この男は
この男は……、と思うことは多々ある。
それは仕事を放り出して出撃したときだったり。(要請があったということにしておいた)
許可されてない他社パーツを経費で落とそうとしていたり。(V.Zのとこに届くよう紛れ込ませるスキルがあがってきている)
自分で整えられる身だしなみを私に委ねてきている時だったり。(子どものように、当然のように要求してきた)
しれっと嫌いな野菜やおかずを人の皿に載せてきて、食べて欲しいならアーンしろとか笑いながら要求してきた時だったり。(代わりに食べてあげた、優しいから)
欲求が通らない時、拗ねたり、あからさまに態度や顔に出た時だったり。(根っこが子どもだと思う)
スネイル第2隊長の小言が長引いて、暇だからと見えない角度で手遊びや書類を折り紙にしている時だったり。(これがまた器用で腹が立つ)
「秘書」
性行為のときに、色を孕んだ声で私を呼ぶ時だったり。
行為に反して触れる指先が優しい時だったり。
見つめる眼差しと表情の熱に焼かれそうになる時だったり。
(本当に、この男は……)
どうしてくれよう。
そう思いながら、V.Tの背中に爪を立てる。V.Tは少しだけ顔を歪めた後、この上なく嬉しそうに笑って、私の額や瞼に唇を落としてくる。
そう言った行為からもつぶさに伝わる物があって、体の奥や心がぶるりと震えるような感覚になる。実際に体は震えていないのだけど、そう言う感覚に陥らせる男は、この男だけだ。
この男だけは、私の中の琴線に触れることをしてくる。
「今日は、嬉しいことをしてくれるじゃないか」
背中に回した私の手に己の手を伸ばし、誘うように手の甲を撫でるV.T。爪痕やキスマークをつけられることを、この男は喜ぶ。
「貴方が、入ってくる時に……ちょっとだけ、力んで、しまっただけです」
息をつきながらそう嘯くと、くつくつと喉を鳴らしてV.Tは笑う。
V.Tの片手は変わらず私の腰を掴んでいて、私の中はV.Tのもので埋められている。
最初に入るときだけかき分けられるような感覚になるけど、全部入ってしまえば圧迫感こそはあれど、すんなりと私の身体は彼のものを受け入れるようになった。
特段、中で締め付けてる意識とか感覚はないけれど、ギリギリ抜けるかどうかまでのピストンだとか、浅いところに亀頭を引っ掛けるような動きをされたりだとかすると、少しだけ自分の中が彼のものにしがみついてるんじゃないかと言う気持ちになる。
「力んだのか」
「そう、です。!っ、ふあ」
いきなり腰を抱えあげられたと思うと、ひっくり返す─いわゆるマングリ返しのそれだ─をされ、角度が変わる。再度の圧迫感と奥に当たる感触に、声が漏れる。逃れようのない態勢で下から見上げると、V.Tの目が愉しさで輝いていた。
「これからもっと凄いことをするのに」
もつのか?と問いかけながらも、緩めるつもりはないのがわかる。そのままの態勢でキスをしてきて舌を絡めて来て、私から酸素や余裕を奪って、じわじわと貪っていく。同時にゆさゆさと腰を動かし始めたのだから、脳が与えられる感覚に追い立てられていく。
(本当に、本当に……この男は、)
どうしてこうも私を攻めるのが上手いんだと思い、腹が立ったので今度はV.Tの腕に爪を立ててやった。痛がれ。
願い虚しく、楽しくて仕方ないとばかりに笑ったあと、V.Tは自分の好きなように腰をうちつけてきた。
結局私のやり返しなど彼を煽らせるだけで、終わった。
「……なんでいつもより襟ぐりが広いシャツ着てるんですか」
翌朝、身支度を終えたV.Tに思わずそう言った。
昨晩、対面座位の体位になったとき、衝動的に口にしたいと思ってV.Tの肩口につけたキスマークが、V.Tの服の襟から少し見えている。
人によっては気づきそうな見え方だ。だから思わずそう言うと、腕まくりもしながらV.Tは答えた。その腕にも、昨日意図的に私がつけた爪痕が残っている。
「見せびらかしたいからだ」
「ちょ……やめてください!」
何処吹く風と行ったように─こういう時に限ってさっさと─自室から出ていくV.Tの背を、追いかける。
ああ、もう!本当にこの男は!