太刀川慶と年下同期の日常 その2



「車」
「……私は車って名前じゃないですけど」

開口一番の太刀川の要求の意味はわかったが、最近あまりにこの人自分に対して遠慮がなさすぎるのでは?とさすがになまえも思い始めた。

「太刀川さん、親しき仲にも礼儀ありって知ってます?」
「聞いたことはあると思う」
「……」

だめだ、やめよう。抗っても自分が疲れるだけだと早々に諦めて、なまえはため息をついた。

「それで?どこに行きたいんですか。この間みたいにどこか遠くまでとか彼女みたいなこと言ったら、怒りますよ」
「さすがに学習した。ガソリン代とか出すから、ここに連れてってくれよ」

そう言いながら太刀川が見せたのは、隣県のご当地B級グルメだった。ざっと見たが、太刀川の好物であるコロッケを使ったもののようだ。中々においしそうだ。

「……奢ってくれるんですよね?」
「当たり前だ。お前の車、あと何人乗れる?」

これは何人かと一緒にということだろう。
2人で出かけると、「太刀川慶とみょうじなまえは付き合っているのでは」という変な噂に拍車がかかる可能性がある。他に人がいるなら、それもないなとなまえは考えた。

「軽自動車だから、男性だと2人くらいが限界ですよ」
「じゃあ、問題ないな。といっても、来るかはまだ返事来てないから確定じゃないけど」
「国近さんとか出水くんですか?」
「そうだ」

太刀川隊の面々とは太刀川経由で知り合い、ちょこちょこ話はする。あまり話したことない人ならと少し気を使うなと思っていたが、この2人なら大丈夫だなと思った。

「ちなみにいつですか?」
「再来週。お前、いつ暇だ?」
「……再来週、試験の期間ですよね?」

大学は同じだ。だから、なまえは知っていた。どころか最近、太刀川の講義のスケジュールまで管理しつつある。というか太刀川が丸投げし始めたのだ。だから、なまえがテスト期間を把握してないわけがない。

「……」
「……」

目を逸らした太刀川と、ジト目で見るなまえ。
無言の攻防のあと、なまえは出水と国近に太刀川から「再来週の話はなしになった」と連絡させたのだった。

「お出かけ計画なんて呑気に練ってる場合ですか!試験勉強しますよ!」
「今からランク戦の約束してるんだよな。……あ、悪い。断ってくるから」

最近、なまえの怒らせてはいけないタイミングが分かってきた太刀川。……ならなぜもっと自分から勉強する姿勢を見せないのかという話だが、ひとえに「残念だから」の一言に尽きる。のかも、しれない。

「もう今度から試験1か月前には私から試験勉強スケジュール提案しますからね?」
「えー。ランク戦とかできなくなるだろ?」
「そこは息抜きも兼ねて多少は時間とります。太刀川さんはギチギチに縛るより、そっちの方が効率よくなりますから」

などと会話しながら、二人で歩いているから付き合っているのではとC級隊員を中心に噂が流れるのだと、なまえは気づいていないのだった。



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