岩神と半神少女の日常の幕間



あまり半神であることは明かさないほうがいいと鍾離から言われていたのと、本人に自覚が薄いため、璃月でなまえが神だと知る者は鍾離と仙人達くらいしかおらず、聡い七星の凝光や刻晴、往生堂の胡桃も気づいていない。
振る舞いが余りに神らしくないからだ。多少浮いてるとこはあるが、外国から来た世間知らずな少女なのだろうと思われている。
なまえは往生堂のひとりとして仕事をしてるときは仕事ぶりも真面目であり、表情が乏しいが人当たりも悪くないので、人の世に馴染めているし、受け入れられやすくもあるのも幸いした。
人として見た場合、正直なところ人間生活1年生といったレベルだが、鍾離含めた周りに恵まれたので、何かしらのトラブルが起きるということはなかった。

鍾離は短い期間でなまえの気質を見極め、害にはならないだろうと判断したので璃月まで連れていき、先生と教え子、後見人と被後見人の関係になった。
無条件で、というわけではない。
「なまえが悪害を出さない」ことを条件に、鍾離はプルミエの後見人になるという契約を結んだ。
自分が異質であることをよく理解していたなまえは特に抵抗感もなく、この契約を受け入れている。

「何か、あったら鍾離先生が止めてくれるのは、安心、です」

いつも通りの乏しい表情だが、空色の瞳は真っ直ぐに鍾離を見つめている。その眼差しには鍾離への確かな信頼が宿っていたので、なまえがいれた茶を一口飲んだ鍾離は口を開いた。
──こうやって鍾離のそばになまえが付き人のようにいる時は、彼女が茶をいれるのが当たり前になっており、なまえがいれるお茶は鍾離が気に入るほど美味い。

「その信頼は嬉しいが、なまえは少しだけ、人を疑うということを覚えた方がいい」

外なる神であるなまえが最初に出会ったのが鍾離だったのは、彼女にとって幸いだった。
これがファデュイだったり雷神であれば、なまえはろくな目にあっていなかっただろう。
善人ばかりではないことを彼女は知らない訳では無いが─鍾離経由で巡り会った人間は当然彼女に害意はないのもあり─、人を信じすぎる傾向にあるような気がしてならず、鍾離はそう言った。
言われた側のなまえは自分がそうだという自覚がないようで、ピンと来ていないようだったが、「覚えて、おきます」と言いながら、ゆっくりとお茶を飲んでいた。

(その辺は、公子殿を教本代わりにして学べばいい)

なまえが唯一苦手意識を抱いている人間を教本扱いしつつも、それは決して口には出さずに、鍾離はなまえと茶の時間を過ごした。



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