04.お披露目



呪術高専で今年入学するのは、伏黒恵とみょうじなまえと、もう一人いる。合計3名だ。毎年この程度しか入学しないと、五条から聞いていた。人手不足なのは、なり手の少なさが原因か。あるいは、と考えつつ、なまえは制服に腕を通した。
デザインなど希望が出せるので、上は学ランのような制服はさほどいじらず、スカートで希望を出した。セーラー服も一度は着てみたいと思っていたので、そういったデザインを指定した。今日は届いたので着心地の確認と、修正があれば最後の修正可能日だった。
五条に制服のカメラ役をお願いしたので、合間を塗って五条はついでだからと伏黒となまえの制服も持ってきてくれた。
受け取った際にお礼を述べ、「恵もすぐ着替えてね!」と言いながら別室にいって素早く着替えて、今に至る。姿見で後ろも確認し、希望通りのスカートになっているのを目視し、なまえは満足そうに部屋を出た。

「どう?似合ってる?」

先に着替え終わったらしい伏黒と五条に、なまえは問いかける。伏黒は学ランだが、襟の当たりを開けるようなデザインのようだ。首元が楽そうでいいなと、なまえはそこまで考慮してなかったことを少し悔いた。

「似合ってる、似合ってる」

五条はそう答えてくれた。軽薄でいつも通りよく読めないが、こういうことで五条はなまえに嘘はつかない。

「よかった!あ、あと、詰襟結構きついからここちょっと楽にできるようデザイン変えたいんだけど……」
「……短くねぇか」

主語もなにもなくこぼされた伏黒の言葉に、なまえは目を瞬かせながら伏黒恵をみやる。伏黒はいつもにこやかというわけでなく、どちからというと無愛想だ。か、殊更眉間に皺を寄せ、渋い顔をしていた。

「え?なにが?」
「なまえの足?一般より少し短いかもしれないけど誤差だよ」
「悟お兄ちゃんをセクハラで訴えたい」
「そうじゃなくて……スカート丈だ。お前、中学のときに、そこまで短くしてなかったろ」

一瞬言い淀んだものの、伏黒は気になっているという「スカート丈」を口に出した。が、指摘された側のなまえはけろっとしている。

「そりゃ中学は校則守ってただけだしね。え、高専ってなんかある?」
「服装に関しては、中学やほかの高校ほどの規則はないね。デザインに希望出してるくらいだし。まぁ僕からアドバイスするとしたら、自分の戦闘スタイルや術式にあった制服にしつつ、趣味を混ぜるのがいいってところかな」

五条悟も呪術高専の卒業生だ。これは本人の経験談か、あるいはその周囲を見てのアドバイスだろう。そして特に長さ指定がないということなら、じゃあいいじゃんとなまえの思考は至る。

「スカートはこのままで。呪具、太もものホルスターにいれて隠したいし、ぱっと取り出せそうなこのくらいの長さがいいんだよねぇ」
「うん、理にかなってるね」
「……」

だが、伏黒の表情は変わらない。なまえはなぜここまで自分のスカートのことを気にするのかと、首を傾げた。
五条は、にやにやと笑いながら、伏黒をみる。

「心配しなくても、今年は男子は恵だけだ。恵以外の男が見ることは、ないよ。見れるのは恵だけだ」
「……そういうんじゃないんで」

今にも舌打ちをしたそうな凶悪ツラになった伏黒に対し、五条はくつくつと面白そうに笑う。なまえを置いてけぼりな両者の反応だが、なまえ自身は呪具を理由にこの長さにと決めたので変えるつもりはさらさらない。

「とりあえず詰襟のとこも少し楽にしたいって修正だけ出していい?」
「うん、好きに出しなよ。恵は?」
「……俺はいいです」

伏黒のほうは特に問題なかったらしい。いいことだと思いながら、なまえは五条にスマートフォンを渡した。

「悟お兄ちゃん、私と恵の制服姿とりあえず撮って」
「兄使いが荒いなぁ」

嘆くような言い草だが、本音でもなんでもない五条のいつも通りの戯言だ。慣れてるなまえと伏黒はそれに反応せず、だ。なまえは前髪を整えながら伏黒の隣に立つ。
相変わらず、伏黒は不機嫌面だ。
伏黒の袖を引っ張り、なまえは言う。

「津美紀ちゃんに見せるんだから、普通にしなよ」
「……」

無言は肯定と捉え、なまえはスマートフォンを構えた五条を見遣る。五条はちょうどいい位置を探したようだが、ちらりとサングラス越しに伏黒を見た。

「恵、もう少し横に詰めた方がいいな」
「……」

一瞬躊躇したが、ゆるゆると伏黒は横に詰める。なまえとの距離が近づくが、五条はまだ寄れと言うのだ。わざとかと思いつつもう少しだけ近づくと、ストップが掛かった。
触れようと思えば触れられそうな距離で、なまえと伏黒は写真を撮ることになる。ちらりと伏黒が自分の目線より下にあるなまえの顔を見ると、別にこの距離間をなんとも思っていないようだ。

「……」

伏黒は少し苛立った。が、五条は気にせずシャッターを押そうとしている。

「ほら、撮るぞー」

いつもの軽く緩い調子で押されたシャッター。
伏黒はその写真を見なかったのだが、わかる人がみると伏黒が不機嫌さの奥に照れを隠しているなと直ぐに分かるような写真だった。



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