太刀川慶と年下同期で恋バナ



なまえは困惑していた。
太刀川の様子がおかしいことに。
最近ずっとこうなのかと出水や国近に聞いてみたが、2人は普段と変わりないと答えた。唯我にも念の為聞いてみたが、同じ回答だった。
3人の答えに首を捻ったが、これはもしかして自分といる時だけ太刀川さんの様子がおかしいのでは?という結論に至ったなまえ。
結論に至ってすぐ、聞いてみた。

「……太刀川さん、最近いつもと違う意味でおかしいですけど、どうかしたんですか?」
「いつもと違う意味でってどういうことだ、お前」

ほんとに俺に対して無遠慮になったなと言う太刀川。
やりとりはいつも通りだが、何かおかしいのだ。太刀川が自分に対しての距離を測りかねてるような、そんな類の違和感をなまえは感じていた。

「……何か、しましたか?確かに最近、太刀川さんに対して物言いきつくなったかなと思ってますけど」
「それは別に。……そう、だな。ちょっと聞いてくれ」

テスト対策のノートを投げ出して、太刀川は背もたれにしていたソファーに寄りかかる。なまえは太刀川の言葉を大人しく待つ。聞きの姿勢になったなまえを見ながら、太刀川は言葉を選びつつ話し出した。

「……気に入ってる、奴がいてな。女なんだけど」
「……」

恋バナ?!あの太刀川さんが?!と声をあげそうになったのを、なまえは飲み込んだ。耐えた。太刀川はそれには気づかずに、話を続けている。

「俺は気に入ってる程度の認識だったんだ。けど、最近そいつとどうなりたいのかとか、そいつに彼氏とかができたらどうするんだとか聞かれてな」
「……どう、答えたんですか?」
「……正直、そいつとどうにかなりたいとかはない。けど、そいつに彼氏ができるのは気に食わないなと思った」
「……」

ガチな恋バナだ!と、再度言いそうになったのを堪えた。自分で自分を褒めたくなったなまえ。

「自分がそういう風に考えてるって気づいてから、こう……そいつといるとモヤモヤするようになった」
「……えっと、聞いてて思ったこと、言っていいですか?」

目で言えと促されたため、なまえも言葉を選びながら自分の考えを太刀川に伝える。

「えっと、私、恋愛経験はないんですけど」
「だろうな」
「なっ……。いや、今はそれはいいです。とにかく、ないなりに思ったんですけど、太刀川さんはその人のこと、多分気に入ってる気持ちの他に、好きって感情あると思うんですよね」
「……」

太刀川は口を挟まずに、じっとなまえを見ている。太刀川から真剣な顔で見つめられているのにくわえ、そうそうしたことも無い恋愛に関する話をしているため、なまえは恥ずかしさを覚えた。

「えっと、 どうにかなりたいとかないのは、多分今の関係が心地いいから、なんじゃないかなって。でも、その人に好きな人できたらその人との関係も変わっちゃうし、その人の一番がその好きな人になっちゃうから……気に食わないんじゃないかなって。それでそう思うのは、恋愛感情でもそうじゃなくても、その人のことを太刀川さんが好ましいと感じてるから……なんじゃないかなぁって……」

少しずつ尻すぼみになったのは恋愛の機微が分からないからというのと、太刀川から反応がないからだ。もしかしたら違うかもしれない、見当違いなことを言ってしまったかもしれない。

「……すみません、余計な意見だったかもしれないですね」
「いや……そんなことはないが、そうか。確かに、そうだよな。俺がお前に好意を持っていたとしても、確かにそれが恋愛感情だとは限らないしな」
「そういうパターンもあるかと……。……え?今なんて言いました?誰が、誰にそういった気持ちをもってるって?」
「俺が、お前に」

ご丁寧に指を指しながら言う太刀川。
心なしか、さっきより表情がスッキリしているように見えたが、逆になまえの方が困惑することになった。

「はぁ?!」
「予想通りの反応だな」

太刀川は楽しそうに目を細めて、笑っている。遅れて理解したなまえは、徐々に自分の顔が熱を帯びていくのを感じていた。
この反応に、太刀川は目を瞬かせた。

「な、ないでしょう!さすがに!」
「……どうだろうな?もしかしたら、恋愛感情かもしれないぞ」
「そ、そんなからかう気満々な顔で言われても、説得力ないです!」
「お前のその顔で言われてもなぁ」

太刀川となまえはそれなりの付き合いになるが、なまえのこの反応は太刀川も初めて見た。恋愛経験がないが故の、初々しい反応だろう。

「まぁ、安心しろ。お前の分析だと、俺はお前との今の関係に満足してるらしいから」
「っ……!あの、ですねぇ、こんなこと聞いてしまったら、今後家にあげづらいんですよね……!」
「なんで?」
「なんでって……!」
「言ったろ?どうにかなりたいとかはないって」

だから安心しろと笑いながら太刀川から言われてもなまえは、無茶言うな!という反応しか出来なかったのは、言うまでもない。



prev | list | next

top page