03



私の身長は160もない。鉄朗は180を超えている。20cm以上も身長差があると見上げると首が痛いときもあるけど、鉄朗も見下ろすのは大変だろうなと思ってる。なにより、嫌いじゃなかったりする。キスするときに爪先立ちするのとか、鉄朗が少し屈んでキスしてくるのとか。あと、上からキスされると鉄朗に食べられてるみたいで、ほんの少し…ドキドキする。

(でも絶対言わない)

膝に座らさせられて、角度を変えて何度もキスをされながら思った。息をつこうとすればまた唇を塞がれる。それを繰り返していたから、ちょっと苦しくなってきた。酸素を求めて口を開こうとすれば舌をねじ込まれたりとかして、鉄朗のいいようにされている。バレーボールを簡単に片手で掴める鉄朗の大きな手は今、私の太ももを撫でている。
鉄朗の部屋で一緒に勉強してたら、これだ。

「っ…は、てつ、ろ…終わんないよ、これじゃ…」

ようやく、ゆっくりと息をつかせて貰った。舌を絡ませてたから、ねっとりした唾液が離れた際に伸びる。離れると切れて私のスカートに、シミを作る。
鉄朗は私の太ももを撫でたまま、今度は私のこめかみや耳にキスをしてくる。わざと音を立ててるから、煽られてるって分かる。

「っ」
「結構簡単だったから、後回しにしても終わるだろ」

聞く耳なんか持たない鉄朗。手は、スカートの中に入ってくる。私服だから全部脱がされちゃうとかぼんやり考えた。
本当に強引で、でもそれを許せると思わせるんだから、鉄朗はずるい。
ずるいし鉄朗になら何されてもいいやとか思っちゃうレベルで好きなんだとか、またいつものように思う。どんだけ好きなんだと自分にツッコミを入れつつ、やっぱり好きなようにされっぱなしっていうのは悔しい。こういうことをされる度、そんなことを考えてしまう。

「…てつろう」

悔しいから膝立ちになって鉄朗の首に腕を回して、鉄朗の耳を唇で挟む。そしてそのまま、ちゅうっと吸う。鉄朗は、意外と耳が弱い。だから鉄朗がいつも私にそうしてるように、音を立てながらする。
それが鉄朗を煽ることになると分かっていても、やり返したくなってやってしまう。
案の定、耳から唇を離したら、すぐに押し倒された。
ベッドが軋んで、視界はすぐに覆い被ってきた鉄朗で埋められる。
目つきよくなくて、感情の読み取りづらい目がぎらついてて…ぞくぞくした。

「…なまえ」

いつもより低くて、熱っぽい声で呼ばれる。耳元でされるこれは結構……くるものがあって、好き。
いつもの鉄朗と違う感じがして、体と心の奥底から疼くような感覚になる。
そう思いながら鉄朗の背中に手を回せば、あとはただ食べられるだけだ。

英語の課題もあったのにとか、予習できなさそうだとか。そういうのはすぐに思考の隅に追いやられて、全部鉄朗でいっぱいになる。

それがたまらなく幸せで、そしてそれを感じるのは私だけの特権だ。


黒尾鉄朗は素っ気なさそうに見える、なんて言う人もいるけど、鉄朗は面倒見がよくて優しい。部活が休みの日に出かけようとか言ってもいやな顔ひとつしなくて、「あの店に行くか」とか言ってくれる。友達の彼氏は「どこでもいい」とか「家でいいじゃん」とか言うらしいけど、鉄朗はそういうことをあまり言わない。私が行きたい場所があればつき合ってくれるし、逆に鉄朗が行きたい場所があるならそれをちゃんと言ってくれる。そこは自慢だし、とても彼氏らしいことをしてくれてると嬉しくなる。反面、休みの日に連れまわして申し訳ないなぁとか思うこともある。

「私って結構鉄朗に甘やかされてるよね」

鉄朗んちを出て、よく行くファミレスで、夕ご飯のハンバーグを食べながら鉄朗に言う。鉄朗はハンバーグとステーキのランチセットを食べている。食べる量は私より多いし、ペースだって早い。ここは肉料理メインのファミレスで、普通のファミレスよりハンバーグとかステーキの種類が多いし、グラムも三段階くらいまで選べる。学生だからグラムを一番多くしてもらうと財布にくるから、鉄朗はここにくると中くらいのグラムにしてハンバーグとステーキのセットを頼む。それでも足りないときは、私が頼んだハンバーグとかを半分鉄朗にあげて、私はあとからパフェを頼む。今日も食べ終わった鉄朗が物足りなさそうにしているから、半分切って鉄朗の方に向けた。
ハンバーグも美味しいけど、ここのパフェも美味しい。カロリー的に両方いくのは厳しいから、これが私たちはちょうどいい。

「サンキュー」
「ん」
「それで甘やかしてるって話だけど、いやなのか?」
「ううん。嬉しいよ」

鉄朗に甘やかされるのは、好きだ。ふやけてしまいそうで恥ずかしいと思うこともあるけど。
それは心の中で付け足しておいて、ハンバーグを一口サイズに切る。鉄朗も私があげた半分を食べる。

「いじめて欲しいとか言われるのかと思った」

にやって笑って鉄朗が言う。本当にこの男は残念だと思いながら、白けた目を鉄朗に向ける。

「そんなわけないでしょ」
「冗談だ」
「大体、そう頼まなくても意地悪してくるくせに。…ていうか、初めて会ったときの鉄朗は、もっと爽やかで今よりさらに優しかったよね」

初めて同じクラスになって、初めて喋った中学二年生のときのことを思い出す。あの時の鉄朗はものすごく気さくで優しくて、爽やかだった。初対面だったから鉄朗のことをよく知らなかったのと、鉄朗の計画的なものだったと今は分かってるけど、そういうところに自分が釣られてしまって今に至るわけだから、鉄朗本当やる…。だけど鉄朗の素の部分見ても、嫌いになるどころかますます好きになったんだから、私が一番どうしようもない。

「ふーん。じゃあ、今の俺は嫌いなのか?」

頬杖つきながら私を真っ直ぐに見て聞いてくる鉄朗。唇はにやにや笑うときの形と同じだし、目も意地悪く楽しそうにしてるから、始末に負えない。

(そういうとこも好きだし、今だってドキドキしてるよばか)

だけどそんなこと素直に言えないから、大きめに切ったハンバーグを口に入れて黙る。鉄朗はそんな私にまだにやにやしてるから、見透かされてると思った。

「…やっぱりハンバーグ返して」
「いやだ」

こいつ…!

鉄朗は気さくで優しくて、見た目からは想像つかないくらい彼氏らしいことをしてくれるけど、意地悪してくるし基本的にかわいげのかの字もない!(そしてそういうとこも好きだなぁとか思っちゃう私は、多分どうしようもない鉄朗バカなんだ)




20140614(20250210)



prev | list | next

top page