流罪に処す




夢を見る。

黄金の草花の上に眠る黒髪の男性を
泣きながら謝る白髪の女性が縋っているのが。
綺麗な草冠を彼の頭に置いて、ゆっくりと消えていく彼と同じく
女性は更に早い状態で綺麗に消えて居なくなっていく。

頬に触れて、またどこかでと笑う男性にきっと、と女性が言う。


ーいつかきっと、貴方とまた会えたその日には、

花冠を交換して欲しい。

そう泣いた彼女に、嬉しそうに男性は言った。

ー約束しましょう、いつかまた、この草花の上で。

ー愛を誓って、永久に生きれるその日まで。

『(優しい夢)』

きっとそんなことは出来ないのに。
涙を流して身体を動かそうとしたが、
止めとけと言われて目を動かす。

「もう一週間は眠っている。水を持ってくるから待ってろ。」
『(アンダルシア?)』
「アタシだ。今目覚めて水飲ませてる。…ほら、飲め。」

そう言われて水を持ってきた彼女に
メルはコクコクと音を立てて飲んでいく。

コップの口に嵌めた、
柔らかいシリコン製の吸い口から
少しずつだが水が口に入ってくる。

一気に流れることもなく、咽ることはない。

なんなら逆さにしても
中身が出てこなさそうなその形に、
コレ滅茶苦茶良いなとメルは思っていた。


「今何人か声掛けたから人が来る。」
『あ』
「…っくく、大丈夫、声出さなくてもいい。」
『(でも)』
「相手の顔を見て話すことだな。おっと来たな」

コンコンとノック音の後失礼しますと入ってきたのは

『(サワア!コルン様、
それにウイスさん、モヒイト様まで)』
「アンダルシア様、彼女の気分は?」
「大分マシだ。煩くし過ぎなければ
すぐに安定し始めたし、大丈夫だろう。
ほら、試しにアイツに声を掛けてみろ。」
『(えっ出来るの?これマジで言ってる????)』
「出来る上にだから言って見ろってば。」
『(え〜〜??出来る??あの、サワア?コレ聞こえてる???)』
「聞こえてますよ。」
『(ひえ)』

聞こえる怖い。

そう思って目を閉じるメルに、
大丈夫だって〜とアンダルシアは呑気に答えた。

「にしても選抜良すぎないか?お前良く育てたな???」
「そうですか?それは光栄ですね。」
「戦闘力はまぁ別に置いておいて。
頭は切れる上に呑み込みも早そうだ。」
「…あの、えっと」
「嗚呼失礼。改めて。」

そう距離を置いた彼女がぺこりとお辞儀をする。

「彼女は原初。第8を司っておられた
回復の元華神であるアンダルシア様です。
現在はエフェメラル様の回復役として
お越しになられておりますので。」
「アンダルシアだ。こう見えてもこいつよりかは出来るぞ?」
「もう、アンダルシア様?」

人が真剣に説明しているのに。
そう困るサワアにクスクスと笑った
アンダルシアにウイスが話を続ける。

「ご丁寧にどうも、私は現在の第7宇宙
天使ガイドを務めさせて頂いております
ウイス、と申します。…此方は第9宇宙
天使ガイドを務めています、モヒイトさん。」
「モヒイトです。以後お見知りおきを。」

「嗚呼、よろしく。早速だがサワア、
お前こいつら借りても良いか?特にこっち。」
「構いませんよ。いや構いませんが…
あの、アンダルシア様。ほんっっとうに、
出来るだけお手柔らかにお願いします。」
「分かってる分かってる」
「……次、前みたいな事したら。
私、怒りますからね????」

ウイスの方をつついたアンダルシアがウイスの後ろに隠れるのに
サワアはため息を吐いてぺこりとお辞儀をして彼等を任せることに。

その間コルンはメルの元に行き、大丈夫かと声を掛けていた。
メルはこくりと頷き、咳き込みのないことに
コルンは少し安堵していた。

サワアはソレをみつつもメルの方に身体を傾けて手を頭に当てる。
額に当たるその気持ちよさに思わず目を閉じて集中してしまう。

「…気分が良くなったそうですね。
…本当に良かった。心配してたんですよ?」
『(うう、ごめんなさい。えっとその。
…ちょっと、頑張り過ぎちゃった。)』
「はぁ…張り切るのは良いですが、
貴方の身体はその一つしかないのです。
また廻廊に身を落とさないようにして下さいね?」
『(はぁい頑張りま〜す。)』
「よろしい。では手をお借りしても?」
『(別に構いませんが、どうぞ?)』

そうメルはサワアに手を乗せると
その手から暖かいものが流れて、うん????
流れ?????????????

『(ちょ!!?!?!そんなことしなくても!!!!!!)』
「いいえ、貴方はただでさえ食事も中々とれていないのです。
ある程度の気を渡しておいて損はありません。」

いやそうだけれども。

「お腹が空き次第お食事にしましょう。何か食べたいものは?」
『(あるわけないだろがい)』
「でしょうね。まぁその感じ的には
大丈夫と言ったところですか。
身体を動かすことは?」
『(先生、動かすってどうでしたっけ)』
「…貴方向こうで動かしていたのでは?」
『(それは魂自体の動きであって、
肉体を入れての動きはほぼしてないです。)』

なんならあの場所に身体を一度華樹の中に入れてて。
嗚呼あの大樹ですかそうなんですね。

あの空間はほぼ肉体など必要がないというもの。
精神メンタルさえ何とかすれば
普通に永遠に生きれるというのだ。
なので想像力とか集中力特化が突飛出ちゃって、
予想以上に時間がかかり過ぎてこうなってます。

はい。普通に止めなかった私が戦犯です。

「まぁ分かってくれるだけマシですかねぇ。」
『(うう)』
「じゃあとりあえず身体を起こしますよ。」
『(えっとどちらに?)』
「何方って、身体を洗いにですけど?」

ん?????????
待って??????????????

「大丈夫ですよ、ご安心して下さい。
ほんの戯れみたいなものですから。
…ねぇ?コルンさん?」
「ええええ、そうですよ?エフェメラル様。
高々子供一人を湯船に付けるだけの話です。」

ねぇ待って????????
お前ら恨んでるよね?????

「覚えておけって…私、言いましたよねぇ?」
『(ちょ、声出ないってわかってやってるだろ!!)』
「何なら碌に身体の力が入らない状態で
幾ら何でもそのままとは、きついですよ。
ただでさえ寝ている時
お身体拭いてあげてたのに。」
『(僕はそんなの頼んでいませんが???????)』

さらっと隣の部屋に入って
ぱっと衣服が白いタオル一枚に変化する。

きゅっと服を掴んだメルに、
大丈夫ですよとサワアが答える。

「優しくしますから。ね?」
『(あの、えと、そのですね?
お兄さんや、そういう、もんだいじゃ)』
「嗚呼、服が濡れるから心配だと?優しいですねぇ〜
ですがご安心して下さい。濡れない様に加工済みですから。」
『(そっちじゃないが???????)』

そっちじゃないが????????

「あの、お兄様、本当に宜しいので????」
「貴方であれば構いませんよ。
この子も少々痛い目を少しあって
しまえばいいというもの。」
『(ねぇ悪魔おる帰って来て寝て起きたら
こうなっとんのどうなっとんの?
ねぇこれってもう悪魔やんこんなん悪魔の仕業やん
此処に悪魔おるんやて悪魔やんこんの悪魔!!!!)』
「まぁそうですねぇ?だって元悪魔でしたし、当然ですが????」

わああああああああああああああん
そうだったああああああああん

「っくくくく、悪い悪魔に捕まってしまいましたね?」
『(ううう、悪魔と天使くっつけて最強説此処居る…)』

僕も最強なりたかったのにい。
結局そういや悪魔になれなかったなあ。
悪魔かっこいいってなってしまったんだが。

『(だってあの姿とってもかっこよくて憧れちゃったんだもの。
エテルネルの真っ黒な翼とか、もう色々かっこよかったのに。)』

それになれないのは、少し、寂しいなあ。

「あの、メル様、すいません。」
『(ん?どうしたの?コルン様)』
「余り褒め千切るのはお控えしてもらえませんか?」

お兄様が困っていまして。
お兄様?嗚呼……

『(ご、ごめん…)』
「……いえ、其処迄想って頂けていたのと思えば、ですね、その。」
「いたたまれないので。」

うう、だからごめんって!!
あとですね、ほんとですね

『(待って待って待って待って裸みちゃうの?)』
「…っ、そう言われるとなんだか
少々気が引けるのですが、」
「ならコルンさんはこの子を持っていただけますか?」
「え?嗚呼いや…私は別に、構い、ません、が。」
『(あの私は嫌です。嫌ですよ?嫌だって。
嫌な予感がするので断固拒否です。嗚呼別に
コルンさんが嫌な訳ではなくてですね???)』
「大丈夫ですよ〜痛くしませんから。」
『(それ羞恥はあるってことだよね!?!?
待っておこだよ?!?!!?)』
「はいはい、慣れて下さいね〜〜〜。」

流石にと白いタオルを引っぺがす彼に、
内心悪魔と声を強く上げる。

なんとか身体を腕で隠そうとするが、全く隠れない。


うう、みないで、恥ずかしいよお。


「熱くないです?」
『(あつくはないけど、はずかしいよお)』
「っくくく、それは良かった。」
『(私はよくないよ?????)』
「身体と頭どっちがいいですか?」
『(人の話聞いてないな?でも先に頭が嬉しい。)』
「ならそっちしますね。」
『(あとコルン様?)』
「なんでしょう」
『(目を閉じてなくても大丈夫ですよ????)』
「いえ、私がいたたまれないんです。
どうかお気になされずに。」

いや私もいたたまれないんですが。

「エフェメラル様も良く考えてみて下さい。
兄の想い人の裸をただでさえ持っている状態で
その姿を見るなんて私には到底無理なことです。」

ただでさえ恩があるというのに。

「まぁ持ってくれているだけでも助かりますからねぇ。」
「寧ろこれくらいですいません。
本当は洗ってあげたいくらいですが、
少々、いや…物凄く気が引けまして。」
「っふふふ、別にメルは大丈夫だと思いますが。」
『(まぁギリラインはモヒイト様辺りまでかな。)』

ウイスさんも割といけなくはない。
流石にコニックさんになると…ううん
なんか可哀想過ぎて私が泣く。

泣くんですか。

「その基準って一体何処に行っているのやら…」
「単純に信頼されていると思っていいのでは?
女性陣だと普通にお風呂に入れるでしょうし。」
『(というか、私普通にヴァドスさん達に
入れられた方がいいのでは?)』
「別に構いませんが、容赦ないと思いますよ?
それでもいいんですか?」

何時でも連絡は取れますが、敢えてしていないんですよ?
あっ待って、第11はあのテンションで来られると無理かも。
でしょう?

「貴方のメンタル的に余り近しい方を付けると貴方に負荷がかかり過ぎる。
かと言って身体が動かない状態で女性陣と我々が組むのも貴方が困る。」
「嗚呼成程だから我々なのですね。あの二人ウイスとモヒイトは案外口が堅いですし。」
「そういうことです。まぁメルにしてみれば
コルンさんは名付けしたかった天使ですし、
私に至っては幼馴染ながら、
昔はよくお風呂も入っていましたからね。」
「はっ?!?!!?」
『(嗚呼あったねぇ〜滅茶苦茶小っちゃい頃
私がひたすら連れてったよね?懐かしいわ。)』
「流石に家族で入ったのは笑いましたけどね。」

今ではいい思い出になっていますが。

「そんなこともしていたんですか」
「ええ、なんなら一緒に良く寝てましたよね?」
『(あったあった、夜悪夢見ちゃうときあって、泣いて寝れなくてさ。)』

悪夢も全部食べちゃったら大丈夫って慰めてくれて
暫くサワア居ないと寝れなくて
一時期一緒に添い寝してくれてたよね。

『(後からサワア寝ないって知ってビビったんだよ。
寝なくて良い上に食事取らなくていいとか
何それ最高そこ代われよってなったもん。)』
「貴方は食事や生活面を疎かにし過ぎですからねぇ。」
『(酷いなぁ〜仕事が好きで真面目って思ってくれたらいいのに)』
「昔から過度過ぎるんですよ。現にこうなっているでしょうが。」
『(あっはいそうでした。あとコルン様ほんとに大丈夫だよ?
なんなら毎回それも困るでしょ?)』
「いやですが…」
「華樹神の仰る通りですよ?ご命令とあれば、ねぇ??」

そう言われると仕方がないと
コルンは渋々目を開けてがん見してしまった。

「あの、一つ良いですか?メル様」
『(あっはいなんでしょう)』
「抱えた時から思っていたのですが、
貴方少々痩せすぎでは?????
これ普通に餓死一歩手前といいますか、
もう片足突っ込んでません???」
『(いや流石に体重そんな酷いはずは)』
「……測ったら普通に34とか切るんですが」
『さっ!?!?!』

流石に声が出た。すげえ私。じゃねぇわ

『(嗚呼流石にそりゃ駄目だ。目標せめて38欲しい)』
「……出来れば貴方の身長的にはもっと欲しいんですが。」
『(ええ〜〜流石にでもほんとに入院手前じゃん。
も〜ご飯食べるの面倒だなあ〜〜ねぇ切り替えて来ていい?)』
「現実から逃げないで下さい。」

まぁそりゃそうか。

いやでも確かに胸が前より薄っぺらいとは思っていたが、
まさかこんなになっていたとは思っていなかった。
間違いなくしぼんでるし、Aとか余裕になってる。

うう。

嗚呼でも待て。

『(夏とかだと普通に35とか行くし、冬だと40まで戻るから
そう考えたら今夏の時期ってことで食えば何とかなるだろ。)』
「…一応言っておきますが全部目論みバレてますからね???
なんなら料理メニュー作って監視しましょうか???」
「というかそれに関してはウイスさんと一緒に作っていますので。」
「嗚呼もう対策済みでしたか。ソレは失礼。」
『(ねぇ監視の対象まで込みなのかそこが一番気になるんですが)』
「いえいえ、地球とやらの食事が一番近いそうでしてね。」
『(ねぇはなしきいて?!?!?!?!?)』

成程、其処がタッグ組んでるのか。そりゃちょっと嬉しいかも。
酸辣湯とか時期が来れば食べたいものだ。
流石に胃が全回復した方がいいだろうが。

そんなこんなで身体を洗うことになりつつある現在。
痛くないですよねと言われてうんとメルは思ってた。

『(頭から思ってたけど気持ちい〜眠たくなっちゃう)』
「ふふふ、それは良かった。
ですが寝られると困るので寝ないで下さいね?」
『(ん〜〜)』

そう言われても滅茶苦茶気持ちいいのだから仕方がない。
身体を綺麗に洗われてから更に湯船に浸かる。
少し熱いけどきっとすぐにぬるくなる。

そうやって、身体は少しずつ鍛えられる
いやただ慣れるだけだら、そうでもないのだろう。

それはただの、勘違い。僕はそうやって生きてきた。

優しくて辛い、ただの時間が狂おしいくらいに愛おしくて
嗚呼、真っ黒だった悪魔さんはただのすすだらけだっただけで
本当はただの真っ白な何処にでもいる天使だっただけで。

輪の無いその世界で、二人で白と黒の羽根をそっと絡ませて生き続ければ
きっとこんなめぐりあわせなんてしなかったのだろうから。
ああなって本当に、良かったなぁって思ってしまうのだから不思議というもので。

受容とまではいかずとも、知れたことが今とても幸せに満たされている。
もう、もう大丈夫なのだ。満たされることに怯えて生きていくのは終わりなのだ。
華が散ったり次の願いに変わったり、悪魔や魔女にならないのだから。

天にも地にも召されずに、ただ華に狂って咲いた者達は
ようやく元ある場所にいかねばならない処に、辿り着いて安堵する。

嗚呼、本当に

『(よかった)』

これで皆が笑って暮らせれたらもっといい。

「暮らせれますよ。貴方が沢山沢山、頑張ってくれたおかげで。」
「其処迄頑張らずとも良いと言っても聞きゃしないのですから」
「困ったものですね?」
「ええ、本当に。悪魔の囁きにすら、打ち勝つというのに。」
『(にしても次羊水ようすい)破裂させたらただじゃおかねぇ。』
「ん?羊水???何の話です?」

あっ

「エフェメラル?言ってくれますよね????」

ひえ

『(言わないとこのまま貴方をコルンさんと
一緒に永遠の快楽に誘いますよ〜
とかいうんですか!!!)』
「おや、分かっているなら言って下さい。」
『(あ〜〜〜してほしいと思ってしまう
悪魔が此処に居るけど言います言います
言いますから〜〜〜)』
「本当に怖いもの見たさというべきか…
貴方、変なところで人間じみてますよね。」

いや一応半分人間なんで。

『(でも一代目の話しだよ?)』
「構いませんというか私と貴方の問題でしょう。
私が知っていないとは少々酷と言うものでは???」
『(うぐ…その、ね?一代目の時、孕んでたの。)』
「…はら、え?」
『(エテルネルの赤ちゃん)』
「「!??!!!?!?!?!?」」

流石に驚くよね。

「いや、それはいい、いや良くはありませんが」
「続けて」
『(…赤ちゃんがある程度育った時だった。
赤ちゃんの為の花冠を作ってたの。)』

その日は晴天で、雲なんて一つもなかった日だった。
もうこのまま生きていけるんだ、大丈夫なんだって
ずっとずっと、永遠を望めれるのだと思った。

それが愚かなことだと、直ぐに分かって。


『(当時天使も人間も悪魔もちょっとや
そっとで傷付いても修復出来てたの。)』
「嗚呼、黄金の草花ですよね?」
『(でも修復出来るのは自分の身体だけなんだよ、)』
「…そんな、まさか」

そう、私はあの日、羊水を破損した。
声も出ない白くて可愛らしいとは言えないのに
それでも愛おしさが其処にあったものが

赤い血液と白い体液に混ざって出た綺麗な子が
たった一人の人間の手により、命を失ったのだ。

「…っ」
『(強く何よりも誰よりも優しい子に選ばれて欲しかった)』

木よりも強く、でも花よりも絶えない、力を持った子供に。
天使と悪魔の間に産まれて、沢山の悲しみや絶望に纏われない。
ただただ、空を高みを望み、でも近くにいる子達を見捨てない。

そんな、完璧なように見えて、
完ぺきではない子供に、出会いたかった。

その希望が、途絶えた、時、悪魔になってやろうかと思った。
怪獣になって、その身を燃やして、
絶えない呪いを振り掛けてやろうと思った。

でも私は弱虫で、そんなことも、出来るわけがなくて。
ただ外に出てしまった子供を優しく抱きしめてあげるしか出来なくて。

いつの間にか人間はいなくて、
次の音がした時怖かったけど、直ぐに安堵した。

『(エテルネルが子供を連れて、悪魔が入ってはいけない
あの黄金の草花の地に降ろしてくれたの。だめなのにね。
草花の中は悪魔にとって死でしかないというのに。)』
「っそんな」


大丈夫、此処に居る。ずっと此処に居るから。

この子は君と僕の愛おしい子供で、
僕は此処に、この子といる。
そう言い聞かせてくれて、
二つの花冠が途中になっているのを
見て笑ってくれた。





だからいつか、その花冠を完成させて



そして、その花冠を僕に頂戴?



僕は君に、花冠を渡すから。



『(二人で小さな子に、花冠を渡そうって)』



約束をした。




でもすぐにそんなことは出来なくなった。



神様が其処に何人もの天使や人間を引き連れて来たのだ。
忌々しいと忌み子めと、酷い言葉をツラツラ言ってくる。
身体は治っているというのに、身体は動いてくれなくて。

呪いをかけよう。世界でたった一つ、残酷な呪い。
一番叶えたい願いが、叶わないこと。



「ーーーーっ」



それは華樹神の力の根源であるもの。
そう、始まりは全て私から始まったのだ。
私が犯した罪を、華樹神らは華神らは、引き継いでしまっている。

それがなによりも、申し訳なくて辛くて、ただ、申し訳ないしかない。

なのに

ーっ、ど、うして?

ーきみが、かなしそうだったから

悲しませたくないんだよ?エフェメラル。

そう言って彼は最初に庇ってくれたのだ。
掛けたものは一番ではなく、
悪魔に対してではあったが。

ーこの記憶が愚かだと悪魔に呪いをかけた。


神から人から落ちるその瞬間に、
この世界を見せつける呪いを。

忘れさせず、ただその絶望を
世界の印を刻み付ける呪い。
それは何処にも逝けない悲しい呪い。

流石にそんなのあんまりだと天使は言う。

彼が一体どんな罪をしたのだと
確かに此処は神聖だといえど、
昔は三種族暮らしていたのに。

なのに、悪魔が一つ罪を犯したからと言って、
地に落とすなんて可哀想だと。

そうして繰り返したら
本当に可哀想ではないか
と言う声に、何も言えなくて。

一度目の一番の願いが叶わない
という呪いは天使がかかることに。

子供にも呪いをと目を向けた時に、
天使はすぐに察知した。
誰よりも早く、誰よりもその瞬間を捉えて。

子供を抱え、悪魔にも降りかからない様に、その身体で受け止めた。


『(華が咲いたら神様になって、そのまま独りで死ぬ呪い)』
「っそんな、あんまりです、そんなこと」

子供には神に喜ばれるべきだから。
だからといって、悪魔に持たせるにはあんまりだ。
だから、それだから、天使である自分が、受けねばいけないと。

そうして天使は消え去る身体で悪魔と一緒に手を繋いで。
大丈夫だと、きっといつかまた会えると。
夢でも会える、夢や幻なら会えるから、寂しくなんてないと。
だって一瞬が続けば永遠になるのだから。

瞬きの間に産まれた子供は、永久にもなれるのだと。
だから、だから大丈夫。きっといつか巡り合える。
そしたら、この続きをしてしまおうと、悪魔は笑って言う。

天使が寂しくならないように。寂しがり屋の天使が泣かないように。
そんなことしたら、叶わない呪いを、悪魔は天使につけたのだ。

ー花冠を交換しよう?

君は僕に、僕は君に、そして子供は僕達と、交換をするんだ。
そうして回して、楽しい時間を、一瞬を、永遠に噛み締めて笑う。
そんな時間を、いつか、何時の日か、叶えて見せよう?この場所で。

呪いなんて、蹴散らしちゃうくらいには。
とんでもないおまじないを、彼はプレゼントしてくれた。
それに天使はうんと頷いて先に消えて居なくなる。

その後、悪魔と子供も、また。


『(あの時後ろを見れたらどれ程良かったか。
きっと、いや12の廻廊で後ろを振り返るのは
子供を守る為の名残りだった。)』
「…もう、二度と過ちを犯したくないと。」

こくりと頷くメルに、そんなことが
とコルンが低い声で寂しそうにつぶやいた。

『(人間の様にも見えたけど、
ひょっとしたら天使や悪魔は擬態出来たし、
人間でないかもしれない。)』
「思い出させるのは酷かと存じ上げますが、
消えたその日に、黄金の草花の中に同じ者は?」
『(それどころじゃなかったから…わからない。)』
「すいません」
『(いえ、のぼせちゃうね?)』



あがろっか。