たとえば明日あなたが、
──昔みた怪獣映画に、そういう話があった。
脅威的な再生力を誇る怪獣の細胞を、病に侵されていただかなんだかしていた娘に移植した。その後、娘はおぞましい怪物に成り果てたといったような内容だった。
今より遥かに映像技術なども劣る、何世紀前のかすぐには分からない・思い出せないくらい昔の作品だ。怪獣映画の元祖ともいえるその映画の画質は現代の技術で焼き直しされたデータだとよくなっていたが、よくもまあこの時代にここまで撮れたものだと思ったのは覚えている。
模型や着ぐるみを用いたそれは、今の時代だと逆に新鮮に見えたから、記憶に残ったのもあるだろう。
怪物に成り果てた娘は物語の都合上打ち倒されたが、娘は何を思いながら倒されたのだろうか。
描写はあったろうか。怪物に成り果てた時点で、娘の自我はなくなっていただろうか。そこまではさすがに覚えてないと話したところで、黙って聞いていた女は口を開いた。
「……なんで急にそんな話をしたんですか」
同じベッドの中、2人分の体温でぬくぬくとしている最中。
それでも末端冷え性らしい目の前の女は、人の足に自分の足を挟んでさらに暖をとろうとしてきた。
自分のよりヒンヤリとしたその感覚はしばらくするとなくなり、俺の体温が移っていった。
「お前がその娘の立場なら、どう思う?」
「その映画みてないんで、よく分からないんですけど」
それでも考えてはくれるらしい。
コイツはこういうところが、真面目だと思う。ばかにしない、くだらないと切り捨てない。秘書という立場で俺に付けられた日から、ずっとそうだ。
「おぞましい怪物になってしまったなら、せめて貴方に倒されたいですね」
想定外の回答に驚いて、すぐには言葉が出なかった。自分の目が丸くなったのも、分かった。
秘書はそのままなんてことないように、話してる。
「そうすればACに乗らなくても戦う貴方が見れますし、最強たる貴方の姿を最後に終われるなら…多分きっと、悪くないです」
「……なあ、秘書。もう1回ヤッてもいいか」
「いやです」
酷いことを言う。
あんな、焚きつけるようなことを言っておいて。
委ねきったような、それなら本望だと言わんばかりの顔で、─俺からすると─愛してると同義なことを言っておいて。
「お前は本当に、ずるい女だ」
それでいてお前はまだ、俺の事を好きじゃないといい、自覚すらしてないのだから。
(そこがまた、いいと思えるんだよな)
拒んだことなど気にせずに、秘書の体に手を回して抱き寄せる。小さくもがいているのを黙殺し、ひとまずこの女をさっさとその気にさせて、抱き潰してやろう。
(……きっと、明日起きた時、腕の中のお前が醜い化け物に成り果てていたとしても、俺は多分、お前を求めるし、お前が望むままに殺すことだって厭わないだろう)
その確信をこめながら、食らいつくようなキスをしてそのまま組み敷いた。