ごちゃ倉庫
◎ドライブ×ドライブ�A
2011-6-30 15:26
ドライブ×ドライブ�A
「…、っと…三川さん、俺指名してたんだけど…新しく変わったのかな…」
「あ、あぁ、三川さんは…その…辞めたんだ。だからお…私が代わりに…」
ヤバい、俺っていうところだった。
今の俺は女の子女の子…
「ふぅん…」
扶川はそういうと、ジロリと視線を俺に向ける。
上から下まで、まるで舐めるような視線を…。
もしかして…
いきなりバレタ…
冷や汗がタラリと背を伝う。
「あ、あの…扶川…くん」
「可愛いネ、三川さんも可愛かったケド…あんたも超可愛い」
「え…あ、ありがとう…」
超可愛いだなんて男に言われても嬉しくない
のが普通だと思うのに。
俺の心臓はバクバクと早鐘を鳴らしていた。
くそぅ…鎮まれ、俺の心臓。
「じゃあ、早速始めましょうか…えっと…先生は…」
「ん?」
「名前なんていうんですか?」
「白川…っと…白玉杏子(しらたまあんず)」
「しらたま?あんず…」
「う、うん…」
用意していた俺の偽名を言う。白井瑞穂っていう俺の本名も充分女っぽいけど。
同姓同名の職員だと、万が一女装が生徒にバレタ時言い訳できない…と、別の名前も用意したのだ。
「しらたま…しらたまあん…」
扶川は肩を震わせて俺の仮名前を笑う。
どうやら、しらたまあんずという名前がつぼったらしい。
「すっげぇ美味しそうな名前っすね…」
なんて笑いかけるんだから。
嗚呼、すっげぇいい笑顔。扶川のその笑顔見るの何年ぶりだろ…
「…白玉さん?」
「あ…ごめん…ぼーっとして…。じゃ、じゃあ車、案内するね…」
赤らむ顔を俯き、なんとか扶川の視線から逃れ、本日使う車まで誘う。
扶川は始終ニコニコしながら、俺についてきていた。
原簿を見ると、扶川はまだ始めたばかりらしく、車にのったのも数える程のようだ。
しかし、案外扶川は覚えがいいらしく、車にのったのは数える程なのに、もう半分以上の仮免前にやらなくてはいけない項目をクリアしている。
「えっと…クランクとか…もうやったかな…」
「え、あぁ、やりましたよ」
「そう…じゃあ一通り走ってみようか」
「はい…」
扶川はコクン、と頷くと、キーを回しエンジンを入れる。
うわ…、扶川が俺の言うこと聞いたの初めてかも…っ
ちょっと感動だ…。
「ネェ…センセ…?」
「ん…?何かわからない?」
「ん〜と…」
ブルルル…とエンジン音が車に響く。
車来ていないのに…なんで出発しないんだろう……。
「なにか…」
「あのさーセンセって、彼氏いるの…?」
「は…?」
彼氏?
…俺が…?
って、俺は男…
と…今は女装中だ…。
しかし…
しかし今は一応実技中だぞーっ
そんなプライベートな事…いきなり…
「そ、そんな事はどうだっていいだろ…はやく出なさい!」
「はいはい…センセって、照れ屋さん?」
「っ…!」
ニヤッと、意地の悪そうな笑みを浮かべる扶川。
ドキリ…と胸が大きく弾む。
この顔は…昔から大好きな顔だったから…
ずっと…好きだった顔だから…
嫌われてからも、ずっと…
「…センセ…」
「…は、早く出せ」
「はいはい」
扶川は静かにアクセルを踏み、車を動かす。
俺はそっぽを向いた振りをして…こっそり扶川の横顔を盗み見ていた。

