ペナルティー・クラーズ




「いいんですか?あんな煽ってしまって。」
『なにが?』
「おや、もう忘れられたのですか?それともとぼけることで更に過酷へと歩ませるつもりで?」

その紫色の瞳が、少し睨むように見えるのは、気のせいではないと思いたい。
月夜の光で強く見えたそれに、まぁ両方でもいいとメルは答える。

此処からドンドン、彼等には私を突き放させるように向かわせねばならない。
嫌いよりも失望させる方向にシフトチェンジを行ったのだ。
全ては彼等の為に、そうメルは言い聞かせるしかない。


「私は貴方が思う以上に弱くはありません。守ってもらわずとも一人で生きていけます。」
『へぇ、よく言うじゃん。その感情は私よりも弱いくせに。』
「…本当にふざけていますね。躾しないといけませんか?」

ダンと強く音を立ててメルの動きを鈍らせその身体を固定する。
身体を動かそうとしたメルに合わせ、サワアはまたがりその身体を徐々に動かせない様に移動した。

「こうして貴方は私を押しのけることが出来ますか?」
『っ!!!誰が…!!!』
「私が貴方に失望したら貴方は何処に行くつもりですか。」

その華を枯らせずに、その向こう側へと消え去るというのに。
睨む彼の目に、メルは勢いよく彼の身体を突き放す。
それに、目が見開いて違うと言いたい気持ちに、手を喉に当てた。

「言えばいいじゃないですか。そんなつもりじゃなかったと。」
『思ってもないことを言うもんじゃないでしょ。』
「想っているじゃないですか。私を舐めないで頂きたい。」

それとも今思っていることツラツラ言いましょうか?

「我々全員が貴方を失望したその時。
貴方は自分だけを受け止め、その身を昇華させ
その華樹に染まってからこの世界にある華樹を消し去るつもりでしょう?
そうすればどんな者達でも華樹を蘇生することは不可能。」

ルメリア様だとしても、華樹神見習いである貴方が選ばれた以上
華樹自体の蘇生は不可であり、ましてや
超ドラゴンボール等の願い玉ですら叶えられない範囲に位置するもの。

「私は天使のままで生き続け、貴方はその箱庭だけにとどまり生き続けることを選ぶ。
そうしたら誰もが笑っているでしょうね?だって何も変わることなどないのだから。」

我々の記憶すらも、かっさらって。
かつて貴方が読んでいた物語の通りに書き戻す。

そうして、本来の白い世界に、貴方は戻り、その額縁だけに居座り続ける。
それが、貴方の最初に願った小さくも果てしない、底など見えない願い事。


「何処に居ても何をしても、
その額縁に飾った時間を抱き留めてしまえば不安など在り得ない。
だって目の前にその一番は存在し続けているのだから。」
『っ』
「嗚呼、口をふさげれませんね?さあどうしましょう?
痛みに慣らせ、絶望した時に一瞬でも、
相手を騙せるように痛めつけても意味がないことを。
……私は貴方に護られる程の天使ではないのです。」

足で蹴ろうとしても全く届かない。
腕は上に上げられて、身動きが一切できずに、口も押えられる。

「貴方は何が何でも願いを叶えなければいけない。
…だって、貴方の願いが叶わなければ、
その次に選ばれるのは、この私だから。」

天使であるのに、その理から外される一人である者だから。

そう泣きそうな顔でメルを見たサワアに
メルの顔が睨みから核心を突かれたのか、悲しそうな顔に変わる。

もう、もうやめて。

そんな声が聞こえてきたサワアは、その手を緩めて頬を触ってやる。

『ーーーーっ』
「…もう、頑張らなくてもいいんですよ。
私を守らなくて、いいんですよ。エフェメラル。」

違う、違う違う違う違う。

涙がジワリと浮かび上がり、そのまま耳に入りそうになるのを
首を横に振って避けながら否定をするしかない。
口なんて塞がれていて、反論できないのだ。

いやだ、そんなことをして、
もし貴方が天使から落ちたら、一体何処に帰るというのだ。

というか、仕えている破壊神はどうなるのだ。
彼女の代わりの付き人など、彼女は要らないというだろう。
宇宙は人々は無慈悲な滅亡を望んでなどいやしない。

その完成された綺麗な宇宙を、貴方は中立を保たねばならない。

消滅なんて、させるものか。
何処に行っても存在しえない空想上に等、
一体誰が連れて行くというものか。

「其処に行くのは、物語に存在しない、
私の役目だと、本気で仰るのですか?」
『〜〜〜っ!!!!』

何時でもどこでも画面越し。手など触れれない。
こっちを見ることなど在り得ない。
いたとしてもそれは私ではない。

その目は何処か違う場所をみていて、私を見ない。

それでも、見て居続ければ。そこに存在しているのならば、
ソレだけで充分で、その姿を知れば、
もう満たされていなければならなくて。

そうでもしなければ、この時間は誰かが酷く傷付いてしまうから。
それならいっそのこと、此処まで耐え抜いている私が役目を果たし切り、
その願い事を全て書き換えに飛び込んでしまえばいいというもの。

単にそれだけ。
貴方が破壊神に仕える中立を保つ天使のように。
私は華樹に選ばれ、その華樹の根本をぶち壊しに行く破壊メルであるのだから。
役割が違うだけなのだ。

だから、望んではいけない。
別のものなど、手を伸ばしてはいけないのだ。
私にとってそれは禁忌であるのだ。
絶対に許されない許してはいけない禁忌中の禁忌。

一度犯せば、もう私は自分を殺し続ける悪魔と化すと誓える程だ。

『そうだよ』
「…メル」
『でもね、サワア。貴方は勘違いしてる。』
「勘違い?この期に及んで何を言うのですか。」

起き上がったメルに、サワアも身体を放し、ベットの縁にでも座り直す。
メルは起き上がった身体を腕で支えつつ、足を立てて、その間に足を滑り込ませ
サワアの方を向いて立てた腕に身体を押し付けて笑って見せた。


『私はメリバ寄りのトゥルーエンドしか興味はないの。』
「……え?ちょ、何を言っているのかさっぱりわからないのですが。」
『ねぇ私の翼ってどうなってるの?』
「いや今その話ではないでしょうが。答えてくれるのが先と言うもの。」
『金の紐とか流石に持ってないよなぁ。』
「メル様???本当に話聞こえてます????」

というかこっちを見たのは適当だったりしません????

そう言うサワアにメルは無視をして話す。

『こういうマルチエンディング系の奴ってさ
周回プレイをしないと全回収出来ないループモノだったり
そもそも主人公自体もループする世界を周回していた
っていうギミックチックなところが入ってたりするんだが』
「本当に私の理解できる範囲でお話してくれません????」

見えてないんですよね?そうでしょう???

『ハッピーだろうがバッドだろうがメリバだろうが何だろうが
それはあくまでも物語の一部分でしかない
ループの一部でしかないもの。』
「…つまり、今起きている全てを回収しないといけないから、
貴方は現在進行形で我々を騙すなりなんなり
ありとあらゆる方法を使って回収していると?」

そういうこと。

「いやだとしても、貴方の考えていることを
此処で言えばそんなの無駄になるのでは?」
『そもそも天使自体がチート過ぎるでしょうが。』
「いや充分貴方の存在もチートですからね???
一体何処の世界に人間が神の力をそう願いだけで
ホイホイホイホイ破壊神もびっくりするくらいの
破壊力を振り回しているというのですか。」

普通に華神らはチートに近いからな???
寿命があるとはいえど、それはあくまでも
願いの寿命に等しくて。

永遠を望めば普通に永遠に生き延びられる形の奴らなのだから、
それはチートと言わずしてどうというのだと思う。

『稀なケースだと、トゥルーエンドに位置付けられているのに
その中で更に分岐がある。つまり真実はいつも一つとは限らないのだ。』
「どこぞの人たちに喧嘩を売らないで下さい。」

あればれた?
だから天使をなんだと思っているんですか貴方という方は。

「私は貴方が見てくれていた小さな子ではないのですよ?
あの時は人間でしたし貴方程の力も権力もありませんでしたから
多少なりともの無作法は色々助けて貰えたこともあって許しましたが。」
『無作法』
「今貴方の目の前に居る私は天使です。
この輪は姿は、貴方が知っている過去の私より
もずっとずっとかわりました。
見習い天使から天使へと成長しているのですよ。」

今貴方が考えている心も、その過去すらも、今現在私は見れるというもの。
それだけじゃない。創造は勿論のこと、星の破壊の代行だって務められる。
仕えている身でも長い時間仕事をしているのだから、
見ていない貴方の予想を遥か上回る程の力など使えるのだ。

だから、そうしなくても、力を抜いてこの旅を楽しんでしまえばいいのに。

貴方は何処までも華樹に対して、
そして過去の自分に対しても、
律儀に真正面からぶち当たろうとしているのだ。

そうしなくても、助けてと言えば一体どれ程の神々が
貴方のその手を取ってくれるというのか、分かっていないだろう。

少なくとも、うちの宇宙は間違いなく
徹底的なサポートをするだろうとは思う。

正直愛の力なんてものっくそ胸焼けしそうな甘ったるい考えを
ぺらぺら横で言い出すのを聞く身にもなって欲しいのだが。

まぁ、そんなことはどうでもいい。

「ま、何方にせよ私を失望させるなら
それ以上のことをするまでですね。」
『してくれるの?』
「したら貴方の一番欲しいトゥルーエンドとやらに
私も連れてってくれるのですか?」
『え?来たいの?マジで言ってる?』
「別に貴方と一緒なら何処へだって行くと
言っているでしょうが。貴方私の話を聞いてます?」
『お兄さん辛辣過ぎない??』
「貴方がさっきから人の話を
全く聞く気すらないからでしょうが。」

えっでもと言うメルに、はぁとサワアは深いため息を吐いた後
もう一度言いますよと答えてメルの方を向いて言う。

「私は貴方を助けたいのです。エフェメラル。」

貴方が私を助けてくれたあの時のように。
あの日の華を、何時までも持ち続けて待ち続けた。

「まぁ、貴方が助けられたくなくとも、
私は貴方がこの世界から消え去るようなことになれば
問答無用で助けに行きますし、なんなら追いかけますが。」
『お兄さんその前に消滅しない???』
「しても願いが強ければ反応したりするんじゃないんです?」

したことありませんが、出来そうな自信はありますよ?やってみましょうか?
いやいいです。というかしたら私の位置がぶれるだろうが。やらすか馬鹿野郎が。

『それに私の今までが台無しの水の泡になって消えるじゃん。』
「…それ程貴方のことを好いているということですよ?」

チュッと頬にリップ音が鳴るのに、目を瞬きさせるしか出来なくて
おや?というサワアによくよく考えてみた。

毎晩毎晩彼は私の為に、その力がそれ以上闇に落ちないように
夢ではなく現実で、本当の夢を見る寝るその瞬間まで居てくれていて。
今も尚、この部屋で二人っきりになっていて、
ずっとずっと前から一緒に居たかった人が真横で

なんなら慕う気持ちを伝えた後頬にキスを落として微笑んでいるのだ。

『〜〜〜っ!!!!やっ出てってやあ!!むりむりむりむり!!!』
「…ほぉ?何が無理なんです?」

メルは恥ずかしすぎてサワアの方に寄って彼の事を部屋から出そうとして押そうとするも
ニヤリと気付いて笑ったサワアがメルに問いかける。

『へ?!?!』
「出ていくのは別に構いませんが、それなりの理由がないと嫌ですねぇ?」

貴方目を放せば誰かに囚われていますし。
この客船だって他の者達も使っているので、狙われない訳もないですよ?

『っ、え、えと、あの、その。』

心臓がどきどきと脈打つ。嗚呼このリアルさは影響させてほしくなかった。

願いとか華樹とか色々置いといたとして。

ずっと会いたかった人が、ずっと傍に居てくれて
なんなら自分のことを好いている等と言ってくれるのだ。
想いが伝わってくれるのを分かっているし、
なんなら両想いなのを恐らく分かっていてやっている。

彼は負け戦なんて挑まない主義だ。
まぁ負けない様にその知性を使って巧みに操ってくるだろうが。

いやそんなことはどうだっていい

触れているというか、その、触っているとだな。

「ほら、何時ものように触って見て下さい」
『え、えっと…こ、こう?』

ベットの真ん中でぺたんと座り込んだメルの真正面に、
似たようにサワアも座り、その片手を前に差し出しメルの頬に手を当てる
ドクドクと脈打つ心臓が煩くて敵わない。
息が苦しい、辛いのに、胸が満たされすぎて、溢れ出てきそうな気持に駆られる。

怖くない、痛くない。息がしにくいだけで、辛くなんてない。
触れていないと、寧ろ胸が痛くなって、手を伸ばしてしまいたくなる。

ふとサワアが手を放す。それにあっと声が出て手を伸ばそうとしてしまったのを止めた。

「伸ばしても消えたりしませんよ」
『っ、で、でも』
「願いなんて今は想い出さなくていい。だって、これは夢ですよ?」
『え?いやでも現実じゃ』
「じゃあもしも夢なら、貴方はどうするのです?願い等何もない普通の人間だったならば。」

それなら?それなら、どうするんだろうか。
いや、それでも、その手を振り下ろして胸に抱くのを選ぶだろう。

寝ても覚めても、夢の様な痛みを抱きしめ続ける。
でも、もし、もしも、もしもそんなことをしなくてもいいならば。

『…ずっと醒めなければいいのに。』
「っ、」

サワアの手を胸に抱きつつ、サワアの胸にそっと抱き着いた。
背中に手を回して、その胸に頬を摺り寄せて。
コレが夢なら、どうか、醒めないで欲しい。

ずっと夜のままで、朝日なんて二度と見なくていいから。
この時間のまま、ずっとずっと、二人で居たいだなんて思ってしまって。

嗚呼違う、思ってしまうんじゃない。思うのだ。
貴方に出会えて、触れて、噛み締められる、そんな時間が。
私は何よりも嬉しくて、どんなことよりも望んだことなのだから。

「…ほんと、勘弁して欲しいですよ。貴方がそんなに甘え上手だったとは。」
『そうなの?』
「ええ。正直上手過ぎてこっちが困ってしまいそうになりますから。」

チュッと頬にキスを落とす。それに片目を閉じて少し身体に力が入った。
身体を持ってこれなくはない状態ではあるというか、少々気になったのだ。

『ねぇサワア、今から一度向こう側に行ってみたくない?』
「え?」
『ほら、夜は限られている。』
「あっちょ」

お願い片喰。片方満たして。

その言葉にメルの手を掴んでいたサワアも、その華樹の場所に足を踏み入れた。

「えっちょ、メル!?なにを!!」
『くぅねぇごめんちょっと皆どけてて。』
「えっ?!メルってその名前ほんとに」
『早く草原から皆でてて。ちょっと本気出すから。』
「…だ、そうですよ?皆さん。」

そう言われたら出るしかない。
周りで待機していた者達がさっと草原の中から外れる。

『よし。サワアは此処で華樹を見ていて。』
「え?あ、いや何をするつもりで?」
『内緒』

良いって言うまで振り返ったら怒るからね!
そう言うメルに、仕方がなく前を向いた。

ザワリと風が木々を撫でる音がする。

気持ちがいいものだ。この心はもう、穏やかそのものでいい。
五月くらいのさわやかな風が心地よい気分にさせてくれる。

『きれいだなぁ』

その姿がその背中がその世界が
何よりも大事だったことを、知らしめてくれる。
嬉しいのだ、あの額縁を…嗚呼、そうか。

約束を支払う前に、その願いを戻してしまった。
さあ、罰則条項を告げてみよ。


『華よ神よ、生贄捧げよ、この願いに秘めし、華の時よ。』

どう出る。どうなる。分からないが、こうするしかない。
もう旅は半分を超えていってしまう。この先どうなるかは自分次第。
なら、私は此処に、その願いの時間を選ばせる。

『華の者、掟の一線外れしこの者に、罰則求める、願わくば。』

華の魂を、この肉体に、蘇らさんことを。

その言葉に、メルの形が変わり、その姿は消え、
眠っていた身体がゆっくりと起き上がる。
小さな赤いカタバミが未だに咲き誇って色を解き放っている。


〈華樹の掟に反する行動を感知しました〉

「っなに!?!?」

〈罰則を設けます〉

ぶんと空に描かれた言葉に、メルは嬉しそうに笑って答える。

〈華の者、華樹の地に千年の拘留とする〉

『ありがとう、アレス』

ブンと音が鳴り、首元に痛みが入る。
どうやら何かしらの形が入ったようだ。

振り返って欲しくない時に彼は振り返って走って来た。

「っメル!!貴方一体何を、」

首元を隠していた手を取り、その姿にゾッとする。

『額縁を見た罰であり罪。』
「っ貴方何と言う事を…!!!」
『大丈夫、華樹神になった時からの計算だから、今はまだいい。』

そのつもりで付けての、この身体だからね。
そう、これは、全ての理をぶち壊す物語。

12の時間を過ごした私は、もう何にも負けるつもりなんてないのだ。

『まだ死刑とかの範疇にならずに済んでよかった。』
「あるのですか」
『華樹の掟、願いが変わるの厳禁だからね。』

最悪の場合その場で消滅とかあるし。

『私の場合は記憶が戻ってから肉体を取り戻すことが条件の一つだったんだけど、
今回一つだけ忘れたままで戻った為、これくらいで済んだというもの。』
「だとしても千年は人間の感覚で言えば長い時なのでは…」
『まぁ間に居るし、華樹神になったら本来の時間に戻る可能性だって充分ある。』

それくらい、少々変わらないというものだ。
なんならさっさと本体を綺麗に成長させねばならない。

『大丈夫だよ皆。…この華は、私がちゃんと、見てやるのだから。』

目を細めて笑うメル。その赤い華は、ランランと光り輝く。
さてとメルは言ってサワアの手をとりクスらにじゃっと手を挙げて笑う。

『私達フェリーに戻るんで、それじゃ!』
「ちょ、待って下さい貴方何処からってなんで走るんですか!!!」
『はっはっは〜〜!何処へ行こうというのだね!其処へ行こうというのだよ!!』

元居た場所ね!!!

そう言って飛んだメルに対してその虚空に
サワアも巻き込まれて虚空ごと消えて居なくなったではないか。

一方その虚空に入った二人はというと。

『わ〜〜出てきた出てきた!』
「っ貴方ねぇ!?ちょっとは説明をしてから行ってくださいよ!!!」
『いやー私の説明めちゃ下手くそだから、やればわかるかなって♡』
「突拍子もないことをされたら困りますってば…」

まぁ、本当に肉体が取り戻せたっぽいから良いですが。
そうサワアはメルの身体に触れて言う。

先程のフェリーに乗っている状態だ。

グッパーと手を握ったり開いたり足を動かしたり身体の後ろを追いかけてくるくる回ったりと忙しない。

「メル????何をしているんです?????」
『いや、身体と魂を一致させる体操的なソレ???』
「…普通に慣らしたいんであれば、私もご協力出来ますが。」
『えっ出来るの?!!?!?』

そう食いついて来たメルに、サワアは反射で両手を上げてしまう
流石にそんな急に距離を詰められるとビビってしまうのだ。

「いやまあできなくはないですが…少々気になるといいますか、ある意味互いの掟破りになってしまいますが。」
『えっ何なんかしたか???』
「…まぁ、覚えていないならいいでしょう。私も忘れるということにしておきましょうか。」

どうせ彼女との時間は限られてなどいなくなった。
このまま行ったら本当にどっちかは消滅しそうな予感はするが。
彼女の居ない時間なんて正直生きていけるつもりはない。

ほんと、天使も堕ちたものだ。
愛やら恋やらどうでも良いと思っていたのに。
彼女のせいで、色々面倒になってしまって。

「ま、そんなところもひっくるめて好きなんだから仕方がないですよねぇ〜。」
『ん?何を言ってるの?と言うかこの右手と左手はなんぞや????』
「さあ?なんでしょうね?お手伝いをさせて貰えればと思いまして。」

まぁついでに、下界の汚れを取るというものも。
嗚呼そうか、そうすればいいのかとサワアが一人納得をする中、
メルは首を傾げつつもサワアに抱きかかえられ、そっとベットに降ろされ困惑したまま告げる。

『サワア?どうしたの?』
「でも先にお聞きしておきたいことがありましてね。」

こんなところで聞くなんて少々ロマンティックとか何もないが、
まぁその前から色々と照れくさいことを腐る程してきたのだ。
この際今更というものだろうと一人納得して聞きだす。

「単刀直入に言います。エフェメラル。」
『あっはい』
「今からすることが嫌なら気を使って本気で突き飛ばして下さい。」
『え?いや、別に、サワアと一緒に居れるなら何されてもいいっちゃいいけど。』
「〜〜〜っ!!!!……後で文句言っても聞きませんよ?」

そんなことを言われたって、
こうやって一緒に居るだけでも満足出来るというのに
これ以上やられたらもう何がどう転ぶかわかりゃしない。

嗚呼でもまぁ、先の楽しみに置いておくのもいいかもしれなくなってきた。
メルはベットに寝転がり、サワアの手を取り目を閉じる。

「…全く、私は一体何時まで貴方に振り回されなければならないのやら。」
『生きとし生けるその日まで。』
「それ人は永遠って言うんですよ?知っています???」

貴方一瞬と永遠真逆に考えていません?
いやぁどうでしょう???

『明日からまた旅に戻るんだよなあ』
「…嫌なんですか?」
『嫌じゃないよ。ただ、もう終わるのがとても悲しい。』
「エフェメラル、」
『この心がずっとずっと、空っぽのままでよかっただなんてね。』

そっと抱きしめてくれる彼の温かさに涙がでてくる。
それをそのままにしてくれる、その時間が何よりも愛おしくて、堪らなくなってくる。
嗚呼、此処に生きているんだ。
液晶画面の向こう側に、私は今、息をして、その中に生きている。
それがどれだけのタブーであるのか、私は知っているのに。

それでも、いいとさえ思ってしまう、私は大馬鹿野郎なんだろうなあ。