侮辱されたら抱きしめてやれ
『(ごめんね、気を悪くしちゃった)』
「いえ、寧ろ思い出させてしまって申し訳ありません。」
『(気にしないで。どちらにせよ話しておかねばならなかった。)』
まぁ、あと言っとくけど
『(お二人さん頼むからコレを共有して尚且つその人間を探して殺そうとはしないでね????)』
「すいませんメル様、一つよろしいですか?」
『(なんでしょう)』
「ある程度の者になれば互いの思考の共有は遮断されます。
勿論人間であればそもそも思考の共有など出来ませんが…」
『(ねぇまって??????)』
バンと嫌な音がする。うわあ。
「サワアさん?少々お聞きしたいことが。」
「私も丁度そう思っていたところです。」
『(まーーてまてまてまてまてまてまてまてまてまて!!!!!)』
流石に会議だすよ会議!!!!
そう飛び起きたメルに、ですがと言うサワアをガン無視する。
力がまだろくに入らないのでベットから崩れ落ちるメルを寸で受け止めた。
「わかりました、わかりましたから…」
『(うう)』
仕方がなしにコルンが先程の様に抱き上げてその中央へと歩き出す。
其処には全ての破壊神、界王神、天使、そして原初の華神らが集っていた。
++++++++++
「とりあえず一ついいですか?」
『(なんでしょう)』
「ぶち殺しても???」
やめろ
『(だから私は言うのを止めていたんだってば。
あれ程言ったじゃん?言ったら絶対こうなるって
もうなんで私言っちゃうの?馬鹿なの死ぬの?死んでるが?)』
神様なったが????
メルはことの一部始終、一代目の話を全て
彼らの脳内にコピー&ペーストして共有させて、
その後の第一声がこれである。
いややめろっつってんだよ
「愛の邪魔をするとは愚か過ぎて反吐が出る」
「ですが仮に見つけるとしても一代目、
我々はその時間の記憶がないのでわかりませんが、
魂の形はどのようなサイクルをしていたのでしょうか?」
『(確か、人間は地上、悪魔と天使はくっついて
その世界だけにとどまらせずにしていた気がする。)』
まぁと言っても、一部の魂は、の話だが。
当時、メルとて天使の端くれであり、資料も読み漁っていた時もあった。
過ちを犯した者は天にも地にも召されずに華を咲かせて、
とある場所にとどまらせていたとか何とか。
「でしたら、華神らの中に裏切者が居る可能性もあると。」
「う゛いっそのこと殺して」
「…して、ころ、して」
『(嗚呼そうなるから私嫌なのよほんともうやめい!!!!)』
犯罪者探しなんぞしたくねぇぞ私は!!!!
『(第一、それは一代目から二代目で交代する時に
システムが変わった可能性もある。
それに私とサワアのことは偶々華樹が間違えて
此処に辿り着かせただけであってだな。)』
「いや、偶然ではなく必然にしていたら?」
「どういうことですか?」
「エフェメラル、お前ならどうする?
禁忌を犯している者が居て、
その身体に子供が孕んでいる。
そして上から圧を掛けられ、
何らかの事情を持って命を狙われた時。」
『(…私なら、華にでも掛けて縋って殺すね。)』
それがもう、叶わない様に念を押して。
そう言うメルに、それが正しいだろうとスコーピオンが言う。
「充分可能性はある。だがだとしてもその過ちを繰り返さないためにも、
こうして君は理を書き換え、そしてこの地に戻って来てくれた。違うかい?」
『(そりゃまぁそうなんですが…)』
「その人間が復讐しにくるとでも?」
『(一応呪いは綺麗に自分ら二人分取り払ったから大丈夫だとは思うけど。)』
まぁどうしてそうしたのかくらいは聞いてみたい気はする。
一体今どこで何をしているのか分からないが。
「別に今この場で全員協力したらいけるだろうが、
その人間の魂の感覚も何もない状態では難しいだろうな。
控えめに言っても破壊したい気分だが。」
「同感だな。だが破壊だとあんまりにも慈悲深い気はする。」
「もういっそのこと永遠の命を取らせて閉じ込めた方が」
『(だからお前らそんな庇うなっつってんだろうが!!!!)』
ちっとは落ち着け!!!!
ただの昔話というものでもあるし、今どうこうというわけでは
「それがもし解けていなければどうするつもりじゃ?」
『(え?)』
「次会えるのは次の世代じゃろう?
じゃがお主から引き継ぐ者はもう誰一人としていない。
そうなった時、お主らが会うことは
金輪際ないということになる。」
いやまあそうなったら、そうだけど。
そもそも会えている自体奇跡的なことでもあるし。
またいつかなんて、あんなの
嘘みたいなものだと思っていたこともある。
願いが叶わなかったらそれまで、
神様の言う通りになったというだけで。
「本当にそれでいいようには、わらわは見えぬのじゃがのお」
『(え?)』
「そうですね、代弁すると
次出会えないならば、せめてそうした
理由だけでも聞いてから死にたい。
等と仰られるように見えますが?」
ねぇこの人達怖い。一瞬想ったことすら取ってくるんだが。
というか私本当に思っただろうか?????
理解越えて最早恐怖だよこんなの。
まぁでも二代目も似たようなもんだったし、
流石に理由は聞いて
「ん????」
「まてまてまてまてまてまてまてまて」
「メル?待って下さいちょ、ちょっと」
『(ん?何何か言った?)』
「もう少し前に考えたことを」
『(この人達怖い)』
「違いますもっと後です」
『(理由?)』
「いきすぎ」
『(えっとじゃあ)』
二代目も似たようなものだったし?
その言葉に全員がそれと声を一致させたのでメルがびくりと反応してしまった。
コルンにしがみついたのは不可抗力である。ごめんねびびらせたね???
「待って下さい貴方同じ経験を二度も????」
『(君と僕は人間だったけどね?
なんなら君記憶なくて私は記憶あったし。)』
「っ?!?!?!?!」
『(確かにその時も人間で同じ様な服装だったな。)』
髪の毛は黒色で、目は金色で、身長は分からず。
白い衣装を身に纏っているのに、外は黒い布を被っていて。
天使か悪魔か分からない衣装で人間の姿をしていた気がする。
『(まぁ流石に人間だったし、ちょっと痛くて、
その痛い間に全部思い出してから死んじゃったけど。)』
「いや死ぬくらいの痛さはちょっとやそっとではないですよ???」
「貴方痛みの感覚消し去ってますよね?????」
『(してないよーんなこと人間で出来るわけがないし)』
「思考を慣らせばいけなくはないぞ。」
ただ、余程の執念がないと出来ないが。
そう言われてメルはそっぽを向くしかない。
と言っても目を明後日の方向に向けるだけだが。
「……これは探すべき、ですね。」
「間違いないでしょう。」
『(いやいいて、それにシステム結構変えたし)』
「だとしても仕事の合間に探すくらいの手間は取らせません。」
ちゃんと仕事するとかそういう問題じゃないのだよ。
「エフェメラル、こうなったら梃子でも動かないので、諦めるしかないですよ。」
『(うううううう)』
「あと早く声を出す練習をしないといけませんね。苦しいでしょう??」
まぁそりゃあそうだが。
「はいはい、それなら解散しよう。と、言いたいところだが。」
「ん?何か問題でも?」
「スピス!」
「はいはい、お呼びです?」
「っわ!!!!」
「お前会合はどうしてるんだ?」
「嗚呼、あの例の三会合です?」
「か、かいごう?」
「本来華樹の主を主としてこの世界を含めて三つの世界がありまして。
そちらの方に一度出向いて話をするというものです。」
本来は華樹神と華樹神官が務める話ではありますが。
イレギュラーが起きれば私が華神を連れていくことも。
そう説明する大神官に、はぁと聞いた者が頷く。
「それで?会合が何時かってことですか?」
「前にしたのは?」
「割と最近ですが、華樹神官と華樹神が
交代した時は一度話をするはずです。
ですが向こう側の話もありますし、
メルさんが取り決めた範囲がどれ程なのかわかりません。」
『(一応現段階で選ばれた華神及び
加護天使、華樹神、華樹神官だけに絞ってる。
追加は要相談って感じに取り決めてるから、
その説明もしないとな。)』
「そのお身体でですか????????」
「いや流石にそれは……」
まあ肉体はなんにせよ、精神はほぼ大丈夫だし、いけるっしょ。
「そうやって消滅されたら困りますので、流石に今は止して下さい。」
『(えーーーーー)』
「その方がいいでしょう。見た処危なそうですし。」
『(あっじゃあやめよ)』
「はっっや」
「決断はっや」
『(だってすっぴーが言うことってハズレないんだもん。)』
「おやおや、そんな信頼されても、何も出せませんよ?」
いやいや。
にしても、だ。
『(向こうの神様ってどんな感じなんだろーー楽しみーーーー)』
「その前にお身体の調子を整えることからですよ。」
そう会議が終わった後、メルは一度寝て目覚めた。
天使らが定期的にというか、もう交代制で面倒を見てくれるそうです。
うわぁい、同種族にみられる〜〜〜うれぴ〜〜〜〜。
まぁあの話の完全なる余談ではあるが、
次の天使と前の天使の区別がつかないのもアレだからと言って
輪を取り付け、悪魔の生まれ変わりには
首元に輪を付けようという話が出ていたのを想い出した。
首を括る所以は、まさか、ねえ?
流石に考え過ぎか。
悪魔が、エテルネル自身が、その過ちを忘れない為に。
完全な天使ではなくても、その首に輪を取り付けようとか
そんな呪いをこんな世代を幾つも超えてくるとは思わない。
うんうん。考え過ぎ考え過ぎ。
「美味しいですますか?」
『(くそうま)』
「…余り下品な言葉を仰らないで下さいます?」
そうウイスに言われても全く問題ない。頭の中だけだし。
どや顔するメルは現在ベットの上で軽く身体を起こしてもらい
そのままマルカリータにあーんしてもらいながら食事を摂っていた時だった。
いやもうごめんね、こんなの介護やん。おばあちゃんだよ私。
いやあおばあちゃん早いか?いや遅いも早いもないわこんなの。
寿命があるからおばあちゃんおじいちゃん出来るんだよ。
えっまって成れない??老後の生活なれない????
したくもないことを考えても無駄か。
いやでも今日はいい天気だねぇ爺さんや
そうだねばあさんやくらいはしたかったよ??????
そんなどうでも良いことを考えていると
それくらいの元気がおありで何よりとウイスが答える。
嗚呼そう言えば
『(ねぇウイスさんウイスさん)』
「なんです?」
『(この前アンダルシア様に声かけて貰えてたけど何してたの?)』
「ああ、あれ、です、か」
おっと???????????
『(正直に言わないと今すぐサワア呼びつけてアンダルシア叩き倒す)』
「っ!?…いえ、そこまで、では。」
『さわあ』
「此処に」
「っわかりました言います言いますから!!!!」
瞬で来てくれたサワアほんと好き。大好き愛してる。
「ええ私も愛してますよ?」
『(煩い今ウイスさんの話し聞くの)』
「ええ?もーつれませんねぇ。それで?
何の話をしてらっしゃったんで?」
『(アンダルシアに声掛けられた後の話)』
「ほぉ????それは是非ともお聞かせ願いたい。」
悪魔と悪魔がおる。此処に悪魔と悪魔が。
絶対敵に回してはいけないのだが、
まぁ仕方がなく降参してウイスはことの詳細を教えるとだ。
『(とりあえず首きんまんしたい。)』
「体調整えてからですね。私は少々お小言を。」
『(メンタル壊したら叩くからねサワア。)』
「ご安心を本当に忠告だけですので。」
ではこれで。
そう、ウイスとモヒイトは軽く
特訓に強制的ではあるがやらされていたのだ。
あの地獄ともいえる、その回復指導に。
通常天使らでは気はほぼ無限に扱える上に回復は勿論出来る。
速度も通常の界王神らとは違い大抵の首が吹っ飛ぼうが足が飛ぼうが軽くぐちゃぐちゃのミンチになろうが別に回復など瞬時に出来るは出来る。
だが、それはあくまでも相手の精神が保てばというものであって。
そしてそれはあくまでも、神々に対してのことではあってだな。
華神らのサイクル特に、人間ベースである彼女らの回復は少々面倒な処を行っているのだ。
華の知識を叩きいれると同時にその仕組みから人間の仕組み、身長体重その他諸々を一度に理解しながら
華に近しいというかほぼ同じ気を作ってそのまま手から渡す様な形で取らねばならない。
杖やら力で物を言わすのではなく、地道な作業を永遠とこなさなければならないということ。
それだけではない
通常の状態だと流石にそんな気を使っていると仕事に支障がくる。
なので華神らは協力して一つの身体に対して分担し
一度にその修復を同時に同じ時間でぴたりと息を合わせて行うのだ。
それが増えれば増える程、難しくなるというものであり、
ましてや人間ではない彼等天使には協調性というものを持たなくていい。
『(華神のオペをやらせるとは、もう流石に怒っていいよそれ。
管轄外にもほどがあるわ。ちょっとやりすぎというか、
製造の人が別の会社の事務やらせれてるのと同じ。)』
なので普通にやめろとお小言を言わせに行きました。
「いやですが、とても興味深い話でしたし……確かに少々厳しかったですが。」
『(ぱわはら)』
「そこまででは」
『(まあ、アンダルシア様が言いたい気持ちはわかる。)』
原初が、いくら力を持っているとはいえど、それは過去の話し。
加えて華樹の大きさや広さそしてその根にも影響されるのだ。
現在みてればわかるが、もう種を植えて
双葉が何処かにあるかどうかも分からないくらいには小さいのだ。
そんな状態で彼女らがフルに使える日なんて、もうたかが知れている。
だから今のうちに何時か何かが起きる前に、
天使にだけでも引き継がせているんだろうなぁ。
人間の本能的な処でもあるんだろうが。
だとしてもやりすぎ。
まぁ言いたいことはわかるんだよ。
『(ミシュメールらも未だ一人残らず外に出れていない処かいないんだからなあ)』
そう、彼女らが忽然と消えてしまったのだ。
恐らくどこかには存在しているだろうが、それも厄介極まりないこと。
というのも、華樹神単体だけではかなりの負荷がかかるのだ。
ようは栄養素を外にばらまいている状態であって
人が減れば減る程その華樹に戻ってくる仕組み。
一人残らず消えてしまえば、それはメルに負荷がかかり、
必然的にメルの肉体と精神が崩壊して死んでしまうというものだから。
そりゃあ気付いてすぐに焦ったアンダルシアが
手を出してはいけない方に手を出すのも、無理はない。
ましてやあの子はエフェメラルを何度も治療している者。
身体の仕組みは急成長しているとはいえども手を付けている。
その為ある程度の範囲で在れば指導出来るのだ。
ウイスやモヒイトに手を出したのは二人が
仲の良すぎない良い感じの塩梅であるのと同時に
その頭のキレが他の天使と比べて相性が良かったというもの。
ヴァドスとウイスあたりだといいのにと思ったが
逆に近しいと遠ざかるらしくて、だな。
「みっちりご指導頂きまして、現在特訓していますので。」
『(ごめんね、つき合わせちゃって。)』
「いえいえ、寧ろお役に立てることが増えると思えば光栄ですから。」
ああそんなご謙遜をしてしまって。ほんと申し訳ない。
『(もとはと言えば私が)』
「エフェメラル様」
『(ん?)』
「あの日あの時、貴方は振り返ったのを後悔しました?」
いや、それは、
「していない。なんならしてよかったとまで思うのでしょう?
それならば、どうか責め立てることはお控えください。」
嗚呼狡い。止めて止めろなんて言わない。
考えてもいいけど、其処迄執着しなくていいと彼は言うのだ。
今の時間を尊重して言ってくれる彼に、こくりとメルは頷くしかできない。
吐血はしないのに、吐きそうになってくる。
まぁ気分が悪いわけではないから良いのだが。
ごちそうさまと思っていると
おそまつさまですますわと笑ってくれたマルカリータ
はぁ天使おる、此処に楽園ありだわ。天使。
クスクスと笑う彼女は食器を下げに部屋へと戻っていく。
嗚呼、帰って来たんだなぁって実感が急に湧いてくる。
嬉しいってこういうのは思うんだよ、私。
大丈夫、もう、もう?
そんなことを言って本当に良いのだろうか。
何時かの日に、戻れなくなった時、
私だけでなく多くの人が悲しんでしまわないだろうか。
「大丈夫ですよ、エフェメラル様」
『』
「大丈夫」
不思議だよね、ほんと。
あの人が言ってくれたおまじないは、何処までも生きている。
ソレは本当に、大丈夫だと思わせてくれる。
狂わせてくれる。
いっそのこと、狂ったままで、笑っていれればいい。
黄金の草花は、この場所で咲き誇っている。
何時かの時間を、戻そうと。懸命に。