ごちゃ倉庫

09/05

◎天の川にお願い☆


2011-7-10 13:39

天の川にお願い☆






今度、私のたった一人の娘が嫁ぐ。

私は天帝。

娘の名前は織り姫。

機を折るのが好きな可愛らしい女の子だ。

しかも、ただ可愛いだけではない。

織姫は優しくほんわかしており、綺麗な旗も織れる働き者だ。



大変父思いだし、私が何か不便なことがあれば進んでやってくれる、親ばかになるがいい子だと思う。

織姫が織る旗は大変見事なもので、わが娘ながら私は織姫の仕事ぶりを誇りに思っていた。





そして、今度織り姫が嫁ぐのは、彦星というこれまた好青年な人間だった。

元々、織姫に彦星を紹介したのは私だ。

彦星という男は、大層真面目で若く好青年と聞いていたからだ。

二人は、馬があったのか、出会ってすぐ意気投合し、やがて心を通わせていった。



織り姫は彦星が初恋らしく、私に彼がどれ程いい男か毎日のように熱く語った。

妻に先立たれ、ずっと織姫と二人きりだった私としては少し複雑だった。

娘を取られ、一人になった気がして。



しかし私は寂しい半面、二人を形では祝福していた。

私の淋しさで愛し合っている二人を縛る事は出来なかったから。





でも…抑えられない不満ももちろんある。



問題は、彦星の兄のことだ。

彦星の兄は、正直、堕落という言葉がとても似合う男だった。

なにをしているかときけば、なにもせず女の世話になっているという。

不真面目な人間なのだ。



私はちょっと硬い人間だとよく言われる。

不真面目な人間は生理的に受け付けないし、傍にもよりたくない。

だが、彦星と織姫が結婚するという事は、遠からず、私と彼は親戚ということになる。

苦手な人間が親戚に…。



考えただけで、クラリとするが、それだけじゃない。

彦星の兄は…初対面の私に…。



天の川にお願いA




「へぇ。織姫ちゃんのお父さん?へぇ、織姫ちゃん可愛いから、つまみ食いでもさせて貰おうと思ったけど、お父さんも可愛いねー。以後よろしくね〜」



なんて、言いながら…き、キスを…。

今でも、ふと思い出すと蘇る唇の感触と、あいつの息遣い。

思い出す度に怒りで顔が赤くなる。





「お父さん?」

「いいか、織姫。彦星君の兄には絶対に近づくなよ」

「え・・・?」

「いいな。あいつは野獣だから。わかったな?」

「・・・う、うん・・・」



織姫が私の剣幕に押され、半ば強制的に頷く。

私はそれに満足し、ぎゅっと織姫を抱きしめた。



そうだ、あんなやつに、絶対織姫を毒牙にかけさせるものか…。

織姫は私が守る。





私はそうひっそり決意する。

でも、このとき、私は知らなかったのだ。



本当の、恋を。

全てを忘れてしまうような、恋を。



まだ、知らなかったのだ。







働かなくなったリア充にきれるパパ。
そんなパパを説得する婿の兄。
とか面白いかな…と思い…。

実際、七夕伝説は天帝は織姫の父ですが、彦星に兄はいなかったと思います。

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