4章
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『宮沢さん、お話があるんです。相良先生のことで。
今度お時間ありませんか?』
夏目くんから、そんなメールを貰ったのは相良先生の家飛び出し事件から数日がたった日のことだった。
先生が外へ出た次の日。
僕は先生の好意で、また先生の担当に戻してもらった。
酒井くんはまた別の作家さんにつくことになったんだけど、僕が他の先生につかまった時、相良先生の原稿を取りに行かなくてはならないときなどピンチヒッターとして先生のアシスタントをしてくれることになった。
酒井くんの態度はあの日から変化し、少しだけ気を許してくれるようになった。
この間などはお昼の時間が重なって、会社近くの定食屋でお昼を一緒にとったくらいである。
『あなたって変な人ですね…。普通、あんな嫌味ふっかけてきた後輩なんかを、お昼誘ったりしないと思いますけど。プライドないんですか?』
『迷惑だったかな?』
『別に。変な人だな…って思っただけです。宮沢さんって、あまり人見知りしないほうなんですか?』
『そんなこともないとおもうんだけど…』
そんな風に声をかけた時はツンツンしていたけれど、次第に普通に会話してくれるようになり、相良先生のことや夏目くんのことも話してくれるようになった。
酒井くんは、夏目くんの大学のサークルの後輩らしい。
ちなみに、酒井くんと夏目くんが入っていたのは小説研究会と、ミステリーサークルの2サークルを掛け持ちしていたようだ。
酒井くんの話によると、夏目くんは大学時代から新人だった相良先生の作品が好きだったらしく、先生の作品が載った雑誌が出ていれば必ず購入するくらいのファンだったらしい。
なんでも、初恋の人に凄く考えが似ているらしく、相良先生の作品を読んでいるとその人のことを思い出すんだそうだ。
『初恋の人…』
『先輩ってああ見えてロマンチストですからねぇ。
もう何年も会ってない初恋の人のこと、ずっと気にかけているみたいですよ。大学時代に彼女はいましたけど、すぐに別れてましたしね…。告白するのはいつも相手で振られるのはいつも先輩だって笑ってましたが。
この会社に入るときだって、文芸の仕事に携わっていたら憧れの相良先生のサポートができるかもしれないって言っていたくらいですし…』
『先生のサポート…』
『でも、この会社に入ってから先輩、あまり相良先生の話しなくなって…代わりに貴方の話しばかりしてましたよ』
『僕の…?』
『はい。宮沢さんと今日一緒に帰ったとか、宮沢さんとどうすれば接点もてるんだろうとか…』
夏目くんが僕を気にしてくれていた?
それって、僕が相良先生の担当だから?
それとも、僕自身のことを気にかけて?
『じゃあ、おまじない、かけましょうか…ー』
あの時の、キスの意味は…ーーー。
あれ以来、夏目くんとメールのやり取りはあるものの、あのとき何故僕にキスをしたのか聞いていない。
あのキスに意味があったのか。
夏目くんは僕をどう思っているのか…ーーー。
『宮沢さん、大事な話があるのでこれから会えませんか?
場所は…ーーー』
其のメールが着たのは、相良先生のことで話があるので、今度お暇な時に時間をくださいとメールが着た3日後のことだった。
急な呼び出しに、驚きつつも仕事を片付けて呼び出し場所へ急ぐ。
呼び出されたのは、会社近くの高級イタリアレストランだった。
入り口でキョロキョロと夏目くんを探していると、ウエイターの方が近づいてきて「宮沢様でしょうか?お連れの夏目様がお待ちです。お席までご案内します」と席まで案内してくれる。
「こちらになります」
「え…、あの…」
「御用がありましたら、ベルでお知らせください。では…」
戸惑う僕を置いて、ウエイターは席を離れてしまう。
ウエイターさん、間違って案内してるんじゃないだろうか。
案内された席には僕を待っているはずの夏目くんの姿はなく、代わりにいたのは、夏目くんに似ている顔立ちの男の人…。
顔のパーツ1つ1つがに通っている。
「ああ、ごめん。急に呼び出して。とりあえず座ってください。えーっと、あんたが宮沢さんなんですよね」
「そうです…けど…。貴方は…」
「俺は、相模獅童《さがらそうじ》。夏目漱次くんの従兄弟」
従兄弟…って、夏目くんが言っていたあの…。
従兄弟さんは席をついた僕をジロジロと見ていた。