「応援合戦?」
「ええ。峰田さんたちが相澤先生の伝言を教えて下さったんです」
「わかった。でも応援合戦って何するの?」
「何かチアの恰好して盛り上げるんだってさ」
八百万と耳郎から応援合戦の話を聞き、八百万の“個性”で出された衣装に着替える。
髪は芦戸たちによって両サイドが編み込まれたポニーテールとなっていた。莉緒は鏡に映った自分の髪の毛を見て、『器用だな〜』と感心しながらも、相澤の伝言をクラス委員長の飯田ではなく峰田と上鳴が伝える――ということに疑問を抱いていた。
着替え終わると、皆で会場に戻る。
『ん、アリャ? どーしたA組!?』
プレゼントマイクの驚いた声が会場に響き渡った。
学校が呼んだ本場アメリカからのチアリーダーを除けば、チアガールの服を着ているのはA組女子のみ。他のクラスの女子生徒は体操服のままだった。
「峰田さん、上鳴さん! 騙したわね!?」
騙されたことに気付いた八百万は、二人に怒号を浴びせる。
「何故こうも峰田さんの策略にハマってしまうの、私……」
「アホだろアイツら」
「まァ、本戦まで時間空くし張りつめててもシンドイしさ、いいんじゃない!? やったろ!」
「透ちゃん好きね」
がっくりと肩を落とす八百万とは対照的に、ノリノリの葉隠。
「恥ずかしいけど、こういう機会でもないとチアの恰好ってできないし、折角だし透ちゃんみたいに楽しもう?」
「……莉緒さん」
「衣装出してくれてありがとう、百ちゃん」
「……っ、ありがとうございます、莉緒さん!」
落ち込んでいる八百万を慰めると、彼女は嬉しそう頬を緩める。
号令台に立つミッドナイトの元へ皆が集まっているのが見え、元気になった八百万と一緒に向かった。
『さァさァ、皆楽しく競えよレクリエーション! それが終われば最終種目、進出4チームの総勢16名からなるトーナメント形式! 一対一のガチバトルだ!』
「それじゃあ組み合わせ決めのくじ引きしちゃうわよ。組が決まったらレクリエーションを挟んで開始になります。んじゃ1位チームから順に――」
「あの! すみません」
ミッドナイトの言葉を遮ったのは尾白だ。彼の表情は曇っているように見える。
「俺、辞退します」
「「「!!」」」
「尾白くん! 何で……!?」
「せっかくプロに見てもらえる場なのに!」
A組の生徒たちが驚いたように尾白の方を振り返る。
「騎馬戦の記憶……終盤ギリギリまで、ほぼボンヤリとしかないんだ。チャンスの場だってのはわかってる。それをフイにするなんて愚かな事だってのも! でもさ、皆が力を出し合い争ってきた座なんだ。こんな、こんなわけわかんないままそこに並ぶなんて……俺は出来ない」
「気にしすぎだよ! 本戦でちゃんと成果を出せばいいんだよ!」
「そんなん言ったら私だって全然だよ!?」
葉隠や芦戸が止めようとするが、尾白の意志は変わらないようだ。
「尾白くん、私……」
「望月さんはダメだ。君はちゃんと戦ってきたんだから残るべきだ!」
「でも……」
「俺のプライドの話さ、俺が嫌なんだ。あと何で君らチアの恰好してるんだ。特に望月さん、可愛すぎだろ……!」
「僕も同様の理由から辞退したい! 実力如何以前に、何もしていない者が上がるのはこの体育祭の趣旨と相反するのではないだろうか!」
莉緒や尾白と同じチームだったB組の庄田も辞退を申し出る。
「そういう青臭い話はさァ……好み! 庄田、尾白の棄権を認めます!」
「尾白くん……」
「いいんだ、望月さんは俺の分まで頑張ってくれよ!」
「……うん」
尾白と庄田の二名が棄権し、本戦出場人数が減ったため繰り上がりのチームを出すことになった。
本来であれば5位の拳藤チームだったが、拳藤たち本人の希望により、最後まで上位をキープしていた鉄哲チームの二名が出場する。
「というわけで、鉄哲と塩崎が繰り上がって16名! 組はこうなりました!」
初戦は緑谷と心操、そして二戦目が轟と莉緒の対戦となった。
『よーし、それじゃあトーナメントはひとまず置いといてイッツ束の間。楽しく遊ぶぞレクリエーション!』
本戦に出場するメンバーでレクリエーションに参加したのはほんの一握りだった。
神経を研ぎ澄ます者、緊張を解きほぐそうとする者。
莉緒はレクリエーションには参加せず、A組の女子たちと一緒にチア姿で応援し気を紛らわした。
「私、二戦目だから控え室行ってくるね」
「莉緒、轟と戦うんでしょ? ヤバイじゃん」
「今日の轟、キレッキレだよね!」
「確かに、何かいつも以上の気迫やね」
トーナメント戦が始まるため、莉緒は移動を始めようとした。そんな莉緒に耳郎と芦戸、麗日が声をかける。
「莉緒ちゃんなら大丈夫だよ! 戦闘訓練の時に轟くんをボッコボコにしてたから!」
「あの時は結構、避けられたり防がれたりしてたんだよね。武器があったから何とかなってたけど、轟くんは対応も早いし今回は武器も使えないし……うーん」
葉隠はああ言ってくれたが、轟の対応が早く後手に回らないため先手で仕掛けたのが功を奏しただけだ。
「莉緒さんなら大丈夫ですわ」
「莉緒ちゃん、応援してるわ」
八百万と蛙吹の激励を受け、莉緒は轟対策に頭を悩ませながらも控え室へと向かった。
『ヘイガイズ、アァユゥレディ!? 色々やってきましたが、結局これだぜガチンコ勝負! 頼れるのは己のみ! ヒーローでなくともそんな場面ばっかりだ、わかるよな! 心・技・体に知恵知識! 総動員して駆け上がれ!』
最終種目のトーナメント戦では相手を場外に落とすか行動不能にする、もしくは「まいった」と言わせれば勝ちとなる。
最初の対決は緑谷と心操。
本来なら控え室で待機するのだが、二人の戦いが気になった莉緒はステージへと向かう通路で観戦することにした。
試合開始早々、心操の挑発に乗って洗脳された緑谷。心操の指示で場外まで歩いて行くが、線の手前で指を暴発させて洗脳を解いた。
再び洗脳させようと挑発を続ける心操と、何も答えない緑谷。掴み合いの試合になり、最後は緑谷が心操を背負い投げして場外へ。緑谷の勝ちとなった。
「心操くん……」
莉緒はどちらかを応援していたわけではない。心操のことを知らなければ緑谷を応援していたが、知ったからには片方だけを応援することはできなかった。
先ほど心操に対して言い過ぎてしまった罪悪感からか、言いようのない感情が浮かんでくる。ステージから去っていく心操の背中を見つめた。
『お待たせしました! 続きましては〜、こいつらだ!』
莉緒は深呼吸をして気持ちを入れ替えると、ステージへと足を進める。
『2位・1位と強すぎるよ君! ヒーロー科、轟焦凍!対 、第一種目では身体能力の高さを見せつけ4位! 同じくヒーロー科、望月莉緒! 俺はもちろん望月推しだ!』
プレゼントマイクの言葉に気恥ずかしさを覚えながらも、莉緒は轟を見据えた。
「まさかこんなに早く轟くんと再戦するなんてね。戦闘訓練の時は負けたけど、今度は勝つから」
「あれはおまえの勝ちだっただろ。でも、俺も負けるつもりはねえ」
『スタート!!』
「ええ。峰田さんたちが相澤先生の伝言を教えて下さったんです」
「わかった。でも応援合戦って何するの?」
「何かチアの恰好して盛り上げるんだってさ」
八百万と耳郎から応援合戦の話を聞き、八百万の“個性”で出された衣装に着替える。
髪は芦戸たちによって両サイドが編み込まれたポニーテールとなっていた。莉緒は鏡に映った自分の髪の毛を見て、『器用だな〜』と感心しながらも、相澤の伝言をクラス委員長の飯田ではなく峰田と上鳴が伝える――ということに疑問を抱いていた。
着替え終わると、皆で会場に戻る。
『ん、アリャ? どーしたA組!?』
プレゼントマイクの驚いた声が会場に響き渡った。
学校が呼んだ本場アメリカからのチアリーダーを除けば、チアガールの服を着ているのはA組女子のみ。他のクラスの女子生徒は体操服のままだった。
「峰田さん、上鳴さん! 騙したわね!?」
騙されたことに気付いた八百万は、二人に怒号を浴びせる。
「何故こうも峰田さんの策略にハマってしまうの、私……」
「アホだろアイツら」
「まァ、本戦まで時間空くし張りつめててもシンドイしさ、いいんじゃない!? やったろ!」
「透ちゃん好きね」
がっくりと肩を落とす八百万とは対照的に、ノリノリの葉隠。
「恥ずかしいけど、こういう機会でもないとチアの恰好ってできないし、折角だし透ちゃんみたいに楽しもう?」
「……莉緒さん」
「衣装出してくれてありがとう、百ちゃん」
「……っ、ありがとうございます、莉緒さん!」
落ち込んでいる八百万を慰めると、彼女は嬉しそう頬を緩める。
号令台に立つミッドナイトの元へ皆が集まっているのが見え、元気になった八百万と一緒に向かった。
『さァさァ、皆楽しく競えよレクリエーション! それが終われば最終種目、進出4チームの総勢16名からなるトーナメント形式! 一対一のガチバトルだ!』
「それじゃあ組み合わせ決めのくじ引きしちゃうわよ。組が決まったらレクリエーションを挟んで開始になります。んじゃ1位チームから順に――」
「あの! すみません」
ミッドナイトの言葉を遮ったのは尾白だ。彼の表情は曇っているように見える。
「俺、辞退します」
「「「!!」」」
「尾白くん! 何で……!?」
「せっかくプロに見てもらえる場なのに!」
A組の生徒たちが驚いたように尾白の方を振り返る。
「騎馬戦の記憶……終盤ギリギリまで、ほぼボンヤリとしかないんだ。チャンスの場だってのはわかってる。それをフイにするなんて愚かな事だってのも! でもさ、皆が力を出し合い争ってきた座なんだ。こんな、こんなわけわかんないままそこに並ぶなんて……俺は出来ない」
「気にしすぎだよ! 本戦でちゃんと成果を出せばいいんだよ!」
「そんなん言ったら私だって全然だよ!?」
葉隠や芦戸が止めようとするが、尾白の意志は変わらないようだ。
「尾白くん、私……」
「望月さんはダメだ。君はちゃんと戦ってきたんだから残るべきだ!」
「でも……」
「俺のプライドの話さ、俺が嫌なんだ。あと何で君らチアの恰好してるんだ。特に望月さん、可愛すぎだろ……!」
「僕も同様の理由から辞退したい! 実力如何以前に、何もしていない者が上がるのはこの体育祭の趣旨と相反するのではないだろうか!」
莉緒や尾白と同じチームだったB組の庄田も辞退を申し出る。
「そういう青臭い話はさァ……好み! 庄田、尾白の棄権を認めます!」
「尾白くん……」
「いいんだ、望月さんは俺の分まで頑張ってくれよ!」
「……うん」
尾白と庄田の二名が棄権し、本戦出場人数が減ったため繰り上がりのチームを出すことになった。
本来であれば5位の拳藤チームだったが、拳藤たち本人の希望により、最後まで上位をキープしていた鉄哲チームの二名が出場する。
「というわけで、鉄哲と塩崎が繰り上がって16名! 組はこうなりました!」
初戦は緑谷と心操、そして二戦目が轟と莉緒の対戦となった。
『よーし、それじゃあトーナメントはひとまず置いといてイッツ束の間。楽しく遊ぶぞレクリエーション!』
本戦に出場するメンバーでレクリエーションに参加したのはほんの一握りだった。
神経を研ぎ澄ます者、緊張を解きほぐそうとする者。
莉緒はレクリエーションには参加せず、A組の女子たちと一緒にチア姿で応援し気を紛らわした。
「私、二戦目だから控え室行ってくるね」
「莉緒、轟と戦うんでしょ? ヤバイじゃん」
「今日の轟、キレッキレだよね!」
「確かに、何かいつも以上の気迫やね」
トーナメント戦が始まるため、莉緒は移動を始めようとした。そんな莉緒に耳郎と芦戸、麗日が声をかける。
「莉緒ちゃんなら大丈夫だよ! 戦闘訓練の時に轟くんをボッコボコにしてたから!」
「あの時は結構、避けられたり防がれたりしてたんだよね。武器があったから何とかなってたけど、轟くんは対応も早いし今回は武器も使えないし……うーん」
葉隠はああ言ってくれたが、轟の対応が早く後手に回らないため先手で仕掛けたのが功を奏しただけだ。
「莉緒さんなら大丈夫ですわ」
「莉緒ちゃん、応援してるわ」
八百万と蛙吹の激励を受け、莉緒は轟対策に頭を悩ませながらも控え室へと向かった。
『ヘイガイズ、アァユゥレディ!? 色々やってきましたが、結局これだぜガチンコ勝負! 頼れるのは己のみ! ヒーローでなくともそんな場面ばっかりだ、わかるよな! 心・技・体に知恵知識! 総動員して駆け上がれ!』
最終種目のトーナメント戦では相手を場外に落とすか行動不能にする、もしくは「まいった」と言わせれば勝ちとなる。
最初の対決は緑谷と心操。
本来なら控え室で待機するのだが、二人の戦いが気になった莉緒はステージへと向かう通路で観戦することにした。
試合開始早々、心操の挑発に乗って洗脳された緑谷。心操の指示で場外まで歩いて行くが、線の手前で指を暴発させて洗脳を解いた。
再び洗脳させようと挑発を続ける心操と、何も答えない緑谷。掴み合いの試合になり、最後は緑谷が心操を背負い投げして場外へ。緑谷の勝ちとなった。
「心操くん……」
莉緒はどちらかを応援していたわけではない。心操のことを知らなければ緑谷を応援していたが、知ったからには片方だけを応援することはできなかった。
先ほど心操に対して言い過ぎてしまった罪悪感からか、言いようのない感情が浮かんでくる。ステージから去っていく心操の背中を見つめた。
『お待たせしました! 続きましては〜、こいつらだ!』
莉緒は深呼吸をして気持ちを入れ替えると、ステージへと足を進める。
『2位・1位と強すぎるよ君! ヒーロー科、轟焦凍!
プレゼントマイクの言葉に気恥ずかしさを覚えながらも、莉緒は轟を見据えた。
「まさかこんなに早く轟くんと再戦するなんてね。戦闘訓練の時は負けたけど、今度は勝つから」
「あれはおまえの勝ちだっただろ。でも、俺も負けるつもりはねえ」
『スタート!!』