ごちゃ倉庫

09/05

◎サンタさん危機一髪


2016-3-16 11:52

サンタさん危機一髪




俺は、ショタコンだ。

いや、何突然言っているの?
そんな声が聞こえそうだがもう一度言う。

俺は、ショタコンなのだ。



 俺、三田クロスケ(さんたくろすけ)

なんちゅう名前だ…と昔は親を怨んだものだが今は案外気に入っている。

何より俺は今年から《サンタ》
サンタクロースになったのだから。


 これは、最近知った事実なんだが、じつは俺の家は昔から、クリスマスにはサンタになる役目があるらしい。

なんでも、御先祖様の御先祖様のそのまた御先祖様が、フィンランドにいたサンタで、訳あって日本に来て以来、ずっと日本のサンタとして活動しているそうだ。

今までは、俺の父さんが現役だった訳なんだけど12月のはじめにあった、ゲートボール大会でハッスルし過ぎて腰を痛めてしまったらしく。


この度、特例で今年だけ俺がサンタ代理をする事になったのだ。

聞いた時は驚きというか…嘘としか思えなかったけれど。
空飛ぶトナカイを見せられたら、嘘だ!とは言えなくなった。

嘘のようで、本当の話なのだ。


 ショタコンな俺としては、子供に夢を配るサンタになれる!と言うだけでなんだか気分がよくなり、一も二もなく、親父に頼まれた代理サンタにokした。

親父は凄く不安そうな顔をしていたが。


 俺がショタコンの気があるとそれとなく気付いていた親父は、実は将来は俺ではなく別の人にこの《サンタ》を受け継ごうとしていたらしい。
今回、親父が腰を捻らなきゃ、俺には自分の家系がサンタという事を秘密にしておくつもりだったようだ。


散々、サンタ代理をする事になってから『プレゼントをあげる子供には手を出すな』と釘を刺された。

全く親父は、俺をなんだと思っているんだ。

俺はショタコンでも、他人様には迷惑をかけないショタコンだ。

それこそ、虐待とかいたいけな子に性的な事を…とか冗談じゃない。

ただ遠くから子供の可愛い笑顔を見れていればいいんだ、俺は

「…あ、でもチューくらいはされたいなぁ…」

サンタさん、プレゼントありがとう!チュッ

なーんて。子供の柔らかな唇で…



あ、いかんいかん。
変態じゃないか。


俺は子供の夢を配るサンタ!
良い子のみんなのプレゼントを配るサンタさんなのに……。
こんな事を考えては…親父にどやされる。


「キモいわ……きもすぎるわ…あんた…」

ボソリ、と俺の顔を見ながら、失礼な声。


「しみじみ言うのやめてくれるかな?マツコ」
「あら、ごめんなさい」


 俺の相棒・トナカイのマツコは全く心にもないように、謝罪の言葉を口にした。
このトナカイ…


このトナカイマツコこそ、サンタクロースが乗るような空が飛べるトナカイであり、クリスマスは一緒に子供達にプレゼントを配る相棒である。

姿形は、普通のトナカイだ。

マツコがいなかったら、俺は子供にプレゼントを届けられないし、届ける場所もわからない。
サンタな俺にとって、マツコは欠かせないパートナーなのだ

「でも嫌だわ。せっかくカッコイイナイスみどるな新しい主人がくるかと思ったのに。
きたのはこんな青臭いガキだなんて。あたしがっかり。
どうせならガッチリとした男を乗せたかったわ。男の熱い筋肉……。あぁ、考えただけで涎出ちゃう」

「俺もトナカイがオカマなんてがっかりだよ……」


このトナカイ、日本語を喋れるし、頭もいいのだが、いかんせん女言葉を喋るオカマなのだ。

喋れるし、飛べるなんてとってもメルヘンなのに…。

声は低いし、口調はカマなんて、軽く、サギだ。


「ショタコンよりマシね」
「オカマよりマシだ」


ショタコンサンタとオカマトナカイ。

なんという、子供の夢をぶち壊す組み合わせだろうか……。

今年の世のサンタを待つ子供達、夢を…壊してごめん。



「それより、あんた、ちゃんとチェックしてるの?家と子供」
「あ…あぁ、でも、俺ん家の担当少ないじゃん」

サンタ、は俺の家系だけじゃなく他にもたくさん日本にはいる。



今回、俺はあくまで親父の代理としてのサンタなので、他のサンタ担当よりもプレゼントを届ける人数を少なくしてもらった。

大体プレゼントを配るのは…20人くらいか。
少なすぎるって?

最近サンタを信じる人間が少なくなってきたからな。

サンタさん、ってのはサンタを信じない子供には現れないもんだから。

サンタを信じ、プレゼントを欲しがる子供のみ、サンタは現れプレゼントを渡すのだ。


「ま、最近は純粋にサンタなんて信じているやついないけどなー」
「あんたみたいな人間は特に信じなさそうね。クロスケ」
「これでも昔は名前の事でずいぶん虐められましたから。サンタなんて嫌いだったからな」
「だからって、子供の夢を壊すのはやめて頂戴。ほら、髭!」

マツコは、髭をつけるように俺に促す。

今の俺は、無精髭は生えているが白い服はつけてない。
ちなみに、赤いサンタ服も着ているがジムで鍛えているから、世のサンタさんみたいにふっくらもしていない
端からみると、ただのサンタコスプレしている痛い人、かもしれない。


「髭はいいよ。見られなきゃ、大丈夫だろ?」

「あんたねー…あ、そうこうしている間にターゲットの家よ!あんた、準備はいい?袋は?」
「へいへい、持った持った。しっかし、ターゲットの家ったって…、煙突ないじゃん。マンションだぜ?」

サンタといえば、煙突からこっそり、がセオリーじゃないのかね。
いまどきのサンタはマンションの鍵を開けるのか……


…泥棒かよ。


「馬鹿ね、なんの為に私がいるの」

マツコは得意げにそういうと、マンションに向かって走り出す。


「おい、マツコッぶつかー……え?」


マツコは確かにマンションに向かって走っていたのだが…

今俺がいるのは子供っぽい部屋。


「…なにが……」
「あたしは、壁をすり抜けられるの。じゃなきゃ、煙突がない家はサンタが来られないでしょ?」
「妖怪…」
「あぁ?」

いやいや、壁すり抜けるなんて妖怪としか…。

しかし、マツコの剣幕に恐れた俺は口をつぐむ。

冗談なく、マツコは何か気に入らない事があれば、頭の角でこちらを攻撃してくる。それが、マツコだ。


「ほらっ、プレゼント!時間ないんだから」
「あ…あぁ」

本日はクリスマス。
プレゼントを配る為に、わざわざマツコと一緒にいるのだ。

「えっと、コレ、か…」

四次元ポケットならぬ、四次元袋から、プレゼントを取り出す。

これも、マツコ同様不思議なサンタ七不思議便利道具の一つで、その子供が欲しがっている玩具が自動的に中に入っているという、便利グッズだ。


ターゲットの子供は、サンタの俺がきたのにも気づかず、すやすやと天使の笑みを浮かべながら眠っている。

やべえ、可愛い。
あそこが……
あそこにくる可愛さ…!

「早くすんのよ、変態」
「わ、わかってらぁ!」

マツコから、お叱りの言葉が飛ぶ。
俺は、子供部屋のベッドの近くにある、靴下にそっとプレゼントを入れた。
「メリークリスマス」
「早く行くわよ!」

マツコは俺を急かすように、前足を蹴る。
クリスマスの夜は長くない。プレゼントを待つ子供にプレゼントをあげられなくなったら、可哀相だ。


俺は、マツコに飛び乗ると、次のターゲットの家に飛んだ。



     *

「はー配った配ったー」

しんしんと、雪が降り始めた深夜。時刻にすると既に2時。
当初の予定よりも、速やかに動けたらしく、プレゼント配りも残り一件を残すのみだ。


「サンタさんも、案外楽勝じゃん」
「あんたね……」

呆れたように、言葉を返すマツコ。

「油断して…あと一件が大事なんですからね」
「わかってらぁ!ほら、さっさといこうぜ」
「全く…」

マツコははぁ、っとため息を零すと、ぐん、っとスピードを上げた。振り落とされないように、俺もしっかりたずなを持つ。


「ラストの子も可愛い子がいいなぁ〜」
「あんたね…ほらっ!行くわよ…」

と、マツコは、先程壁をすり抜けた事と同じようにある一件屋に直進する
家に入れたら、プレゼントを置く。

そしたら晴れて俺の仕事は終わりだ。

なんだ、サンタなんて案外簡単なもんだなーなんて、ぼんやりと考えている時だった。


「…!クロスケッ大変!まずいわ」
「ふぇ?」
「……捕獲」
「は?」


マツコが、壁をすり抜けとある一軒家の部屋に入った。
そこまでは良かった。
今まで散々やってきた。
だが……


「あ、あれ……?」
「サンタ、捕獲。やったー」

ターゲットであるプレゼントを配る子供が…起きていた。
しかも、罠を張って。

俺とマツコは、子供が用意したであろう、魚なんか入れるような大きなあみの中にいる。

どうやら捕まってしまった…ようだ。子供なんかに。

「なっ…」
「サンタさん、捕獲っー。あれ、でも若いね、サンタさん。
ねぇ、サンタさん、僕欲しいもの、あるの」

目の前の子供は小首を傾げ、可愛く俺を見つめる。
やべぇ…、可愛い。

くりくりした大きな瞳にサラサラな黒髪。

俺のショタレーダーが大きく揺れる
「あ?あぁ。プレゼントか?こんな事しなくても…」
「あのね…僕…」
「あ?ん……」

俺の目の前に、子供がきた。と同時に、唇にぬるり柔らかなとした感触。

アミゴシにキス…されている。

「はぁ…っ…」
「サンタ、さん…」

数分の長い、キス
名残惜しそうに唇が離れた。

途端、うるりと、子供の瞳に涙が溢れる。

「クロウ!あんたってやつはっいたいけな子にキスして、泣かせて」

その泣き顔をみた途端、マツコがこちらに牙を向けた。

「ま、待て不可抗力だって!お前だって見ていただろ?」
「あんたが油断してるのがいけないんじゃない!あんた大人でしょ!いい大人がほいほいキスされてるんじゃないわよ!ないちゃって可哀相に」
「なにぃ」

今のは絶対不可抗力だろ。むしろマツコだって、油断していたから、罠に引っ掛かった訳なのに。

俺ばかりのせいにしやがって。
そりゃ…可愛い俺好みの子供にキス出来て嬉しかったけどな。
ああ、かなり嬉しかったけどな
「あの…ごめんなさい…サンタさんを怒らないで、トナカイさん。
あのね、僕、《恋人》が欲しいの!」
「「へ?」」

子供の言葉に、思わずマツコと顔を見合わせる。

恋人?
プレゼント、じゃなくて?
恋人?

「あの…」
「お願い、サンタさん、僕の恋人になって!」
「えっと…いや、君は子供だし、俺達会ったばかりだし、俺はサンタだし」

ああ理性、理性頑張れ。
いくら俺好みの可愛い男の娘に近いショタっ子でも、
いくら俺を恋人にして!って言ってきても。


会った側から恋人しろだなんて、危険過ぎる。
危険過ぎるだろ、俺。


「あのねー僕、俺はね…」
「いいって言わなきゃ、一生ここから出してやんない。ずっと網の中で飼ってやる」

ま、まさかのショタのヤンデレ属性ーっ

確かにこの網、しっかりしていていくら俺とトナカイのマツコの二人?がかりでも壊れそうにない。丈夫な網だけどさ。


「あの…さ」
「今日…クリスマスに来てくれたの、サンタさん…だけなんだ」
「へ?」
俺、だけ?
両親は……


「パパもママも、僕の事あいしてくれないの。クリスマスなのに…ずっと、一人だったの…。僕は要らない子だから」

子供は、しゃくりを上げながら、尚も言葉を続ける。


「だからね、あいして欲しいから…恋人が欲しいって思ったの。僕だけをあいしてくれる恋人。ずっと側にいてくれる人」
「…きみ…」
「僕…僕をあいしてよ!プレゼントなんか要らない!だからっだから愛を頂戴よ…お願い…お願い…」


小さく震え悲痛な声で、懇願する子供。

普通の家庭なら玩具のプレゼントを待ち望んでいるのに。
なのにこの子は愛が欲しいという。

泣きながら、愛が欲しいと訴えている。
ただ愛して欲しいと泣いている。


この子は、どれほど悲しかったのだろうか。
この子は、どれほど…。

「網を、退けてくれないか?」
「サンタさん…」
「これじゃあ泣いている君を抱きしめる事も出来ない」
「サンタ、さんっ」
子供はくしゃくしゃに顔を歪めながら、俺達を捕らえていた網を外す。

身体が自由になったと同時に俺は泣きじゃくる子供を抱きしめた。


「よく、頑張ったね…。」
「サンタさん…」
「君はよく頑張ったね。ずっと、寂しかっただろう?ずっと悲しかったよな」

こんな子供が、クリスマスの日に愛が欲しいという。
玩具よりも、ただ愛が欲しいと。

両親にぬくぬく愛された俺には正直、子供の悲しみ全てはわからない。

…でも。

その涙は悲痛の色に塗れているから、漠然と、止めたくなった。

大丈夫だよ、と慰めてあげたくなった。


「君が…もし…五年後も俺を忘れずに、そして、まだ愛が欲しいと思っていたら……」
「?」
「その時は、俺が恋人になってあげよう。五年後のクリスマスも、俺を忘れずに、いたら」
「ほんと?」
「あぁ、ほんと。約束だ指切り」

子供の小さな手を取り、小指を絡める。
子供はパアッと、顔を破顔させ、嬉しそうに手を上下に振りながら、指切りげんまんの歌を歌った。


「サンタさん、絶対だよ!」
「あぁ。君が覚えていたらね」
「忘れない、絶対!」
「じゃあ…また五年後…な」

言いながら、マツコに飛び乗る。
マツコは何かいいたげな顔をしていたが、結局口をつぐみ、走り出した。




−五年後−

「まぁったく、あんたってば、ほんとタラシよね!ショタのタラシ。ショタラシね。五年前の子供に会いに行くなんて」

マツコはお小言を言いながらも、目的地まで走ってくれる。

あの子供に会って…
俺が代理サンタをしてからもう五年が過ぎた。

俺ももう、立派な歳になった。


「でもびっくりしたわ。
約束したからって、あんた、ショタコン辞めてぐだぐだと付き合っていたセックスフレンド切った時は」
「まぁ…約束しましたし?」
「振られたらどうすんの?覚えていなかったら。子供なんかすぐに私達を忘れちゃうのよ?」
「…そんときはその時だ」
別にあの子供が俺を忘れていたって、こんな年上の男と付き合いたくない!なんて言われてもいい。
ただ、笑っていてくれれば、それで。



五年前と同じように、マツコが一軒家に突っ込む。


「クロスケッ!大変!」

五年前と同じように、マツコが叫んだ。


そこには、


「メリークリスマス、サンタさん」

五年成長した、泣き虫だった子供がいた。
少し…成長したかもしれない。でも泣き虫は治っていないようだ。

俺の姿を見て、ぽろぽろと瞳から涙を零している。


「メリー…クリスマス」

ふっ、と口許を緩めて笑う。

それが合図だったように、

子供は俺の笑った顔を見た途端、勢いよく俺の胸に飛び込んできた。


 


 

メリークリスマス。

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百万回の愛してるを君に