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「助けて…助けて、誰か、助けて!!!」
「こいつ…」
叫んだ僕に、ストーカー男が慌てて先生から僕へ標的を変える。
男は押し倒した先生の身体から離れ、僕に近寄ると、何度も僕を殴り続けた。
「夏目くん…!夏目くん…!夏目くん…!!!」
「ここか…!」
まるで、僕の祈りが通じたかのように、部屋になだれ込んだ人。
1人は夏目くんで、もう1人は夏目くんの従兄弟さんだった。
「宮沢さん…」
僕の顔を見るなり、一瞬夏目くんは顔を顰めた。
今の僕といえば、顔はタコ殴りにされて見るも無残な顔をしているだろう。そんな顔を見られたくなくて俯いていると、ドカドカっと何かが吹っ飛ぶ音がした。
「「覚悟はできてるんだろうな…」」
低い2つの重低音。
その声を聞きながら、助けにきた安堵からか僕の意識はそこで途切れた。
何分くらい気を失っていただろうか。
僕が目を醒ました時には、ストーカー男はロープで縛られてぐったりとしていた。
そして…ーー
「どうして…君が…」
「智…っ」
上半身裸の先生の身体に毛布をかけて、その毛布ごと先生を抱きしめる夏目くんの従兄弟さん。
先生はされるがまま、大人しく抱きしめられている。
あれ…でも、先生は対人恐怖症で…男の人に触れられるのが駄目だったはず…。震えてしまうって言っていたのに。
「ったく、俺が言えたことじゃないですけど、頭に血が上り過ぎです…って、仕方ないか、久しぶりの再会ですもんね」
「夏目くん…?あの、どうして、ここが…」
「あの人のお陰ですよ。今先生を抱きしめている馬鹿な男の…」
「あの、なんでいとこさんが…」
「そりゃ、相良先生の恋人だからですよ。ああ、元恋人ですけど…。
獅童兄さん、盛り上がっているところ、悪いけど、俺もう帰るから。
あんたのせいで、俺すっごい誤解されたし、危険な目にも合わせちゃったし、ほんといい迷惑だよ。これは貸しだからな…
あとのことくらい任せてもいいよな?」
夏目くんはそういうと、従兄弟さんの返事も聞かずに、混乱している僕を連れてその場をあとにした。
僕が逃げないよう、ぎゅっと手を握りしめたまま。
*