「最下位除籍って……! 入学初日ですよ!? いや、初日じゃなくても理不尽すぎる!」
「自然災害、大事故、身勝手な敵 たち。日本は理不尽にまみれてる。そういう理不尽を覆していくのがヒーロー。これから三年間、雄英は全力で君たちに苦難を与え続ける。“Plus Ultra ”さ。全力で乗り越えて来い」
――理不尽。
莉緒は両親のことを思い浮かべていた。
奪われた家族の時間、取り戻したい両親の笑顔。
ここで立ち止まっている暇はない――莉緒は身を引き締めると、他の生徒が集まっている場所に足を進めた。
第1種目、50m走。
眼鏡をかけた真面目そうな男子生徒――飯田天哉が凄いスピードで駆け抜けた。足についた“個性”であるエンジンが音を立てている。
3秒04と告げられた記録に驚きながら、莉緒はそのまま観察するように他の生徒を見る。
しばらくすると順番が回ってきた。
莉緒が“個性”であるペルソナをトランぺッターに付け替えると、青い光が体を包み込み背後にペルソナが現れた。スキルであるヒートライザを唱え、足元が赤・青・緑に光り輝く。
隣にいた生徒が驚きで目を見張らせていたようだが、莉緒は気にせずにトランぺッターをカグヤへ戻しスタートの掛け声に合わせて走った。
「望月莉緒、4秒36!」
「ちょ、ちょっと莉緒! 今の何!?」
「莉緒ちゃんの背後に羽を持った骸骨がいたよ!? しかも光ってた、めっちゃ怖かった!」
「一瞬だったけど赤い服の女の人みたいなのも見えたよね!?」
莉緒が飯田の記録に勝てなかったことを残念に思っていると、恐怖に満ちた顔の耳郎と驚きの声を上げる葉隠が詰め寄ってきた。
「あれが私の“個性”、ペルソナだよ」
「え、あの骸骨が? お化けじゃん、ホラーじゃん!」
「一応あれは天使なんだけどね。トランぺッターっていって、私の回避率……というか素早さとかを上げてもらう補助スキルを使ったの」
「骸骨の天使!?」
「骸骨が“個性”って莉緒ちゃん変わってるね!」
目を丸くしている二人――葉隠は見えないため想像だが、その様子に莉緒は笑い声を漏らす。そして、「骸骨だけが“個性”じゃないんだけどね」と続けた。
「あ! そっか、あの赤いやつも?」
「そうそう、あれはカグヤっていうの。私は“個性”であるペルソナによって身体ステータスが変化するんだけど、カグヤは一番“速”のステータスが高いんだ」
莉緒の“個性”に興奮したのか他にも色々と聞こうとしていた二人だったが、次の競技を行うために渋々離れていった。
第2種目、握力。
“力”のステータスが高いペルソナの使用とヒートライザの相乗効果で攻撃力が上がっているはずだが、元々筋力のない莉緒は“個性”を使用していない女子平均よりもやや優れた程度の数字しか出せなかった。
その後、立ち幅跳び・反復横跳びは良い成績を残した。ソフトボール投げは残念な結果だったが、莉緒とは対照に最高成績である∞ を出した女子生徒がいた。
「麗日さん、だよね? ソフトボール投げ見たよー。∞ なんてすごいね!」
「いや〜、私の“個性”無重力やし、良い結果出てよかったよ!」
「恰好良かったよ! あ、私は望月莉緒。お茶子ちゃんって呼んでもいいかな?」
「ありがとう。ぜひ名前で呼んで! 私も莉緒ちゃんって呼ぶね!」
麗日と仲良くなった莉緒はそのまま一緒に他の生徒のソフトボール投げを見ることにした。
次は緑谷という男子生徒の番だったが、彼は焦燥感に駆られたような表情でサークルの中に入っていく。飯田や爆豪など周囲の話によると、どうやら今まで行った全ての種目において良い結果を残せてないらしい。
緑谷の右腕に光が走り、大きく振りかぶって投げる。
「46m」
放物線を描いたボールはすぐに落ちた。
腕に灯った“個性”の勢いとは裏腹に、緑谷の記録は伸びなかった。結果を伝える相澤の声が淡々と響く。
「な……今、確かに使おうって……」
「“個性”を消した。つくづくあの入試は合理性に欠くよ。おまえのような奴も入学出来てしまう」
「消した!? あのゴーグル……そうか、視ただけで人の“個性”を抹消する“個性”、抹消ヒーロー、イレイザー・ヘッド!」
担任である相澤のヒーロー名にざわつきが広がる。イレイザー・ヘッドのことを知らない生徒が多く、莉緒も初めて知った名前だった。
相澤は緑谷と話した後、もう一度ボールを渡す。それを受け取った緑谷はブツブツと何かを呟きながらボールを投げた。
大きな叫び声と一緒にボールが空高く飛び、ピピッ……と相澤が持っていた端末に緑谷の記録が表示される。結果は705.3m。
様子を伺っていた生徒から歓声が上がった。莉緒も『すごいなー!』と感心しながら見ていたが、緑谷の人差し指が腫れていることに気付いた。
――“個性”の反動が大きすぎて怪我をするのかな? まるで“個性”が発現したばかりで制御のできない子どもみたい……。
莉緒は緑谷の“個性”に違和感を覚えた。初めてカグヤを出した時、体が負荷に耐えられずに気を失った――あの時の自分みたいで不思議だったのだ。
考え込んでいた莉緒の意識は、爆豪が緑谷に突っかかる声によって引き戻された。
その後、持久走や上体起こし、長座体前屈を行い全種目が終了。
「トータルは単純に各種目の評点を合計した数だ。口頭で説明すんのは時間の無駄なので一括開示する。ちなみに、除籍はウソな」
「「「!?」」」
「君らの最大限を引き出す、合理的虚偽」
「「「はーーーー!?」」」
開いた口が塞がらないとは、まさにこのことだった。
個性把握テスト 5位:望月莉緒
初日が終わり下校していると、校門で麗日と緑谷、飯田に会い駅まで一緒に帰ることになった。
莉緒が緑谷に「爆豪くんとは知り合いなの?」と尋ねると、「実は幼馴染なんだ……」と言うまさかの返答に目を丸くして驚いた。
初日にしてはハードだったが、クラスメイトと仲良くすることができ、莉緒は笑顔で帰路についた。
「自然災害、大事故、身勝手な
――理不尽。
莉緒は両親のことを思い浮かべていた。
奪われた家族の時間、取り戻したい両親の笑顔。
ここで立ち止まっている暇はない――莉緒は身を引き締めると、他の生徒が集まっている場所に足を進めた。
第1種目、50m走。
眼鏡をかけた真面目そうな男子生徒――飯田天哉が凄いスピードで駆け抜けた。足についた“個性”であるエンジンが音を立てている。
3秒04と告げられた記録に驚きながら、莉緒はそのまま観察するように他の生徒を見る。
しばらくすると順番が回ってきた。
莉緒が“個性”であるペルソナをトランぺッターに付け替えると、青い光が体を包み込み背後にペルソナが現れた。スキルであるヒートライザを唱え、足元が赤・青・緑に光り輝く。
隣にいた生徒が驚きで目を見張らせていたようだが、莉緒は気にせずにトランぺッターをカグヤへ戻しスタートの掛け声に合わせて走った。
「望月莉緒、4秒36!」
「ちょ、ちょっと莉緒! 今の何!?」
「莉緒ちゃんの背後に羽を持った骸骨がいたよ!? しかも光ってた、めっちゃ怖かった!」
「一瞬だったけど赤い服の女の人みたいなのも見えたよね!?」
莉緒が飯田の記録に勝てなかったことを残念に思っていると、恐怖に満ちた顔の耳郎と驚きの声を上げる葉隠が詰め寄ってきた。
「あれが私の“個性”、ペルソナだよ」
「え、あの骸骨が? お化けじゃん、ホラーじゃん!」
「一応あれは天使なんだけどね。トランぺッターっていって、私の回避率……というか素早さとかを上げてもらう補助スキルを使ったの」
「骸骨の天使!?」
「骸骨が“個性”って莉緒ちゃん変わってるね!」
目を丸くしている二人――葉隠は見えないため想像だが、その様子に莉緒は笑い声を漏らす。そして、「骸骨だけが“個性”じゃないんだけどね」と続けた。
「あ! そっか、あの赤いやつも?」
「そうそう、あれはカグヤっていうの。私は“個性”であるペルソナによって身体ステータスが変化するんだけど、カグヤは一番“速”のステータスが高いんだ」
莉緒の“個性”に興奮したのか他にも色々と聞こうとしていた二人だったが、次の競技を行うために渋々離れていった。
第2種目、握力。
“力”のステータスが高いペルソナの使用とヒートライザの相乗効果で攻撃力が上がっているはずだが、元々筋力のない莉緒は“個性”を使用していない女子平均よりもやや優れた程度の数字しか出せなかった。
その後、立ち幅跳び・反復横跳びは良い成績を残した。ソフトボール投げは残念な結果だったが、莉緒とは対照に最高成績である
「麗日さん、だよね? ソフトボール投げ見たよー。
「いや〜、私の“個性”無重力やし、良い結果出てよかったよ!」
「恰好良かったよ! あ、私は望月莉緒。お茶子ちゃんって呼んでもいいかな?」
「ありがとう。ぜひ名前で呼んで! 私も莉緒ちゃんって呼ぶね!」
麗日と仲良くなった莉緒はそのまま一緒に他の生徒のソフトボール投げを見ることにした。
次は緑谷という男子生徒の番だったが、彼は焦燥感に駆られたような表情でサークルの中に入っていく。飯田や爆豪など周囲の話によると、どうやら今まで行った全ての種目において良い結果を残せてないらしい。
緑谷の右腕に光が走り、大きく振りかぶって投げる。
「46m」
放物線を描いたボールはすぐに落ちた。
腕に灯った“個性”の勢いとは裏腹に、緑谷の記録は伸びなかった。結果を伝える相澤の声が淡々と響く。
「な……今、確かに使おうって……」
「“個性”を消した。つくづくあの入試は合理性に欠くよ。おまえのような奴も入学出来てしまう」
「消した!? あのゴーグル……そうか、視ただけで人の“個性”を抹消する“個性”、抹消ヒーロー、イレイザー・ヘッド!」
担任である相澤のヒーロー名にざわつきが広がる。イレイザー・ヘッドのことを知らない生徒が多く、莉緒も初めて知った名前だった。
相澤は緑谷と話した後、もう一度ボールを渡す。それを受け取った緑谷はブツブツと何かを呟きながらボールを投げた。
大きな叫び声と一緒にボールが空高く飛び、ピピッ……と相澤が持っていた端末に緑谷の記録が表示される。結果は705.3m。
様子を伺っていた生徒から歓声が上がった。莉緒も『すごいなー!』と感心しながら見ていたが、緑谷の人差し指が腫れていることに気付いた。
――“個性”の反動が大きすぎて怪我をするのかな? まるで“個性”が発現したばかりで制御のできない子どもみたい……。
莉緒は緑谷の“個性”に違和感を覚えた。初めてカグヤを出した時、体が負荷に耐えられずに気を失った――あの時の自分みたいで不思議だったのだ。
考え込んでいた莉緒の意識は、爆豪が緑谷に突っかかる声によって引き戻された。
その後、持久走や上体起こし、長座体前屈を行い全種目が終了。
「トータルは単純に各種目の評点を合計した数だ。口頭で説明すんのは時間の無駄なので一括開示する。ちなみに、除籍はウソな」
「「「!?」」」
「君らの最大限を引き出す、合理的虚偽」
「「「はーーーー!?」」」
開いた口が塞がらないとは、まさにこのことだった。
個性把握テスト 5位:望月莉緒
初日が終わり下校していると、校門で麗日と緑谷、飯田に会い駅まで一緒に帰ることになった。
莉緒が緑谷に「爆豪くんとは知り合いなの?」と尋ねると、「実は幼馴染なんだ……」と言うまさかの返答に目を丸くして驚いた。
初日にしてはハードだったが、クラスメイトと仲良くすることができ、莉緒は笑顔で帰路についた。