苦情なら地面に掘ったこの穴の中へ
「おや、おはようございます。メル様、サワアさん。
よく寝れ、たようで……何よりです。」
「おはようございます、すいません遅くなりました。」
『んん〜〜〜〜〜〜〜。』
あれからガチ寝して起こしても碌に起きないので
身支度を整えるのを手伝ったサワアが
未だ寝ぼけているメルの背中を押して朝食を取っている面々の前に連れてきたのだ。
髪の毛は後ろを一つに括る前になっているだけで
左右の髪は自分で結ったのだろうか、少し歪にも見える。
旅道中の衣装に戻っているリサやアルトリア達と同じく
メルもディアンドル姿に戻っていた。
紺色の髪の毛に合わせ、白いブラウスに淡い紺色のエプロンを
深いディアンドルに括りつけ、
後ろで綺麗にリボンを作って貰っていたのに、
リサがメルに声を掛けた。
「へぇ?リボン作ってもらえてよかったな?」
『んぅ…?んんん〜〜〜〜〜。』
「っくくくく、よしよし、まだお眠だよな〜〜!」
「すいません、昔は物凄く目覚めが早い方だったんですがね。」
「完全な肉体とほぼ完全な魂がくっついてる途中なんだ。
そりゃあ数時間ごときの睡眠じゃあ復活なんぞ無理だろうよ。」
そう答えたのは意外にも界王神のロウだった。
彼が答えたのに、へえそうなのかと言ったのはリサだ。
深い緑のディアンドルを椅子に馴染ませる為か、少し身体を動かしながら聞く。
「そんな難しいもんなのか?」
「お前達の技術がクソ上手過ぎるだけであって、
本来肉体と魂は一心同体。下手な器に魂を入れたら
壊れる処か肉体として感知出来ずに
魂がそのまま彷徨ったりするのはよくあることだ。」
「よくあってたまるか。あとサラッと
お褒めの言葉ありがとうございます。」
「別にんなこたいいが、元々あった魂が
漸く肉体の元に返った反動が今来てるんだろうよ。」
それくらいの覚悟はしていたが、
それにしても、たった眠いだけで終わっているのも不思議なものだ。
もう少し他のものがと思っていると、ロウの言葉は的中した。
『…ねぇ、ねぇ』
「ん?なんです?」
『さっちゃん、くぅねぇはどこにいるの?』
「…ほらな。」
「…エフェメラル、ねぇ様は今日此処にいませんよ。」
大神官も言っていたことだが、
メルの魂は人間で言う処の6歳前後状態で維持したままである。
その為、幼稚さが残ったり、戻ったりするのは当然のことであり、
同時に、記憶が混濁することだって、普通に出てくるはず。
きついのは一体何方なのだろうか?
『そ、っか。そう…だった、っけ。』
「…ええ、そうですよ。
そんなことよりも早くお食べになって下さい。」
『んん〜〜〜〜』
「寝ぼけても駄目です。貴方昔から本当に
食べないんですから、割と心配だったんですよ???」
「おや、メル様昔から食が細かったのですか?」
「ええ、この子は人間と天使の間とはいえど、
大元の肉体自体は人間ベースですからね。
成長感覚や気の質やらが天使に偏ってはいえども、
その肉体を維持する食べ物は摂取する必要があります。」
席に座ったメルの前にある食べ物を食べろと言わんばかりに急かすが、
ウトウトして今にも突っ伏しそうなのが怖いのか、
隣からサワアが寝そうなメルの口にそっと食べ物を持っていく。
それに気付いたメルが口を開け、閉じてもぐもぐと食べている。
最早それは餌付けの雛と変わらないが、まぁ仕方がないことではあると
ロウは呑気にご飯を食べた後の食後ティーを楽しんでいた。
「暫くはその感じが続くだろうな。
見た処手の感覚もおぼつかないと言った所か。」
「昨日からちょっと身体を動かす練習を
させているんですけどね。中々難しいらしくて。」
「いやいや寧ろ長い時間の間放しておいて
ソレでとどまっているんだから大したもんだろうよ。
損じゃそこらの人間やら長生きした者達とかと比べ物にならねぇぞ。」
ましてやリサ達みたいなプロ集団の人間らの
手を使ってでも、さらっと魂が仮とはいえど、
憑依出来るその感情のコントロールが上手く出来ているとは。
メルの精神的なメンタルが強すぎるというか、
夢の様な感覚が拭えないからと言っても、
想像力が天井知らずというか、とぐちぐちロウはつぶやいていた。
「あの、お兄様。少々失礼なことをお聞きしますが、よろしいですか??」
「この状態でよければ構いませんよ。なんです?モヒイトさん。」
「昔からメル様とお兄様はそのような感じでお食事を?」
「…あ〜〜偶に、ですね。アルトリア様は其処ら辺、覚えてらっしゃいます?」
「嗚呼、覚えてる覚えてる。どうしても睡眠が足りなかった時が偶にあって、
その時こんな感じで餌付け状態式に食べさせてくれてたりしてましたよ?」
あの時は滅茶苦茶可愛かったんですよ。今でも普通に見ていて可愛いけど。
…それは喜んでいいんでしょうか、それとも貶されてると捉えていいのでしょうか。
そうどうとも言えない感覚に、サワアは軽くアルトリアに引いていた。
「ただでさえエフェメラル様は食に対して興味が無かったんです。
そういえば、サワア様が来られた辺りくらいから食べ出した様な…」
「え?そうなんですか!?アレで!?!?」
「ええ、前はお水一杯程度しか受け付けなくて、
なんなら吐いてましたから。」
アルトリアは何気に原初でも最初の華神である。
その為メルが生まれる前から生きている上に、
メルが生まれた直後も立ち会っている。
我が妹の様に可愛がっていて、
よく華樹の樹の下でお昼寝やら遊びやら付き合っていたのだ。
勿論、食事も一緒にしていたことだって多々あった。
「何食べても吐いちゃうので、癖付いて途方にくれてたんですよ。
でもサワア様辺りが来てからぴたって止みましてね。」
「お姉様とご一緒にお食事をとられていたのでは?」
「ソレが案外少なかったんですよ。
なんなら吐き癖あるの分かっていたエフェメラル様の方が
断固拒否していましたから。
加えてクス様昔は頑固でこうしないと効かない感じが強くて、
ご一緒に食べるのが怖かったのかと思います。」
「嗚呼、納得がいきますね。
確かに彼女が共に食事をすれば
嗚呼しろこうしろと口を出してきそうです。」
モヒイトの言葉に、そうなんだよなぁと
アルトリアがのんびりした声を上げる。
「逆に何を食わしてピタッと止まったか
聞きたいレベルですよ。一体何を食わせたんですか。」
「食わせたって人聞き悪いですねぇ
…確か、吐き癖の感じは見て取れたので、
酸っぱいものを与えてた気がします。」
現に今もその酸っぱい食事を摂っているメルは、
パクパクとサワアから貰う食べ物を進んで食べている。
手を使って取ろうとするのを、そっと隣からアルトリアが伏せる。
今手を使ったところで赤ん坊の手と変わらないだろう。
其処ら辺に物を落としたりしそうだ。
「他の物なら吐いて申し訳なさそうにしていましたが、
酸っぱいものを食べた後はすっきりした顔になられてましたから。」
「二人とも本当に小さい頃から過ごしていたんだな。」
「そりゃあ物心ついた時に大神官様から
会って欲しい子がいるからと連れられましたし。」
「食べれるようになりつつあるときに、あんななっちゃったからねぇ〜。」
サワア様も凄く心配してたんだよ〜
そう頬に付いた食べ物を拭うアルトリアに
メルはんん〜と寝ぼけた声を上げて口を拭いてくれるなと
いやそうな声を出して首を横に振っている。
「あとは普通に自分が食事をすれば
食べるんじゃないかって思いついてから
一緒に食事を摂るようになったはずです。」
「今のメル様がある程度のお食事が出来るのも、貴方のおかげだったとは。」
「全く褒めて貰いたいくらいなんですけどね。肝心のこの子がこの子なんで。」
戻ったら色々感謝されなければ。
「にしても見れば見る程不思議な奴だな。
魂は天使と人間が綺麗に二つ分かれているというのに
くっついて離れる気配すりゃしないわ、
肉体は人間ベースなのに諸々は天使の方だわで
こりゃしっちゃかめっちゃかだな。」
そりゃあ色々問題が起こるわけだ。
「そういや、次は何処に行くつもりなんだ?」
「嗚呼、草原の中にある街、ムタリア草原の街へ行くつもりだ。
先に港街のおっちゃんの所に寄ってはいくがな。」
「樹海を通り、地図でいう左上に進む感じですか。」
「その先に火山があるが、一応其処も経由する。」
「そっちは危険って私言ってなかったっけ???」
そういうアルトリアにリサがお前手紙忘れてたのかと言う彼女に
アルトリアはなんだったかと言う。リサはずっこけて、あのなぁと
渋々笑いつつも起き上がって説明をした。
「前に手紙で滅茶苦茶酸っぱくて喰えたもんじゃないって店の話してたの忘れたのか!?!?」
「嗚呼!あっちの方か!まだ麓の方だし、大丈夫だろうし、寄り道程度ならいいか。」
「そんなお店があるのですか?」
「ええ、滅茶苦茶酸っぱくて、なんで食べる気になるのかと思ったんです。
今思えば多分エフェメラル様の好きそうな味無いかなぁ
って無意識に探してたのかもしれませんね。」
一応メルとアルトリアは1番目の時間で出会っている者達だ。
二人とも幼少期の頃から遊んで食事も摂っていたと聞いて、
その名残を想い出しての動きならと思えば納得がいった。
「其処に行って、好物の一つや二つ増やしておいた方が良いかもなって思っただけだ。
まぁお前達の事もあるし、私欲に近いからスルーでもいいが。」
「いや、それは賛成したい話です。この子貴方が思っている以上に食に疎い上に無頓着なので。」
「…なら決まりだな。一応間にあるムタリア草原の街へは行く。
その後火山から、砂漠に向かって、その向こう側に行くと。」
かなり遠回りになりましたねぇと言うモヒイトに
まぁ色々あったがしゃーないだろうとリサは苦笑いして答える。
そうこうしていると、メルの食事が終わり、デザートに入ってきた。
チューっとストローで飲み物を飲んでいるようにデザートを堪能するメル。
心なしかというか、思いっきりニコニコと和んでいる。どうやらお気に召したらしい。
「そういやサワア、お前ってアタシらとずっと最後まで居るつもりなのか?」
「というかヘレス様から言いつけられましてね…」
「嗚呼、確か愛のなんちゃらとか言ってたよな。」
「出来れば忘れて頂きたいですが…まぁ大体察してもらえるかと。」
大方メルの面倒を見切るまで帰ってくるなだろう。
ヘレスもなんだかんだ言ってメルだけでなくサワアに甘いのだ。
まぁメルが泣くようなことをすれば他にも怒られる処は沢山あるのだが。
「それに、女性陣をこれ以上旅に出すのも悪いですし。
ご同行の程、よろしくお願いいたします。」
「一応港街の方には連絡を取っておりますので、2組の神々が出迎えてくれるかと。」
「どちらに連絡を?」
「それは行ってからのお楽しみ、ということで。」
おやおや。
「そんなことよりも、あと数時間で船が到着するようですよ。」
「じゃあ部屋に帰って荷物の準備とかゆっくりしておくか。」
「何かお土産とかないのかな。」
「見てみるか?」
『んん、眠い…』
「私はメルを部屋に戻してきます。」
『ねぇ、さっちゃん』
「はいはいなんですっ!?!?!?!」
もどっていい?と言った後、メルは身体を小さくさせたではないか。
服がそのままになり、身体だけ小さくなって眠ったメルに、似たような服を瞬時に創造で着せたサワアの瞬発力は早かったと思う。
小さな小さな、あの日の子供の姿に戻ったメルが、目を閉じてスヤスヤと眠っている。
それに抱き上げ、仕方がないですねえと言いながら洋服を空中で畳みつつも腕に乗せ、
ではまたと言って小さくなったメルを片腕に乗せてその場を後にした。
「ちいさくて可愛かったな。」
「うん。すっごく満足そうに寝てたし、多分起きるのはフェリーに降りて人が増えた辺りかな?」
それまでどうか、楽しい夢の時間を過ごしていて欲しい。
++++++++++
ざわざわと音がする。
一体なんだろうと眠い目を擦りながら身体を動かす。
それに気付いたサワアが「起きました?」と声を掛けた。
『んん、さわあ?』
「はい。どうしました?」
『かえるう』
「ふふ、すいませんまだまだ帰りませんよ。」
「可愛いですますね〜〜〜!小さい〜〜!!」
そうメルの頬をぷにぷにとしてつつく彼女に
ううやああと嫌そうな声に、サワアの胸元の服を掴んで嫌がる。
タオルと言っている彼女に指を鳴らし、昔使っていた黄色のタオルを出してやると
嬉しそうな目でキラキラと輝かせた後、ぎゅっと抱きしめて頬に摺り寄せている。
それをひたすら見て癒される天使ら。
現在、フェリーから出て港街の外れにある漁師の村に居た。
おじさんに礼を言って、そのまま樹海に移動している間にメルが目覚めたのだ。
「本当に小さなお子に戻ったのですか?」
「記憶が混濁してそうでわかりませんが、感覚的にはほぼ昔と同じですね。嫌がり方も昔ながらです。」
「滅茶苦茶可愛いですますね〜!抱っこしてもいいですます?」
「別に構いませんが、落とさないで下さいね?」
『んなあ〜〜さわあ〜〜〜!!!』
「はいはい、此処に居ますから大丈夫ですよ〜。」
「ママじゃん。」
もうお前がママだよ。そういうリサに、アルトリアはクスクスと笑う。
メルはタオルケットを抱きしめつつもサワアから離れたことで軽くぐずっていたが
ニコリと微笑んだマルカリータの顔に、ニコリと微笑み笑って胸に頬を摺り寄せた。
『わあ〜おねえちゃ!』
「〜〜〜!!!!!」
「っくくく、よかったですね?マルカリータさん。」
『まう?』
「マルカリータですますよ。メル様。」
『まうあうたーた?』
「ぶっ」
「ベルモッド様!笑う処じゃないですますわよ!」
むすっとするマルカリータに、名前が言えないメルに対して笑ってしまった破壊神がすまんすまんと言っている。
『んむ、むずかちい』
「呼びやすい形で良いですますわよ?メル様。」
『まあちゃん!』
「あいつ、昔からちゃん付けが主流だったのか?」
「そうですねぇ、私のことくらいは知っていますが…」
「そういやあんまりいないかも。私の事は昔あうあうだったし。」
「あ、あうあう……」
「他の子達は覚えてないけど、確かに言われてみれば
ちゃん付けってそこまでないかも。」
むふーと嬉しそうなマルカリータに、それ以上は要らないだろう。
現在樹海を進んでいる一同だが、界王神は不在。
ついて行こうと思っていたが、少々大人数になりそうだったので
今回は付いて行かないことに決めたらしいのだ。
今回同行するのは第3宇宙と第11宇宙のメンバーたちだ。
二列で行く方が良いということで、
一番前はリサと破壊神ベルモッド。リサの後ろにアルトリア
アルトリアの後ろに、天使マルカリータと天使サワア
そして最後尾が天使カンパーリと破壊神モスコという状態で進んでいる。
本当はアルトリアの隣にメルが行く予定だったが
小さくなった関係上、こういう進み方になったのだ。
メルの荷物は一応サワアが持ってくれており、杖の中に仕舞い込んでいた。
「それにしても可愛すぎですますわ〜!肌も白くて眼も大きくて髪もふわふわ〜!」
「まぁあのお二人のお子ですからね。そりゃあ当然でしょう。」
『ととさまとかかさまのこと?』
「ええ。可愛らしいと言われたので、貴方の母君と父君の血を引き継いでいるのでと。」
二人とも美形で形が整っているのだ。
血を引き継いで当然ともいえるだろう。
『でも、みんなかわいくて、かっこいーよ?』
「…昔からこんな感じですます?」
「ええ。思ったこと全部話しますからねぇ。」
「うちの宇宙に持って帰ってもいいですます?」
「いいわけないでしょうが。」
「っくくく、仲がいいことは良いなと、
モスコ様も仰られています。」
『えへへ!まぁるありーた!』
ニコニコと笑って頬に手を伸ばしだしたメルに
可愛いと抱きしめて頬を摺り寄せるマルカリータ
きゃっきゃと嬉しそうに笑いだしたメルは、もう目が覚めたようだ。
おはようと言ってやると、おはようとメルは嬉しそうに笑って答える。
黄色いタオルケットはどうしても手放したくないらしい。
片手は抱きしめて何とか持っていた。
『…ねぇ、さーわ!』
「ん?」
『あいえない?』
「あれですか?…ひょっとしてあのぬいぐるみのこと仰ってます????」
「ぬいぐるみ?何か持っていたんですます?」
「色々ありますので、手あたり次第になりますが。」
こういう類の時は持たせないと何が起きるか分からない。
黄色いタオルケットを変えてみると、
嫌そうな顔に何度かなりつつも
気に入った声が聞こえてホッとする。
『わ〜!ぴいちゃ!!』
「…ほんと、もの好きですよねぇ〜。」
「これはなんですます?」
「うわヒヨコじゃんそれも結構まるまる。」
丸々としたヒヨコをぎゅっと抱きしめるメルに
後ろを向いたアルトリアが言う。
「あ〜〜……嗚呼、ええ?ああ〜〜〜〜」
「何だその変な声は。」
「いや、ええ?エフェメラル、ええ???嘘だあ。」
「何か分かったのか?」
「ヒヨコはまだしも、それ大人になると鶏っていうやつに成長するんですよ。
古くから幸せや運気を「取り込む」という語呂合わせと
とある神話では「神の使い」とされていて縁起が滅茶苦茶良いやつでしてね。」
「へぇ〜〜〜〜?????神の使い、ねぇ??????」
まさに天の使い、天使の意味も持つもので
実はそれで終わらないのが、この話。
「とある地方では朝を告げる鳥であり、
いつも目覚めて注意することから
用心深さや警戒心を象徴しているとか。
特に雄鶏の鳴き声は悪魔を寄せ付けないと言われてて
魔除けの役割を果たしているとか何とかだった気がする。」
「それが本当なら完全に対魔女と悪魔対策万全じゃねぇか……」
「ねぇ、何ならヒヨコ、いない???」
『ぴいちゃ!』
そう、メルの胸の中からぴよとヒヨコが出てきたではないか。
一体何処から付いて来ていたのか、それとも、メルの力から生まれたものなのか。
定かではないが、何かしらの力は感じるのを、天使らは気付いた。
「…どちらに転ぶか本当に最後まで分からない、と。」
『ぴいちゃおなかま!』
「ぴい」
『まうあいーた、ぴいちゃ!』
「可愛いですますわね〜!」
『うん!!!』
にんまりとヒヨコとヒヨコのぬいぐるみを抱っこするメルに
完全に和み切っているが、これでも第11宇宙の天使ガイドである。
サラッと破壊の仕事もこなしてしまう彼女の姿は何処にもいない。
ただのそこら辺に居る姉と妹のように接する二人。
何時しかあったかもしれない、時間なんて、今出来るのは
「メル様はそう願ったのかもしれませんね。」
「え?」
「我々とこのような旅をしたかったのだと。」
と、モスコ様は申されておりますというカンパーリに
ちらりとリサはメルの姿を見た。
きょとんとして笑った彼女に、ふっと笑って前を向いた。
「…そんなに大事か?」
「ん?嗚呼、そりゃあ日に日にな。」
「…その華をあいつに渡す為に?」
「…不思議だよな。数多の者に愛される奴が、
ただ一つの願いの為だけに走っているだけなんてよ。」
「リサ、お前…」
「でも言っておくが、アタシはもう既に願い事を言っているんだぞ?」
「え!?!?!?嘘!!!!!いつ!?!?!?!?」
そう驚くアルトリアに、こいつと会った時くらいとリサが言う。
「”エンドロールの向こう側に連れてっておくれ。”ってな。」
どうか
「”彼女の知る本当のトゥルーエンドに。一番知りたい者達と共に。”
そう言って華を咲かせているはいる。」
ちらりと足物を見るリサに、各々もリサの足を見た。
するとふわりとそのリサの歩いた場所が華を咲かせていくではないか。
力を使っている状態なのだろう。今まで気付かなかった。
「貴方、旅の前から?」
「嗚呼。まぁ、トゥルーエンドに連れてってくれていそうだし、大丈夫だろう。」
「本当に何処までも貴方達は面白いことをおこすんですねぇ。」
「もとはと言えばお前との約束が引き起こしたものだしなぁ?」
「っ!!!…すいませんね、長くご迷惑をお掛けしてしまって。」
「いやいや、おかげさまで楽しませてもらえているからな。」
そんなの大丈夫さ。というか
「さっきから妙な気配しか感じないんだが」
「同感ですね」
「なんですますかね?」
『…っ』
「メル様?あっちょ、あばれなっ」
マルカリータの身体から離れたメルが前に行こうとするのを止めようとした時だった。
『おねえちゃ!』
「おねえちゃんってど、こにも」
「…なんだ、これは」
其処には黄色い色をした色だけの姿の、女性だろうか?
スカートをはいた子達が何人か束になっていたのだ。
『そっちなの?いくいく!!』
「あっちょ!!」
「いきましょう」
「え?サワアさん!?!?」
「リサ様、アルトリア様あの子達ですよね?
貴方方が見ていた樹海のアレとは。」
「っ!!!…ええ!そうです!!」
メルが走って行ったのに後を追う。
たったかたったか、軽快に。
走る走る、音が鳴る。
ーこっちだよ、こっちこっち!
ーほら、足元注意して!
ーじゃんぷじゃんぷ!しゃがんで戻って
ー右へ左へ時々振り返って廻って廻ってそのまま先へ
サワアはメルと同じ動きを各々もするように指示を出す。
恐らく同じようにしたらすぐにでも道が開けるのだろう。
そう思っている途端に、世界が綺麗に切り取られた。
かなり広い草原の中に出てきたのだ。
下手したらここが樹海を潜り抜けた場所なのかもしれない。
「…普通樹海っていうのもあって、数日は閉じ込められるんだよ。」
「アルトリア様…」
「それが、ものの、数十分足らずで、あの地図以上の近道に?」
「…これは猶更、演奏会に応援へ駆りでなければいけなくなりましたねぇ?」
「…ほんとね!」
アルトリアはサワアに微笑んで答える。
その姿をじっとメルは遠くから見つめていた。
ザワリとした胸の中に、手を当てた。
頭の上でピヨピヨとヒヨコが鳴っている。
卵から孵ったヒヨコは、一体どんな鶏に成長するのだろうか?
前を向いて歩きだすメルに、待ってと声が聞こえるのに止まらない。
止まりたくないと足を歩けば、身体が少し重たくなった。
目をぱちくりとして身体をくるりと回る。
大体3歳児から8歳児くらいまで成長したのだろうか?
一気に成長してきたなと思いつつも、その胸のわだかまりは収まらない。
ぽたぽたと雨が降り出してきた。