年下同期の過去の話



なまえがボーダーに入ったのは現体制になってからだが、関わり自体は旧ボーダー時代からあった。

幼なじみ経由でというのもあるが、幼なじみとなまえはトリオン量が多く、ボーダーやトリガー、近界民といった存在をはっきりと知る前から近界民から攫われされそうになっていた。幼なじみの方が年上でさきに接触経験があったので、なまえに「とにかく街中など人目に付くところに逃げろ」と教えていたためなんとか攫われずに済んだが、結局は知識のない素人が逃げるだけだ。ある日2人揃って追い詰められてしまったが、逃げた先がよかった。
現在の玉狛支部……旧ボーダーの本部の近くだったため、助かった。そこで色々と話を聞き、自分達が狙われやすいというのを知った。
幼なじみはその話を聞いた上で「自衛のためってのもあるけど、俺たちみたいな人間を減らしたいから」とボーダーに入ることを決意した。

なまえは、迷った。
戦うことを。

それでも身を守るためにと知識などは与えられ、なまえの保護者に幼なじみと掛け合ってその時はボーダーに保護される形になった。
そしてなまえより年上で才能があった幼なじみはすぐに前線に立つようになったのだが……ロザリオのような形の黒トリガーになって、戻ってきた。

胸にぽっかりと穴があいたことは、未だに覚えている。
幼なじみの母親は、泣いていた。
泣いて、泣き抜いて、「なまえちゃんまで死ぬようなことを、したらだめよ」と言った。
なまえの保護者もはっきりと口にはしなかったが、そういう気持ちだったのだろう。なまえが入隊すると決めた時に、揉めた。
最終的に保護者が折れたが、いくつか約束をした。その中のひとつが、「親より先に死ぬような真似はしないこと」だった。

「なまえ、私と君には確かに血の繋がりはない。それでも初めて君を抱き上げたあの日から、私は君を娘として大切に思って育ててきた。……それだけは、忘れないでほしい」

聖職者であり、優しくも厳しい保護者が、神ではなく娘に縋るように紡いだ言葉だった。
恐らく保護者……養父は未だに、神になまえの無事を祈っているのだろう。「もう私にできることはこれくらいしかないのだから」と、以前こぼしていた。

(そんなことはないよ、お養父さん……。あなたとの約束があるから、私は死ねないと思えているんだよ)

ボーダーに入ることを認めてくれた日、約束だと頭を撫でてくれた養父の手が震えていたことをなまえは知っていた。休みの日に会いに行くと、心の底から安心した顔で迎えてくれる養父がどれほど自分を案じているのかも痛いくらいに分かっている。
でも、それでも、なまえは戦うことをやめることを選ばない。

1人なら心が折れていたり、死んでしまっていた場面もあった。
けれど、


「みょうじ、おかわりくれ」
「……太刀川さん、遠慮って知ってます?勉強もみてもらいつつ、ご飯もうちでって最近パターン化してません?」
「毎回ではないだろ。それに、ちゃんと材料費も出してるし」
「そういう意味じゃなくて……。いや、もういいです。おかわりのコロッケ揚げるから、待っててください」

あらゆる意味で逞しい人達と仲間だから、大丈夫だと思えた。



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