残照に焼き付いた野の花




ちゅんちゅんと鳥の鳴く声がする。
ゆっくりと目を覚ますと上から嬉しそうな声が聞こえる。

「…おはようございます、エフェメラル」
『……は、よ?』
「っくくくく、声出す練習からですか???」

クツクツと笑うサワアが抱き上げますよと一言いって抱き上げる。
あれからどれ程の時間が過ぎたのだろうか?

「貴方が消えてからまだ数か月しか経っていません。」
『はえ』
「っくくく、いやはや、
本当に帰ってくるとは思いませんでした。」


まさか我々の力も綺麗にしてくるとは。

システムを組み込んで一応お試しで何とかやっていると
仕事量が良い感じに片付いていくのは良いが、だ。

「ちょっとそいつ頼んだ。いやほんとまさか
時間の流れがあった方が良いとは思っていなかった。」

そう、その集中力の桁違いだった。

メルはあれからもう夜通し状態で
永遠に仕事をするはするはする。

流石に引けて我慢の限界で
意識を飛ばしてはいたものの
疲れた彼も一度楽になりたいと思い、
大神官に声を掛けたアニュラスは
メルをこの地に叩き落してきたのだ。

「お前もう休め!!いいな!?!?
と、いうか、普通に休まないと
軽く死ぬかもしれん。」
「し!?!?!?」
「ちょ、どうしてそこまで働かせたんですか!!!」
「煩い!こいつが止まらんのが悪い!!!!
ま、その前に華樹神としても試練があるしなあ。」

ぐったりとするメルが余りにも静かで妙な感覚がある。
そう言えばあの大きな翼がないが、仕舞っているのだろうか。

「一応翼は出し入れ自由にさせている。
理としての力も健在だが、ソレの慣れがイマイチねぇ。」
「慣れ、ですか。」
「天使と人間の間で肉体を維持させているから、その力との塩梅が難しい。」

流石にこの子も完ぺきではない。
体力が落ちているというよりかは、
力に押し潰されない様にと必死に生きようとしているのだ。

「最悪原初を引きずり出して軽く処置させた方が良いだろうな。」
「…原初、を?」
「そういえば原初の皆さまは一体何方に?」
「各惑星に住んでいるはずだ。」
「探し出しますか。」
「ええ」
『さ、わ』
「…いますよ?エフェメラル。」

そう言うと嬉しそうに良かったと眉を上げて目を閉じる。
安心してしまったのだろう。
すやすやと寝息を立てる彼女に
ではとサワアはペコリと軽くお辞儀をする。

「お預かりします」
「いやいや返す返す」
「え?」
「どっちかって言うとこっちが預かってた身だからなぁ?」

すっとメルの姿をみてうっすら
笑みを浮かべた彼が
ちらりとサワアを見て二コリと笑った。

「じゃ、すっぴー後よろしくな?」
「わかりました。では行きましょうか。」
「はい」

ぐっすり眠っていますねー
というアルトリアにええとサワアは
大神官の後ろを歩きながら答える。

華樹神の暮らすあの土地へと戻ってきて
その世界がまた見違えていることに目を丸めた。

草原が金色に染まり切り、
その華樹の姿は何処にも見当たらない。


ただの草原がみえるだけで、
此処はと声が漏れる。


「エフェメラルさん専用の
形に変わったようですよ。
ところでサワアさん。」
「はい」
「今でなくても構いませんが、選んでもらって構いませんよ。」
「えっと、すいません、話が見えないのですが」
「エフェメラルさんの付き人になるか、そのままか。」

それはほぼほぼ昇格に近い話で、
流石にそれはとサワアが止まる。

「一代目の名残り、とやらですか?」
「…私、いえ、僕は元々悪魔でした。」


魂を喰らって喰らって、喰らう、悪魔だったのです。


「なので流石に其処迄して頂けるわけにも…」
「ですが、それは本当に手あたり次第だったのでしょうか?」
「え?」
「ふふ、エフェメラルさんの力かどうかは知りませんが、
貴方は消滅を望む魂しか喰らっていないと思いますが。」


違いますか?そう言った大神官に、
何処まで知っているのやらと目を丸くする。


「っふふふ、私は貴方の父親でもあるのです。
それくらい、顔を見てしまえば分かるというもの。」
「っくくく、一杯食わされましたね。」
「ええ。それで、本心はどちらですか?」
「お言葉に甘えられるならば…この子の傍に。」
「…分かりました。ならばヘレスが終わる
その時にでも交代にしましょうか。」


きっとそうしないとこの子は怒ってしまうだろうから。
そういう大神官にサワアはええと答えた。


「すいません、こんなに良くしてもらってしまって
……一体何と礼を言えばいいか。」
「気にしないで下さい。貴方は沢山頑張ったのです。
これしきの褒美は受けて当然というもの。」


何年も彼女を待ち続けたこの子が、
引きはがされる未来なんて、
そんなの誰も見たくないだろう。

まあ、本当にヘレスが終わる前に、
何かしら起きそうなのだが…。


「それよりもメルさんを中に。」
「ええ」
「どうぞこちらへ」
「では私はこれで。」
「ええ、ありがとうございました。」

そうアルトリアがお辞儀をすると
彼もまたドアの向こう側へと消えていった。

「改めまして、華樹神官を務めさせて
頂いてます。アルトリアと申します。」
「サワアです。よろしくお願いします。」
「私も貴方が此方側に来ることを
楽しみにお待ちしておりました。」

きっとヘレスの事だから
長く破壊神をきちんとこなし、
全うしてから降りるだろう。

それまでゆっくりとたっぷりと、時間はあるのだ。

華樹神官の事はルトラールからも
教わる予定だとアルトリアは告げる。


「大体の流れ的には破壊神に仕える形と同じでしょうか?」
「ええ。強いて違うとすれば夫婦同士で組むかどうか、ですかね?」
「ふっ」
「ふふふ、ルトラール様は引継ぎの代ですので
交代の人が務めていました。
今でいう私の状態みたいな感じですね。」

それ以外は基本的に華樹神官は
華樹神の想い人と決まっているようです。

逆に言えば想い人が決まらないと
華樹神にはなれないそうだ。

それ程愛情や恋情に強い力が宿っているそうで。


「あの、ちなみに一つお伺いしても?」
「構いませんよ?なんですか?」
「ルトラール様らの様に華神になるというのは」
「それでしたら撤廃されまして。」
「っ、まさか」
「…ええ、この子がきちんとお仕事を
仕切って帰って来られましたので。」


貴方がするとすれば、一度人の身体に変わり、
華を咲かせて維持をするくらいです。
華神にまで願いを捧げなくても良くなりました。


「もう願いに縋らなくても良くなったのです。
願いを胸に、力を振るわずにしなくてもいいのですよ。」
「アルトリア様……」
「ですが、流石にそれだけではきついものなので、
ある程度の訓練は積んでもらいます。」
「ご指導のほどよろしくお願いします。」
「いえいえ、此処のご説明を。」


華樹の件ですが、


「華樹神の力によってその華樹も変化します。」
「やはり…ではこの子は」
「これからかなり厳しい状況下もありえます。
そういうのもあって、今現在お伺いに向かわせていますから。」


後で第2も。
すいません…
いえいえ。


「まぁ最悪貴方の名前一つ返事ですぐに帰って来るでしょう」
「さわあああああああああああああああああああ」
「っ!!!!!ちょあ、あっま、待って下さ!!!」


メルをやっとベットに降ろしたばかりで
突っ込んできた者にギリギリ避けるサワアに
逃げるなと言われて逃げない訳がないだろうに。


『っけほっ、けほ』
「嗚呼、こら!ちょ、んも〜アンダルシア
ったら、エフェメラル様が苦しそうでしょ?!」
「うぐっ、だ、だがなぁ……???」
「うーーーわっ、本当にいるわ。」
「あえーー大きくなったーねーー???」
「っ!!エンヴィ様にアルカポネ様!!!」

お久しぶりです!と嬉しそうに
目を丸くして地面に降り立ったサワアに
元気そうで何よりと笑って答えるアルカポネ。

サワアはぺこりとお辞儀をした。

「ところで本当にいるとは、」

「何かぴょっこり破壊神と天使が華神連れてきてさ?
次の華樹神の為にと頭下げてきたから
とりあえず時間的に次の華樹神って
華樹神官が想い人なのは分かっててね?」

「何処の馬の骨連れてきたんだって
怒って暴れまわろうとしたらさ」

「さらっとえげつないこと言いますね???
ちょっと待っ止めて下さいよ???」
「それがサワアになるかもって話を聞いても〜〜
ピタッとやめてほんとかと思って
急いで飛んで来たらありゃまーーーー不思議!!!!」

マジでサワアお前いたとは!!!
いや、私は天使ですし、死にませんし……

そう背中をバンバンと叩かれて半笑いの
サワアにそう言えばと声が上がる。

「あれ?私?待って一人称僕じゃなかった?」
「え?あっいや、それは〜〜その〜〜〜。」
「はは〜ん?アレか?エフェメラルが廻廊に入ったの
僕のせいだからケジメとして一人称から変えたとか。」
「っ、」
「……え、あれ?待って図星?」

あっ、ごごごごめんと謝る彼女に
いえとサワアは笑って答える。

「事実なので。」
「…ほんと、いっちょ前になりやがって!」
「ちょ、揶揄わないで下さいよ。」
「まぁまぁ、でもアンダルシア。
貴方良く此処まで来たわね?」
「え?」
「貴方破壊神と天使嫌いじゃなかった?」
「え゛ちょ、あああ、アンダルシア様?
まさか殺してなんかしてないですよね?!?!」
「殺してはないが…ちょっとな」

連絡入れなければと頭を抱えるサワアに
その必要はありませんと答える。

「っこ、」
「すいません、少々厳しいご指導ご鞭撻のほど承りまして。」

いやそんなの見てすぐに分かったというもの。
リキールの姿はなく、コルンだけでもボロボロの状態。
なんなら軽く腕を一度切られているのではないのか。
服が破けたままで出てくる子ではない。

そう、彼がその状態で人前に出るとは
余程のことであって…そうつまり。

【……アンダルシア様?????】
「ひっ!!!いいいいいや、これは誤解だ!!!」
「…そもそもコルンさんは人前にこのような状態で
出る子ではありません。明らかにちょっとや
そっとの域ではないでしょう……????」
「っ!!!お、お兄様私は構いませんので。」
「…はぁ。分かりました。」

ですが次、弟にしたらただじゃ起きませんよ。
う…ぜ、ぜん、…善処、する。

そうしょげるアンダルシアに、
立場変わったねぇと言う者に声を掛ける。

「っアマレット様にミスティ様、それにコロネ様!!!」
「ごきげんよう」
「お久しぶりです。サワアさん」
「ええ、お久しぶりです!お元気でしたか?」
「勿論。そちらの方は?」
「私の弟のコルンさんです。
現在は第8宇宙の天使ガイドを
務めて貰っておりまして。」
「あらあら、可愛がられちゃって…今回復しますね。」
「すいません…」


原初の力は少々特殊らしく、
下手に攻撃を受けると
ダメージの継続で死ぬこともあるそうで。

流石に其処迄甘く見ていなかったのだが、
それでも厳しいという状態は如何せんよろしくない。

修行が足りないだけですというコルンに
そんなことないとミスティは答える。


「あの子がむきになっているだけですよ。
本当はこれ程の力残っていないはずなんですがね。」
「うぐ…だからすまんかったというておるじゃろうて……」
「ふふふ、きっと貴方の名前を知って
すぐに調子に乗られたのでしょう。」
「私の、ですか??」

知られる覚えはないと思ってすぐに止まる。

「…まさか、私の名前を?」
「エフェメラルが消えたあの日から、
書庫に残っていた赤い印とその下に書かれた
あの文字を見てすぐに分かったからな。」
「絶対会ったら本気で死合するんだ〜
って言ってましたので。
まぁまさか本気でやるとは思いませんでしたが。」
「だから悪かったって言っておるじゃろう!!!???」

半泣きのアンダルシアに周りもクスクスと笑う。
けほけほと咳き込むメルに嗚呼すまんと
アンダルシアが目を向けたその時だった。


『っごほっ、けほっ、う、げほっ』
「………は?」
「メル」
『ごほっ、が、っぐ、ごほっ』
「アンダルシア!!!」
「っ容態は!!!」
「血圧80/50、脈拍120、低い上に脈が速い!!
あの時と同じです!!吐血あり!!」
「エフェメラル様、起きて下さい、私の声聞こえます??」
「エンヴィ!コロネ!!」
「ただいま!!!」

赤い吐血をして、ぐったりと真っ青になっている顔に
サワアが動くのをアルトリアが抑える。

「駄目です外に出ましょう。」
「っですが!!」
「サワアお兄様」
「…っ」









メルの身体の周りで、
多くの華神らが適切な処置を施している中
サワアはアルトリアに軽く押され、
そのままコルンと共に外に出ることになった。





震える子供にそっと寄り添い、その背中を抱きしめ、
優しくさすってあげることしか出来なかった。
その彼は、隣でその扉の前で立ち尽くしていた。



立派に育って、その姿は、もう震えるあの子供ではない。




「っ!!アンダルシア様!!」
「…一応何とかなった。正直割と危なかった。」
「丁度集まったタイミングが良かったですね。
誰か奇跡の華神とかいます?
ちょっと幾ら何でも絶妙過ぎるんですが。」
「一応廻廊の中にはいた、んですが…」
「…華樹の中で眠った、か。」

そう、彼女らは一度アンダルシアらを説得しに行った後
ふわりと綺麗に消えて溶けてしまったのだ。
廻廊に戻ったのだとビルスらは安心しているが、
その姿はもう何処にも存在していないようにも見える。

華樹自体が消えて無くなっているのだから。

「華樹が成長し次第ってところかな。
引き継ぐ間もなくまずは原初から、か。」
「…それよりも、アレ一体どういうこと?」
「アレ?」
「いやもう心労とかの度合い越えてる。
どうやったらあんなになるの???」
「普通に体内はズタボロ。
栄養失調に過度のストレスで胃もやられてる。
回復を二人がかりでやってギリギリ保っているが、
アンダルシアお前アレどれくらいで回復できる?」
「お前らの気全員分集めて三日。」
「もう殆ど治らねぇじゃん……」

それは途方もない量ということになる。
流石にそれはまずい。

「やっても三日間だ。一応最善は尽くす。」
「じゃあ皆の者撤収」

そう言って何人かが捌けると
同時にアンダルシアが中に入る。

「あの、実は原因が一つ……」


++++++++++






「はぁああああああああああああ?!?!?
華樹の理になっただとおおおおおおおおお?!!?!?!?」
「ええ」
「あの、え、あ、え、エフェメラルが???」
「ええ」
「うそだあ〜〜〜」
「事実です。私もこの目で見ましたので。」
「なんでしたら私もです。」
「アルトリアん、アルトリア???」
「ええ私ですよ?」
「完成しとる」
「あああああああああああああああああああ
るとりああああああああああああああああああ」

宴状態に近いこの子達の騒ぎようったらありゃしない。

サワアはため息を吐きつつ
この黄金の中に腰を下ろして話をしていた。
流石に此処に椅子を置いてとするのは悪いのだ。

主にメルに対して。

流石に腰をかけるのはとコルンは思っていたが
すぐに自分の身体に異変が出たことに気付いた。

「っ!!身体が…」
「……ねぇ待ってこれさ、待って。待って待って。」
「ええ、貴方達が思っている通り、これは黄金の草花」

かつてのユートピアに咲いていたものと全く同じものです。
そう言うサワアに、はわーと言いながら倒れたアマレットに
アマレット!?!?と誰かが叫ぶ。

「いや、それなら滅茶苦茶だよこれ」
「そ、そうなんですか?」
「ユートピアってあの太古の滅びた世界でしょ?」
「ええ第一代目の時間なので。遥か遠い昔の話しです。」

全王様が何度交代していることやら。
そんなにですかとコルンが言うのにサワアが頷く。

一代目二代目の単位はあくまでも
華樹の理に付いた者達の代で数えている。
二代目の全王様も何回変わったことやら。

その話に、コルンはサワアがどれ程昔に生きていたのか漸く理解した。
とんでもなく遥か昔の約束を、サワアはメルに言ってくれたというのだ。
それに恐らく、メルは気付いたのだろう。嬉しくなってうんと頷いて。
その時間が果たされることは二度となくて。

そうして此処に戻って来たというのだ。

「呪いも綺麗に拭い去って帰って来てくれましたので。」
「成程、だから変な奴が無くなってるのか。」
「…やはり私にも付いていましたか?」
「最初は分からなかったがな、気付いたらあった。
取り除ける感じがしなかったし、まだお前は小さかったからな。」
「そうですか…」
「まぁその、え、」

ユートピア、マジか

「あの古代の黄金の草花だったら、これ滅茶苦茶なんだよ。」
「というと?」
「ありとあらゆる傷やら呪いは浄化できるうえに、
その争い事の種も全て拭い去ってくれる飛んでも空間。」
「まぁ痛みやら成長を消し去るって意味では地獄とも呼ぶ。」
「そんなものが…」
「これが成長して華神という形にもなった、とは言われていますが。」
「っ!!!」

成長しなければ、恐らく自分らが見た
あの漫画の様な世界線になっていたことだろう。
メルもいない、何も会えていない。ただの世界が。

「此処に華樹が育つとなりゃあ、とんでもない力になるな。」
「ええ、暫くは身体を動かすこともろくに出来ないでしょうね。」
「っそんなにですか?」
「華樹の樹は主に感情を養分とします。気は殆ど使わないのです。」
「その為生きていれば傍に寝かせれば成長はします、が。」
「欲のない者ならその成長も遅く、そして体調も整わないと。」

そう言ったコルンに、各々がこくりと首を縦に振った。
最悪数年の間は感情が消え失せてしまうこともあるかもだというのに
それくらいならとサワアは答える。

「また芽吹かせればいいだけのこと。
だって此処に居てくれるというのですから。」
「…ま、死にはしないね。」
「だとしても、華樹の樹が成るのは短くても千年、
まぁ長くて数億年の月日が必要になる。」
「っ、流石にそれは」
「勿論一人での話。我々原初もバックアップするし、
お前ら天使らも付いてくれる。だろう?」
「ええ、お貸しする予定ですよ。」

そう言った大神官に、後の面々が出てきた。

「ライラ様、スコーピオン様!ボールパーク様皆さん」
「久しいな、元気してたか。泣き虫坊主。」
「お久しぶりですねサワアさん。」
「ちょライラ様?それはおやめください。
あと私はもう泣き虫ではありませんし。」
「おや?メルさんといれば
すぐに泣いていた子は一体どちらでしょうね?」
「っちょ、お父様!!!」
「っくくくく、すいません。」

可愛らしいお話を聞いてはつい、ね?
相変わらずですねぇスピスさんはという彼女らに
お父様とコルンが声を掛けた。

「お名前を彼女らに明かしていたのですか?」
「ええ、メルさんが嬉しそうに言ってしまわれましてねぇ?」
「ふふ、最初は申し訳なくて困ったんですけどね。
流石に大神官様の前であの子がギャン泣きはちょっと…」
「嗚呼…仕方がなくという感じだったのですね。」

確かに、あの感じの幼少期であればそりゃあ泣いただろう。
仲が悪いのどうしてと、そんなつもりもないので
内心ごめんなさいと謝りつつも次第に慣れていっての形だろう。

流石にそうなったら彼も言わないでとは言いづらい。

「昔は良く言われていましたが、
エフェメラルさんが帰って来た時くらいですよ。」
「すっぴーとか言って揶揄うのも昔ならではだよな。」
「全く、威厳も何も無くなるから、子供達の前では
おやめくださいと言ってたんですがね?」
「現在進行形で控えられてないと」

まぁ別に威厳も何も、上の方、父親なのだから
別に生意気な態度を取るつもりはさらさらないが。

「いやにしても君があのコルンか。」
「おおきいねえ」
「エフェメラル絶対身長伸ばす呪い作っただろ。」
「やりかねないことを仰らないで下さい。」

ちょっと本気にしてしまった自分が情けない。

「ま、人の感情をひっくるめて成長したってんなら大丈夫でしょ。」
「っ!!…まさか、ひょっとして」
「全員知っていますよ。」
「…私はそんな天使に等なれていませんよ。」

貴方方のような方達に褒められるようなことは何も。

「いや、なってる。」
「え?」
「スコーピオンが言うならもう箔押しだよ。」
「え?え?えっちょ」
「信頼の華神だからね。彼の断言はもう確定だよ。」
「そんなないことに確定押さないでもらえます?!!?」
「いやでも事実だし。」

ならいいじゃんと周りに言われ、ううと困るコルン。
エフェメラルとの作戦を言っていた時に聞いた
サワアの言葉が思い起こされる。

確かに女性陣に取り囲まれてきゃっきゃされると困るところがある。
妹達とはまた別のお方達、なんなら人間だったとはいえども神様で。
しかもとびぬけて強いと来たものだから、頭が上がらない。

なんなら姉と兄であるクスやサワアが世話になっていた上に
自分の名付け人であるエフェメラルも世話になっていたのだ。
そんな彼女らに余り強くなど言えるわけもなくて。

「そ、そう、なんです、か?」

何時も見る彼等いる訳もない。
困ったように眉を下げたコルンに
周りもニコニコして声を掛けてくれる。

きっと弟妹達が見れば唖然とするだろう。
昔の彼を見ている様で少し気分が良くなる
サワアに対してコルンはしょげにしょげまくっているが。

「うんうん。そうそう。」
「なんなら良く理から引っぺがしてきたよね。
アレ絶対サワア君単体じゃ無理だったでしょ。」
「え?!!?」
「でしょうね。あの子沢山の想い出があってからこそのこと。」

勿論貴方も含めて。そう言うサワアに、
コルンは白旗を上げるしかできない。

「にしても、此処にあの子を寝かせれば
全てが解決、とはいかないのですよね?」
「…まぁ体調は良くなっても
精神面がずっと停滞するだろうからね。」
「それにもう、外には」

そうか、旅はもう終わりを遂げてしまった。
これはエンドロールの向こう側に位置している処。
彼女は一人でその地面に足を下すことは不可能になっているのだ。

華樹神はある意味、神様の天罰というもので。
地面に降り立った天使のおかげで
こんな後始末になったというものらしく。

本当に昔の神々が愚かだったことに
コルンは腹立たしくなってくる。

「まぁその神様も今では何処に居るかわからないしね。」
「そうそう。でもメルならそこら辺
手を付けてくると思ってたんだけど。」
「しなかったのか、しようとしたらエネルギー切れしたのか」

したくなかったのか。何なのかは分からない。

「でももし下界に降りるならば、話は別でしょうね。」
「…その時まで少々仕事もはかせねば。」
「元々の状態なら空を飛ぶことも出来ないだろうからね。」

天にも帰れず、地にも降りれない。
鳥かごの中でしか生きさせない。
翼を付けた、天使の落ち子。

それを人々に種をまいて、力を取り願いを吸って生きている。
それは嫌われ者に等しい形の回り方で、
知れば知る程嫌になってくるというもの。

それを、我々は知らずに傍に居てくれる
というだけで縋ろうとしていたのかと思うと、
本当に申し訳なくて合わせる顔がない。

「まぁそれを知られたくなかったんだろうね。」
「え?」
「そうだね。所でアルトリア」
「なぁに?」
「12の部屋って今の華神らだよね?」
「ええ、そうだけど」
「外側って何になってる?」
「今は全部空白にしてるけど…」
「じゃあ各惑星に繋げれるようにしても?」

大丈夫と声をかけると各々がそれぞれの場所を取りに行く。
どうやら一度帰るらしい。

ではと言って消えた彼女らにサワアらも移動することにした。