一人語り



基本的に仕事中は顔に出さないし、出ないようにしている女だ。
仕事がある日の昼休憩で好物のものを食べても、顔には出さない。
オフのときには比較的表情に出しているけど、俺が見ていると気づくとすん…と表情を消すことがある。それもまた、おもしろい反応ではあるので、いつも見てしまうのは仕方がないだろう。

華奢な体つきだが、筋肉はしっかりついている。それでいて女特有の柔らかさを損なっていない。
計算して体を鍛えているんだろうとわかる。
そのうえで大食らいだ。
きっとそれなりに運動したりして、カロリー消費だとか、体型維持とかしているんだろう。女だから気にしているというのもなくはないだろうが、本人の気質的に体型崩れるほどの自堕落をよしとしていないところが大きそうだ。
化粧品だとかシャンプーとかもこだわっていることはわかる。
勝手にシャンプーを使ったら、怒られた。高いんだから、と。

結構負けず嫌いな跳ねっ返りなところもある。
普段はそうとは感じさせない振る舞いをしているが、セックスしているときだとかに、俺の何かが癪に障ると、噛み付いて歯型を残してくる。
俺の体に残った自分より小さな歯型を見て、そういう跳ねっ返りなところがいいなとか思うと楽しくなる。それで笑えば、「なんだコイツ」って顔をして見上げてくるから、より楽しくなってしまう。
おとなしい女より、これくらいのほうが俺にはいい。

俺の無断出撃や投げ出した書類に関しても、処理をしている。
俺のサインが必要なものはサインするだけの段階に仕上げておいたり、ここだけは読んでおけとまとめておいてくれる。
出撃に関しても、「実際は出撃要請あったもの」という処理にしておいてくれているから助かる。おかげで始末書の回数が減った。
そのあたりの処理は、あいつの本業で得た手際かもしれない。
スネイルが有能だと言って、偶に貸せと言ってくるだけのことはある。デスクワークにあまり本腰を入れる気がない俺でも、事務処理とかで秘書が有能だというのはわかる。
あとは、そうだな。リスケもこっちがいいと思える調整にしておいてくれている。
俺は今までこいつ無しでどうやって仕事していたんだろうかとこぼせば、隊員から「恐れながら、秘書官殿がいらっしゃる前の首席隊長は、ほぼ仕事していませんでしたよ」「我々やスネイル第2隊長閣下で処理しておりました」と言われた。
俺が仕事するようになって秘書様々じゃないか、よかったな。

仕事ぶりからも分かる通り、基本的に気遣いとか察する能力はある女だ。あとは、結構世話焼きだ。
社会性高いなといえば、「貴方が低すぎるんですよ、V.T」と言われた。
そうかもな、低くてよかった。だからお前が俺付きになったんだろうといえば、微妙そうな顔をされた。その反応に少し笑って、秘書の細い顎を掴んでキスをすると唇に噛みつかれた。
咎めるような小さな力での噛みつきに、ぞくぞくした。

「仕事中ですよ」
「知っている。でも、今は休憩中だ」
「ダメです」

掴んでいた手を離される。ここはあまりしつこくしないほうがいいだろうと思い、素直に従っておく。
秘書の唇を彩っていた赤が、欠けている。
俺の唇に移ったであろうそれを舐める。

「……化粧直してきます」
「俺は気にしない」
「私が気にします」

だろうなと、喉の奥から笑いが溢れてくる。
少しだけ俺を睨んでから、背中を向けた秘書。
その細い背中がよがってしなる瞬間を知っているからか。どうにも早くひん剥いて、組み敷いて、早くこの華奢な体をしならせて震わせたいという欲求が、湧き上がってくる。

「秘書。今夜も楽しみだな」
「……変態、絶倫」

珍しく仕事中に感情を乗せた言葉を吐いてから、秘書は執務室から一度でていく。扉が完全に閉まるのを見届けて、背もたれに思い切り寄りかかる。
背もたれに全体重預けて、思い切りそるようにして天井を見上げる。

「お前にだけだ」

あとにも先にも、戦闘相手以外で求める人間は、お前だけだ。



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