「じゃあ、脱いで、寝て」
とても短くてシンプルな命令だった。私は黙ったまま、とても弱い光を放つ灯りの下でコルセットとランジェリーを外した。彼の前で裸になるのは初めてのことだった。彼を含む異性の前でそうするのも、覚えている限りでは初めてだった。ベッドに上がる。柔らかいシーツに踵と腰と頭が埋まった。枕の上にそっと頭を置いて横向きに寝そべる。そして今日夫になった人ではなく、小さな灯りが壁に生む陰影をながめた。

「いいコだね」
イルミさんはスウェットの上着を脱ぎ、私に覆い被った。長い髪が頬や首筋にふれて、くすぐったい。自分を見つめる双眸は夜よりも暗いから怖かった。これから起こることがとても怖かった。そして彼はそう感じながら震えを止められない私を見て悦んでいる。コルセットの跡がまだ残る私の背中を、ゆっくりとなぞる嗜虐的な指先がそれを物語っている。私はその手つきを感じて身をこわばらせながら、彼が肉欲などという温度の高い感覚を持ち合わせていたことに驚いていた。
固いものがぬめるそこをなぞり、音にならない悲鳴を無視してほとんど無理に割り入れられた。彼に私の肉が絡みつく、こんなかたちの交わりからはなにも感じないでいたいという私の意思に反して。律動とともに揺れた髪が胸に触れる。悪寒のような痛みと快楽をやりすごしながら、私は嬌声をかみ殺す。
「声、出さないの?」
ほんの少しだけ息を乱しながらイルミさんが言った。私はうなずく。彼を見上げてしまったら、心が燃えてしまいそうだから目を閉じた。間違えても好意などもってしまわないようにと。父を殺した男なんて。けれどもう全てが手遅れなのかもしれない。

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