太刀川慶と年下同期の日常 その3



部屋に見慣れない雑貨があった。買った覚えのないものに首を傾げた。が、すぐ予想できた。

「また余計なもの持ち込んだな、太刀川さん……!」

家で勉強会行うのが当たり前になってきたため、太刀川が使うためのマグカップを持ち込むのを許可したのが始まりだった。
覚えのないこういった雑貨だとかが、増えてきた。太刀川が持ち込んでるのだ。勉強するのに必要かと問いただしたが、「俺が落ち着くから」といつもの調子で返された。
妙な雑貨やらが溜まってきたら太刀川隊の作戦室に持ち込み返してるのだが、最近はいたちごっこに思えてきたので、片付けの邪魔にならない程度なら置いておく、その基準値をこえた分は作戦室に送り返すことにした。

どんなに言っても糠に釘、だから程々で諦める。
それが、なまえの最近の太刀川に対する対応だった。
だから今回気づいた雑貨もため息をこぼしはしたが、そのまま置いておくことにした。

太刀川は今日は防衛任務についている。
終わったら課題手伝ってくれとラインがきていた。なまえはボーダーの任務は休み、大学が終わってからの予定も特になかったのでいいですよと返事をした。

(……なんかもう、当たり前になってきたなぁ)

太刀川の勉強を見るために過ごすことが日常に溶け込んでる。諦めはしたが、これは確かに付き合ってるという噂が流れても仕方がないなと思った。

(……あ、そうだ。買い物行くから、買い物帰りに太刀川さん拾ってこうかな)

あとで車で迎えに行くってラインしておこうと思いつつ、冷蔵庫の中身を確認するなまえ。
最低限の自炊はしている。一人暮らしをするにあたって、保護者から自炊はやりなさいと言われて約束したことのひとつだ。


「悪いな、迎えまできてもらって」
「お疲れ様です。大丈夫ですよ、買い物のついでですから」

太刀川はもう慣れたもので、当たり前のように助手席に乗り込む。背もたれの角度は太刀川がいじったままだ。基本的になまえの車に乗るのは、今のところ太刀川だけだ。

「お前は飯済ませたのか?」
「家で済ませました。太刀川さん、何か食べるならコンビニ寄りますよ?」
「なに作ったんだ?」
「面倒だったのでカレーです」
「じゃあ、俺もそれで」
「いいですよ」

たまにこういうことがあるため、もはやなまえも慣れたものだ。太刀川用の食器まではさすがにないが、太刀川が使う時のために予備で少し食器は増やした。専用ではなくてなまえ自身も使っている。だからノーカンだ(?)と、誰に向かってでもなく胸中で言い訳するなまえ。

「知ってるか?餅にカレー、結構行けるぞ」
「餅もお米ですしね」

なまえと太刀川は他愛のない話をしながら、なまえの家へと向かう。
日が落ちているので辺りは暗く、街灯と車のライトが人通りが減ってきた街中を照らしている。
なまえは幼い頃からこの時間帯が寂しく感じて、少し苦手だった。こういう時に誰かが隣にいると、ありがたいなと素直に太刀川の存在に感謝した。

「ところで太刀川さん、課題は今回どんなのなんですか?」
「ちょっと待ってろ」

確認しようと荷物を漁る太刀川。が、すぐに探すのを辞めたため、なまえは首を傾げる。珍しく、非常に気まずそうに、太刀川は口を開いた。

「……基地に忘れてきたな」
「……」

大きなため息をついてから、なまえは基地に戻るべく進路を変えるのだった。



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