とある朝の話



ふ、と。途切れるように目が覚めた。
暗い部屋。日の出はまだらしい。
すぐ近くに感じる温もりへと、振り向く。
当然のように私の体に腕を回してる男が、すやすやと気持ちよさそうに寝ていた。
今日は出撃がないからと、自分から起きる気配がない。それならそれでゆっくりできるからいいと思う。今日は揃って非番だ。(というか、私の休みはV.Tにあわせてる)(出撃以外の仕事をさせるために)
起こさないようにと抜け出そうとしたが、寝ながらも察したらしいV.Tはぎゅっと腕に力を込めてきた。眠りが浅くなったようで、うっすらと目を開けてこちらを見てきた。

「……おはよう」

寝起きゆえの少しかすれた声と、まどろみでとろんとしてる目。寝てていいのにと思いながら、離して欲しい意を込めて軽く彼の腕に手を重ねる。

「おはようございます。コーヒーいれたいので、離してもらえますか」
「……早く、ないか」

日の出前の暗さ。V.Tの言うことも最もだ。だけど私は完全に目が覚めてしまったし、二度寝するような気分でもない。それよりも久しぶりに持ち込んでいたインスタントコーヒーを飲んで、ゆっくりしたかった。
兵站厳しいルビコンにおいて、持ち込んできた美味しいインスタントコーヒーは貴重品だ。もともといた星では安易に手に入るものだけど、ここでは手に入らないものなので大事に飲んでいる。結構多めに持ち込んではいるけど、コーラル争奪戦は長期戦覚悟なので毎日は飲めない。普段はまっずいコーヒーで済ませてる分、たまに飲む持ち込んだコーヒーは格別に美味いし、ゆっくり味わいたい。
つまり今はV.Tのベッドで二度寝するよりも、さっさと顔を洗って落ち着いてからコーヒーを飲んでゆっくりしたい気分だということだ。
離れない腕に添えた手で、ぺちぺちと叩いて離すよう促す。

「目が覚めちゃったので。シャワーも浴びたいですし」
「……そう、か」
「ちょっと」

意に介さない様子で、私を引き寄せて抱きしめるV.Tに、思わず抗議の声を上げる。抱きしめられたことで顔が彼の胸板に当たる。
強化手術してないからそこそこ鍛えているとは本人の談で、そこそこと言う割には結構しっかりついている胸筋に私の頬が軽く潰れる感触がした。
モゾモゾ動いても頭の位置的にV.Tの表情は見えない。さらにそのまま抱え込むように抱きしめられて、しまう。唯一自由に動かせるのは、先程から彼の腕に添えていた手だけ。

「もう少し、このままで」

まだかすれた声でそう言いながら、私の頭に頬擦りをしてるV.T。いつもよりも甘えが感じられるその行動と声音に、小さくため息を着く。

「仕方ない人ですね」

もう少し抱き枕でいてあげますと言えば、満足気に息をつく気配がして。少ししたらそれは、穏やかな寝息に変わった。
顔が当たってる胸板から聞こえる鼓動や、抱きしめられたことで密着し伝わる体温に、どこかに消えていたはずの眠気がゆらりゆらりと私の中でも満ちてくる。
小さく欠伸をして、少しだけ委ねるように、体の力を抜く。
コーヒーはあとでいいか、たまには彼にもいれてあげよう。
なんて思った後、あっさりと私は再び眠りについた。



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