無粋に論じた他人の人生
「それで、二人してぐっすり寝ていたと」
「すいません。」
『うう』
「いやエフェメラル様が寝るのはわかりますが、
お兄様まで起きないとは驚き過ぎて
ちょっと理解が追い付かなくて。」
その後、ほぼほぼ半日以上寝切った時に
声を掛けて来てくれたのがウイスだったから良かったものの
他の者達がまだ来ていないことにもちょっとホッとしている。
休みとはいえど、此処に来てはいけないとは言われていない。
気になったのか様子を見に来てみればだ。
普通に服を着ているのはまだいいとしても、
まさか天使が人間のように睡眠をとれたとは
意外過ぎて開いた口が塞がらないのだ。
「すいません、兄として不足なことを。」
「ああいえいえ、お父様も仰っておられましたし、
ひょっとしたらその可能性も。」
華樹神官の立場に選ばれてしまった
となれば話は変わるということだ。
あの位置はかなり特殊な位置におかれており、
一度選ばれると半強制的に徐々にではあるが
人間の身体に近づいていくと聞いている。
肌の色やら髪の毛の色も変わるらしく
その話も一応ではあるがルトラール様から直接聞いてはいること。
だが此処まで急に来るとは思っていなかったのだ。
このままでは破壊神へ仕えることも出来ないだろう。
『……ねぇ、ウイスさん』
「なんでしょう」
『これはお休み終わった後にお聞きしたい話なんですが。』
「ええ」
『メルスさんをご存知ですよね?』
「……あの、メルさん????だめですよ????」
『本人の許可から色々事情を言いますので。』
「…お許しになるとは到底思えませんが、まぁ、とりあえずですね。」
お兄様流石にやりすぎでは?
反省してます。
メルが全く身動きできない状態のままベットから
ひょっこり顔を出して話をしていることに
サワアはベットに腰を掛けて
メルの腹をさすってやっていた。
一応サワアだけでなくウイスも散々痛みを軽くするからと言って杖を出すも
メルが物凄く嫌がって嫌がって拒否をしているのだ。
因みにどれくらい嫌かと言うと、
杖を出した瞬間にシャーと猫の威嚇の様に声を出す。
あと気を凝縮し始めるので本気度が違う。
仕方がなくそのままにしているのだが、心苦しいというものもある。
『だーーーから大丈夫だって。そりゃ腰死ぬほど痛いし辛いし苦しいけども。』
「うぐっ」
『でもこれ乗り越えとかないと一番叶えたい願いなんて叶えられないでしょう?』
「…それは、」
『面倒見てくれる?』
「そりゃあもちろん」
『ならいいよ。だから大丈夫だって。
ウイスさんもそんな心配そうな顔しなくとも、ね?』
「…わかりました。」
なんだかんだ言ってサワアも仕事と私情は分ける方であって。
ずっと此処に居る訳にもいかないので、すぐではなくとも出ることにはなる。
時間の流れは下手に動かすと、ソレが毒になって狂うこともあるのだ。
一応調整は可能ではあるが、緊急事態の時のみ使う様に今微調整中だし。
アルトリアは現在華樹神官兼華神としてかなり多忙を極めている処だ。
流石に華樹神の世話までさせるつもりはなくて、そこを天使らが補っている状態。
迷惑をかけてとアルトリアは半泣きだったが、これはしゃーないものなのだ。
それにそろそろ自分の時間も必要になって来たというもの。
未だ、華樹の樹が綺麗に生えるところはみえてない。
少々それが気がかりだが、まぁゆっくり育てれば大丈夫というもの。
「ではお食事を。何か食べたいものは?」
『……。』
「駄目です流石に食べて下さい。」
『ちっ』
「舌打ちしても駄目に決まってるでしょう。
気を渡すのはどうしようもない時のみのこと。
ウイスさんお気になさらず。
なんならうどん作ってきますので。」
『え゛』
「わかりました。でしたら…」
そう何かを話した後、彼はそっと奥に消える。
いや、待って本当に言ってる?
『(少々狂うな、こりゃまずいぞ)』
このまま順当にいけば、間違いなく彼は第二の天使を外れることになる。
いや流石にちょっと嫌だ。流石に無理。辛い。それはつらい。
植え付けが幾ら何でも早すぎる。いかん抑えないとまずいなこれ。
多分数年足らずですぐに変わるはずだ。
睡眠をとれている感じからして、
人間の三種であり二つはもう手にしている。
華を司り傍に仕える者。想いを引き継ぐ者。
まずい、流石に距離を置くべきか。
「あまり下手に動くと少々変な癖が付くと困りますよ。エフェメラル様。」
『…っ』
「彼等の意見もきちんとお聞きしてから
行動した方がよろしいというのです。
余り深く考え過ぎるのもよろしくないですよ。」
『…だとしても、流石にヘレスらに悪いというか。』
「ま、そういうなら直接言った方がよろしいのでは?」
『え?』
コンコンとノックをした。そのドアが開いた先には
『っヘレス!?!それにペル様まで!!!!』
「息災というか…なんかすまんな。」
ああいえ、私もなんかすいません。
そう低くなってぎこちない声になったヘレスにメルも苦笑いで返す。
「それで、わらわも色々考えて来たんじゃが、今大丈夫そうか?」
『…っ、うん。だい、じょうぶ。』
くう〜〜〜と変な音が聞こえた後、
メルは目を丸めたままばっと手だけを腹に置いた。
それにクツクツとヘレスが笑った。
がちゃりと音が鳴ってから笑いだしたが。
「ん?おやヘレス様それにペル様まで。」
「ああ、ほら飯がきたぞ、くえくえ」
『ふえ〜〜〜〜やめて〜〜〜〜』
++++++++++
ごちそうさまでした。
おそまつさまでした。
メルが言った言葉にそう言い返すサワア。
食器はウイスが片付けに言ってくれたので礼を言う。
それでとウイスが捌けたと同時にヘレスが聞く。
「メル、お主はどうしたい。」
『え、待って?それ私の方なの?
いやいやいやいやまてまてまてまて』
「地位的にも出来ればお主の意見が良いとは思うが。
一応大神官様もお主の意見に賛同すると仰っておった。」
うう、外を埋めてきやがった。
「で?お主の意見を二つ聞きたいんじゃが。」
『え?ふ、ふたつ????』
「ああ。どっちからでもいい。」
『……この均衡を崩すことはしたくない。
あくまでもサワアという天使は第2宇宙の天使ガイド。
三代目とはいえどその紐に括りつけるにはお門違い。』
「ふむ。それで?」
『ヘレスが交代する時を見計らって、
サワアを華樹神官へと上げたい。
…まぁ、サワアが望めばだけど。』
「私は別に構いませんよ?」
うう。本当にこいつら面倒だな。マジで嫌いになりそう。
「それで?もう一つは。」
『…、気を悪くしたらすぐに消すよ?いい?』
「嗚呼。」
『……サワアを現時点から華樹神官に繰り上げたい。
ヘレスが生きている間は、別の天使を入れて、
サワアは世代交代と加えて次の天使を育てる所につける。』
でも余りこれはしたくない。
私のあの物語を書き換えることに近いというのもある。
まぁそもそもこの話自体書き換える処ではないのだが。
それでも、譲れない気持ちがあるのだ。
例え自分の欲望だとしても、嫌なのだ。
『でも後者は極力したくないというかしたくない。』
「ほお?それはなぜじゃ?」
『第2宇宙の天使はサワアじゃないと私が絶対ヤダだからヤダ。』
「………っぷ」
ふふふふふ、と笑った後大声で笑いだしたヘレスに
えっえっとメルは顔を動かすことしかできない。
「ひーあーーおかしい、っくくくくく、ほっふっふふふふ」
「ヘレス様流石に笑い過ぎです。
あとその笑い方直して下さいって
私散々言ってますよね???
普通に神としての威厳がですね。」
「わかっておる、神の威厳がなくなるから
気を付けろっていうんじゃろう?
いやでもこれはないじゃろうて!!!!」
そう指を指すヘレスに指を指さないで下さい!!
と腕を取って下げるサワア。
それにむすっとしたヘレスが
なんじゃ別にいいじゃろう!と怒りをあらわにする。
相手を何方と心得ているんですか!というサワアに
メルはクスクスと笑いだした。
「え、エフェメラル様?なにかおかしなことでも???」
そうペルが言うのに、いやごめんとメルは腹を抱えて笑う。
もう腰が痛いから笑いたくなんてないのに。嗚呼もうほんと。
『大丈夫。ただただ、すきだなあっておもっただけだから。』
「っ!!!」
「は、はあ…左様ですか。」
嗚呼そうだ、こうでなければいけない。
彼はその場所にいるべきで、私はこの場所で。
これこそが、本来の居場所であるべきで。
胸がすっと軽くなった。嗚呼、ほんと、楽しいなあ。
「…二つ意見が出たが、わらわはどちらでもいい。お前は?」
「私もどちらでも構いません。まぁ後者の方が現実的ではありますが。」
『え゛なんで』
「引継ぎになるならよい機会です。先代の破壊神の仕事をみつつ、
次の破壊神がどの方がいいかの勉強にはもってこいでしょう。
なんなら彼女も指導してくれるでしょうし。」
「嗚呼、もちろんじゃ。それくらい容易いと言うもの。」
「寧ろ前者の方は少々心配ですからね。
これ以上宇宙を減らされると貴方の方がきついでしょう?」
うぐ……バレてたか。
『…確かに、12であることが一番丁度いいはいい。
人間の時間が丁度12か24で統一されているからね。』
宇宙を司るにしても、効率が今一番いい状態ではあるのだ。
だからこそ上のシステムはある程度変えてもキープしている。
「じゃがその天使の代わりとはいったいどこに」
「そこで我々の出番と言う事ですよね?」
「っだ、大神官様…と、そちらは」
『…サワア。痛みを。』
「…かしこまりました。」
流石に悪いだろう、一時的ではあるが
痛みを取り除いてもらうことにした。
服を綺麗に整えたメルがそっと移動する。
円卓に座った彼等に改めましてとメルが言う。
『華樹神になりました、エフェメラルと申します。』
「ご、ご丁寧にどうも…メルスです。よろしくお願いいたします。」
『先に一つお伺いしても?』
「え、ええ、どうぞ。」
『…めっっっちゃ私達名前似てるね?!?!?!?!
ねぇ私びっくりしたんだけど!!!!!』
「っ!??!?!?!」
『いやさ、普通さ?もう少しさ?名前変えるとかするじゃん?
でも無駄にながったらしい名前をさ?纏めてもさ?
エフェだとカフェみたいでなんか違うし
メラルっていうのもなんか違うし、
メルって短くして納得いったと思ったら
メルスいるとかもおおおおおお
名前似てるすげええええって思ってさ????』
「すいません、こういう子なんです。」
「えっ、あ、は、はあ…」
『メルスいいよね滅茶苦茶名前可愛いと思う。
かっこいいと可愛い兼ね備えたもん。
メルスって混ぜるって意味をもってるところもあるんだけど、
いや住めるって其処に居るって言う意味合いにとっても良いし、
滅茶苦茶名前凝れるっていうかそう言うつもりで
話をしているんじゃないかっても〜〜〜〜〜
すっぴーだいすきいっぱいちゅき!!!!!!!』
「っくくくく、ありがとうございます。」
す?え?ん?とメルスが困惑している中エフェメラルと声がかかる。
「落ち着いて下さい弟が困惑してます。」
『ごめん!!!でも叫ばせるだけ叫ばせてくれて
ありがとうございます。本当に助かりました。』
「いえいえ。それで?本題を言って差し上げれば?」
『ああそうだったごめんごめん。』
あのね?とメルは先程の流れを変えるように少し幼く言う。
『メルスさんが良ければ、
また天使になってみない?ってお話なんだけど。』
「……………は???????」
『いや私的には貴方の気持ちもあるから、
なりたくないならならなくていいし。』
「あの、私の事をご存知で?」
「彼女は我々の位置を全て知られているお方ですよ。
勿論、貴方がどういう経緯で天使から降りてしまったのかも、ね?」
そういうウイスに、そうなんですかと驚きを隠せない彼にうんうんとメルは頷く。
『私の我儘で君を引きずり上げるっていうのは絶対したくないのね?
だから君の気持ちと、そして君の周りに居たであろう人達に意見を聞きたくて。』
ね!と頭を後ろに下げて言う
『それがいいよね!アニュラス!!!』
「あっ!?!?!」
「そのままでいい。というか本当にいいの?僕は別にいいけど。」
『僕もいいと思ったから言うんだよ。ねぇーーいいでしょ?いいでしょ?』
「まぁその子達が良いなら禁忌らには触れないよ。元々君らの過ちが犯した禁忌の範囲内だし、こっちは管轄外。」
そうしっしと手を振る彼に、ならいいじゃんとメルは笑って言う。
「あの方は…」
「全王様よりも上に降り立つお方ですよ。」
「っ!?!?!?」
「本来こうやって居るのも大変失礼なんですがね。
彼女が嫌がるのを分かって大丈夫と仰ってくれるのです。失礼の無いように。」
「…わかりました。」
『それで、だ。大神官様、ウイスさん君らのお話も聞きたい。』
「…正直単刀直入に申し上げますと私は反対ですね。」
「お兄様……」
かちゃりとコップを下ろして言うウイスがメルに向かって言う。
「貴方は余り我々天使の事を理解していないでしょう。
どういおうとも、掟は掟です。
理に携わりだした貴方であろうとも、
掟に触れてしまえばどうなるかは分かっておいででは?」
『…ま、そりゃそうか。大神官様は?』
「それは私個人の意見ですか?それとも仕事がらみの方です?」
『両方。』
「…そうですねぇ。仕事としましては大反対でしょうか。
言いつけを幾ら言っても守りませんでしたし、
それは変わることはないでしょうから。」
「っ」
「ですが、個人的には別にいいのではないか。とは思っています。」
「…………へ????」
ちらりと大神官はメルスを見て言う。
「貴方も沢山お勉強が出来たことです。
これに懲りて、中立を守るというのもいい機会かと。
それに繰り上げるとなれば貴方も手を貸すでしょう?」
『もちろん!他の天使らおもっくそ説得する。
もうめっちゃする。しぬほどする。華枯れるまでする。』
「いや、流石にそれはし過ぎでは……」
「だそうです。あとは貴方の判断にゆだねます。」
ね、という大神官に、ウイスが何かを言おうとして僕はと声が上がる。
「お兄様の言いつけも、大神官様の言いつけも守れませんでした。
ただ、目先のことばかりを、見てしまって……その。」
『…いいよ、大丈夫。此処にはさ、君と僕しかいない。』
「え?で、ですが」
『そう思えばいい。だあれも聞いていない。見ていない。
私だけが君を見ている。だから教えて?』
君は、どうしたい?何がしてみたい?どんなふうに、生きてみたい?
そう手を差し伸べるメルに、僕はと少し黙る。
『あーじゃあこうしようか。ちょっと彼らには少々聞いて欲しくないことだが、君に免じて。一つおまじないを。』
「え?」
『誰も居ない。誰も見てない。この目の前に居る人だけを見つめる。
他の事なんて気にしない。ただ、その枠の中にあることだけを見つめる。』
そう言ってメルはメルスを額のように右手と左手をつかって四角を作る様にして言うのだ。
『全部全部外して消して残った一つだけを、つぶやくそれだけ。
誰も聞いていないよ。大丈夫。なんなら私も聞かないよ?』
君だけが、君の言葉を知るのだから。
そう言って目を閉じて耳を塞いでいると、声がぽつりと出てきた。
「…ほんとは、ずっと、天使でいたかったです。」
うんと少しだけ頷いてやる。
見られていない、知られていない。
目の前にいるけど、聞いていない。
でもそれがいい。きっと彼は、それが救いになる。
「でも、掟は掟です。正直あれで抑えていたほうが僕はずっとずっと嫌でした。」
そうだろうね、君はとっても優しい子に見えたから。
こうして初対面で会っているのに、その優しさは伝わってくる。
心の中を見なくたって大丈夫。全然其処に居続けている。
君は純粋にその前だけを見てしまったんじゃない。
全てをみたうえで、自分が動かないとって動いただけなんだ。
だから、ソレを否定するのは違う。違うのだ。
「後悔なんかしていませんし、あれで本当に良かったと思っています。
それに人間としての生活はとても楽しくて、もし、人間の寿命が終わって
もし機会があれば、その時は戻れるなら戻りたいとは、想っています。」
『…聞いたことにしてもいい?』
「勿論。寧ろ聞いて欲しいです。」
そっか。そう、そっかあ。
『強いね、本当に。』
「いえ、僕はとても弱いです。現にこうして人間になりました。」
『ね、一つ言っていい?』
「ど、どうぞ?」
『普通だとねえ、君を消滅させて、華を植えて別の存在にさせてたよ。』
「っエフェメラル様!!!」
『だまっとけ。』
そう言われてぐっと口を閉じて座る。
此方を一度も見ずに言うのだ。
それはメルが本当に嫌がっているということ。
黙って従うしかない。従わなければ、どうなるか分からないのだ。
『でもね?君を消滅などさせずに、
そのまま人間にしかも居た場所にさせた。
それはつまり、君の事に何か秘めたものがあるから、
惜しくてそのままにしたんじゃないかなって。』
「エフェメラルさん」
『聞いてないでしょーーー???』
「…もう、仕方がないですねえ。はいはい、聞いていませんよ。」
『それで、それでね?ああもう!
言いたいこと分からなくなっちゃったじゃん!!
すっぴーのばか!!!!!』
「っくくっく、今度は馬鹿ですか????
好きなのか嫌いなのかどっちなんです???」
『両方!!!!』
「話が逸れてますよ」
後聞いてませんからそう言うウイスに、
えっとねえとメルは思い出したかのように言う。
『だからね!そうそう!!君が今までの事もこれからの事も、
きちんと意味を理解して動いて、いい子にしてればきっと叶うから。
私が約束してあげる。君が、君で。居たいと思えば。』
「……どうして僕を其処迄守ってくれるのですか?
僕が貴方の名前に似ているから?
それとも僕を何処かで知っているから?」
『ううん、違う、違うよ?』
「えっ」
どうやらそうだと思ってる人もいたらしい。
ついでだから言ってやろう。
嗚呼こんなに素直に言うのは何時ぶりだろうか?
『君はとっても強くて、優しい子だなって見て思ったから。
だから力になってあげたいなぁって。おもったの。ただそれだけ。』
「…たった、それ、だけで?」
「メルスさん?」
「っ、すいません、失礼なことを。」
『寧ろ今すぐウイスさん叩きだして殺そうかと
思うくらいには殺意出たくらいだから気にしないで。』
「充分気にしますが??????」
「おほほほほ!!!随分とおちゃめなお誘いで……本気にしますよ???」
『ほーーー????私なんぞの思考も読めない癖に…精神的で勝てるとでも????』
「お二人とも」
あーはいはいごめんごめん。
両手を上げるメルが話を戻す。
『それで、まぁ後はそうだなぁ…昔の私に似てるからって言うのがでかいかな。』
「昔の貴方に?そんな、僕とは比べ物にならない程お優しいように見えますが。」
『いやいや!!!何なら君よりもずっとずっとずーーっと弱くて
愚鈍で愚かでもう救いようがない屑にも満たない奴だったからねぇ〜〜〜???』
「…エフェメラル?????」
『それでも、周りが見えずに誰かに助けられて。ソレだけは分かった。でも遅かった。』
助けられるものが出来なければ、頭を下げるしかない。
蹲って、その中で息をするように、自分を変えていくしかない。
『こうやってね』
「っひ!!!」
『おっと失礼少々出し過ぎたか』
にこやかな笑顔を手で隠してちらりと広げて笑う。
ギロリと睨んだのだ。いつぞやの自分を殺す時の様に。
痛みに対して切り殺しに笑った、あの日の自分に。
すぐに戻した。まぁ大体皆もこれで分かってくれただろう。
自分がどれ程の犠牲を取ってしまったのか。そして耐えているのか。
『とまあこんなふうに、君を買い過ぎているのではという奴もいるだろうけど
それはあくまでも未来の君に期待しているんじゃなくて、君を見てすぐに思っただけの事。
当たるも外れるも全ては君の思う事次第!どう?悪くない話だよ。』
天使、戻ってみたい?
そういうと、はいと少し希望の見える目をしたのに、よしとメルは答えた。
『スピスさん!彼が死んだ後の魂は私が一度預かっても?』
「わかりました。その後私に、ですね?記憶はどうしましょう?」
『全部引き継いだ方が罪としても罰としても良い方向に向く。そのまま。』
「わかりました。私もその方が良いと思っていましたのでその手筈で覚えておきましょう。」
『ウイスさん、ごめんだけど。』
「いいですよ。この子が決めることですし。もう私が言う事でもないでしょう?」
流石お兄ちゃん良く分かっている。
『サワアというわけでこの子が引継ぎ人』
「え?え?え?」
「嗚呼成程、やけに頭の回転が速いと思っていたら
貴方の知ってる子だったのですね。」
『なんか癪に障るこというね????おこなの????』
「怒ってはいませんがまあいいでしょう。
…ウイスさんの弟とはいえど、容赦はしません。
厳しくいくことになりますが、それでも?」
「…っはい!!!よろしくお願いいたします!!!」
「よろしい。いいですね?ウイスさん。」
「ええ、構いません。」
再三言われるのもお兄ちゃんだからだ。
なんだかんだ言って心配なんだろう。
彼を守る為に、反対を悪者をしてくれるというのだから。
『と、いうわけでこっから引き続きちょっとメルスさんも聞いといてね?』
「は、はあ」
『サワア。ヘレスが破壊神から降りる且つ
メルスが天使ガイドとして活動出来るまでは
第2宇宙の天使ガイドとして活動すること。
それ以降は本格的に華樹神官に入る。いいね?』
「はい。わかりました。」
『ウイスさんはアンダルシア様からある程度特訓受けてるけど
ちょっと後で華神ら含めて会議出す内容だけどさ、仮の加護天使してみない?』
「っ!!!それって」
『まぁ聞いて。引き抜きとかじゃない。どう?やってみる?』
「…考えておきましょう。仕事に影響は?」
『ない。そうしてもらえると助かる。』
「わかりました。その手筈で。」
『よーーーしおわり!!はいおしまい!!!!寝る!!!!サワア戻して!!!!』
「ええ、痛いですよ???正気です????」
正気だから言ってる。これくらい耐えな〜〜〜〜〜!!!!
だから急に戻させるとそうなるんですよ、ほらつかまって。
いだいいいいいいい
そう叫ぶメルに、メルスはただ呆然とする。
もう夢の様な話でもあるし、彼女の事を殆ど知らないのだ。
「メルスさんは私と共に来てください。事情を説明しましょう。
あとこの件については下界に漏らさないで下さい。
そうなれば今度こそ消滅させますので、悪しからず。」
「…はい。わかりました。」
「ではエフェメラルさん、我々はこれにて。」
「ありがとうございました。」
そう言われてメルはありがとうとも言えず、手を軽く振る。
どうやらかなりの痛みらしい。
「あの、具合が悪そうにみえたのですが……」
「色々ありましてね。」
お気になさらずそう言われて、メルスはその場から遠ざかる。
勿論この後、色々聞いて、メルがコルンらを説得し、
許可を得た後、本当に第2宇宙の天使ガイドを全うするとは
天使らは思ってもみなかったことになるのだった。