覆っていた暗闇が晴れていき、見知った景色が目に入る。莉緒はセントラル広場の上空に飛ばされていることに気付いた。
落下して行く体の向きを整え着地し、周りを見渡す。そこには相澤が相手をしていた敵 の残党と莉緒を飛ばした黒い靄、そのそばには顔や体に複数の手を纏う男。そして脳がむき出しで筋肉質の黒い敵 と、それに押しつぶされている人影――。
「……相澤先生!?」
人影の正体に気付き駆け付けるその視線の先では、手を纏う男が蛙吹の顔に触れようとしていた。
「先生と梅雨ちゃんから離れて! カグヤ、輝矢!」
空から光り輝く長剣のような矢が幾つも降り注ぎ、敵を射抜く。黒い敵 の動きは抑制したが倒すまでには至らず相澤を連れ出せなかった。しかも、もう一人には攻撃を避けられてしまう。
それでも蛙吹から敵 を引き離すことに成功し、莉緒は庇うように前に躍り出た。
「おいおい、何連れてきてるんだよ」
「一人逃がしてしまった状況を作った生徒です。面白い“個性”だったので連れてきました」
「面白い“個性”?」
「はい。会話からして他人を強化する“個性”のようでした。以前、補助系の“個性”が欲しいと言っていたでしょう? しかし、今の攻撃……他のも使えるようですね」
「へ〜」
敵 同士で会話をしているが、その内容は莉緒には届いていない。
「梅雨ちゃん大丈夫!? 緑谷くんと峰田くんも!」
「私たちは大丈夫だけど相澤先生が……莉緒ちゃんはどうしてここに?」
「黒い靄に飛ばされたみたい」
緑谷が指を負傷しているが、それ以外の怪我はなく莉緒は安堵の息を吐く。
「私が隙を作って相澤先生を助けるから、三人は先生を連れて逃げて」
「え、望月さん!?」
莉緒はカグヤの攻撃で動けなくなっている黒い敵 に刀を振るい、相澤から引き剥がそうとする。あまりの重量感に腕から悲鳴が上がるなか、やっとの思いで退かすと相澤を抱えてスキルを放った。
「メギドラオン!」
光の柱が地面に降り注ぎドーム型を作りながら大爆発を起こす。激しい地響きとともに地面が抉れる。
小柄な莉緒では相澤を担ぎきれず、見かねた緑谷が手を貸し蛙吹たちの元へ連れて行った。
「先生! 相澤先生、聞こえますか!?」
「……意識がないみたいね」
「腕が……」
莉緒が声を掛けるが返事はない。
相澤の両腕は折られ、肘は崩れていた。莉緒は首に巻いていたスカーフを取ると刀の鞘を副木代わりにして縛った。
「相澤先生、お願いしていい? 頭打っているみたいだから、あまり動かさないように慎重にね」
「わかったわ。莉緒ちゃんはどうするの?」
「誰かが殿をしないと逃げられない」
「でも、望月さん一人じゃ!」
「飯田くんが先生たちを呼びに行ってる。私は時間稼ぎをするだけだから」
「おい! 望月、後ろ!!」
峰田の言葉に急いで後ろを振り返ると、黒い敵 が腕を振り上げながら勢いよく向かってきていた。
莉緒は動かず、その拳を睨みつける。
パキィィンと高い音が響いた。
「皆は戦闘訓練で知ってるよね。今の私には物理攻撃は効かない! 行って!」
透明の盾が現れ、敵 は攻撃がはね返り倒れて動かなくなった。
あと、二人――そう思いながら残りの敵 を睨みつける。
「何だよ今の。対平和の象徴のために造った改人“脳無”だぞ」
「あの盾、脳無の攻撃を反射したように見えました」
「黒霧、おまえ厄介なやつを連れてきたな。でも、まぁ……いいねぇ」
手を纏う男は黒い靄――黒霧と呼んだ仲間に文句を言いながら、顔の手の隙間からニヤリとした目で莉緒を見る。弓なりに細められた目は何かを渇望しているようで、それと視線が交わった莉緒は身の毛がよだつ恐ろしさを感じた。
恐怖心を拭い去るように奥歯をかみしめ、足を踏み出す。
万能属性攻撃のメギドラオンを目眩ましにして敵 に近づくと、刀を上に投げる。空いた両手で手を纏う男自身の手首と首の根っこを掴んで押し倒し、後頸部に膝で体重をかける。掴んでいた手首を背中に回し関節を極め、落ちてきた刀の柄を握りその刃を首筋に当てた。
「あなたが主犯?」
「……痛いな〜」
「死柄木!?」
「そう、あなた死柄木って名前なのね」
「赤い服を着たのが現れたけど、それが“個性”なのかなぁ。それにしても、すごいなぁ。さすがはヒーローの卵。欲しいなぁ……脳無」
死柄木がそう呟くと、黒い敵 ――脳無が起き上がった。先ほどの反射で自滅したと思っていた莉緒は驚いて脳無を凝視する。
「!?」
脳無が莉緒を殴り、盾に弾かれて倒れる。しかしすぐに起き上がるとまた攻撃、それを何度も繰り返す。
「どうして……」
「効かないのは“ショック吸収”だからさ。君のは反射かな? 良い“個性”だなぁ」
「――ッ!」
脳無に気を取られた隙に死柄木が莉緒の刀を掴み、ぼろぼろと塵のように崩れていった。手を引っ張られ体勢が逆転し、マウントポジションをとられる。
「動き回られると面倒だ……この足、いらないよね?」
莉緒の両手首は死柄木の片手に捕らえられ、彼のもう片方の手が太ももに触れる。かさかさした手の感触が伝わり、5本の指すべてが足に触れた。
「……“個性”が効いていない? イレイザーヘッドはもう潰したはず……」
「……」
莉緒の目だけに見える“BLOCK”という文字。
カグヤは祝福と呪怨を無効にする耐性を持っている。刀を塵にした死柄木の攻撃はとてもじゃないが祝福属性としてはあり得ない。莉緒の身体は死柄木の攻撃を呪怨属性と“認知”していた。
「反射はされていない。俺の攻撃は無効化するのか? まぁ、でも……捕まえられるってことは潰せるってことだろ? 脳無」
「……っ! カグヤ!!」
死柄木は掴んでいた手に力を入れる。莉緒が痛がるのを見ると、ニヤニヤしながら脳無の名前を呼んだ。
カグヤで脳無と死柄木を攻撃するが死柄木を庇った脳無がすべての攻撃を受ける。脳無は一度倒れた後、すぐに立ち上がり莉緒に向かって手を伸ばした。攻撃でなく捕まえるためのその手を避け、迎撃しようと構えるが――
「!?」
「……捕まえた」
黒霧の“個性”によって脳無の手がワープしており、左腕を掴まれてしまった。
「……くっ!」
腕を高く上げられ宙ぶらりんになっている莉緒の目には、感情が籠っていない脳無の顔が映っている。
脳無が力を込めると、左腕にしていた籠手と一緒に莉緒の腕が砕けた。
「――ぁっ!!」
「やっと君の叫び声が聞けたよ。良い声だねぇ」
「カグ、ヤ……ッ!」
「また赤いやつを出すつもりだろう? 残念だね」
ミシミシと骨の音が聞こえる。
ここで敵 を足止めしないと皆が危ない――莉緒は痛みに苦しみながらも策はないかと考えを巡らせる。その思考を邪魔するかのように死柄木が近付いてきたため、莉緒は彼を睨みつけた。
「……君のその目、いいね。絶望を知っている目だ」
「な、にを……っ!?」
余りの激痛に意識が飛びそうになるが、それを呼び戻すかのように緑谷の声が届いた。
「望月さんから、手っ……放せぇ!!」
「緑、谷くん! きちゃ、ダメ!」
緑谷が脳無に攻撃をするも効いていない。脳無は莉緒を掴んでいない方の手で緑谷の腕を掴む。
「輝、矢ッ!」
莉緒の攻撃が脳無に当たるのと同時に、激しい音を立ててUSJの扉が開いた。
「もう大丈夫! 私が来た!」
「オール、マイト先生……」
「……!」
「あ……コンティニューだ」
落下して行く体の向きを整え着地し、周りを見渡す。そこには相澤が相手をしていた
「……相澤先生!?」
人影の正体に気付き駆け付けるその視線の先では、手を纏う男が蛙吹の顔に触れようとしていた。
「先生と梅雨ちゃんから離れて! カグヤ、輝矢!」
空から光り輝く長剣のような矢が幾つも降り注ぎ、敵を射抜く。黒い
それでも蛙吹から
「おいおい、何連れてきてるんだよ」
「一人逃がしてしまった状況を作った生徒です。面白い“個性”だったので連れてきました」
「面白い“個性”?」
「はい。会話からして他人を強化する“個性”のようでした。以前、補助系の“個性”が欲しいと言っていたでしょう? しかし、今の攻撃……他のも使えるようですね」
「へ〜」
「梅雨ちゃん大丈夫!? 緑谷くんと峰田くんも!」
「私たちは大丈夫だけど相澤先生が……莉緒ちゃんはどうしてここに?」
「黒い靄に飛ばされたみたい」
緑谷が指を負傷しているが、それ以外の怪我はなく莉緒は安堵の息を吐く。
「私が隙を作って相澤先生を助けるから、三人は先生を連れて逃げて」
「え、望月さん!?」
莉緒はカグヤの攻撃で動けなくなっている黒い
「メギドラオン!」
光の柱が地面に降り注ぎドーム型を作りながら大爆発を起こす。激しい地響きとともに地面が抉れる。
小柄な莉緒では相澤を担ぎきれず、見かねた緑谷が手を貸し蛙吹たちの元へ連れて行った。
「先生! 相澤先生、聞こえますか!?」
「……意識がないみたいね」
「腕が……」
莉緒が声を掛けるが返事はない。
相澤の両腕は折られ、肘は崩れていた。莉緒は首に巻いていたスカーフを取ると刀の鞘を副木代わりにして縛った。
「相澤先生、お願いしていい? 頭打っているみたいだから、あまり動かさないように慎重にね」
「わかったわ。莉緒ちゃんはどうするの?」
「誰かが殿をしないと逃げられない」
「でも、望月さん一人じゃ!」
「飯田くんが先生たちを呼びに行ってる。私は時間稼ぎをするだけだから」
「おい! 望月、後ろ!!」
峰田の言葉に急いで後ろを振り返ると、黒い
莉緒は動かず、その拳を睨みつける。
パキィィンと高い音が響いた。
「皆は戦闘訓練で知ってるよね。今の私には物理攻撃は効かない! 行って!」
透明の盾が現れ、
あと、二人――そう思いながら残りの
「何だよ今の。対平和の象徴のために造った改人“脳無”だぞ」
「あの盾、脳無の攻撃を反射したように見えました」
「黒霧、おまえ厄介なやつを連れてきたな。でも、まぁ……いいねぇ」
手を纏う男は黒い靄――黒霧と呼んだ仲間に文句を言いながら、顔の手の隙間からニヤリとした目で莉緒を見る。弓なりに細められた目は何かを渇望しているようで、それと視線が交わった莉緒は身の毛がよだつ恐ろしさを感じた。
恐怖心を拭い去るように奥歯をかみしめ、足を踏み出す。
万能属性攻撃のメギドラオンを目眩ましにして
「あなたが主犯?」
「……痛いな〜」
「死柄木!?」
「そう、あなた死柄木って名前なのね」
「赤い服を着たのが現れたけど、それが“個性”なのかなぁ。それにしても、すごいなぁ。さすがはヒーローの卵。欲しいなぁ……脳無」
死柄木がそう呟くと、黒い
「!?」
脳無が莉緒を殴り、盾に弾かれて倒れる。しかしすぐに起き上がるとまた攻撃、それを何度も繰り返す。
「どうして……」
「効かないのは“ショック吸収”だからさ。君のは反射かな? 良い“個性”だなぁ」
「――ッ!」
脳無に気を取られた隙に死柄木が莉緒の刀を掴み、ぼろぼろと塵のように崩れていった。手を引っ張られ体勢が逆転し、マウントポジションをとられる。
「動き回られると面倒だ……この足、いらないよね?」
莉緒の両手首は死柄木の片手に捕らえられ、彼のもう片方の手が太ももに触れる。かさかさした手の感触が伝わり、5本の指すべてが足に触れた。
「……“個性”が効いていない? イレイザーヘッドはもう潰したはず……」
「……」
莉緒の目だけに見える“BLOCK”という文字。
カグヤは祝福と呪怨を無効にする耐性を持っている。刀を塵にした死柄木の攻撃はとてもじゃないが祝福属性としてはあり得ない。莉緒の身体は死柄木の攻撃を呪怨属性と“認知”していた。
「反射はされていない。俺の攻撃は無効化するのか? まぁ、でも……捕まえられるってことは潰せるってことだろ? 脳無」
「……っ! カグヤ!!」
死柄木は掴んでいた手に力を入れる。莉緒が痛がるのを見ると、ニヤニヤしながら脳無の名前を呼んだ。
カグヤで脳無と死柄木を攻撃するが死柄木を庇った脳無がすべての攻撃を受ける。脳無は一度倒れた後、すぐに立ち上がり莉緒に向かって手を伸ばした。攻撃でなく捕まえるためのその手を避け、迎撃しようと構えるが――
「!?」
「……捕まえた」
黒霧の“個性”によって脳無の手がワープしており、左腕を掴まれてしまった。
「……くっ!」
腕を高く上げられ宙ぶらりんになっている莉緒の目には、感情が籠っていない脳無の顔が映っている。
脳無が力を込めると、左腕にしていた籠手と一緒に莉緒の腕が砕けた。
「――ぁっ!!」
「やっと君の叫び声が聞けたよ。良い声だねぇ」
「カグ、ヤ……ッ!」
「また赤いやつを出すつもりだろう? 残念だね」
ミシミシと骨の音が聞こえる。
ここで
「……君のその目、いいね。絶望を知っている目だ」
「な、にを……っ!?」
余りの激痛に意識が飛びそうになるが、それを呼び戻すかのように緑谷の声が届いた。
「望月さんから、手っ……放せぇ!!」
「緑、谷くん! きちゃ、ダメ!」
緑谷が脳無に攻撃をするも効いていない。脳無は莉緒を掴んでいない方の手で緑谷の腕を掴む。
「輝、矢ッ!」
莉緒の攻撃が脳無に当たるのと同時に、激しい音を立ててUSJの扉が開いた。
「もう大丈夫! 私が来た!」
「オール、マイト先生……」
「……!」
「あ……コンティニューだ」