愛しているに代わりがあればいいのに


 好きだ、とか愛してるだとか、そんなことを言ってやりたくないわけじゃない。会うは別れの始めだが、いなくなる日ばかりを指折り数えているわけじゃあない。
 己が覚悟をすれば良い話だった、実に情けないことに百年余りも生きれば必要なことも指からこぼれ落ちていく。素直になればいいものを、言葉を惜しんで伝わるものだと思い込む。残念なことに相手は人間なので、その上あのニルなので、己の気持ちを推し量るのはあまりにも下手で、あまりにも不器用だった。いっそ甲斐甲斐しいくらいに己に好かれているとわかっているような物分かりの顔をして横でうつらうつらと目を閉じる彼女の横顔をじっと見る。眼鏡を外すと、輪郭が曖昧に溶け出した。

「お前のこと、好きだよ、ずっと」

 ふ、と笑って、その情けない寝顔の前髪を払ってやる。顔を寄せて、甘い髪の匂いに鼻をすんとさせる。女の長い睫毛がくるりと上を向いた。

「えっ、待ってロウさん今なんて言いましたか!?」
「あーうるせえ、寝てろ寝てろ!」