「作戦どうする? 透ちゃんは“個性”的にも伏兵かな?」
「任せて! 私ちょっと本気出すわ。手袋もブーツも脱ぐわ」
「「うん……」」
――透明人間としては正しい選択だけど、女の子としては……。
意気揚々と脱ぎ始めた葉隠に何とも言えない思いを抱いていると、尾白と目が合った。お互い同じことを考えていようだが、頷き合うだけで何も言わなかった。
「えっと……尾白くんの“個性”はその尻尾だよね? 私の“個性”は――」
作戦会議の結果、武術が得意な尾白が核兵器のある部屋で防衛。莉緒と葉隠はそれぞれ単独で動き、奇襲をしかけることになった。
「……寒い?」
スタートの合図の後、しばらくして冷気が体を襲う。しかし冷気は莉緒に吸収され体力として還元された。
この現象はペルソナが持つ“吸収”の自動効果スキルの発動時に起こるものだ。今のペルソナはトランぺッターで物理吸収と氷結吸収の耐性を持っている。
物理攻撃は受けていない、となると――誰の“個性”か考える間もなくパキパキっと音がしてビル全体が凍り付いた。
『轟が来た、アイツの“個性”だ! ごめん、凍らされて動けない!』
『私も凍っちゃったよ〜! 痛タタタタ!』
予想通り氷結属性攻撃。
無線から尾白と葉隠の焦ったような声が聞こえてくる。こんな大胆な攻撃で来るとは思いもよらず、莉緒は急いでペルソナを付け替えスキルを唱えた。
『わかった、今からそっちに行く! 尾白くん、できるだけ時間を稼いで!』
――間に合って……!
四階の広間には足が凍って動けない尾白。その目の前には、凍らせた張本人である轟がいた。
「っく!」
「動いてもいいけど、足の皮剥がれちゃ満足に戦えねえぞ」
尾白を素通りし轟は核がある方へと進む。それを横目で確認する尾白の額からは、じっとりとした汗が落ちている。
凍えるような寒さにもかかわらず、尾白は自身が汗を掻いていることに疑問を感じる。心なしか足元の氷の拘束もゆるくなっているようだ。
轟が核に触れようとしたその瞬間、尾白は意を決して足に力を入れた。無理やり氷を割り、こちらの動向に気付いていない轟を止めようと駆け出した――しかし、あと少し届かない。
「悪かったな。レベルが違いすぎた」
「――それはどうかな?」
突如として聞こえた第三者の声。それとともに窓ガラスが割れる音が響いた。
飛び込むように窓から入ってきた莉緒の周りには砕けたガラスが散乱し、きらきらと氷に反射しながら落ちていく。
ガラスの光り越しに、莉緒と轟の視線が交わる。しかし、それは一瞬のことだった。
着地した莉緒が瞬きの間に轟に近づき、蹴りを入れて吹っ飛ばしたからだ。不意打ちのおかげもあり綺麗に攻撃が決まった。
「望月さん、来てくれてよかった! でも、どうして窓から?」
「外からの方が早かったからね。ちょうど氷の足場もあったし!」
「……おまえ、どうして。それに尾白も」
「さぁ? どうしてでしょう」
轟は全員凍らせたと思っていたのか、莉緒の乱入と動けるようになっている尾白を見て驚いているようだ。
好戦的な笑みを浮かべる莉緒と睨みつける轟。莉緒は轟から視線を外さずに片耳を押さえると、小型無線機に話しかけた。
『透ちゃん、聞こえる? 透ちゃんは障子くんをお願いね!』
『莉緒ちゃん? 氷が溶けてきた気もするけど、私まだ動けないよ〜!』
『火力が弱すぎたかな……ごめんね。でも、もう大丈夫だから』
「『え?』」
「尾白くん、時間稼ぎありがとう。私は轟くんを捕まえるから尾白くんは核をお願い」
「望月さん?」
葉隠が未だ凍って動けないのにもかかわらず作戦を進める莉緒。尾白は訳が分からず、莉緒を見つめる。
「アステリオス・賊神 ……」
莉緒の体が青い光に包まれると、背後に牛頭のペルソナが現れた。
青く太い二本の角に赤い顔、両腕を顔の前でクロスしており、その指には赤いチェーンがいくつもついている。上半身しかないが、建物の一室に収まりきらないくらいに大きい。
「ティタノマキア」
背後のペルソナが大きくて太い両腕を振り上げた。指についていた赤いチェーンが音を立て、尾白や轟の周囲に炎が走る。
地面から燃え盛るように現れた炎。勢いはあるが威力自体は抑えられており、氷だけを溶かしていく。
「尾白くんの“個性”はその尻尾だよね? 私の“個性”はペルソナっていって、簡単に言うと神や天使、悪魔とかを召喚して戦えるの」
「……え、神?」
「個性把握テストで見た骸骨天使だ!」
「そうそう。その他にも何体か使えるんだけど見た方が早いかな?」
莉緒がペルソナを喚ぶと、青い光に包まれて背後に骸骨の天使――トランペッターが現れた。
白いローブを身に纏い、背中には天使の羽がある。長いラッパを持っている手は皮膚や肉がなく骨のみで、その天使の顔もやはり骨のみだった。
尾白は突然何もないところから現れたトランぺッターに驚いて固まる。髑髏 と目が合い、身が竦む。
葉隠は個性把握テストで知っていたのもあり、「おお〜すごい!」とテンションが高くなっている。触ろうとして葉隠が握っている手袋がトランぺッターに近づくが通り抜けていた。
「ふふ、私以外はペルソナに触れることはできないの。この子はトランぺッターって名前で補助魔法が得意なんだけど、これから実戦始まるしスキル使っておくね」
莉緒が葉隠と尾白、それぞれにヒートライザを唱えると二人の足元が光り輝く。
「これは攻撃や防御力、命中・回避率が上昇するスキルなの。数分間しか持たないからあまり役に立たないかもしれないけど、念のためね」
尾白は身体の内側から湧いてくる不思議な力に驚く。それは葉隠も同じようだ。
「わ〜、莉緒ちゃんすごいよ! 何か力湧いてきたもん!」
「望月さんの“個性”すごいね、何でもできそう。それに他にもそのペルソナってのが使えるんでしょ?」
「うん、使えることには使えるんだけど……」
「どうしたの?」
莉緒は困った顔をし、申し訳なさそうに話し出した。
「ペルソナのスキルを使うと私の体力や精神力が減るんだけど、まだまだ上限が低くて……」
「あまりスキルが使えないってこと?」
「そうなの。今回は訓練の制限時間が短いから何とかなるとは思うけど、一応伝えておかなきゃと思って」
「わかった。教えてくれてありがとう」
「オッケー!」
「よろしくね。頑張ろうね二人とも!」
「(いやいやいや、確かに他のも使えるとは言ってたし、俺も“何でもできそう”って言ったけど……こんなに大きいやつも出せるの? しかも、炎まで使えるなんて汎用性高すぎる!)」
尾白は目を見開いて莉緒とペルソナを見る。
「尾白くん、作戦通りに! 炎の威力弱めてるから大丈夫だと思うけど、炎が核に近づきすぎてたら場所移動をお願い!」
「わ、わかった!」
「おまえ、炎の“個性”か。それで……」
「……だとしたら?」
「倒すだけだ」
「そう簡単にやられるつもりはないから」
「任せて! 私ちょっと本気出すわ。手袋もブーツも脱ぐわ」
「「うん……」」
――透明人間としては正しい選択だけど、女の子としては……。
意気揚々と脱ぎ始めた葉隠に何とも言えない思いを抱いていると、尾白と目が合った。お互い同じことを考えていようだが、頷き合うだけで何も言わなかった。
「えっと……尾白くんの“個性”はその尻尾だよね? 私の“個性”は――」
作戦会議の結果、武術が得意な尾白が核兵器のある部屋で防衛。莉緒と葉隠はそれぞれ単独で動き、奇襲をしかけることになった。
「……寒い?」
スタートの合図の後、しばらくして冷気が体を襲う。しかし冷気は莉緒に吸収され体力として還元された。
この現象はペルソナが持つ“吸収”の自動効果スキルの発動時に起こるものだ。今のペルソナはトランぺッターで物理吸収と氷結吸収の耐性を持っている。
物理攻撃は受けていない、となると――誰の“個性”か考える間もなくパキパキっと音がしてビル全体が凍り付いた。
『轟が来た、アイツの“個性”だ! ごめん、凍らされて動けない!』
『私も凍っちゃったよ〜! 痛タタタタ!』
予想通り氷結属性攻撃。
無線から尾白と葉隠の焦ったような声が聞こえてくる。こんな大胆な攻撃で来るとは思いもよらず、莉緒は急いでペルソナを付け替えスキルを唱えた。
『わかった、今からそっちに行く! 尾白くん、できるだけ時間を稼いで!』
――間に合って……!
四階の広間には足が凍って動けない尾白。その目の前には、凍らせた張本人である轟がいた。
「っく!」
「動いてもいいけど、足の皮剥がれちゃ満足に戦えねえぞ」
尾白を素通りし轟は核がある方へと進む。それを横目で確認する尾白の額からは、じっとりとした汗が落ちている。
凍えるような寒さにもかかわらず、尾白は自身が汗を掻いていることに疑問を感じる。心なしか足元の氷の拘束もゆるくなっているようだ。
轟が核に触れようとしたその瞬間、尾白は意を決して足に力を入れた。無理やり氷を割り、こちらの動向に気付いていない轟を止めようと駆け出した――しかし、あと少し届かない。
「悪かったな。レベルが違いすぎた」
「――それはどうかな?」
突如として聞こえた第三者の声。それとともに窓ガラスが割れる音が響いた。
飛び込むように窓から入ってきた莉緒の周りには砕けたガラスが散乱し、きらきらと氷に反射しながら落ちていく。
ガラスの光り越しに、莉緒と轟の視線が交わる。しかし、それは一瞬のことだった。
着地した莉緒が瞬きの間に轟に近づき、蹴りを入れて吹っ飛ばしたからだ。不意打ちのおかげもあり綺麗に攻撃が決まった。
「望月さん、来てくれてよかった! でも、どうして窓から?」
「外からの方が早かったからね。ちょうど氷の足場もあったし!」
「……おまえ、どうして。それに尾白も」
「さぁ? どうしてでしょう」
轟は全員凍らせたと思っていたのか、莉緒の乱入と動けるようになっている尾白を見て驚いているようだ。
好戦的な笑みを浮かべる莉緒と睨みつける轟。莉緒は轟から視線を外さずに片耳を押さえると、小型無線機に話しかけた。
『透ちゃん、聞こえる? 透ちゃんは障子くんをお願いね!』
『莉緒ちゃん? 氷が溶けてきた気もするけど、私まだ動けないよ〜!』
『火力が弱すぎたかな……ごめんね。でも、もう大丈夫だから』
「『え?』」
「尾白くん、時間稼ぎありがとう。私は轟くんを捕まえるから尾白くんは核をお願い」
「望月さん?」
葉隠が未だ凍って動けないのにもかかわらず作戦を進める莉緒。尾白は訳が分からず、莉緒を見つめる。
「アステリオス・
莉緒の体が青い光に包まれると、背後に牛頭のペルソナが現れた。
青く太い二本の角に赤い顔、両腕を顔の前でクロスしており、その指には赤いチェーンがいくつもついている。上半身しかないが、建物の一室に収まりきらないくらいに大きい。
「ティタノマキア」
背後のペルソナが大きくて太い両腕を振り上げた。指についていた赤いチェーンが音を立て、尾白や轟の周囲に炎が走る。
地面から燃え盛るように現れた炎。勢いはあるが威力自体は抑えられており、氷だけを溶かしていく。
「尾白くんの“個性”はその尻尾だよね? 私の“個性”はペルソナっていって、簡単に言うと神や天使、悪魔とかを召喚して戦えるの」
「……え、神?」
「個性把握テストで見た骸骨天使だ!」
「そうそう。その他にも何体か使えるんだけど見た方が早いかな?」
莉緒がペルソナを喚ぶと、青い光に包まれて背後に骸骨の天使――トランペッターが現れた。
白いローブを身に纏い、背中には天使の羽がある。長いラッパを持っている手は皮膚や肉がなく骨のみで、その天使の顔もやはり骨のみだった。
尾白は突然何もないところから現れたトランぺッターに驚いて固まる。
葉隠は個性把握テストで知っていたのもあり、「おお〜すごい!」とテンションが高くなっている。触ろうとして葉隠が握っている手袋がトランぺッターに近づくが通り抜けていた。
「ふふ、私以外はペルソナに触れることはできないの。この子はトランぺッターって名前で補助魔法が得意なんだけど、これから実戦始まるしスキル使っておくね」
莉緒が葉隠と尾白、それぞれにヒートライザを唱えると二人の足元が光り輝く。
「これは攻撃や防御力、命中・回避率が上昇するスキルなの。数分間しか持たないからあまり役に立たないかもしれないけど、念のためね」
尾白は身体の内側から湧いてくる不思議な力に驚く。それは葉隠も同じようだ。
「わ〜、莉緒ちゃんすごいよ! 何か力湧いてきたもん!」
「望月さんの“個性”すごいね、何でもできそう。それに他にもそのペルソナってのが使えるんでしょ?」
「うん、使えることには使えるんだけど……」
「どうしたの?」
莉緒は困った顔をし、申し訳なさそうに話し出した。
「ペルソナのスキルを使うと私の体力や精神力が減るんだけど、まだまだ上限が低くて……」
「あまりスキルが使えないってこと?」
「そうなの。今回は訓練の制限時間が短いから何とかなるとは思うけど、一応伝えておかなきゃと思って」
「わかった。教えてくれてありがとう」
「オッケー!」
「よろしくね。頑張ろうね二人とも!」
「(いやいやいや、確かに他のも使えるとは言ってたし、俺も“何でもできそう”って言ったけど……こんなに大きいやつも出せるの? しかも、炎まで使えるなんて汎用性高すぎる!)」
尾白は目を見開いて莉緒とペルソナを見る。
「尾白くん、作戦通りに! 炎の威力弱めてるから大丈夫だと思うけど、炎が核に近づきすぎてたら場所移動をお願い!」
「わ、わかった!」
「おまえ、炎の“個性”か。それで……」
「……だとしたら?」
「倒すだけだ」
「そう簡単にやられるつもりはないから」