パラダイス・ロスト




前回のあらすじ


メルの作戦に、周りも目を丸くしたくらいには大成功させました。



「…成程、そりゃ大したもんだな。」
『えへへへ』
「余り褒めないでやってもらえませんか?
彼女褒め過ぎると調子に乗って其処ら辺で怪我するので。」

主にこけたりですが。
そう言うサワアにそんなこと無いもんと
メルは強く言って座っていた椅子からバッと立ち上がる。

『い゛っ!!!!!』
「はぁ…もうだからそうなるんですってば…」

がっと鈍い音が響き、メルは自分の膝が
予想以上に低い机に当たったのに苦しめられ、
そのまますっと席に座り直す。

忙しない嬢ちゃんだなと軽く引いていた鍛冶職人のリートに、
まぁまぁとアルトリアは苦笑いである。

「それで、本題なのですが」
「嗚呼、星屑のコンパスが欲しいんだろう?
いいぞ。幾つかなら出来る。」
「ええできませんよね…ってえ!?!?!?」
「いいのですか?」
「勿論、其処の嬢ちゃんだけでなく、
お前さん達はこの街の救いのヒーローみたいなものだからな。」

あの盗賊らは結構面倒らしく、
姿を現しても模倣ばかりで本体が捕まえられなかったらしい。

だがメルの見た目も中身もお茶らけたこの状態を見て
どう考えても模倣を一度作って様子をみたら
すぐに本体で一気に片付けたら早いと近づいてきたのだろう。

それをメル本人が狙って見ていたのも、全く知らずに。
調子に乗ったのは一体何方だというのだろうか?
本当に一杯食わされた上にメルの味方が居る目の前で
滅茶苦茶喧嘩を売られて買えずに聞くしかなかった時。

最早羞恥を越えた、地獄以外の何物でもないだろうて。

勿論、被害は被害。メルのことは色々聞いたらサワアらに
話を通すとは聞いていたが、そうしなくても天使の端くれ。
記憶やらなにやらを見れば普通に話の内容など見るに容易く、
一応聞くだけは聞いておくとして話を流していた。

その不審者らを、メル達は捕らえたのだ。
街の女性や子供達もこれで昼間普通に暮らせるというものらしく、
ちょっと照れくさいねとメルは縮こまって照れ隠しに笑って誤魔化した。

褒め慣れていないのは無理もない。

だって12の時間を走り切るつもりでメルは自分を傷つけてきたのだ。
自分は捨てられた、見られない、
手を取られない、手を伸ばしてはいけない。
その記憶ごと、綺麗に忘れて、もう、いっそのこと、
最初から叶えられていたのだと錯覚させるように、
その思考回路を狂わせようと計画してのことだったのだ。

狂う中、褒めるなんて必要は一切ないのだ。
ましてや、人に褒められることなど、しても理解できない。
理解する時間を、彼女はその世界に奪われてしまったのだから。

華樹のある、あの広くても小さな、箱の庭に。

その身を、天使の代わりに、捧げる為だけに。


「いや寧ろいいのか?俺の様な鍛冶職人が作るソレはありきたりな奴だぞ?」
『いやもうそれだけでいいです。』
「お気になさらないでください、彼女はこういう方ですので。」
「欲が無いなぁ、お前さん。」
「それは皆が思っていることでしてね……」
「っくくく、それにしても星屑のコンパスは道を指し示すだけだぞ?」
『もうそれがいいんですそれしかないんです。』

主に我々迷子になりやすくてですね。
嗚呼成程と苦笑いするリートに、サワアらも少々苦笑いで苦しくも答える。

「成程、あいつが気に入りそうな嬢ちゃんだな。
分かった、ちょっと茶でも飲んでて待っていればいい。」

なんなら、其処のお嬢さんらにあえられとけ。
そう言われて、ん?どこと後ろを振り返る。

『げっ!!!あっちょっとまって?!?!こっちこないで?!??!』
「あらあ、寂しいわあ?貴方にありがとうの
お礼一つも言わせないで来ないでなんて言うの?」
『んぐ!!!えっ、あの、その、えっとお』
「ふふふ、可愛い。」
『〜〜〜〜!!!!!!!!!』

席を立ち、メルは一目散に距離を取った。
其処に居たのは、サワアとモヒイトが出会った店員さん本人だったのだ。
困ったようにいう彼女に、メルはもじもじとして、それ以上距離を取らなくなる。

それに気付いた、いや、そのつもりで言った女性が
そっとメルに抱き着き、可愛らしい、愛らしいと
まぁ愛でる愛でる。愛でまくる。

背中から抱き着いている女性にメルはタジタジした後、
顔を赤くして俯き目をウルウルとさせて上を向いた。

『ねぇ、も、やめて?は、っは、ずかし、いよ……』



私そんな可愛くないのに。




メルはずっと肩をすぼめ、頬の熱を手で
ペタペタと冷やしているだけで
彼女の腕をそっと優しく掴んで
逃げずに、ただ腕の中で照れ続けていた。

そうまた俯くメルに、目を丸めた女性が
ねぇとサワアの方を向いてメルの事を指さして言う。


「なんでこんなに可愛いの??天使?」
「ええ、ある意味天使ですからねぇ。」

間違ってはいませんよ。

『っな!わ、私天使じゃない、よ????』
「まぁ純粋な天使ではないですが、
ある意味天使ではありますからねぇ〜?」
『あっ!お姉さん駄目だよ!?
あの人お姉さんのことたらしこんでるだけ!!』
「たっ!?!?!?!メル?!!?!?」
「あらあら〜でもメルちゃん?それ多分ね、違う。
たらしこんでるんじゃなくて、
たぶらかすって言いたいんじゃなぁい?」

あえ?違うの?
違うねぇ〜。難しいねぇ〜。

そう撫でる彼女にメルはきょとんと首を傾げて言う。
思っていた言葉が逆になっていたことにも気付いて居なさそうだ。

逆に何処でその言葉を知ったのか問い詰めたいところだが、
今聞くのは止しておこう。一応人目があるのだから。

人目が無ければ問い詰めるのかとは、思っても聞いてもいけないことだ。


「それにしても、本当にありがとうね、メルちゃんそして皆さん。」
『え?なんで?』
「貴方が拉致られたらどうしようってのもあったけど、
私達も正直怖くて外出るに出れなかったから。」
『お姉さん……』
「…これからはのびのびと外に出られそうですね。」
「ええ!なので、貴方にコレをと。」

そう彼女が取り出したのは、エメラルドの宝石が光輝くネックレスだった。

『っそんな大事そうなもの貰えません!!!』
「いいえ、これくらいさせて頂戴。」
『いやでもそんな大層なことしてませんし…』
「貴方が頑張ってくれたから、これから先
多くの人達が普通に何も心配しないで、
日向の下で道を歩くことが出来るというのに?」

それでも、貴方はコレを受取ってくれないの?

そう言われて、ぐっと身体に力が入った後、
息を吐きながら肩を下ろし、手を前に出した。

『ずるいよ、お姉さん…そう言われると
受け取れないとか出来ないじゃん……』
「っふふふふ。優しい貴方ならこうしたら大丈夫だと思ってね。」
「滅茶苦茶飼いならされてる……」
「分かっていますねぇ〜〜」
「待たせたな。」

中から出てきたリートに、職人さんとメルが声を上げる。
待ってと言われて、ネックレスをお姉さんから着けてもらった。
胸元でキラキラと光るその光におおとメルは目を丸くしてみていた。

「こいつがお前らの望んでいた、星屑のコンパスだ。」

其処には3つもあり、色がそれぞれ違うのに夜空かとメルがぼやく。

『私コレがいい。』
「っ…嗚呼、お前ら貰ってけ。」
「って言っても2つもいらない気が…」
「どうせならアルトリア持ってろよ。お前も行方不明になるだろうし。」
「ええ?私そんなこと無いと思うけど…」

無意識下でなるだろうが。
嘘だぁ。

「じゃあ私コレね。」
「余った一つはお前達がアタシらと行動する時か、
誰かが持てばいいだろう。」
「わかりました。それでは付き添いに当たる
天使にでも持たせるとしましょう。」

サワアは残った一つを手に取る。

「…お前、この意味を分かって取っただろ。」
『さあ?どうでしょうね?』
「メル?何を知って???」
『言わないよ?』
「みませんから言って下さい。その口で。」
『言わないが?!?!!?』
「私にも言ってくれませんか?」
『天使二人で言っても駄目ですが?!?!?!?』

あとそんな可愛いこと言わないで!!言っちゃうから!!!

そうメルはモヒイトからのお願いを、
頑張って言わないと拒絶したのに
そうですかと軽くしょげてみると、
メルがわなわなと震えるではないか。

余りにも表情がコロコロ変わるものだから、
面白くてついつついてしまう。

『そういえば、お姉さんこの石って…』
「…貴方が一番行きたい場所を指し示してくれるものよ?」
『一番?何処にもなければ何処を指すの?』
「っ!それは、きっと此処だけね?」

そうお姉さんはメルの胸をトンと、優しく叩いた。


深いエメラルドグリーンが、光に充てると
綺麗な淡いペリドット程の黄緑色へと変化する。
少し大きめのティアドロップに、
金色のネックレスがキラキラ輝く。


『ん!』
「ふふ」
『ねぇ、お姉さん』
「ん?なぁに?」


それを見た後、メルは彼女の目を見て、言う。

それは何時しかの時間に取った、
少し歪な石の色に肌触りに間違いがなくて。
やっと戻って来てくれて、とても嬉しくて、
胸が張り裂けそうになるのを抑えた。

あの残酷で、酷い、現実だった、
大きな手を取って歩いて入った、小さなお店の中で。

二人して座って、夢の時間だったのかと、
残酷な現実を打ち付けてくる、
液晶画面の向こう側に居た、
天使らの姿を見ていた、一瞬の様な永久の時間に。

戻ってきたみたいに感じれて、涙が出そうになったのを、
頑張って張り裂けそうになる気持ちと一緒に抑えて、
メルは彼女に、精一杯のお礼と、愛を込めて、微笑んだ。



『ありがとう』



私は知っている。


宝石にも宝石言葉というものが存在しており、
エメラルドの宝石言葉は「幸運」「幸福」
「安定」「希望」「夫婦愛」という意味だけでなく
宝石言葉の他にも「愛の成就」という意味をもつことを。


私は知っている。


実はエメラルドという宝石は、
とても傷付きやすい石だということを。
「傷の無いエメラルドを見つけるというのは、
欠点の無い人間を探すくらいに難しい」と言われる程のもので。


私は知っている。


エメラルドは魔除け効果のある石で、
「魔女はエメラルドには近寄れない」
という言い伝えがあることを。


私は知っている、知っているから、この一言を彼女に捧げたのだ。
その言葉に、彼女がこれから、誰よりも幸せになりますようにと。
そっと、願いを込めて、送ったことに、気付いてくれたのだろうか?


嬉しそうに、どういたしまして!と笑って答えてくれたのが、
何よりも嬉しくなって、私も笑い返してしまったのだ。



「…そいつは、前に俺の弟子入りで作った自信作じゃねぇか。」
「ええ?!貴方弟子入りさん!?!?!?」
「ええ。お師匠、改めてお久しぶりです。
色々あって出れませんでしたのをお許しください。」
「あの不審者らがいたからな。気にするな。
明日からでも鍛え直してやろう。」
「っ!はい!!喜んで。」


ニコニコするメルに、よかったねとアルトリアが声を掛ける。
うんと嬉しそうに笑うメルに、それにしてもとリートが話を続けた。


「そいつはここらへんでも中々採れない鉱石から作っていてな。」
『え゛おかねは』
「そんなの取ったらこっちが悪いわ。」
「…それに、その石が光る以上、お前さんに相応しいという者、か。」
『え?なにを言って』
「…成程、そう言う事でしたか。」
「随分と気に入られますねえ?」

何かに気付いた天使二人組に、
あっ待って聞かせと二人の元に近づき腕を捕まえる。

等価交換として、先程の話を掘り返しても?
と言うサワアに、ううううとメルが唸ることに、
モヒイトもサワアも二人して笑うと、メルも笑いだした。

「仲がいいんだな。兄弟か?」
「いいや。でも義理に後々なるかもな。」
「あらあら〜めでたいわねぇ。」
「そうか、これで、やっと、終わるのか。」
「…リートさん?」
「なんでもねぇ、さ、お前らさっさといったいった。」

これから忙しくなるんだそういう彼に、
メルはお世話になりましたとお辞儀をする。
嗚呼とリートは言って手をあげたことで、
メルらも家から出ることにした。



「それにしても、随分と可愛らしい贈り物を貰いましたねぇ?」
『…うん。ねぇ、サワア。』
「なんです?」

外に出て歩いていたのを止めたメルに、サワアも立ち止まり振り返る。
メルはエメラルドの石を手に取って、手の上に置いてその光を見つめながら言う。


『いいのかなあ、こんなに、うれしくて』
「…いいんですよ、メル。その気持ちを、大事に持っていてあげて下さい。」
『いいのかなあ、こんなにも、しあわせで』
「…ええ、いいんですよ。もう、いいんです。」

なんにもよくない、まだ、まだ幸せに満たされる訳にはいかないのだ。
旅は終わっていない、その最悪を抱きしめてやらねばならない。
こんなに満たされれば、あの日のように、手を伸ばしても届かなくなってしまいそうで、私は怖いから、怖かったから、この日までずっとずっとずっと、我慢して殺して耐えて堪えて絶えてきてしまったというのに。

それでも、この感情は、想いは、どうしても、膨れ上がってきてしまって。

『うれしいって、こんなにも、しあわせなんだね?』
「…っ、ええ、そうですよ?」

手に握り締めて胸に当てて噛み締めていうメルに、
サワアは彼女の涙をそっと拭った後、抱きしめて背中をさすってやる。
捨てなくていい、見ない様にしなくていい、殺さなくていい。
痛みが、ふわりと、ゆっくりと、泡のように溶け、消えて無くなっていくのが、恐ろしく怖いのに。

何処か、穏やかになった感情に、メルは嬉しくて目を閉じて笑い、サワアの胸に少し頭を押し当てた。

時間なんて、望んじゃいけない。
そうしたら、もう、この感情は、同じ繰り返しに入るだろうから。
でも、嗚呼、夢なら許されてくれるというだろうに。

此処は現実だから、思ってはいけないのだ。
嗚呼、夢だったら、強く想うのに、狡い世界なのだ。残酷な、世界なのだ。


『(ずっとずっと、この感情が、この心に、残り続ければいいのに、
だなんて、そんな我儘。この時間で想ってはいけないというのに。)』


なのにその感情を抱きしめてあげたいと思ってしまう。
駄目なのに、分かっているのに、愚かだと思う。憐れだと思う。
時間が告げるのだ。そうしてはいけないと。
私が一番嫌だと知る、残酷に近づいてしまうと。

だから、逃げて逃げて、逃げ続けていたのだというのに。
戻ってきてしまうのだから、本当に、愚か以外の言いようがないのだから。


嗚呼、本当に、


『(これが二度と醒めない夢の中ならば。
私はこの小さな願いすらも、口に言えたというのになぁ。)』


ずっとずっと、この感情が、続きますようにだなんて。

そんな、願いを。

「…言ってもいいんですよ、願ってもいいんですよ。」
『…ううん?言わないよ?願わないよ?』
「…っ、強情ですね。」
『メルですから』

その一瞬だけを、望んだ者ですから。

「っふ、なら、大丈夫ですね。」

ほらそこのお熱二人早く行くよーそう言われて
待ってそれうちらのことお!?違うよね?!と反応して走り出すメルに
サワアはクスクスと笑ってメルと彼女の走りを止めて振り返させた。

ニコリと微笑む彼に、何時しかの、額縁を思い起こさせる。

其処に、生きている。

今を、生きているのだ。

息が出来るのが、怖くないのが、怖くなってしまいそうになる。
でも、何処かこの気持ちは穏やかで。

「なんでもありません」
『…うん』

言いたいことは、お互いに言わない。
伝われば、それでいいと、今は言うしかない。
この先が何処に行くかで全てが変わるのだ。

『ねぇアルトリア!』
「なに?」
『君って物語の終わりは何が好き?トゥルー?バット?』
「ん〜それ二択?」

メルは駆け足でメルトリアの隣に行ってから歩きながら話す。
その後ろをサワアが歩きつつ、前はモヒイトとシドラ
その前を地図を持ったリサとシドラが歩いている状態だ。

これから港に向かい、元の港町に戻ってから、
次の街へと移動する手筈にするつもりだ。
路地裏を通っても何にも怖くない。

『ううん三択』
「まって下さいお姉さん。一択消えてないですかい?」
『あれなんだっけ、ねぇだからアルトリアに聞いたのに。』
「いや私がその感覚分かるわけがないでしょうが。」
『ええ〜〜あのほら、間のやつでめちゃいいやつ。』
「いいやつ??トゥルーよりもいいやつ???」
「そのとぅるとか何とかはなんだ一体。」

そうロウが言うのに、物語の終わりの言い方みたいなものですと告げる。

「ハッピーエンドだと、幸せな結末で終わるもの。
バッドエンドだと、不幸せな結末で終わるものを指します。」
「ほぉ、幾つかあるのですか。」
「グッドエンドとか、幸福へと繋がる結末で終わるもので、
ノーマルエンドは一部不明瞭な余韻を残す結末で終わっていることが多いです。」

色々な物語の終わり方がある。
ゲームだと、そのエンド全てを回収したら
トゥルーエンドに入ったりすることもあるのだ。

「そのトゥルーエンドはどういうものですか?」
『トゥルーエンドは物語の真の結末。在るべき姿での終わりを示すもの。』
「…製作者が意図した結末に最も近いとされるエンド。
物語の流れとして、一番相応しいとされる、エンドのこと。」

ねぇメルとメルトリアは言う。

「貴方が望むエンドは何処に行くの?」
『…メリバとか言ったら怒る?』

そういったメルに、腕を掴まれ、本気で言ってる?と睨まれる。
おお怖いというメルがにやりと笑うのに、それはとシドラが聞く。

「…メリーバッドエンド。通称メリバ。
当人以外の周囲から見ると、悲劇的な結末で締めくくられるもの。」

ねぇ、メル。貴方、其処に行くために、この12を回っているの?
ぎゅっと握り締める手に、力がこもる。
痛いよというメルに、アルトリアは止めない。

「誰も救われない救済など存在しえない残酷な終わりを。」

貴方は誰よりも、望んでいるというならば。

「私だけでなく、此処に居る皆が其処に行かせる
つもりがないと分かっていて、ソレを言うというの?」
『…っふふ。』
「ま、その時は掴んででも引きずり戻すか、
そっちに連れてってもらいましょうがね。」
『あっ流石にそれはご丁重にお引き取りを。』
「無理ですね。」

わあ〜〜〜〜

『でも私メリバどちゃくそ好きなんだけど。』
「う〜〜わ、メル凄い精神してるね?
もう性格すらもひん曲がってるじゃん。」
『そんな言う???そんな酷いこと言う????』

確かに自覚はあるけど。
あるんかい。

「メリバは滅茶苦茶えげつないんですよ。
例えば、主人公が勝利と引き換えに恋人や
戦友を失うといった大きな犠牲を払ってでも
「俺は本当にこの戦いに勝ったと言えるのだろうか。」
とか考えこんじゃったりして、
物語終盤で親しい仲の人と離別が発生したとするじゃないですか。」

「その時点でバッドエンドとやらではないのか…???」

流石のロウも冷ややかな目でアルトリアを見る。
それもそうだ、内容が内容。

「バッドエンドは、主人公がそのまま仲良い人を追う様に死んだりすること。」
「サラッと怖いことをいうな」
「破壊神であるお前が言うな」
「メリバは、主人公が心の中に仲良い者は生きているから大丈夫と言い聞かせ精神を破壊したまま生きること。」
「…は?」
「メル。貴方、もう片足どころかどっぷり入っててソレを言うの?」

隣で歩いて笑うメルの腕がふわりと溶けて身体が落ちる。
それをぱっとサワアが受け止め、何処に行ったのかと前を向いた。

日差しがちらりと照らされながら、その路地裏の上の方をくるりと回って、
膝を抱え込みながら身体を曲げて、此方を上半身横に向いて言うのだ。


『じゃあ、どうか創ってよ。救ってみせてよ。』

お前らが選択できるのは、

真の在るべき物語の結末トゥルーエンド残酷に歪んだ幸福を見せる物語の結末メリーバッドエンドか。

そのどちらかの二択でしかないのだから。


『ま、不明瞭な状態を維持した結末ノーマルエンドとかでもいいけれどもね。』
「…」
『そう怖い顔をしないで欲しいなあ?アルトリアよ。』
「…ま、いいよ。」
『ありゃりゃ、怒らせちゃった。』

まぁしゃぁないよなあとメルは空からぼやく。
ふわふわと浮かぶ彼女は、気を使って浮遊などしていない。
そう、メルはこの場所を「夢だと勘違い」させているのだ。

それに周りが気付くのは、その後のことであって。

雲行きが怪しくなった所で、船に乗り込んだ。
雨がザーザーと立つ中、流石に迷子にならないだろうと思いながらも
メルは大人しくしておこうとベットに寝転がる。

狭い部屋が何よりも落ち着かせる。
二人一部屋のその部屋。界王神らが文句を言っていたが、
旅の同行なら言い訳は無用である。

ロウ、シドラ。
リサ、アルトリア。
メル、モヒイトの部屋割りで船は進むことになった。

勿論天使であるモヒイトは寝なくて良い上に、
夜になればサワアと一時的に交代するので
部屋割り的にはメルとサワアになるのではあるが。