太刀川慶と年下同期の日常 その5



なまえは太刀川の両親との対面を(無事にとは言えないが)終えた。
色々あったがあまり思い出すと気が遠くなりそうなのだが、簡潔に言うと「交際を否定したら太刀川の両親に物凄く謝罪をされ、あまりに気の毒になってついなまえが、未来はどうなるか分かりませんからとなぞの発言をしてしまい、変な匂わせをしてしまった」のだ。
あの時の太刀川の、「何言ってんだこいつ」という顔が忘れられない。完全に失態だったと、自己嫌悪してしまう。
その自己嫌悪のまま、太刀川と反省会をしているのが、今だ。

「あの時本当にどうしたんだよ?腹でも痛かったのか?」
「違います……。なんか、あまりにも謝られてテンパったのと、太刀川さんのご両親が気の毒になったから、よく分からないことを……すみません、ご迷惑おかけしました」
「俺は別にどうでもいいけど……。むしろこれから多少は言及されなくて済むなと考えることにした」

一理ある、と思った。
あの失言は、なまえと太刀川は現状恋人未満と言ったともとれる発言だ。色々理由をつけて匂わせたままにしておけば、太刀川の両親の気持ちが軽くなるならそれに越したことはないだろうとなまえも思えた。

「というか、現実にすりゃいい」
「現実……?ほんとに付き合うってことですか?ごめんなさい」
「告白してもないのにふるな。そうじゃなくて、付き合ってるふりだ。どっちにしろボーダーでも大学でもそう言う噂流れてるしな」
「……大学でも?」
「大学でもだ」

知らなかったのか?と聞かれ、なまえは頭を抱えながら肯定した。

「大学でまで…嘘でしょ……?!」
「お前が自分んちに置いてった私物を作戦室に持っていったからとか伝言していったからじゃないか?」
「それだけでなんで付き合ってるってなるんですか?!みんなで遊びに来て忘れたってパターンかもしれないのに……!」
「それは知らん」

大学でも世話を焼いているのも一因だと言うことに、あとから気づくのだが。

「噂をいちいち説明して否定するより、肯定しておく方がましだ」
「……それはそうかもですけど、言葉悪いけど偽装するってことですよね?太刀川さん、彼女できなくなりますけど」
「モテたいって言うのはなくはないけどな。どっちにしろ遠征とか行くと、あんまり長続きしない」
「ああ……なるほど。あと太刀川さんの残念っぷりを見て、幻滅とかされそうですよね」
「見てきたかのように言うなよ」

だが否定はしないらしい。なにか心当たりがあるのだろう。少し、太刀川に優しくしようとなまえは思った。

「お前にとっても虫除けになるから、悪い話ではないと思う」
「……偽装とまではいかなくても、否定も肯定もせず匂わせておくだけ、なら」

嘘はなるだけつきたくない。つけばどんどんその嘘を維持するために、さらに嘘を重ねなければいけなくなる。それに養父の教育の成果で、なまえは嘘をつくのに抵抗感が強い方だった。

「それで充分だろ。あとは勝手に、聞いてきたやつがいいように解釈するからな」
「……こういうときは頭の回転早いですよね、太刀川さん」

それをもう少し勉学に向けて欲しいと思わずにいられないなまえだった。



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