《A組B組総員! プロヒーロー、イレイザーヘッドの名に於いて戦闘を許可する!》
マンダレイのテレパスが届いたとき、轟は肝試しでペアだった爆豪と一緒に森の中にいた。
敵 のガスで気絶をしているB組の円場を背負った状態で、黒の拘束着に身を包んだ痩身の敵 と戦っていた。
痩身の敵 は自らの歯を鋭い刃物のように変形させ、伸縮や分岐をしながら攻撃を繰り返す。“個性”と地形をうまく利用しており、轟たちは防戦一方だ。
刃の攻撃を氷結で防ぎながらも、轟の頭の中を占めるのは目の前の敵 ではなく莉緒だった。
彼女の肝試しのペアは緑谷だ。また、肝試し開始からあまり時間が経たないうちに敵 が襲ってきたこともあり、莉緒の一つ前の組だった飯田もいる可能性が高い。職場体験で共に戦った二人が彼女と一緒にいるのなら心強い。そう思っているのに、USJで敵 に攫われそうになっていた姿が脳裏から消えず、轟の中に焦燥感が募る。
《敵 の狙いの一つ判明! 生徒の“かっちゃん”! “かっちゃん”はなるべく戦闘を避けて単独では動かないこと! わかった!? “かっちゃん”!》
「聞こえてたか!? おまえ、狙われてるってよ」
「かっちゃかっちゃ、うるっせんだよ頭ン中でえ……クソデクが何かしたなオイ。戦えっつったり、戦うなっつったりよお、ああ!? クッソどうでもいィんだよ!」
「ここででけえ火使って燃え移りでもすりゃ、火に囲まれて全員死ぬぞ。わかってんな?」
「喋んな。わーっとるわ!」
退避しようにも後方にはガス溜まり。現状は敵 の変幻自在の素早い刃に対し、轟の氷結で対抗をするしか術がない。
《それからもう一つの狙い! 生徒の“望月さん”! “望月さん”は聞こえてたら何でもいいから合図を!》
「望月!?」
「あ!?」
再び頭に響いてきたマンダレイのテレパスは、轟が恐れていたことだった。しかも最悪のタイミングだ。そばにいて守るどころか、防御に徹するのが精一杯で救けに行くことができない。
「くそっ!」
「最大火力でブッ飛ばすしか……」
「だめだ!」
「木ィ燃えてもソッコー氷で覆え!」
「爆発はこっちの視界も塞がれる! 仕留め切れなかったらどうなる!?」
手数も距離も敵 に分がある。
轟が何か手はないか考えを巡らせていると、森の奥から緑谷の声と一緒に木々が破壊されるような音が響き、それはどんどん近づいてきた。押し拉がれる木から逃げるように障子と、彼に担がれている緑谷が姿を現す。
「爆豪、轟! どちらか頼む――光を!」
障子たちの後ろから、なぜか巨大化した黒影 が迫って来ている。
「早く“光”を! 常闇が暴走した!」
制御が効かずに荒ぶる黒影 は、障子たちを見境なく襲う。そして、轟たちが防戦一方になっていた敵 を周辺の木々もろとも数十メートも先になぎ払い、圧倒的な威力で一蹴する。それでもなお暴れたりない黒影 は、轟と爆豪の“個性”によって鎮められた。
「……すまん、助かった」
正気に戻った常闇の話によると、敵 によって障子が傷つけられた瞬間に怒りに任せ黒影 を解き放ってしまったらしい。結果、収容もできないほど闇が増長してしまったそうだ。
そして常闇の話が一段落した後、緑谷から爆豪を施設へ送り届けるための護送計画が告げられた。
「障子くんの索敵能力、そして轟くんの氷結。更に常闇くんさえ良いなら制御手段 を備えた無敵の黒影 ……このメンツなら正直、オールマイトだって恐くないんじゃないかな!」
「……緑谷。その前に、ちょっといいか?」
轟は、今にも出発の合図を出しそうな緑谷を引き留める。どうしても確認しておきたいことがあったのだ。
轟の不安を煽るように木々の隙間から夏風が吹き抜け心を騒がせる。ざわざわと落ち着かない気持ちにさせる風は、以前も感じたことがあった。
体育祭の件で莉緒と仲直りをした病院の中庭。風が莉緒のワンピースのスカートを揺らし、髪をなびかせる。花びらが巻き上がるのを見つめながら笑った彼女の横顔に、轟は目を奪われた。それと同時に、風に連れて行かれてしまいそうな儚さも感じたのだ。
あの時は心地の良い風だったが、今は違う。生ぬるく不快な風に嫌な予感がする。枯れ葉が風で巻き上げられる様子を見ながら、轟が口を開く。
「――望月は、無事なのか?」
問いかけられた緑谷は、言葉に詰まっている。
「俺も気になっていた。『聞こえてたら合図を』とは、どういう意味なんだ?」
「その……僕も詳しくは知らないんだけど、相澤先生によると望月さんは今、行方不明なんだ」
その言葉に轟の思考が止まる。そして言葉の意味を理解すると顔が青ざめた。
更に緑谷が続けた話では、莉緒は飯田たちと避難している途中で消息がわからなくなったらしい。
「今から通るルートは、望月さんが居なくなった場所の近くなんだ。だから戦闘の痕跡を探しながら進もう。ペルソナなら森が暗くても見つけやすいと思うし、何より望月さんは皆が知ってる通り強いから。だから大丈夫だと思うんだ!」
呆然としている轟に、緑谷が必死に前向きな言葉をかける。緑谷自身も、そうであって欲しいと言い聞かせているようだ。
轟は「……そうだよな」と同意の言葉を何とか発するが、不安な思いは消えない。
「ああ? 俺は弱ぇから心配だっつってんのか?」
「え、いや違うよ!? かっちゃんは森だと“個性”が使えないけど、望月さんは色んなペルソナを使い分けできるからで……!」
轟は二人のやり取りを背中越しに聞きながら、気が急く思いを抱いたまま施設へ向かうために森の中を進む。
その途中、木々を掻き分けた先の通路に麗日と蛙吹がいた。女の敵 と対峙していたようだが、轟たちの姿を見ると逃げていった。
「二人とも無事でよかった! 僕ら今、かっちゃんの護衛をしつつ施設に向かってるんだ。一緒に来て!」
「…………ん?」
「――その爆豪ちゃんはどこにいるの?」
何をおかしなことを――轟はそう思った。おそらく緑谷たちも同じ気持ちだったはずだ。
轟が確認のために後ろを振り返ると、そこには誰もいなかった。この非常時、油断する人間なんて誰もいないはずなのに爆豪と常闇の姿が消えている。
「彼なら、俺のマジックで貰っちゃったよ。こいつぁ、ヒーロー側にいるべき人材じゃねえ。もっと輝ける舞台へ俺たちが連れてくよ」
突然聞こえてきた声。それに驚きながら聞こえてきた方を見ると、敵 が木の上に立っていた。
シルクハットに白の仮面、丈の長いトレンチコートを着ている敵 はビー玉のようなものを二つ持っている。どのような“個性”かわからないが、どうやらビー玉 が爆豪と常闇だそうだ。
轟は背負っていた円場を麗日に預け、体育祭で見せた大氷壁を繰り出す。しかし簡単に躱されてしまった。
「悪いね。俺ァ、逃げ足と欺くことだけが取り柄でよ。ヒーロー候補生なんかと戦ってたまるか。開闢行動隊、 目標回収達成だ! これにて幕引き!」
そう言って、仮面の敵 は燃え盛る森の方へと逃げていった。
「させねえ! 絶対逃がすな!」
敵 は『目標回収達成』と言っていた。マンダレイのテレパスで聞いた目的は爆豪だけではない。轟の背中に冷や汗が流れる。
轟たちは必死で敵 を追いかけるが、逃げ足が速く距離が開く一方だ。
「諦めちゃ……ダメだ! 追いついて取り返さなきゃ! 麗日さん、僕らを浮かして! 早く!」
緑谷が両腕の痛みに耐えながら作戦を伝える。
麗日が緑谷たちを浮かした後、蛙吹の舌で思いきり投げる。障子は腕で軌道を修正しながらけん引し、麗日は仮面の敵 との距離が近付いたら“個性”を解除する。いわゆる人間弾だ。
「デクくん、その怪我でまだ動くの!?」
「動けるよ……早くっ!」
緑谷に急かされた麗日が“個性”を使う。蛙吹が緑谷と障子、轟の三人を舌で巻きつけ空に向かって投げた。
思った以上のスピードに障子が驚いたような声を上げながらも、“個性”の複製腕で方向のずれを修正して仮面の敵 を射程に捉える。そして、その勢いのまま敵 を捕まえて地面に着地した。そこには仲間と思われる他の敵 が集まっていた。それに――
「望月!」
継ぎ接ぎの男が莉緒を肩に担いでいる。彼女の意識はなく、ぐったりとしている。
すぐさま救出に向かおうとするが、継ぎ接ぎの男が青い炎を繰り出してきて近づけない。さらにラバースーツの敵 と女の敵 も参戦してきた。
「おまえ、望月に何をした!?」
「あ? こいつのことか? ちょっと眠ってるだけさ」
「違う! 何をして眠らせた!」
「……さぁ? 俺も詳しくは知らないな」
轟が継ぎ接ぎの男を問い詰めるも、飄々とした態度に苛立ちが募る。
轟は知っていた。職場体験のとき、病室で緑谷と莉緒の会話を聞いていたからだ。
――莉緒には、状態異常を即時回復してくれるペルソナがいることを。
「二人とも! 右ポケットに入っていた常闇と爆豪を回収した!」
「障子くん!」
「っし、でかした!」
障子が仮面の敵 からビー玉を奪い返した。これで後は莉緒だけだ。
轟たちがこれを機に畳みかけようとするが、そう簡単にはいかない。黒い靄が揺らめき、ワープの“個性”を持つ黒霧が現れた。しかもそれだけではなく、森の中から脳無も姿を見せる。
「合図から5分経ちました。行きますよ、荼毘」
黒霧が継ぎ接ぎの男――荼毘に声をかけた。
「まて、まだ目標が……」
「ああ、アレはプレゼントしよう。悪い癖だよ、マジックの基本でね。モノを見せびらかす時ってのは……見せたくないモノがある時だぜ?」
仮面の敵 が白い仮面をずらすと、口の中に二つのビー玉があった。轟が大氷壁を仕掛けた際に“ダミー”を用意し、右ポケットに入れておいたそうだ。
「右手に持ってたモンが右ポケットに入ってんの発見したら、そりゃー本物 だと思うさ」
「くそっ! 望月たちを返せ!」
「……へぇ」
轟が荼毘を一心に睨みながら叫ぶと、荼毘が肩に担いでいた莉緒を腕の中に抱き寄せて閉じ込めた。意識のない莉緒の顎を掴み、顔を轟の方に向ける。彼女の閉じられた瞳は開かない。
「……そんなにこいつが大事か?」
「望月に触るな!」
荼毘は不敵な笑みを浮かべながら黒い靄の中に入ろうとする。そのまま敵 たちが撤退しようとしたとき、茂みの中からレーザーが放たれて仮面の敵 の顔に当たった。どうやら近くに青山が隠れていたようだ。
口からこぼれた二つのビー玉を死守するため、轟と障子、緑谷が駆け出す。障子の手は届いたが、轟と怪我の影響で出遅れた緑谷の手は届かなかった。
「哀しいなぁ、轟焦凍」
ビー玉の一つが轟の目の前で荼毘に奪われた。
仮面の敵 の“個性”が解除され、爆豪が姿を現す。
「かっちゃん!」
「来んな、デク」
黒い靄が爆豪も敵 も――そして莉緒も、全てを連れ去っていく。
「望月っ……! 待て! ――莉緒!!」
伸ばされた手は無情にも届かず、生ぬるい風が轟の頬を撫でた。
マンダレイのテレパスが届いたとき、轟は肝試しでペアだった爆豪と一緒に森の中にいた。
痩身の
刃の攻撃を氷結で防ぎながらも、轟の頭の中を占めるのは目の前の
彼女の肝試しのペアは緑谷だ。また、肝試し開始からあまり時間が経たないうちに
《
「聞こえてたか!? おまえ、狙われてるってよ」
「かっちゃかっちゃ、うるっせんだよ頭ン中でえ……クソデクが何かしたなオイ。戦えっつったり、戦うなっつったりよお、ああ!? クッソどうでもいィんだよ!」
「ここででけえ火使って燃え移りでもすりゃ、火に囲まれて全員死ぬぞ。わかってんな?」
「喋んな。わーっとるわ!」
退避しようにも後方にはガス溜まり。現状は
《それからもう一つの狙い! 生徒の“望月さん”! “望月さん”は聞こえてたら何でもいいから合図を!》
「望月!?」
「あ!?」
再び頭に響いてきたマンダレイのテレパスは、轟が恐れていたことだった。しかも最悪のタイミングだ。そばにいて守るどころか、防御に徹するのが精一杯で救けに行くことができない。
「くそっ!」
「最大火力でブッ飛ばすしか……」
「だめだ!」
「木ィ燃えてもソッコー氷で覆え!」
「爆発はこっちの視界も塞がれる! 仕留め切れなかったらどうなる!?」
手数も距離も
轟が何か手はないか考えを巡らせていると、森の奥から緑谷の声と一緒に木々が破壊されるような音が響き、それはどんどん近づいてきた。押し拉がれる木から逃げるように障子と、彼に担がれている緑谷が姿を現す。
「爆豪、轟! どちらか頼む――光を!」
障子たちの後ろから、なぜか巨大化した
「早く“光”を! 常闇が暴走した!」
制御が効かずに荒ぶる
「……すまん、助かった」
正気に戻った常闇の話によると、
そして常闇の話が一段落した後、緑谷から爆豪を施設へ送り届けるための護送計画が告げられた。
「障子くんの索敵能力、そして轟くんの氷結。更に常闇くんさえ良いなら
「……緑谷。その前に、ちょっといいか?」
轟は、今にも出発の合図を出しそうな緑谷を引き留める。どうしても確認しておきたいことがあったのだ。
轟の不安を煽るように木々の隙間から夏風が吹き抜け心を騒がせる。ざわざわと落ち着かない気持ちにさせる風は、以前も感じたことがあった。
体育祭の件で莉緒と仲直りをした病院の中庭。風が莉緒のワンピースのスカートを揺らし、髪をなびかせる。花びらが巻き上がるのを見つめながら笑った彼女の横顔に、轟は目を奪われた。それと同時に、風に連れて行かれてしまいそうな儚さも感じたのだ。
あの時は心地の良い風だったが、今は違う。生ぬるく不快な風に嫌な予感がする。枯れ葉が風で巻き上げられる様子を見ながら、轟が口を開く。
「――望月は、無事なのか?」
問いかけられた緑谷は、言葉に詰まっている。
「俺も気になっていた。『聞こえてたら合図を』とは、どういう意味なんだ?」
「その……僕も詳しくは知らないんだけど、相澤先生によると望月さんは今、行方不明なんだ」
その言葉に轟の思考が止まる。そして言葉の意味を理解すると顔が青ざめた。
更に緑谷が続けた話では、莉緒は飯田たちと避難している途中で消息がわからなくなったらしい。
「今から通るルートは、望月さんが居なくなった場所の近くなんだ。だから戦闘の痕跡を探しながら進もう。ペルソナなら森が暗くても見つけやすいと思うし、何より望月さんは皆が知ってる通り強いから。だから大丈夫だと思うんだ!」
呆然としている轟に、緑谷が必死に前向きな言葉をかける。緑谷自身も、そうであって欲しいと言い聞かせているようだ。
轟は「……そうだよな」と同意の言葉を何とか発するが、不安な思いは消えない。
「ああ? 俺は弱ぇから心配だっつってんのか?」
「え、いや違うよ!? かっちゃんは森だと“個性”が使えないけど、望月さんは色んなペルソナを使い分けできるからで……!」
轟は二人のやり取りを背中越しに聞きながら、気が急く思いを抱いたまま施設へ向かうために森の中を進む。
その途中、木々を掻き分けた先の通路に麗日と蛙吹がいた。女の
「二人とも無事でよかった! 僕ら今、かっちゃんの護衛をしつつ施設に向かってるんだ。一緒に来て!」
「…………ん?」
「――その爆豪ちゃんはどこにいるの?」
何をおかしなことを――轟はそう思った。おそらく緑谷たちも同じ気持ちだったはずだ。
轟が確認のために後ろを振り返ると、そこには誰もいなかった。この非常時、油断する人間なんて誰もいないはずなのに爆豪と常闇の姿が消えている。
「彼なら、俺のマジックで貰っちゃったよ。こいつぁ、ヒーロー側にいるべき人材じゃねえ。もっと輝ける舞台へ俺たちが連れてくよ」
突然聞こえてきた声。それに驚きながら聞こえてきた方を見ると、
シルクハットに白の仮面、丈の長いトレンチコートを着ている
轟は背負っていた円場を麗日に預け、体育祭で見せた大氷壁を繰り出す。しかし簡単に躱されてしまった。
「悪いね。俺ァ、逃げ足と欺くことだけが取り柄でよ。ヒーロー候補生なんかと戦ってたまるか。開闢行動隊、 目標回収達成だ! これにて幕引き!」
そう言って、仮面の
「させねえ! 絶対逃がすな!」
轟たちは必死で
「諦めちゃ……ダメだ! 追いついて取り返さなきゃ! 麗日さん、僕らを浮かして! 早く!」
緑谷が両腕の痛みに耐えながら作戦を伝える。
麗日が緑谷たちを浮かした後、蛙吹の舌で思いきり投げる。障子は腕で軌道を修正しながらけん引し、麗日は仮面の
「デクくん、その怪我でまだ動くの!?」
「動けるよ……早くっ!」
緑谷に急かされた麗日が“個性”を使う。蛙吹が緑谷と障子、轟の三人を舌で巻きつけ空に向かって投げた。
思った以上のスピードに障子が驚いたような声を上げながらも、“個性”の複製腕で方向のずれを修正して仮面の
「望月!」
継ぎ接ぎの男が莉緒を肩に担いでいる。彼女の意識はなく、ぐったりとしている。
すぐさま救出に向かおうとするが、継ぎ接ぎの男が青い炎を繰り出してきて近づけない。さらにラバースーツの
「おまえ、望月に何をした!?」
「あ? こいつのことか? ちょっと眠ってるだけさ」
「違う! 何をして眠らせた!」
「……さぁ? 俺も詳しくは知らないな」
轟が継ぎ接ぎの男を問い詰めるも、飄々とした態度に苛立ちが募る。
轟は知っていた。職場体験のとき、病室で緑谷と莉緒の会話を聞いていたからだ。
――莉緒には、状態異常を即時回復してくれるペルソナがいることを。
「二人とも! 右ポケットに入っていた常闇と爆豪を回収した!」
「障子くん!」
「っし、でかした!」
障子が仮面の
轟たちがこれを機に畳みかけようとするが、そう簡単にはいかない。黒い靄が揺らめき、ワープの“個性”を持つ黒霧が現れた。しかもそれだけではなく、森の中から脳無も姿を見せる。
「合図から5分経ちました。行きますよ、荼毘」
黒霧が継ぎ接ぎの男――荼毘に声をかけた。
「まて、まだ目標が……」
「ああ、アレはプレゼントしよう。悪い癖だよ、マジックの基本でね。モノを見せびらかす時ってのは……見せたくないモノがある時だぜ?」
仮面の
「右手に持ってたモンが右ポケットに入ってんの発見したら、そりゃー
「くそっ! 望月たちを返せ!」
「……へぇ」
轟が荼毘を一心に睨みながら叫ぶと、荼毘が肩に担いでいた莉緒を腕の中に抱き寄せて閉じ込めた。意識のない莉緒の顎を掴み、顔を轟の方に向ける。彼女の閉じられた瞳は開かない。
「……そんなにこいつが大事か?」
「望月に触るな!」
荼毘は不敵な笑みを浮かべながら黒い靄の中に入ろうとする。そのまま
口からこぼれた二つのビー玉を死守するため、轟と障子、緑谷が駆け出す。障子の手は届いたが、轟と怪我の影響で出遅れた緑谷の手は届かなかった。
「哀しいなぁ、轟焦凍」
ビー玉の一つが轟の目の前で荼毘に奪われた。
仮面の
「かっちゃん!」
「来んな、デク」
黒い靄が爆豪も
「望月っ……! 待て! ――莉緒!!」
伸ばされた手は無情にも届かず、生ぬるい風が轟の頬を撫でた。