「ぜったい、ぜったい、やさしくしてくださいねっ」
殆ど震えた声でそう言って、ぎゅっと目を閉じる。真剣な瞳でこちらを見る睫毛の隙間を横目で仰ぎ見ながら口を引き結んでいると、冷えた指の腹が耳朶に触れた。厚みを確かめるようにして数度皮膚の上を擦る。ほしょほしょと湿った息がこめかみをくすぐった。
「ニルってちょっと福耳?」
「えっ、わ、かんないですよう……」
消毒液を含んだ布がひやりと貼り付いて思わず肩が跳ねた。心臓がぎゅっと縮こまりながら足の指先を丸める。足の裏のざわざわとした焦燥に必死に耐え忍んでいると、針先が耳朶の上を滑る。ロウさんの少しささくれた指先が私の髪先をさらう。すっと髪を持ち上げて、伏せた目元が緩く笑っている。
「緊張してんの?」
低く掠れた声が、鼓膜を揺らす。
「そりゃあもう、口から色々出そうです」
「かわいそ、手とか握っててくれていいよ」
そういう両手は私の左耳に添えられていて、握るところなんかどこにもない。ピアッサーの位置を何度も確かめる指先に目を這わせて、切り揃えられた爪の先を見ていた。息吸って、と彼が言った。薄い唇がやわく名前を呼ぶ。ひゅ、と吸い込んだ冷たい息が肺をめぐって締め付けた。ばちん、と金属の跳ねる音がして、身体が跳ねないように忍ぶ私の頬を、広い手がくるりと包み込む。
「うい、お疲れ、開いたよ」
「ひえ……」
「すげえ顔してんな、次右ね」
手慣れた手つきでくるくると私の耳にピアスを嵌めていくその指に、思わずたまらなくなって腕に触れた。なに?と傾げた首筋の隙間に額をぶつける。骨ばった手のひらが、ぐしゃぐしゃと髪を撫でた。
「おんなじのつけてやるから、右も」
「はい……」
「好きやろ、お揃いとか、お前」
ね、と言ってロウさんが目を細めた。その長い睫毛の揺れる瞳の間に、いっそわずらわしいほど憧れていた。