加古望と年下同期で恋愛談義



なまえは、たまにだが保護者と会っている。
顔を見せて安心させたいのと、自分が安心したいからでもある。
スケジュール上、太刀川とのラブホテルお泊まりのあとに会う約束をしていたので少し気まずかったが、やましいことはなかったんだしと自分に言い聞かせた。しかし、何かしら顔に出ていたのだろう。会ってすぐに、「何かあったのかい?」と聞かれた。
何があったか言うわけにもいかずもごもご言い淀んでいるなまえを見て、保護者はふっと笑って言った。

「もしかして、恋でもした、とか?」
「……」

どんな表情を自分はしていたんだろうかと、なまえは頬に熱が集まるのを感じながら思った。保護者はしみじみとした様子で、でも冗談めいた口調で言った。

「父として君とバージンロードを歩むべきか、聖職者として祝福する側になるべきか。悩ましいところだね」
「お養父さん……!気が早いし、そ、そういうのではなくて……っ」
「半分は本気で悩んでいるんだよ、昔から」
「本気ならいいだろうってことではなくて……」

なまえは、父の言動に翻弄されつつ実感した。これは、見抜かれているのだろうと。

「……そんなにわかりやすい?」
「君は素直だからね、なまえ」

そのうち紹介してくれと付け足され、なまえはあーとか、うーとかしか言えなくなるのだった。



という話を加古にしたところ、「反対されるよりいいじゃない」とかえってきた。

「というか、やっぱりそうなったってことね。あの太刀川くんを、か」
「しみじみ言わないでください、加古さん……」

恥ずかしくなるからと付け足せば、加古はクスクス楽しそうに笑う。

休日が重なったので加古の趣味のドライブに付き合う形で、2人で遠出した。ふらっと入った喫茶店で軽食を食べながらの雑談。

「時間の問題かなって思ってはいたけど。あんなにないない言ってたのにね?否定すればするほどって感じだったのかしら」
「……よくわかんないですよ、自分でも」

カフェオレが入ったマグカップを両手で包みながら、なまえはぽつぽつと心境や考えを語る。

「恋ってもっと、ドキドキしたりとか、胸が苦しくなるものだと思ってました」
「太刀川くんといて、ドキドキしないの?」
「変なことされたらしますけど」

変なことって何をされたのかと、加古は聞き出したくなった。場合によっては太刀川を許さないと思ったが、話の腰を折るべきではないと思って、とりあえず堪えた。

「だから、これは恋愛感情じゃないんだなと思ってたんです。明確に太刀川さんとどうにかなりたいとかも、ないし。タイプじゃない、とも思ってましたから。……ただ、この人といると大変だけど楽しいなって、だから……その、」
「ストップ!その話は、本人にしてあげなさい」

これは自分ではなく、太刀川が一番に聞くべき話だ。そう思いつつ、加古は思わず苦笑する。

(その表情で言ったら、あの太刀川くんだって今まで通りに振る舞えないわ)

なまえに自覚はないのだから、効果は凄まじいに違いない。

「……そう、ですね。言えるかは、別ですけど」

なまえはカフェオレに口をつける。
加古は楽しげに笑うだけで深く語ることはせず、デザートに頼んだアップルパイをフォークでひとくちサイズにして口に運ぶ。
甘い、と加古は思うのだった。



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