spring diary
3月5日
正直日記は得意ではないが、一応したためておこうと思う。俺の愛した人と、大事な友人との日々を。
3月6日
彼女を見ていて思う事がある。痛いと思うことで生きている事を実感しようとするのはいい加減やめたほうがいい。そんなことばかりしてるからタトゥーやピアスホールが増えていくんだ。
痛くないふりをして、何も感じませんってふりをして、そのくせ身体は穴だらけキズだらけって馬鹿じゃねえの。ほんとに。
3月14日
苦手だから早速日があいちまった。さぼりすぎたな、日記。
苦手なくせにこんな事をしようと思ったのは、あの日教会に行ったからだ。一日中、膝をついて祈ってた。
なあ、マリア。あんたはイエスがあんな死に方をするって知ってたら産んだかい?
結末を知っていたら手をださないって事結構あるんじゃないかと思うんだ。
俺は親友があんな結末を選ぶって知ってたら、友人になることをためらっていたんじゃないかな。わからないけど。
3月16日
日をあかさないようにするのって少し疲れる。俺は日記を書くのに向いてないんだ。
まあいい。どうせ誰に見せるわけでもないんだ。
3月17日
「あなた、まだ彼と友達?彼と連絡が取れたら嬉しい?」
恋人の問いに俺は勿論って即答したさ。そうしたら彼女、複雑そうな顔をしていた。
俺の魂の友。血のつながりよりも、いとおしい俺の、友。
お前はどうしてるだろう。そしてどう応えるのかな。お前、まだ友達でいてくれるか。
手紙もメールも寄越さない、薄情な友よ。
3月22日
あいつ、いつも影が薄かった。きえてなくなるんじゃねってくらい。
3月24日
彼女をルームメートにって推薦したのは俺だ。
『結末を知っていたら手をださないって事結構あるんじゃないかと思うんだ』っていつかに書いた日記が盛大にブーメランしてる。
俺は彼女をルームメイトとしてあいつに推薦した時、ふっとビジョンが浮かんだ。あいつが彼女に恋をするだろってこと。そして彼女はそれを拒むだろうってこと。
でも、その先は?その先は、見えていたんだろうか。
俺が彼女を『愛してしまって』あいつが『笑って身を引いて』彼女が『あいつを友として慕い続ける』という結末を。
そして、俺がお前をないがしろにして、心のどこかにあったガキの頃からの劣等感を女を奪ったことでなんとか誤魔化そうとしたことを。
お前は知っていたんだろうか?
それでいて、あんな風に笑っていたんだろうか、
しあわせ、そうに。
3月25日
あいつはいつも俺より秀でていた。子どものころから、ずっと。
そんなあいつが好きだった。
クズな俺とともだちでいてくれた。勉強を教えてくれて、放課後には一緒にバスケをした。
いてえ。
昨日あけたピアスホールが痛む。あーまたブーメラン。
ばかじゃねえのって思ったことを自分もやるんだから本当にバカ。救えねえな、俺は。
お前を想って、ピアスをあけたなんて言ったら、友よ、お前は笑うだろう。
3月29日
「ねえ、友情と恋愛は違うのにどうしてこんなに苦しいの?」
彼女は星の見えないスモッグで汚れた空を見上げて、そう言って泣いた。
「さあな」
でも俺は彼女と同じことを考えていたんだ。久々に口ずさんだ歌が、すげえ痛かった。
「Why do you love me?――Love is here.」
苦しいのなんて、理由は単純だ。愛が此処にあるから。
愛しているよ、愛している。
お前たちを愛している。
隣で泣くお前も、どこか遠くにいるであろう、俺の友も。
なのになんで俺は、あんなひどい事ができたんだろう。
物思いに耽っていたら、夜に最低な報せが届いた。
3月30日
お前が死ぬなんて、思ってもみなかった。
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