愚直であれ、けれど悩みは忘れるな
「メルさん一つ聞いても?」
『いいですよ?なんですかウイスさん。』
「先程破壊神らに何かお聞きしていましたが、何を聞いていたのですか?」
現在風呂から上がって身支度が出来た後
ほぼほぼすぐに出発をした、現在朝と昼の間に位置する10時前後の時間帯。
ウイスは隣に居たメルに気になったことを聞いていたのだ。
『嗚呼、まぁ簡単に言うと今の天使で良かったの?って聞いてただけ。』
「ほぉ?それはそれは。それで、何かわかりました?」
『ん〜〜〜へへへ、それがね?全員一致で良かったって言いやがったんだよ。』
「……ほぉ?それはそれは。」
「っ!!!…なに、なんか文句でもあるの?」
嫌な察知をしたのか、ビルスが気まずそうにウイスの方を見た。
いえいえと嬉しそうに笑うウイスに、
照れくさいのか前を向いてフンと鼻息を飛ばした。
『いいなあって思ったんだ。そりゃあもう、羨ましいくらいには。』
「…そうですか。そう思われて我々も光栄です。」
メルがあの欲のない彼女が、欲を言うのだ。
羨ましいと、彼等が破壊神らに付いている
付き人である天使との繋がった絆を見て。
彼女はそれ以上の絆を築いていることを、
知っていても、言うのだろう。
嗚呼確かに、本当に欲張り屋さんではあるのだろうなぁ。
それを潰してきた、この世界が酷く憎くなって。
そうして、その華樹に記憶として保管されるのだろう。
この世界を回す、ただ一つの世界として。
「それにしてもウイス様達ってその格好
熱そうに見えるんですけど熱くないんです?」
「嗚呼これですか?別に大丈夫ですよ?」
「僕らが無理だからこうして前向いてるんだけどね…」
ああ、そういうことで前を歩いてたのか。
メルは気付かなくて苦笑いで話を流す。
「案外そうでもないですよ?人間と違って大気も自在に変えれますし。」
『えっ待って??酷いこと言っていい?』
「別に構いませんが、なんです?」
『歩くクーラーじゃん!!!!』
「ぶっ」
いいなあと言って笑うメルに、クーラーの文字を知っていたアルトリアが噴出して笑う。
腹を抱えて「いやまって、ほんと、まってむり」そう言って想像した記憶が
ウイスらにも伝わって笑いが込み上げてくる。
「っふ」
「お兄様?????」
「っふふふ、すいません。ちょっとアルトリア様、やめてください。移って来たではないですか。」
「や〜〜だってこれ戦犯メルでしょどう考えたって!」
『え〜〜なんでええ〜〜〜〜』
そう三人が笑う姿に、ほんと、呆れそうになるくらいには幸せで、平和なのだ。
この平和が、すぐにでも切り替わると思うと、悲しくなるくらいには。
だから、あの子は噛み締めるのだ。
もう、すぐそこに待ち受けているからと。
その中で言い聞かせて。生き続ける。
「は〜〜〜笑った笑った。もう死ぬほど笑った気がする。」
「話を戻しますが、その為我々は暑いところだろうが
寒い所だろうが関係ないのですよ。」
『あ〜そういや宇宙とかも移動するから?』
「いやまたそれは話が別だと思いますが…」
流石にサワアが突っ込んでくる。
別次元の話を急にしてきたからだ。
「なので貴方達みたいに衣服を変えること自体不必要ということです。」
『へ〜人間離れしてるねぇ。』
「まあ事実人間ではありませんからね。それはそうでしょう。」
そうヴァドスが肯定するのに、そんなもんかとメルは納得する。
「なので肉体をちゃんと持っている、尚且つその身体が人間となれば尚更衣服の調整やら食事は必要になります。」
という訳でお水を飲んで下さい。
はあい
歩きながらではあるが、此処は流石に一晩あかすわけにはいかない。
砂漠のど真ん中を我々は歩いていっているのだ。
本当は飛んでいけるだろうに、彼等はゆっくりと私に合わせてくれている。
名残惜しいのは、きっと、私だけではないのだと、思いたいもので。
『ぷは、ありがとうウイスさん』
「いえいえ。これしきのことなんとでもありませんよ。」
『私が助けた恩からしたら?』
「そりゃあもう。あの時間普通に我々貴方が居なければ死んでましたから。」
「そんなに過酷な場所に居たのか?」
「過酷というよりかは、なんといいますか。」
『人間に戻ってちびになってた。』
「ちょ!!!!」
「メル様?!?!?!?!?」
サラッと爆弾発言したメルに別にいいじゃんとメルが答える。
『なので僕はおちびちゃん達をめちゃめちゃ可愛がって
お姉ちゃんしてました!!!超楽しかったの!!!』
「へぇ〜〜〜??おちび、ちゃん。ねぇ?」
「…なんです?ビルス様何か文句でも?」
「い〜や?なんでも??」
「どんなことをされていたのですか?
向こうに行く側としても少々お耳に入れたい内容ですが。」
「お姉様…!」
『いーわない。』
「え?」
流石に言うと思っていたウイスやサワアが目を丸めてメルを見た。
はっきり否定するなど、彼女は中々というかめったにしないことで。
『だってそんなこと言ったらお姉ちゃんじゃなくなるもの。』
「え、そ、そういう、ものじゃない気も」
『そう?だってあの日あの時あの瞬間。私は彼等のお姉ちゃんだったの。』
それは二度と来るわけがない時間。存在するはずもない時間。
それをひと時の間だけだとはいえど、その時間を味わえたのだ。
あんな酷く辛い時間の後で、その幸福を手に出来たというのに。
『それを誰かに伝えて共有なんて私は鼻からするつもり等ないというのに。』
「…それは失礼しました。」
「メル様…」
『私はお姉ちゃんとして守ってやるんだよ?感謝してよね?』
「…ありがとうございます。」
小さな子供たちの面倒を、彼女は嬉しそうに笑って相手をしていた。
あの時間、確かに、自分達は人間で、彼女も人間で。
ありふれた世界の何処にでもある時間を、互いに共有して生きていた。
それを、なによりも、彼女は大事にしてくれるというのだ。
僕だけが知っていればいいなどと、そう、酷いことを言って。
「…ほんと貴方に一生勝てる気がしませんよ。」
『おや負けてくれるの?』
「誰がその話と繋げたと言ったんですか。それとこれとは話が別です。」
貴方滅茶苦茶我々のこと甘く見積もり過ぎて逆に呆れてるんですよ?
あら〜それも作戦のうち〜〜
『いやでもさ、わくわくすっるよね〜〜!』
「そうですか?」
『うん!オラわくわくすっぞ!だわ。』
「…妙に聞きなれたようなフレーズを言いますねぇ?」
「いやどう考えてもあいつの言葉だろそれ。」
この世界の主人公と描かれたその漫画を。
ウイスやサワアだけでなくコルンも読み込んでいる。
ちなみに本当かどうかウイスは悟空の元に飛んで
ある程度かいつまんで話をし、
許可を取ってその内容と照らし合わせている。
勿論、その描かれた漫画とやらの状態は同じ形だった。
まぁ、華樹の存在らは全て書かれていなかったが。
悟空を取り巻く形としては、同じ状態で。
メルが来たことによりというか、
この世界線では違う形として、成しているだろうが。
「そういや妙に悟空を知っている様に言うが、君何?
悟空の妹だったとかなんかじゃないだろうな?」
「いやいや、そんな訳あると思います?」
『普通に君らの事知ってるだけなんだよなぁ。』
「答えではありますね。」
何なら我々も共有しましたし。
そうねー楽しかったねー
『だから、其処ら辺は、秘密ってことで。』
ね!と言ってメルは人差し指を立て、ウインクしてビルスに内緒と言うのだ。
そう言われてそれ以上突っ込むことはない。
ビルスは今度こそ前を向いてそれ以降は後ろを振り返ることはなかった。
ナダリア大流砂、フォミン街
其処は砂の街だった。
熱いのか綿なのかわからない衣装に、周りを見渡す。
流石に衣装チェンジ。
メルは麻繊維多めの衣服に変える。
肩は金色の肩当て、キャミソールの様に胸元近くを
淡い黄緑色の線が縦に突っ切っている衣装。
ワンピース姿で、胸下あたりで
同じ黄緑色のバンダナらしき布を巻いている。
中央にはアクセントとして赤いブローチの宝石を付けた。
これが割れた時がメルが逃げる合図であり、
この長くも短い追いかけっこが幕を開けるというもの。
胸元は金色の装飾が施されており、
それはスカートの方まで伸びている。
後ろにリボンは無いので、割と動きやすい。
ターバンのようなバンダナもちゃんと取り付けた。
『っあれ?!?!アルトリアにリサその格好どうしたの!!!』
「嗚呼メル着替えたね。よしよし。」
『私元の姿の方がいいのでは?』
「いやいや、ルールは律儀にいく。ね?」
いやそんなルールつくってないが????
アルトリアの恰好はというとだな。
頭に白い薄い布をかぶせ、外せない様に取り付けて。
全体的にはアラビアンとギリシャ衣装を足して割った感じ。
白い布は腰元で金色の装飾で止め、一枚でスリッドがはいっている。
丈は大体くるぶし程だろうか。ちゃんとすればもう少し短い気もする。
胸はタンクトップブラも同然に近いというかそれよりも肌の露出が高い。
三角に胸を白い布でかぶせ、その縁は金色で胸元中央はひし形が二つ程。
下の方に出っ張っていて、布は埋まっている形だが、
上のひし形は綺麗に空いている。まだ下のひし形が合わさっているから
綺麗にひし形の形を保って空いているとはいいがたいが。
背中は胸下の細い布が来ているはいる。うん。いるいるけどもさ。
『い〜〜〜や、なんで正装してるんですかねお姉さん?!?!?!』
「あはは〜久しぶりに着てみたくなって、
大神官様に連絡取ったら構いませんし
なんなら存分に動いてみてはって言われまして。」
成程、そういうこと。確かに言われてみれば
昔見ていた衣装ではある気がする。
アレこんなに肌露出してたんだあの衣装。
マジか。えっ私も着るの?マジで言ってる????
というか私一度でも着てたんだよな?
これ。えっ嘘だあ。信じられない。主に私のことが。
「しっかりとした羞恥心を持ってくれて私は嬉しいですよ???」
「全裸で走ってた経歴薄れたな?」
「ちょっと待って下さいリサ様その話詳しく。」
『こーらこらこらこらこらこらしない
しないしないしないしーーーなーーーいーーーー』
しないですーーだめですーーーぴぴぴーーーー
そう汽笛を鳴らす様に笛を鳴らすメル。
一体その笛とレッドカードは何処から出してきたのやら。
リサも似たような格好になっているのだ。
これはもう、そう言う事なのだろう。
ちらりと下を向けば華が咲き誇っている。
「改めて、メル、いやエフェメラルよ。」
『えっ何々何々。』
「リサもとい、リサリシアが、貴方の願いを背中を押しにご協力を。」
そうしゃがんだ彼女に良いとメルは両手を振っていると
『っ』
いつの間にか、メルの周りには白い正装をした彼女達が
その場にしゃがみ、まるでメルの指示を待っているように見える。
「メリアもとい、メリアージュが貴方様のお力添えに。」
『メリア!いやと言うか二人とも名前違って』
「神名を貴方に授けるというのです。」
受取ってからこそ、始まるというもの。
そう二人に言われて、仕方がないとメルはため息を吐いた。
「華樹の記憶、廻廊に基づいて。
第11章、正義を貫きし華神、メリアージュ」
「同じく華樹の記憶、廻廊に基づいて。
第12章、再開の鐘を知らせる華神、リサリシア。」
貴方の為に、この華を捧げましょう。
『…ほんと、皆揃って馬鹿ばかりだ。』
「っくくく、知っているか?神様よ。」
類は友を呼ぶ、って言葉を。
嗚呼ソレは私も思ったとメルは笑っていいと両手を広げる。
『おいで。願いに縋る者達よ。私と共に。』
「「もちろん」」
二人は同時に言って、メルの両手を片方ずつ取った。
その瞬間、二人の華が咲き誇り、その髪色が一度変化する。
白く綺麗な髪色に染まり、目の色は光り輝く。
黄緑色と、オレンジ色が、ずっとこちらを見てくれている。
嗚呼もう、大丈夫。大丈夫なのだ。
今此処に、12の廻廊全員が集結したのだ。
「メル」
『わかってる』
嗚呼おいでとメルは手を放して皆を集結させる。
それにミシュメールがめるううううと叫んで空から飛ぶ。
わああとメルが後ろに下がる間にフィズが抱きしめ耐えていたが
「え?ええ!?ええええ?!?!?」
『あっちょ、流石にむううりいいいい!!!!』
「っくくくく、なんだあれは。」
「戯れでしょうねえ〜〜〜」
「なんとまあ可愛らしいことで。」
待って助けろこんちくしょう!!!
そう叫ぶメルだが、何だかんだ言ってメルが大好きな皆は助けない。
その愛情にどうか溺れて堕ちて一度底を知ればいいという者だ。
「ねぇねえあれしよあれしよ」
「えっなになになになに」
「あのみんなでするやつなんだっけえーとえとえとえと」
『あ〜円陣組むやつ?何する何する〜〜???』
「えんじん?」
「円陣とは3人以上で肩を組み、円を描くように形を作ることですよ。
以前やきゅうとやらをしていた時にしたようなものです。」
え゛野球したの。そう言ったアルトリアに、まぁ嗜む程度はとウイスが答える。
意外だと思ったのだ。それもその双子の喧嘩を時々見ていたが、其処迄とはと。
基本的に円陣は組織を丸く収め、士気を高める効果があると言われている。
チームや団結を重んじる日本の文化ならではのことで、
スポーツなどのチーム戦をする直前で良く円陣を組んで
皆の心を一つにしているシーンがあったりするのだ。
心が一つになんて在り得ない話ではあるが
気持ちの問題で何とかなったりする。
要は願掛けみたいなものだ。
『はいはいはいはい、私基準に左からミュラリス右にリサリシアで終わる形で移動はいすぐする!!!』
パンパンと音を立てたメルに、彼女らが移動する。
わらわらとこっち?どっち?と言いながらもあっという間に円を作った。
『…お前ら、今回の相手誰だとお思いで?』
「破壊神に天使、そして華を持った後の人達。」
『お前達はなんだ』
「華を持つ廻廊者であり、終焉を司る者達。」
『お前らの願いは何処だ』
「この華を廻す、心臓に。」
『じゃあ腕回す!!』
いいかとメルは周りを見て言う。
『君らに出会って私本当に嬉しい。』
「エフェメラル……」
『だから掛け声おうの後例の奴で終わりましょう。』
「えっ待ってマジで?」
『既にこの状態で私ら羞恥もんだぞ???』
駆け抜けてくれるんでしょう?私と共に。
果実を喰らったその末路を
「…勿論。」
なら、行くしかない。
一度メルは起き上がり、彼女らも戻る。
メルは大きく息を吸って吐いた後
すっと素早く息を吸って叫んだ。
『青組ーーーーー!!!!』
「「「はーーーーーーい!!!!」」」
その大きな声と共に、メルは右手を上に上げる。
それに伴い12人全員がメルと同じ動きをした。
ゆっくりとメルは両手を広げて円陣を組む格好をするので
その通りに各々も手を広げ、肩に手に触れた。
目はギラギラと光り輝いていて、
それにぞわぞわと背筋に伝わった感情を抱え叫ぶ。
『僕らは』
「「「終焉!!!!」」」
『勝つのは』
「「「僕ら!!!!」」」
『願いは』
「「「同じ!!!!」」」
『想いは』
「「「一つ!!!!」」」
『約束果たしに』
「「「いざ行かん!!!!」」」
『ふぁいと〜〜〜〜???』
「「「いっぱーーーつ!!!!!!」」」
全員で一斉に中央へと右足を出してダンと音を立て
そのまま同じ様に右手を空へと手を上げた。
その瞬間メルら全員の華が一斉に咲き誇っただけではない。
「っな」
髪色は白く光り輝き、ちらりと片目が金色に光り出したではないか。
胸元にはメルの付けているような、同じエメラルドの宝石が光を帯びている。
手を伸ばしたその中央に、綺麗な光から、綺麗な銀色の鶏が出てきて。
ーコーケコッコー!!!!
高い音が鳴り響き、それと同時にメルの石が破裂した。
直後、メルの背後からバッとウイスが近づく。
意識を飛ばして拉致る前提での攻撃。
気付いているミュラリスやリサが下がりピナクル一人で防御結界を張る。
「メル行って!!!」
『いわれなくとも!!!』
「させるとおおもいで?」
「なので僕らが」
「お相手します!!!」
メルの目の前に来たヴァドスとサワアに対して
ミシュメールとミラが相手をしに攻撃を仕掛ける。
その間をかいくぐる様にメルは走り出す。
『いーーけいけいけいけいけいけいけいけ』
走れ、はしれ、全速力で、突っ走れ。
後ろなんて振り返る暇があるなら
先に身体を前に倒して走り続けた方が良い。
熱さは考慮出来るが、この服一応動きにくい。
多分だが、これ選んだのサワアだと思う。
何処かで服を着替えられる余裕があればしたい。
それに逃げるならあの服ではいけない気がするからね!!!
メルは路地裏で走り続け、空を飛ぶ面々に指示をする。
『私はこのままこの街をとにかく出る!お前らは奴らが来たらすぐに対応。』
「魔女は!!」
『緊急時対応作戦はい動く!!』
「メル上!!」
「っ!!!」
「考えましたねエフェメラル様!!!」
ですが、そう言って近づいた天使に、メルはぎょっとする
「数を切るのは貴方も同じ。」
『っそれはどうかな?!!?』
メルは笑って走り続けていた。
前に出てきた天使に向かって兎に角走る。
「フィズを放置、ですか?」
「ええ。恐らくメルの作戦はこうです。」
一度想いを一つにし、束にしてから少しずつ解かせる。
そして最後になった時何処かで同じ様に集まって力を解放する。
その為一度分裂する時間が生まれる。
そこで最後に残す者が、メルの作戦でもあると
サワアは天使や破壊神らに説明をする。
時間は数日前にさかのぼり、現在メルが言い出した突拍子もない鬼ごっこの作戦会議中。
大将は当然サワアと全員一致の回答で、サワアが指揮を執っていた最中である。
「フィズは我々天使の感知及び思考回路を読んでメルに指示を出すでしょう。」
「…成程此方も一手受けないといけないということですね?」
「まぁ一度引っ掛かってくれそうですが、問題は二度目です。」
「どういうことです???」
「メルは必ず僕の手を取って罠に引っ掛かってくれるというのですよ。」
そんな負け戦するか?という者に、いやありえますねとクスが答える。
「あの我々を騙した子ですよ?一度くらいは引っ掛かりに来るでしょうね。」
「じゃがこいつが手放すとは思えんが。」
「いえ一度手放します。」
「ほお?何故だ?折角のチャンスを逃すのか?」
そう言ったのは破壊神ラムーシである。驚く彼に、ええとサワアは答える。
「我々はあくまでも力を温存し続けねばなりません。」
「でも相手はあの子ですよね?空が飛べないと言っていましたが。」
「それは飛び方を忘れた、いや、知らない様に見ていないだけのこと。」
目をそらしているだけ。
目を向けてその感情に触れて飲み込んでしまえば
それこそ、おおごとだと、サワアはいうのだ。
「破壊神らは全員魔女に向けて体力を常に温存してください。
我々天使は華神らを撃ちつつメルを確保にありとあらゆる手を使っていいです。」
「いや、ありとあらゆるって、ちなみにどれ程の。」
「そうですねぇ…気絶、幻聴、隙が出来る程の損傷などなど。
なんなら色目やらなにやら付け込んでも構いませんよ。」
「ちょ、いっ、お、お兄様…?!?!!?」
「多分コルンさん、ウイスさん、クスさん、私辺りは彼女が要警戒してくると思います。」
「まあでしょうね。長いこと触れているでしょうし。」
「この近辺は特に触れてくることがあるので、逆に敢えて触れに生きます。」
というと?
「あの子は悪魔の様な未了的なささやきに酷く強い。」
「それだと逆効果では?」
「小さなころから104年も同じ時を過ごしたのです。」
なんなら、何世代も前からの時間もあるというのを、彼女は一つも知らない。
未だに気付いていないなら、もういっそのこと、これを気付かせてしまえばいい。
「コルンさんとウイスさんはあの子に抱きしめるなり触れるなり囁く方に回ってもらいたい。」
「…成程、誘導と言う事ですね。分かりました。」
「出来るだけ近い方が良いです。視界だけでなく聴覚、触れることも同時にして下さい。」
「…するのはいいのですが、本当に良いです?あとで怒ったりしません???」
「舐めてかかるとあの子本気で捕まえれませんよ?」
なにせ、12の時を駆けた子供なのだ。
その子が成長して、このゲームを直々に叩きつけてきた。
この勝負、何が何でも勝ちに行く。
「大人げないとかどういうはもうこの際捨てます。」
「すてるんだ…」
「仮に恋に落ちたとしても私が後で引きずり戻しますので。」
「…サラッと怖いことを言うなこいつ。」
「他の皆さん特にモヒイトさんやヴァドスさん、
それにコニックさんは我々のサポートを。
アワモさんは破壊神と我々の伝達係を頼みたい。」
「わかりました。」
そうアワモがお辞儀をするのに、頼みましたとこくりサワアは頷く。
「なぁ一つ良いか?」
「なんでしょう」
「あいつら滅茶苦茶非力にしか見えないんだが、
軽く吹っ飛ばして死んだりしねぇのか?」
「死にませんよ。だって彼女ら全員華神ですから。」
「は?い、いやだが、」
「華を一度咲かせた廻廊者、終焉を司る者達です。正直威力は未知数。
何名かの破壊神は分かっているでしょうが、
舐めてかかると本当に死にますよ。」
そうそうとヘレスがこたえた。
「わらわの弓の技術はミラからの指導じゃからな。」
「そ、そうなのか…!!」
「なんならあの形、殺さない様に敢えて女に固定していそうで怖いな……」
「おや、ビルス様よく気付きましたねえ?その通りですよ。」
「っそうなのか!?!?」
「華神らは全員女性、相手が下に見たり、
隙を見せたりするように調整されているのです。」
先程のジーン様みたいにね。
そう言うサワアに、ぐっとジーンが唸る。
「じゃあ容赦なしにぼっこぼこにするつもりで行けばいいんだな?」
「ええ、シャンパ様の仰る通りです。全力でかかって下さい。」
「それにしてもそのエフェメラル様というのが
イマイチ感じがつかめないが、一体どんな奴なんだ?」
「そうですねぇ、華を潰したり、
人を蔑ろにしたり煽るとブチ切れますが、
それ以外特に自分を貶したりすると喜びますよ。
その為下手に煽ると逆効果になります。」
「なにそのとち狂った思考回路は……。」
「どうせそうしないといけなかったのでしょうがね。」
廻廊として12の魂を抱えて一人で生きているのだ。
あの小さな身体で小さな姿で、
その身をどれ程傷つけているのだというのだ。
「嗚呼そうそう言い忘れていましたが、コルンさん」
「なんでしょう」
「貴方は基本的にメルを褒めて下さい。
そりゃあもう共感性羞恥心を逆なでするくらいには。」
「待って下さいそれは貴方の役目では????」
「私だと慣らしている可能性が非常に高いのです。
まぁコルンさんが駄目ならウイスさんや、
耐性を付けてなさそうでころっといきそうなのは
モヒイトさんあたりでしょうか?」
「あの、我々全く共通点が天使以外ない気がするんですが…」
いえ、ありますよとサワアが答える。
「我々全員確固たるプライドが高いのです。
特にあの子が思う精神論の中ですが。」
「…何を基準にして警戒されているのか全く理解が。」
「体格というのもあるでしょうね、
特にコルンさんやウイスさんは身長が高い。」
「それならコニックさんやクカテルさんの方が
今回の捕獲に向いているのでは?」
「言っておきますが、メルはこの世界に自由に移動できます。
貴方方は彼女からして身長も体格も大きい。
その為メルの中で選択肢が限られるのです。」
「ああ漸く分かりました。
要はメルさんの選択肢を限りなく
増やしていけばいいんですね?」
「そう、ウイスさんの仰る通りです。」
メルはこの世界に、透過して出入りが出来る。
それはこちらがいけない場所に飛ぶということ。
出来る限り我々は最初の初手で視界から
とにかく逃がさないことを念頭に動かねばならないのだ。
「あの子の好きなタイプは正直これっぽっちも知りませんが
絶対この人だとしないなって決めつけてるところがあるので。」
「其処を突くために、敢えて私が触れていくと。」
「時間稼ぎになればそれだけでもありがたいです。」
「わかりました。人肌脱ぐと致しましょう。」
「頼みます。割と貴方も今回の鍵になると思いますので。」
「では私とサワアお兄様、そしてコルンお兄様とモヒイトさんで
行動を共にした方がよろしいでしょうか?」
クスはフォローに入ると言い出したので。
「そうしたいですが、出来れば何度か外れた方が良い。」
「何故です?変な話全員で愛のささやき程度したら
あの子簡単に取り押さえられるのでは?」
「それが出来たらいいんですがねぇ…。
やってもいいですが、こっちが恥ずかしくなるだけですよ?」
やるだけやってみるが、似たような作戦は通用しなくなるだろう。
まぁメルのことだからてんぱってる時に同じことをしたら隙が出来るだろう。
あれ?待って?これさっきもしなかった???ってどうせ、思うだろうから。
「マティーヌさんはアワモさんと常に通信を取って下さい。
何方かが途絶えたら全員に通達を。」
「わかりました。」
「それまではカンパーリさんとマルカリータさんは魔女らの対応を。
破壊神と共に行って貰いたいです。どちらかが消えたらその時にも通達を。」
「わかりましたですますわ。」
「本気でかかるつもりなんだな。」
「当たり前でしょう。あの見た目何も考えてませんって感じの子ですよ。」
一体何を隠しているのか自分でもわかりゃしないのだ。
だからこそ末恐ろしい。やることはとことんやっておいていいだろう。
それも、すり抜けて、この地に返ってくるというならば。
その時はその時になってしまうが。
本当の本当に、お別れになるならば。
せめてもう一度くらい、
あの日の様に抱きしめてやれたらいいと思う。
まぁそれはあの子が次に目覚めた朝にでもしてやろう。
そうサワアが思っている矢先に、メルが到着した。
その紺色の髪色を揺らして、黄緑色の目が我々をランランとした目で睨む。
楽しんでいるのだ。この状況下で。
この子は、何処に転んでも、地獄に落ちるその状態を。
何よりも誰よりも、愛おしそうに笑って言う。
ねぇ、終わった?
そう、開催の幕開けの合図を今かと待ち遠しく声を掛けて。