上に、
触れたらその分気を吸い取られます。触れないで。」

『そんな』
「大丈夫、ちゃんと外してあげますから。」
『うう、ごめん。』
「いえいえ、それより。」
「ええ、旅を綺麗に進めるには少々。」

ねぇとメルがサワアの服を掴んだので、
何ですとまた下を向いてくれる。

『あるけるよ?』
「いやその程度だと歩けるのもふらふらするでしょう。
気を吸い取られると言っても力を使う時の話しなので、
使い続けなければ命に支障はないはずとのこと。」
「無理なさらないで下さい。」
「まぁ無理したらしたでこのまま旅にご同行しますが?」
『うっそれは…こまる、かも。』

流石に抱かれながらは恥ずかしすぎる。
まだ華樹神にもなっていないのだ。
最終的にはこうなると思えばまあ。

「予行演習には確かになるでしょうねえ?」
「お兄様???」
「っくくく、もちます?」
「そんな命知らずではないですよ。」

おやそうですか。

「アルメリア様は何か仰られて?」
「前に付けられたことがあるとはお聞きしていますが
割と本格的なのは壊しているからないはずだとも。」
「では模倣品と?」
「それにしては完成度が高すぎる感じしますね。
モヒイトさん、メル様の握力を測ってもらっても?」

それが指標にもなります。わかりました。
そう言ってモヒイトは手を出す。

「メル様手を握って思いっきり力を入れて下さい。」
『っ、こ、こう?』
「…全力です????」
『うん』
「…駄目ですね。ペンが握れるかどうかレベルです。」
「ほぼほぼ完成と変わりませんね。」

眉間にしわが寄るのに、大丈夫ですよと答えられる。
うう、だとしてもへました。

「狙われるとはお聞きしていましたが、
これは2組体制の方がいいのでは?」
「そうですねぇ、割と困りました。」
『しろい、ところためしても?』
「構いませんが、向こうで外せるかどうかも試してもらっても?」

勿論と言ってメルはふわりと溶けて消える。
目を開ければその白い世界と額縁と、綺麗なその時間。
一応後ろを向いたら、
その、0番目に願った文字が綺麗に書かれていた。

『やっぱり…首輪は外れないと。』

なら駄目か、すっと溶けて戻ろうとしていた時に

『ん?』
「お帰りなさい、どうしました?」
『あ、いや、もっかい、』

戻ろうかと思ったが、身体がズンと重くなったのを感じる。
嗚呼これ気を使うのか流石に知らなかった。
急に眠たくなった感覚に、寝ていてもいいですよと言われるが、
いや普通にこのままの方がと動く。

「大丈夫ですから。ね?」
『っで、も…』
「ね?エフェメラル」
『…ん』
「……寝ました?」
「ええ」

戻って来たと思えば、どっとした疲れにそのまま疲れて寝てしまう。
それに、路地裏から困りましたねぇと出てくる中。

「え?!?!?メルちゃん?!!?」
「おや?この子を知っていて?」
「ええ、昨日この服買ってくれた子なんですよ。ってあれまさか」
「すいません、この子のツレでして。
先程遊び疲れて寝てしまいまして。」
「嗚呼すいませんそうでしたか。にしても可愛い〜〜〜」

寝ていても可愛いねえと頬をつつくお姉さんに
んんと嫌そうな顔をしつつも甘えた声が聞こえる。
それにきゃーと小さな声ではしゃいでいるのをみて
彼女が見てくれていたのかとサワアはぺこりとお辞儀した。

「すいません昨日は彼女が世話になりまして。」
「いえいえ、それにしても会えてよかったね?メルちゃん。」
「え?」
「え?貴方がこの子の言ってた会いたかった人じゃないんですか?」
「ああいや、それを私が言うのもなんですが、そう、なんでしょうかね?」
「明らかそうですよ。お兄様。」
「だそうです。」

弟が言っているので。あのですねえ?

「っふふ、だからそんな身を委ねてくれてるのね?可愛い。」
「っ!」
「流石にそのままだと暑いですよね?」
「ああいえ、一度身内にこの子を渡すつもりでして。」
「ああご家族がいらっしゃるんですね!!」

流石に可愛いから一人だけ歩かせたら襲われちゃいますよね。


ええそうですね。貴方の仰る通りで、
つい先ほど襲われかけていたというかなんというか。
一応未遂になってよかったが、これ以上の危険は怖い。

「またね、メルちゃん。」
「え?あれ?お嬢さん…?」
「…白昼夢だなんて言いませんよね?」
「いやまさか」

記憶にもない。本当にいや、そんな。

「メル様?貴方、一体どこで。」
「…先を急ぎましょう。」
「そうですね」

付けられていますねえと言うサワアに
どうしますとモヒイトは聞く。

「とりあえず手筈通り」
「わかりました。では、私はこれで。」

ええと言ってサワアはメルを抱き上げたまま一人路地裏を歩く。

「全く、貴方という者は本当に狙われやすいですよねぇ。」

その華が綺麗に咲き誇った時、誰もの願いを彼女は叶えてあげるだろう。
例え不可能だとしても、可能に変えようと、未来の為だけではない。
出会う人全ての者に、祝福を、幸運を、共に過ごそうと走って来たのだ。

その感情は、誰もが得られるものではない。
よくぞ此処まで悪に落ちず、善のまま、清らかな状態を維持しているというもの。

その心は、魂は、汚れる場所に生きていたとしても、決して染まらない。
染まるなんて、彼女自身が許さないのだ。
誰かに染まる?そんなこと、彼女は望みすらしない。
だって彼女は既に染まり切っているのだ。

自分という、時間だけに。染まり切って、困り果ててしまうくらいには。

「そう、こうやって、貴方は騙すのでしょう?」

背後に来た刺客の背後が、太陽に隠されて嗤うのだ。

「コレは私ではないのだと。」

++++++++++

『や〜〜〜ご協力ありがとうございました。』
「いえいえ」

そうサワアの背後に出てきた刺客を綺麗に縛り倒して蹴り倒した者が満足げに腰に手を当てていたのを前にしてお辞儀をする。
周りの者達はなんら気にしていないようだ。

ことの内容はこうだ。

メルは自分の記憶を綺麗に取り戻せてはいないものの、
自分の記憶にある綺麗な模倣を作り、ロウ達と話す。
そのロウ達と通信機を渡している中、
実はモヒイトだけ「敢えて」その場所から捌けていた。

モヒイトに成りすました不審者に、
メルの記憶上にあるメル自身の模倣に金の首輪を付けさせる。
メルの記憶には金の首輪をつけた記憶もちゃっかり残っている為
それと同じ様に動きを合わせていたのだ。

捌けていた本物のモヒイトがロウと合流し、模倣していたメルを保護。
保護したメルは、先程まで居たサワアに本物のモヒイトが彼女を渡す。
そうすることで保護したメルの本物さが強調される。

モヒイトがサワアと少々会話をし、路地裏で二人が捌ける。
一人抱き上げた模倣されたメルを必ず不審者らは何が何でも取りに来るはず。
道が狭い上に戻ることも上に飛び上がるのも難しいとして、
範囲攻撃系の二人で突っ込んでくることの可能性が非常に高かった。

背後から振り返っている間に、
もう一人が振り返るサワアの腕の中で眠る
模倣されたメルを奪って消えるという作戦。

だが、それは一瞬の隙が出来れば全て台無しになる白昼堂々とした作戦だ。


サワアの腕に眠る、綺麗な「模倣」されたメルに「気が付いた瞬間」


一体どれ程の驚きに、その思考回路は真っ白になってしまうのだろうか?


一番大事なところは、模倣されたメルを捕らえる奴の思考をとにかく鈍らせることだった。
その為、全く同じ姿で全く同じ状態のメルが姿を現したその瞬間を作る為に、
サワアは敢えて敵に背後を取らせ、更にその敵の背後に、本物のメルが登場し、頭を足蹴りして意識を飛ばさせる。

後は隙が出来た目の前の敵の意識を飛ばし、捕まえたということであって。


「…この作戦をメル自身が全部取ったというのが意外過ぎて口が開いて仕方がないんだよなぁ。」
「ねぇ本当にサワア様達に言われてないの?」
『ねぇなんでこの人達私の事信用しないの???』
「っくくく、さあ?我々全員彼女に告げ口もヒントも何にも入れていませんし?」

なんならあの子達と同じ意見ですが。
えっ泣くよ???メルちゃん泣いちゃうよ????

「それにしてもお見事ですね。まさか此処までうまくいくとは。」
『普通に考えて、狭い路地裏で何をすれば確実に捕まえられるかだよね。
ねぇ?君らさあ?驚いた?びびった?怖かった?捕まえようとした奴が違うことに。
私が本物であることに。その手を伸ばす恐怖に。』

ねぇねぇ、いま、どぉんなきもちぃ?

そうメルは悪い顔をニヤニヤしながら聞くその目は姿は悪魔であり鬼である。

『何処から変えてた?何処で間違えた?完璧なのに、目の前にいる者は夢だ。
そんなの在り得ない、馬鹿で愚かで、考えなしに突っ走る子供の様な子が、
こんな完璧な模倣を作れるなんてありえるわけがない嘘だ幻だ。』

目の前に居るこいつが模倣であるのだと。

『そうやって思ってさぞかし楽しかっただろう?
面白かっただろう?気持ちいい夢を!
…私は貴方らに堪能させてあげたというのに。』

感謝の気持ちも、なぁんにもないのだから。

『あーあ。だから人間のままで華など咲かせれないのだから。
自分の力が叶えられずにその手を下すだけ等…滑稽だよなぁ????』
「…あれ、本当にメルなの?」
「少なくとも幼い頃の彼女ではないですね。」

そうリサに指差されたメルに対して、
サワアは少し冷や汗をかきつつも目を閉じて答える。
メルの言っていることが全部ならば、
とんでもない者を作り出したということになるのだ。

「メル、貴方何処まで自分を欺いて生きてきたんですか……」
『さあ?この作戦が全てを物語っているとでも言ったらいいかな?』
「…本当に末恐ろしい人ですね。貴方は。」
『ふふっ。にしてもいいなぁ羨ましいなあ?』
「え?」
『だって目の前にあった自分の願いが叶わなかったんだよ?
其処に、信じていた願いが、自信のあった想いが打ち消された瞬間を。
いいなぁ、羨ましいなぁ?狂いそうになるその瞬間を味わえる。』

その、まだ生きようとしている魂が感情が心が想いが。

『壊れていない状態で、別の色に染まれる瞬間を、
貴方達は味わうことが出来るのだから。』
「…本当にこの子魔女や悪魔じゃないんですよね????」
「全く違いますよ。なんならその二つは華が枯れているのが目印なので。」

あの子華咲かせてすらいないじゃないですか。
いやまぁそうですが…


「強いてイレギュラーと言うなら、メル様の衣装を買われた
店員さんに会った時くらいですか?」


そうサワアとモヒイトがメルの服を買った
店員さんに二人が遭遇するのは予想外。

良かったと嬉しそうにしていたが、
あの感じ、恐らく模倣だとバレたことだろう。
それに気付かない様にサワアやモヒイトは隠していたが…。


『おかしいよねぇ』
「何がです?」
『バレないように、似たような金の首輪が
売られていたから私今コレ嵌めているというのに。』
「は!?!?!?」
「正気ですか?????」
『当たり前でしょうが。この場所で会った人全員を騙さないと何処でほつれが出るかもわかりゃしないというのに。』

だって私だよ?

『お前ら天使だけでなく神々全て、華樹の主すらも騙した、
愚かな天使と人間の間に位置する子供だよ?』

これくらい、朝飯前にも満たないものだというのに。

にやにやと笑みが止まらないメルに、
本当にしてやられましたと二人はため息を吐いた。

「それでこいつらをどうするつもりだ?」
『とりあえずサツに売り飛ばすがオチだろ。』
「さつ?」
「警察。つまりここを取り締まる者達に、ですよ。破壊神シドラ様。」

そうシドラが聞きなれない単語にアルトリアがフォローを入れる。
その中ひたすら軽くおいとかなぁとか喧嘩腰にメルが腹を背中を軽く足でつつきながら聞く。

もうその精神攻撃はきつすぎるだろうに。
この世の恨みや妬み全て奴らに叩きつけてるように見えなくもない。

「メル、流石に其処迄にして差し上げては?」
『え〜〜〜?優しすぎない?もっともっと、
もっとしてやらないと気が済まないというのに。』
「此処は私の顔を立てて、ね?」
『もう、そう言われるとそうするしかないじゃん。』

むすっとするメルに、すいませんとサワアは笑って答える。
メルはトテトテとサワアの傍に駆け寄って下を向いてぶー垂れていた。

「…っアレはもう悪魔の生まれ変わりか何かだろ」
「嗚呼?」
『言わせておいたら?寧ろそっちの方が良いよ。』
「え?なんで?」
『だって悪魔の生まれ変わりの、天使と人間の間に産まれた子供でしょ?』

それってさ?

『全部合わせて全てを掴めば、もう怖い者なしじゃない?』
「……貴方何処まで高みを望むおつもりで?」
「というか既に怖いものなしじゃない。」

貴方全王様の神名言える状態の時点で最強だよ。
あれそう?

「ウイスさん曰く、メル様は11番目の時に
「全王様に早く帰って来て遊ぼう。」
とも仰られていたと聞いていますからねぇ。」
「間違いなくメル様がお戻りになられるのを
分かられている様子でしたし。」

まぁ、既に怖いものなしなのは皆が知ることでもあるのだ。
サツならぬ警察らしき取り締まりの人間に渡した後、
さぁ何処を探そうかとメルは周りを見ていた。

此処はスラムから少し外れた、まだ安心できそうな噴水の近く。
木々のベンチ下で少し休憩をと、サワアはメルを座らせていた。

大丈夫だよと言うメルが金の首輪を取り外す。
模倣されていたメルは綺麗に泡となり消え、
モヒイトが模倣されていた完璧なる首輪を消し去った所で声がかかった。


「まったく、一体どこのどいつだ。煩くて仕事にならんじゃないか。」
『え?』
「ん?」

噴水の近く、正確には正面の左奥からサンダルで歩いてきた老人に
全員の目が彼の目線にへと行く。

「お前は…」
「嗚呼?なんだお前たち、余所者だったか。」

どうりでそうなっているわけだ。
と言った男性に失礼ですが貴方は?
と、モヒイトが声を掛けた。


「俺は鍛冶職人のリートだ。」
『りー…りー…りいいいああああああ!!!』
「うおっなんだ今度は!!」
「あ、あの!リートさん!!」

そうメルとアルトが近づくのに、おうおうと焦る男性。


『「ちょっとお聞きしたいことがありまして!!!」』