浪漫など語る暇は無く




草原に放牧場を構えつつも、賑わっている広い範囲で
白いテントを立てて賑わう街のような数に、圧倒される。


『面白いところだね。放牧エリアというか、
何と言うか。モンゴルかよ此処はよお。』
「ねぇメル着替えた?」
『いや何故うちらばっか衣装がチェンジしまくるんじゃ。説明させろ。』
「体温調節が物凄く緻密なんだって言ってるじゃん。」

いやだろうけども。

だとしてもだ。

『着替えるという概念は何処にあるんですかね???フード被るだけじゃんこんなの。』
「あははは、まぁねえ?」

メルは白いマントを深く被る。金色の模様が可愛らしい所だけは褒めてやろう。

「ところでお前らの知り合いは何処に居るんだ?」
「そうですねぇ、割と狭いと思うのでそこら辺をうろついていればすぐにわかると思うんですが。」

一応到着の知らせは聞いてます。

そう言ったモヒイトに、ではゆっくり回りますかと言ったサワアにメルも頷いた。

フードは後ろに流し、髪の毛を外に出してやる。後ろをくくることは無くなった。
両方の三つ編みはどうしても崩したくないというかなんというか楽なのだ。

「そういやまた一段階成長してない?メルってば。」
『そう?高校生くらいにはなったかな?』
「確かに見覚えのある形ですね。」
「嗚呼確か私らが会った時くらいか。」

いやはや懐かしさを覚えますというサワアに、アルトリアはクスクスと笑って話し出す。
胸がチリッと痛んですぐに消えてくれない。苛立ちを外に出すつもりなどさらさらない。
その代わりため息ばかりが外に出て、どうしたのと声を掛けられる。

…嗚呼、どうでも良くなってきてしまう。

どちらにせよ、いや、今は考えない方が良いか。

『二手に分かれよう。』
「え?ですが」
『モヒイト様ロウ様シドラ様、今まで世話になりました。』
「いえいえ、それを話すには早いというものですよ、メル様。」

いや言える時に言っておかないと意味がないというものだ。
そうしないと後悔するからね。

そう、後悔を、してはいけない。

根を張る意味にすら、なってしまうというのだから。

『面倒な身体になりやがって』
「何か言いました?」
『いいや?なぁんも?そんなことより君ら良いの?』
「え?」
『パン、売り切れちゃうよ?』

++++++++++

無事パンは買えたが

「一つかあ…」
『アルトリアとリサ食べなよ。』
「いやどう考えてもお前が食う分だろ。」
『不思議と食欲ないんだよなぁ〜〜〜????』

誰かさんがたらふく食わせてくれたおかげで。
そう言うメルがサワアをじとりと見ながら笑って言うのに対し
少し申し訳なかったのかそっぽを向いてすいませんと謝るサワア。

全く、それくらいいつも素直だったらいいのに。



辺りは放牧民族衣装なのか、布系の衣装を纏った者たちが多く、
中には私達のような別の衣装を纏った異種民族も見えた。
その中で、私達は浮いているようにも見えて。


『(此処全員華が咲いて魔女になったらどうなるだろ)』
「メル」
『…なに?』
「余り変なことを考えない様に。」
『ならみなけりゃ良い話じゃない。覗き見してばっかだと嫌われるよ?』
「なっ!!!貴方が変な方向に歩くから私が道を戻そうと」
『私は望んでいない。』

そう言ったメルが、サワアの目を睨む。

「…ええそうですか。そりゃあ失礼なことを。」
「え?え?え?え?」
『第一、なんでそんな付きまとうの。心配だとしても仕事放棄してまでして呆れるわ。』
「…大神官様からのご命令なのでね。一応仕事ではあるんですよ。仕事では。」
『へぇ?仕事だからやってくれるんだ?じゃあ私が放棄したらいいよね?』
「っメル、貴方最近少々調子に乗り過ぎでは?」
『これで調子に乗っているというならお前が調子に乗っているわこのドアホ。』

ちょっと抑えて二人ともと、流石にアルトリアが間に入って仲裁を入れる。

掴みかかろうとしたサワアをモヒイトが、
華を咲かせて攻撃をしようとしたメルを
リサが何とか掴んで抑え込んだ。 

『そもそも私は自分で歩けるって言うんだからそのまま放置しときゃいい話でしょうが。
守られたくないから自分でやるって、そんな種を消せる権限もない者が何を言うんだか。』
「…っ!!それを探す旅でもあるんでしょうが、貴方ねぇ!!!」
「落ち着いて下さいですます!!サワアお兄様!!」
『はっ、どうだか?私が魔女になってしまえば
自分の過ちだと後悔するだけのことなのに、今更なに』

言っても無駄だと、言おうとした時だった。
パンと高い音が響いて、顔が違う方向を向いているのが
叩かれたということに気付いたのは数十秒も立ってからだった。

「…貴方がそんな子だとは思わなかった。」
『っ』
「……失礼、頭を冷やしてきます。」

そう言って消えた彼に、メルは頬に手を当てることもなくその場に立ち尽くしていた。

メル大丈夫と声を掛ける彼女らに、いいよと答える。

叩かれて当然だし、彼の嫌な処を突きまくった結末だ。
むしろ、叩かれて良かったと、痛みが物を言ってくれる。
痛い、痛くて、前が先が、また見えなくなった。

「今処置を」
『触れないで』
「っですが、痕になっては」
『それより二人はあの人をお願い。』
「…承知しました。」
「こてんぱんにしてくるですます!」

乙女の身体をと言う彼女にまぁまぁとモヒイトは宥めつつ先に行く。
恐らく当てがあるんだろう。こっちはこっちで動くとする。

『うちらも動くよ。』
「え?何処に待ってって、本当にそれでいいの!?」
『別にいいでしょ。なんだって』
「…メルおかしいよ?何むきになってるの。」
『私何にもむきになってなんか』
「メル!!!!」

その声に身体がびくりと反応した。
するりと身体を透かして彼女の手から逃れる。
後ろで声が聞こえるが、気にしない。

走って走って、知らない場所に入って息を整えた。

『っ、これで、これで…これでいい。』

大丈夫、大丈夫だ。胸の痛みなど気にしないで良い。
嗚呼ほら、耐えらているじゃないか。
痛みに慣らしていて正解だった。もう大正解だ。

元に戻るのが尋常じゃない程早すぎる。
いや、違う、興味が薄れただけか。
彼等に、徐々に感じる感覚が消え失せている気がする。

大丈夫、理に繋げる道を忘れさえしなければいいのだ。
何時だってその額縁は綺麗に保ち続けている。
いやになるくらいには、嗚呼、前にスピスも言っていたなぁ。

どうせ、嫌になるくらいには咲くことだと。

全く、同じ気持ちになりたくなど、なかったんだが。

『(恐らく天使の管轄に、普通に入って来るんだよこの種は)』

あの理のご少年というか、神様に会ってすぐに分かった。
嗚呼この願いを放棄してみろ。

たちまちお前の望んだ彼は、
お前が選んだせいで、その願いに選ばれ
その身を理の為だけに犠牲と化すのだと。

言い聞かされているだけなのだから。

人質を取られているのは、間違いないだろう。
あの華樹の中に入ったりする面子も恐らくは…

『チッ、ほんとクソ面倒な…!!!!』

後ろの髪をかきむしって手を振り下ろす。
何処にも怒りが発散できなくてイライラだけが硬く募るだけだ。
昔はこんな感じじゃなかった。そう、皆が違うというだけある。

いや逆だ、余りにも自分を蔑ろにしすぎて
いざ自分を前に出したら周りに拒絶されているだけじゃないか。

これは自分ではないと、私は自分だと言いたいのに。
周り全てが拒絶して、その形だけを望んでしまっていて。

だから、私はその額縁しか見ないようになったのか?

最初から、期待など、していないと。

『…こんなの、いらない。』

まぁどうせ全てを渡すんだ。そうそう、もう少しで手放せると思えばいい。
そう思えば冷静になって来た。彼らに綺麗な形で人間を見せつければいいだけだ。
このひた隠しにしている現状を、彼等が知ることなど一切ない。

と言うか覗き込んでくる彼の方が不躾だというの、本気で分かっているのだろうか?

『まぁいい。さて本を探す…その前に。』

メルはちらりと背後の気配を察知し、答える。

『君らのご要望を聞いておこうか。』
「…流石にばれましたか。」
『その声はカレンデュラか?』
「ええ、お久しぶりですね、エフェメラル様」

その声に、メルは目を細めて笑って言う。
未だにその姿を見ない。目は外に光に向かっている。
メルの背後をじっと魔女であるカレンデュラが見ているだけで
危害はこちらが出さない限りしない、というのだろう。

『何用かな?今出るには分が悪いのでは?』
「それはそっちのセリフでは?
まぁ、正直申し上げますと貴方様がそろそろ
完成しそうなので脇を小突きたいと言えばわかります?」
『…答え合わせをしたいが、今お時間よろしくて?』
「構いません。どうぞ?」
『…この世の理についてご存知で?』
「貴方の知る限り、と言えばわかりますか?」

成程、何となく読めてきたぞ?

『魔女は枯れると同時に全てを知ると聞くが…お前その理自体も知っていると?』
「ご名答。確かに魔女になれば一度全ての知を知ることになります。
そう例えば…貴方が華樹に選ばれ、その理に書き換えられる存在だ、とかもね?」

やはりそうか。だからあの時、私を二人とも殺さなかった。
いや、殺せなかったが正しいのか。華樹に選ばれた者の華を喰らうということは
それ即ちそれ程の実力を持っていなければいけない。
まだ魔女に悪魔になりたてだった赤子同然の二人が食らうには難しいこと。

12の時間が過ぎ去る直前でその願いを叶えて貰い、そのままとんずらする魂胆だろう。
だが、どうして私の肉体が必要なのだろうか?

「言葉にしてくれたら答えますよ?」
『ということはお前も盗み見ているな???』
「いえいえ。」
『全く、此処の世界は尊重というものの概念崩壊してるんじゃないだろうか。』
「それ程貴方の望む力が強すぎるのですよ。エフェメラル様…理の主になるお方よ。」
『そんな大層な人間じゃないんだけどなあ。』
「充分大層ですよ?なにせ全王様をお創りになられた形の存在に近しいのですから。」

ま、そう言われたらそうなるが、私は望んで産んでもいなければ
なんなら私三番目とか言われたんであと二人誰やこの野郎とは思っている。

『まぁいいか。じゃあ聞くけど、私のことそんなに狙って何なの?私そんなに魅力的なの?』
「そりゃあもう魅力的ですよ?まぁ可愛らしさから何からは知りませんが。」

おい。

「願いに縋り続け、その時間を変えることなど不可能にした、
貴方の様な諦めの悪い人間など。
この世の理を書き換えらえる存在は一つしかないのですから。」
『なる程ねぇ〜〜願いをそもそも言ったのは魂と肉体が一致した時。
即ち、一つになった形そのものが鍵になっており、鍵自体が大事だと。』
「その通りですよ。賢くなられましたね?エフェメラル様。」
『馬鹿であり続けるよ。私は。』
「出来るわけがないでしょうがね。」

そりゃ私も知っていることだ。

『でもそれなら、君ら私に寝返ったりしないの?』
「はっ魔女と悪魔ですよ?貴方の願いも知らない癖して
一体何処に寝返ろうというのですか。」
『プラティアを元に戻す。』
「っ!?!?!?!?!?!!?!?」
『この意味わかるね?』
「…呆れた。貴方最初から此方側に寝返っていたと?」
『おやおやあ?貴方も気付かないとは…怖いねぇ?』

ちらりと向きながら言うメルの目は、何処か金色にも見えて。
ゾクリと背筋が凍った感触に、カレンデュラは不思議に思った。

「ですが不可能では?彼女は大神官らに捕獲され厳重な形を取っているハズ。」
『そんなの何時だって出て来れるはずだよ。』
「は?」
『あの子は賢い。私以上に賢いから、敢えて捕まってくれているだけ。』

時が来れば確実に来てくれる。
まるでツバメの様に、帰る場所を知っているかのようにね。

「ほんと、貴方は一体、何を成そうというのですか。」
『トゥルーエンドに向かうんだよ。12が印した、その末路にね。』
「…呆れてものが言えなくなるどころか、思う事すら億劫になってきますよ。」
『しなくていいじゃん。もう枯れた先にいるというのに。』
「…言葉の綾というものですよ。全く、貴方怖くないのですか?枯れますよ?」
『するつもりないくせに。』

それに、貴方の主が神が復活する鍵が腐ったらどうするの?

「…ほんと、物を言わせなくさせるつもりですか。
分かっていて白昼堂々と一人になるとは、本当に命知らずですね。」
『ぶたれて頭ぶっ壊れたから』
「おやおや、一体誰にやられたのだか。」
『天使』
「っくくくく、ほんと可哀想ですねぇ?」

親に見放され、今度は愛しき者にも?
額縁に飾った恩を仇で返すとは。

触れようとする彼女がそっと頬に触れる
なのに枯れるつもりも気配もない。

カレンデュラの目が細まる。

『ごめんね。生憎私は誰にも触れられたくないんだ。』

透かして対応するとは、全く酷い者だ。
天使と人間の狭間だけではなく、
理と理の狭間に行っているのだから。

狡い者だ。本当に、狡過ぎると思う。

「もし主を活かせるならば、我々は貴方の味方に付きましょう。」
『それは助かる。多対一だったしね。なんなら向こうも私を怒るだろう。』
「怒らせたいのですか?」
『私を痛めつけたいというのが正解かなぁ?』
「…狂ってますね。魔女も驚くほどには。」
『でしょう?狂ってしまって何処にも行けないというのだから。』

私は私を拾うしかないのにね。
皆分かってくれないんだよ。
あらあら、困りましたね。

『最後の地に全員集合で。』
「伝えておきましょう。」
『その間何かどうしようもなければ声を上げる。何時でも待機しておくように。』
「畏まりました。貴方様のご命令とあらば、我々ついて行くことでしょう。」

互いの意見が一致したということだ。

メルはこの世の理をサワアらが生きる為に書き換える。
カレンデュラはプラティアが復活するのを望んでいる。
理を書き換えるには確実にプラティアの力は必須も同然なのだ。
彼女らの力は、非常に強力になるだろう。

強すぎる奴らを味方にしてもらえてしまった。

『その代わり私を魔女や悪魔にするのは無しね?』
「おや、何故です?」
『目標地点に逸れるから。そうしたらこの話は無かったことで。』
「…仕方がないですねぇ〜努力します。」

なら交渉成立である。ハイタッチをした二人に、ではと消える彼女。
さてさて、記憶を弄らねばならないが、一つ思った。
このまま彼等も此方を見無くなろう。一応念のためには神様の所を考えておく。

そうしたら多分、あの管轄に彼らは干渉できないはずだ。
大神官でかなり怒っていたのだから、恐らく黒よりも漆黒なんだろうな。

魔女になって討伐されたら消える。それは華樹神に、
理に近いから叩き落とすという形なのかもしれない。
そう、プラティアは選ばれた状態の存在。
この世界に二人選ばれた存在は必要ない。

だから彼女は嫌われる道を選んだというならば。
羨ましいものであると私は強く想うのだ。

彼女の一番みたいに、私もなりたいのだ。

その場所に。たどり着くのだ。

「…ではこれにて」

ぶわりと消えた彼女にこくりと頷いて振り返る。
息が止まりそうになったというか、止まった。

「…何をしておいでで?」
『さ、わあ』
「…はぁ、顔に出せば色々情報が漏れると前に私言いましたよね?」

光りに照らされる天使に、暗闇に隠れる自分。
嗚呼この位置、いいなあ。このまま居ればいい。

「エフェメラル様貴方は日向に居るべき存在。」
『天使こそがいるべき存在では?』
「なら言い間違えましたね。…貴方も、此方に居るべきなんですよ。」
『どうしてそこまで私を助けようとするの?』
「貴方に恩があるだけでは理由になりませんか?」
『勿論。』
「…貴方の事が好きだと言っても?」

もちろん、そうだ。

そう言ったメルに、今度こそサワアは深いため息をついた。

「…一度しか言いませんのでご覚悟を。」

そう言って彼はメルの元に歩み寄る。
ギリギリ日差しが入ったその手前で足を止めた。
まるで光から向こう側は進めないように。

生きる場所が違うと言い聞かされているようで、
何故か、酷く。嬉しくなってしまった。

「あんな小さな約束をしてくれる前から、私は…いえ
僕はずっと貴方の姿に励まされ、同時に成りたいと思った。」
『私に?』
「貴方はお気づきでないかもしれませんが、エフェメラル
貴方は非常に賢く物事の判断が早い。
加えてその適切な対応も後から利く形へと持っていく。」
『そんなことない』
「その人を見る純粋な心を持った貴方の言葉に多くの者は救われた。
勿論この僕だって、そのうちの一人であるのです。」

だが、そんなのよりも前に。


「僕はあの日、君から貰った一輪を、ずっと胸に抱きしめているのですから。」
『っ』
「どうかその続きを、もう一度だけでも、許してもらえないのですか?」
『…狡い』
「ええ、狡くて結構です。……すいません、ぶってしまって。」
『いいよ、私もごめん。酷いこと言っちゃったね。』
「いえいえ。…それにしても驚きました。」
『え?』
「貴方は本当に変わらないようで…変わられたのですね。」

願いが、叶わない場所に。本当は行きたくなくてその身を止めていただろうに。
その姿がどんどん成長しているというのは、それ即ちメルが受容する形に入ったということ。

もう、其処に縋り付く意味を、見出さなくてよくなったということだ。

抱きしめているサワアがニコリと微笑む。
ソレを見ただけで満たされていくというのに、
この心は欲望まみれで、欲が無いと皆言うのは嘘つきだと思う。

こんなにも、深く、欲深いというのに。

誰も知らないのだから。

「さ、皆さん探しています。いきましょう。」
『…うん。仲直り、しなくちゃね?』
「〜〜〜っ!…ええ、そうですね。」

私も頭を下げますから。
うん、おねがい。

そう笑ってメルはサワアの手を取り前を歩いた。
不思議と後ろは振り返らなくてよくなった。


++++++++++

それから、サワアの手を取って歩いて来た二人を見た一同は安堵し
改めてごめんなさいと仲直りしましたと意思表示を見せると
一同の姿が変わっていることにメルが気付いた。

『あれ?ウイスさん?』
「お久しぶり、と言うべきでしょうか?エフェメラル様」
『メルさんとかでもいいのに。』
「いえいえ。貴方のそのお姿を見てそう言う訳には…」
『ん?姿?何処だ?どこ?』
「肉体と魂が綺麗に形を保っているという処ですよ。エフェメラル。」

そう言うサワアにそうかなあとメルはサワアの手を繋いだまま自分の身体をきょろきょろ見る。

「ったくだから大丈夫だって僕は言ったんだよ。」
「ビルス様、だとしても探さないのは違うでしょう?」
『第、どこだ?』
「第6と第7でございますですますわよ、エフェメラル様。」

いやあんたもかい。あんた前に私の事違う形で言ってたよね?ね?ね?

『皆さんありがとうございました。世話になりました。』
「短い間でしたが、お力添えになれたら恐縮です。」

カンパーリとマルカリータに礼を言うメルに、二人もお辞儀をし返す。

「楽しんできてくださいね。我らは何時でもお待ちしております。」
『…ま、大いに楽しむとしよう!』
「っふふふふ、それでは。」
『あっちょっとまったああ!!!』
「えっ!?」
「あっちょ!!!」

メル様!?と二人して驚くのに、ごめんごめんとメルは飛び込んだことにも謝る。

『聞き忘れてたことがあってさ。サワア!』
「なんです?」
『鞄取って。あと返せ。』
「嗚呼はいはい。どうぞ。」

貰った鞄にありがとうと礼を言ってから振り返る。

『これ、見たことある?』
「…これは、」
『お華のお名前。知ってる?』
「…お兄様」
「どうぞ、ご自由に。」

そう首を振るサワアに、成程と二人は納得して答えた。

「私は存じ上げませんですますわ。」
「私も、存じ上げません。」

そうモスコ様も仰られていますからという彼に
モスコ様じゃなくて貴方に聞いたんだけどなぁとメルはクスクス笑った。

「貴方が彼らに出会ってくれて本当に良かった。」
『カンパーリ様?』
「何時かまた、出会える日を楽しみにしております。」
「エフェメラル様、それでは今度こそ。また。」
『うん』

そう言って綺麗に消えた二つの宇宙に、メルはさてと答える。

『えっと〜』
「ウイスです。此方は破壊神のビルス様。」
「よろしくな」
「ヴァドスです。此方は破壊神のシャンパ様」
「おう、よろしく」
『よろしくお願いします。此方は原初の華神であったアルトリア。』

メルは二人否四人に挨拶をされお辞儀をした後
此方の説明をもと手を添える。

「よろしくお願いします。今は付添人ですが。」
「あと迷子担当な?」
「ちょ、リサったら!!!」
『その喧嘩売って来た奴がリサ。今回の廻廊12番目でありもう華は咲いてる。』
「いい!?!?」
「それって大丈夫なのか?!!?」

そう兄弟そろって驚いた二人に大丈夫だとリサは答えた。

「アタシは何時だって、この子のエンドロールを望んでいるのだから。」

下がふわりと華が咲きはじめる。心なしか鳥がチチチと飛んできた気もする。

『それで、私と三人だけなのはってことで、彼がついてくれてる。』
「第2宇宙天使ガイドのサワアです。よろしく。」
「ええ、よろしくお願いします。所でエフェメラル様」
『むう』
「…分かりました。では、お言葉に甘えて。」

頬を膨らませて怒るメルに、クスリと笑ったウイスが元の言い方に戻す。
それになぁにと答えるメルに、クスクスとヴァドスが笑っていた。

「メルさん、我々に聞きたいことがあるのでは?」
『え?…いいの?』
「ええ。どうぞ?」

貴方が望むならば、それくらい容易いというもの。

そう言うウイスに、じゃあとメルは駆け寄り、ヴァドスとウイスの間にその鞄を見せる。

『このお華、知ってる?』
「…いいえ、存じ上げません。」
「私も見たこともありませんわ。」
『…そっか!』
「ええ。それを知る者は、たった一人だけ、ですからねぇ?」
「…すいません」

いえいえと笑うウイスに、少し申し訳なさそうなサワア。
メルは両隣に居た二人にも目を合わせるが、ニヤリと笑って答えられた。

「言っておくが、僕も知らないからな?」
「俺もだ。というか知っていても言えるわけないだろうが。」
『え、マジか。』
「嗚呼。言ったらこの世の終わりみたいなもんだろ。」
『そんな終わる?ねぇそうおもう?さわあ。』
「ええええ。そうですね。終わるかもしれませんねぇ?」

そんなに、大事なのだろうか。
この訳の分からない黄色と白の華が。
触れているとずっと、落ち着くというのだから不思議なことだ。

「ぴ?」
「おや?そちらにおられるのはなんですか?」
『嗚呼ヒヨコのぴい、ちゃ?』

あれ!?と声を上げたメルに、どうしましたとサワアが見る。

「おやお兄様とあろうお方が。女性の胸を上から見るとは」
「ヴァドスさん!?!?っそんなことしていませんよ!?!?!」
「っふふふ」
『ぴよちゃん…ヒヨコから成長しとる。』

そう、胸からひょっこり出てきた子を手に乗せ、胸に抱きしめてみれば。
あんなに小さかったヒヨコが少しその大人になった姿を思わせる様な形に成長していたのだ。

目は黒く、毛は黄色から少しオレンジ色と銀色が見え隠れしている。
まだトサカは出来ていないが、
ぴょろぴょろと羽根っぽいのが頭から覗きそうになっていて。

「…ぴい」
『〜〜〜可愛い〜〜〜〜!!!!』
「びぐっ」
「エフェメラル様エフェメラル様。
ヒヨコさんが押しつぶされそうになって苦しそうですよ?」
『はわ〜〜かわいい〜〜〜ちょっとだけだって。』
「びい」
「すいません、許してもらえますか?力を緩めただけですが。」

そう言ったウイスに仕方がないと言いたそうに
不満げではあるが落ち着くヒヨコ。

「そういやその子に名前とか付けないの?」
『ええ?名前え?ええええ、何にしよう。』
「適当でいいんじゃないのか?」
『適当は良くない。出来ればコルン様並みにはしたい。』
「…その子も泣かせるつもりですか?」

メルの名づけを知っているサワアが言う。
あのとんでもない意味を持った彼の名等、
他の者達が知ればそりゃあ苦笑いものだろう。

こっぱずかしいったらありゃしないくらいには、
彼女は彼の名に、愛を注いで与えたというのだから。

『泣いてしまえばいいよ。生きてしまったことに。喜びを。』
「…ほんと、末恐ろしいことこの上ない。」
『っへへへへへ!!!そりゃどうも!!』
「仲がよろしくてなによりです。」
「ああ見えてさっきどぎつい喧嘩してたんだよ?」
「そうなのか?」
「そりゃあもう君らのお兄ちゃんメルの事ぶったからな。」
「ちょっとその話を蒸し返さなくてもいいのでは????」

そう嫌そうな顔をするサワアに対し、
許してないからとリサが笑って言うのだ。

「ま、メルが嬉しそうならもう別にいいがな!」