ごちゃ倉庫

09/05

◎大変な変態2


2016-8-23 13:31

大変な変態2



大変な変態2



大概にしろよ、俺。

ただ、遊ばれているだけなのに。




「ねぇ…弟くん」

その人は今日も突然やってきた。
なんの前触れもなく。




本日は晴天、麗らかな日曜日。

ラフなシャツに、ジーンズ。
それから紺の皮のジャンパーというカジュアルな服装で現れた。
俺の愛しい、人。

俺が通う学校の生徒会長様。そして、兄貴の親友様



「兄貴なら、」
「いないんだろう。知っているよ。なんでも書の何かに呼ばれたんだってね…」


流石あいつだよね…、と会長は呟く。

真面目な兄貴は昔から書道をやっていて、それはもう字が上手い。
将来は書道家か書道の先生になれるんじゃないかといえるレベルだ。

真面目で硬派な兄貴らしく、字は堂々と芯があり、その手の通の人すら唸らせる才能があるらしい。


だから、今日みたいな日曜日は書道協会に呼ばれたりだとか、どこかの企業や結婚式で代筆を頼まれたりする。


ほんと、俺とは違って凄い兄貴様だよ。

こんな俺とは違って…な。

「それで、家に何か用ですか?また兄貴の下着を…?」


この変態…、
失礼。
会長。

伊丹辺南平太(いたんへなんへいた)というのだが、根っからの変態で只今俺の兄貴に片思い中だったりする。

兄貴が留守の時を見計らっては兄貴の下着を物色し、オカズにしているのだ。


可愛い女の子ならまだしも。

兄貴は正直可愛くもクソもない。身長だって会長と同じくらいだし体躯だってほぼ同じくらいか、もしかしたら会長の方が細いかもしれない。


そもそも、会長はあの兄貴を抱きたいんだろうか…


まさか、抱かれたい…のか…?


会長が?
有り得なくもない。
この変態なら

「会長、」
「まぁ、今日は下着には用がないんだ。
あいつ…君の兄さんの事を想っていたら楽しいゲームを考えてね。

君とやりたいなぁ〜と思って」
「ゲーム?」


俺と?会長が?
思わず訝し気に眉が寄る。

会長はハハハッと笑いながら困惑する俺などお構いなしに家の中へと入る。
「ま、待てよ!」

勝手な事はさせられない!と俺も急いで会長の後を追った。
パタパタと会長は勝手しったるや廊下を進んでいく。

もう何度もきているんだ。

何処に何があるかわかっているんだろう。
トイレの場所からリビングまで。
母さんも会長が来ると喜んでもてなししていたから、何回か泊まった事もあるし。


不意に、ハタ、と会長は歩みをとめる。


「会長…?」
「弟くんの部屋はどこだい?」
「俺の…部屋?」

なんで俺の…

そういえば、たくさん俺の家にきている会長だけど俺の部屋は知らなかったっけ…。

…まさか。

会長、俺の部屋にくるつもりなのか…?

今日は兄貴の下着には用がないようだから…

それはまずい
部屋散らかっているし。


それに


「会長、」
「だって今日はあいついないだろう?
無断で入っちゃ駄目じゃないか」
「…いつも無断でやっているじゃないですか」


どの口が言うんだ、ソレ!いつも散々無断で兄貴の部屋でやっている癖に!

兄貴の下着失敬している癖に

「それとも何かい?君の部屋には見せられないものでもあるの?」

挑発するような会長の視線。
ドキリ、と胸が跳ねる。


見せられないもの…
あるよ。

凄く会長に見せられないもの。

AVとかそういうのじゃない。
もっとやばいもの。



 俺の部屋には、沢山の会長がいる。
もちろん実物じゃない。


沢山の会長の写真が貼られているのだ。


ストーカー一歩手前くらいに。

壁や机にペタペタ何枚も会長の写真でうめつくされている。



そんなの見せてしまったら…
絶対ひかれる!
ってか、軽蔑される!

『僕の写真使ってナニしていたの?』
なんて冷たい視線に曝されるに決まってる

それは死守しなければ



「絶対に俺の部屋は駄目です!
もし使うならもう会長の事大嫌いになります」

「それは困るなぁ、君とは仲良くしたい」

会長は困ったね…といいながらわざとらしく肩を竦める。


そして、

「じゃあ仕方ないからやっぱりあいつの部屋に行こうか」

と、兄貴の部屋へ足を向けた。

兄貴、ごめん。

でも兄貴の部屋は俺の部屋と違って綺麗だからいいよな?


俺は心の中で兄貴に謝罪し、会長に出すお茶を用意する為に先に会長に兄貴の部屋へ行くように指示をする。


会長はお茶なんかいいのに…と言っていたが。

でも、俺、会長の俺が煎れた珈琲が1番美味いって褒めてくれたから。

俺が煎れたいんだ。


会長はあまりに煎れると言い募る俺に、やがて観念したよ…と息を吐き、兄貴の部屋へ行ってもらった。


俺はいそいそと台所に行き、会長好みの珈琲を作る。
豆から煎る本格派な珈琲が好きな会長。

実は会長の好みに合わせる為に俺の自腹で珈琲メーカーも買っていたりする。俺、珈琲なんて滅多に呑まないのにさ。





会長の好み通りに珈琲を煎れ、ついでに俺のも煎れる。
後は台所にあった菓子もお盆に載せて、準備完了。

俺はドキドキしながら、煎れたばかりの珈琲を上に載せた盆を持ち、兄貴の部屋へ向かう。


「あ…」兄貴の部屋に無事ついたはいいものの。


盆で手が塞がってドアが開けられない。

一度床に置いてドアを開けるしかないか…


「か、会長…開けてくれませんか?」

ドアの向こうにいる会長に叫んでも会長の返事はない。

まさか俺の部屋にいったんじゃ…、と焦り、床に盆を置きドアを開ける。


「あ…」
「あ」

ドアを開けた先
そこに、会長はいた。

良かった、俺の部屋にはいっていなかったらしい


ただ…
ただ…、その…


やっぱり会長だから
致していた訳で、


アレを。


俺は般若になり会長のシャツの首ねっこを持ちガクガク揺する


「会長、今日は下着に用はなかったんですよね?
何しているんですか!」
「いやぁ〜何って…ナニ?アハハハ」
「全く楽しくないですよ!この変態!」
「お褒め頂きありがとう」
「褒めてもないし…」

ガク、っと頭が下がる。

「だって、使わないと下着に失礼じゃないか」
「正しい使い方しない会長のが失礼です
ってか兄貴に失礼…」
「じゃあ君の下着でもくれる?」


キラリ、と会長の瞳の奥が光った。
欲が灯ったのか…
チリチリとした熱い視線が俺を見つめる。


それは雄の視線にも、似た…
補食者の瞳。


不覚にもその瞳にトキリと胸が一つ跳ねる。

会長の、たまに見せる危ないこの視線が俺は好きで。
変態なのに、何者にも屈しないこの絶対的な瞳が好きで


「な、何言っているん…ですか…」

声が震える。

微かに期待し震える胸。


「弟くん…」

すっ、と会長の顔が真剣になる。
いつものヘラヘラした顔じゃない。

全校生徒の前で堂々としている完璧な生徒会長のモノ。

そっと、頬に会長の冷たい手が充てられる。

冷たくて、長い指先。
意外に骨張った、大きな、手。



「あ…」

見惚れている俺に、ゆっくりと会長は顔を近づける。

…キス、される。
唇が、くる。


ふっと口端に、会長の吐息がかかる。
凄い至近距離。



自然に瞼を閉じ、俺は会長がくる瞬間を胸を踊らせていた…


が。

「弟くん、そろそろ僕ズボンあげていいかな」

それは見事に変態のせいで崩れ去った。

パチリと目を開けて、会長を見る。

そういえば…
さっきから会長は俺と会話しかしていない。

つまり、ズボン…ズボンもあげてなくて…


つまり…つまりだな…。

チラリと下の方に視線を移す。

と…そこには…会長の息子さんがいた。


息子…
息子です、父さん!

ハハハ。
ハハハ。


「変態っ!」


バタン、と勢いよく兄貴の部屋を出る。

ズボンくらい早くはきやがれってんだ、馬鹿会長。



 しばらくたっただろうか…

「もういいよ〜」とまるでかくれんぼをしているかのような間の抜けた会長の声。

俺はヤレヤレっと、溜息を吐きながら、ドアを開き床に座っている会長の隣に腰を下ろす。


「会長、そんで俺になんの…ゲームでしたっけ?」
「うん、一人じゃ出来ないから是非君にもと思ってね、」

どうかな…?と小首を傾げる会長。

わかっている癖に。

俺が会長の言うこと断れない事なんて。

良いですよ、とぶっきらぼうに言う。


「男に二言はないね、弟くん」
「へ?」
「じゃ、遠慮なく」

と、会長は持ってきた鞄からネクタイと書道なんかで使う筆を取り出す。

え?

ゲームって…


「会長、いったいなんのゲー…」
「さて、と。ちょっと我慢してねー」
「会長」

俺の言葉を完ッ璧に無視し、会長は取り出したばかりのネクタイを俺の目元に宛てる。

な、何…コレ…


「会長!コレ…」
「目隠し目隠し。これやんないとゲーム出来ないから…黙って…ね?」

ね?なんて言われても。
目隠しなんて、視界が奪われてなんか恐い。

特に目の前にいるのは変態会長だし……

「か、会長…」

視界が奪われているせいか、声も恐々と細くなる。
見えない事がこんなに恐いなんて。


会長はそんな俺に、大丈夫、いい子だね、と頭を撫でてくれたが。


目隠し、するなんて…

なんの、ゲームなんだ?
福笑い?それとも何かマジックでもするのか…?


「会ちょ…ひゃ…」

 首筋が、撫でられた。

見えない分、他の五感がときすまされている為、余計くすぐったい。

くちゅ、っと次にそこに唇があてられる。

何を次はさせられるのだろうか。
会長は…今どんな顔をしている?

全くわからない


「会長、なに…」
「五感が研ぎ澄まされるだろう、目隠しをすると」
「され、ますけど…一体なんで…いきなり…?」
「ゲームだよ、弟くん」
「ゲーム…」
「そう、」

何のゲームなんだよ、コレ。福笑いなら福笑いでいいから早くやってくれ。

ただでさえ、会長がいるからドキドキしているのに。更にそこに視界を奪われる、と……


「あいつ、今日書の大会だろう?
僕はね、あいつの字も好きなんだ。綺麗な字だよね…」
「あ…」

ファサリ、とくすぐったいモノが、俺のシャツに潜り込んだのか腹の部分を撫でた。

ちょっとチクチクして。
でも滑らかでくすぐったいもの。


「だからね、今日は練習したいな…って思ったんだ。書の練習を…ね」
「書…」


まさか…
まさか…。

俺の腹を撫でているのは……


「だからね、君には練習台になってほしいんだ。僕の書の。
半紙になって欲しいんだよ」


会長は至極ご満悦に、語尾に音符でもつきそうな口調で言った。

俺の首筋を一撫でして。


僕の書って事は。
つまり……


目隠しされる前に一瞬見えたものが頭を掠める。


ネクタイと…

それから…

筆。

筆かっ、これは…



「どこが…ゲームなん…ですか…」
「君が黙って何も喋らずに半紙になってくれれば僕は御褒美をあげるから」
「御褒美…」
「欲しい、だろう?」

低い掠れた声で会長は俺の耳元で囁く。

ちゅ、っと合間合間に耳朶を噛んで。
その間も、手を止めない。

くすぐったい。

でも、それ以上に

いけない感情が頭を擡げる。

御褒美。
会長からの、御褒美。


それはいけないパンドラの箱のような、

いけない感情。


開けてはいけない禁断の箱(おもい)

「御褒美…」
「ん…?」
「欲しい、です…」

激しい息混じりに言葉が零れた。


言ってしまった。

普段なら言わない、こんな言葉。

視界が見えないから。
熱に浮されているから…

だから…

普段の俺ならこんな事言わないのに、



「素直な子は大好きだよ」


会長は唇に一つ口づけを落とす。

そして器用に今日は筆を動かしていった。

そろそろと、それは上半身から下半身へと移動する。


俺を、翻弄する為に。



妖しくおかしなゲームは、それからしばらく続いた。


俺と会長


二人だけのゲーム…

可笑しく甘美な、二人のゲーム。


いけないいけない、おかしなゲーム。


ゲームが終わった後。
会長は背後から僕を抱きかかえながら楽しげに俺の髪に口づけを落とす。

目隠しされていた、ネクタイはもう解かれている



「…会長」
「フフフ、可愛かったよ」

会長の、馬鹿。

変態変態変態変態!
ニコニコと笑いかける会長の視線からフイと明後日の方をみる


「おや、このゲームはお気にめさなかったかな?」

当たり前だろ。

あんな…あんな〜っ…

怒りを表す為に、ぎゅっと会長の足を抓る。
が、会長は相変わらずニコニコしている。

Mか、こいつ…。



「じゃあ、今度はもっと楽しい事をしようか」

「え…ふ…んん……」


顎が掬われ、そのまま口づけられる。


繰り返される、キス。

絡む、舌。


俺は、そのままそっと目をつむる。


その後は…

変態のやることなんざ、俺が言わなくてもわかるだろ…?





(楽しいゲームをやる相手は俺だけかな、

俺が思うは、貴方一人)

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百万回の愛してるを君に